INTERVIEW
2019.12.11
――そしてぜひお話を聞きたいのが、水樹さん自ら作詞作曲された「UPSETTER」です。先ほど「リアリティ」という言葉が出ましたが、自分はこの曲からまさにそういう要素を感じまして。
水樹 後輩から、夢と現実のギャップに心が折れてしまって、情熱を燃やし続けることが大変だという相談を受けたことが何度もあって。私もそんなふうに悩んだことがありますが、そのとき感じたのは、何事にも全力で取り組むことで必ずどこかに繋がっていくということ。自分のイメージするものに最短距離でいく人もいれば、全然違ったルートから結果的にゴールに辿り着く人もいるし、それは人それぞれですが、必ず今の頑張りは未来に繋がる。「努力は裏切らない」というメッセージを、自分の経験をもとに書いた曲です。実はこの曲を制作するにあたり、いちばん影響を受けたのはラグビーなんですよ。
――ああ、なるほど。
水樹 ちょうどこの曲を作っているときにラグビーのワールドカップがすごく盛り上がっていて。うちの三嶋プロデューサーがラグビーの大ファンなので、私も半ば強制的にラグビーを観ていて(笑)。曲名の「UPSETTER」には「大番狂わせ」という意味があって、まさにラグビーの日本代表が「予選通過は難しいんじゃないか?」という予想を覆して、見事に予選を全勝で勝ち抜いた……誰もが予想しなかったことが起きた。もし現状が自分の望ましくない状態であっても、努力することで驚くような未来が待っているかもしれないよ、というメッセージをラグビーから受けたエネルギーと一緒に落とし込みました。この曲が降りてきたのもちょうど(日本対)南アフリカ戦のときだったので、「これはラグビーに導かれてるんだ!」と思って(笑)、歌詞に“gain”とか“パス”や“ゴール”といった言葉を入れました。
――おっしゃる通り、この曲からは応援歌としてのメッセージ性を強く感じますが、それは人一倍努力してきた水樹さんが歌うからこそ説得力があるものになったんだろうなとも思います。
水樹 ありがとうございます。同じように悩んでいる人たちに「諦めないで! 自分を否定しないで!」ということを伝えたくて。せっかくのピュアな気持ちが違う方向にいってしまうともったいないですし、うまくいかないときはネガティブな気持ちが邪魔してチャンスを逃してしまうこともあるわけで。最初からうまく人なんて本当に少ないので、陽の目を見るときがくるまでぜひ頑張ってほしいと思うんです。
――歌詞の“世界は変えられないけれど 君の笑顔はサポートできるよ”というフレーズも印象的で。代表曲のひとつ「POWER GATE」(2002年)はみんなで時代を変えようと呼びかける曲でしたが、この曲はより等身大の言葉になっていて、変化を感じました。
水樹 若いときは夢がいっぱいで、大きなことを言っても勢いで叶えられそうな気がするというか、怖いもの知らずみたいなところがありますけど、大人になるといろんな現実を知って、夢を追いかけつつも、本当にこれで良いのかと悩む部分が出てくると思うんです。自分の経験をふまえてそれを言葉にできたら、よりみんなに伝わるものになるのではないかと思いました。
――そういう意味でも等身大の作品になったのかなと思います。そしてほかにも気になったのは、最後は「ALL FOR LOVE」で壮大に締めくくりそうなところを、その後にアルバム中で最も激しいナンバー「FINAL COMMANDER」を持ってきて、超アッパーで終わるというところです。
水樹 あはは(笑)、そうなんですよ!これが『CANNONBALL RUNNING』ということなんです(笑)。実は「ALL FOR LOVE」で締める案も出ていたのですが、「ここからまた新たな始まり」ということを曲順からも感じてもらいたくて。また一段階ギアをグッと入れるこの曲を最後に置きました。
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