艦船(かんせん)を擬人化した美少女キャラクターを編成して敵と戦う大ヒットシューティングRPGゲームを原作としたTVアニメーション『アズールレーン』。本作の劇伴音楽を担当しているのが、「オクトパストラベラー」「プリンセスコネクト!Re:Dive」をはじめ、これまで数々のゲーム作品で音楽を担当してきた西木康智。彼が本作ではどのような音楽を目指したのか、話を聞いた。
――今回西木さんにご依頼が来た経緯はどのようなものだったのでしょう。
西木康智 ある日音楽プロデューサーの木皿(陽平)さんからメールをいただきまして。それまで面識はなかったのですが、知り合い伝手に木皿さんが僕の手掛けたゲームの音楽を聴いてくださっているとは知っていて、そのつながりでメールを頂いたのかなと思いました。そこから是非にと僕からお願いをしまして、監督と打ち合わせた時にも僕の担当したゲームを遊んでくださっているようでした。木皿さんに伺った話ですが、監督は1話のコンテをいろんな音楽を聴きながら描いていたそうで、その中に僕の「オクトパストラベラー」の曲もあったそうなんですね。天衝監督も木皿さんも「オクトパストラベラー」をやりこんでいたので、今回このお話しを頂けたのはそのご縁ですね。
――監督とはどのようなお話をされたのでしょう?
西木 打ち合わせの段階から監督の音楽演出の意図のようなものが決まっていて、コンテにもそれが明確に描かれていて、オンエアを見たらその通りに当たっていたりしたので、監督の中で最初から明確にどんな音楽演出をするか決まっていたのだと思います。おかげで作曲はとてもやりやすかったです。バトルが多いと伺っていて、尺も長いということで長めの曲を書いています。バトル曲は曲数も多めになっていますね。
――日常曲も多い印象です。
西木 陣営ごとに日常とバトルの曲があります。原作ゲームを好きな方は女の子たちのキャッキャしたところも見たいし、でもアニメ制作的にはシリアス目のお話もやりたいということで、重い曲や激しいバトルの曲のオーダーもありました。色調が淡い感じですが、バトル曲はハリウッドさながらの曲もあったりとメリハリをつけることが大事なのかなと思っていました。
――全般的に懐かしいゲームサウンドの流れを感じました。
西木 それはそうですね。監督が絵コンテを描いている段階から僕のサウンドを聴いてくださっていたということと、原作もゲームですし僕が劇伴を担当するという意味を考えたときに、アニメの劇伴っぽいものを書くよりはある程度ゲーム音楽っぽいものを入れつつ、ただそれだけだと破綻してしまうので、いいバランスを心がけました。
――エンタープライズの曲が、まるでボス戦かと思うような曲でした。
西木 物語の中心人物なので、最初に書いた曲ですね。監督に聞いて頂いたのもこの曲が最初で、劇伴の中核をなしています。紋切り型の演出が1話で入ったり、わかりやすくキャッチーな曲であるべきだということで、過剰なぐらい盛り上げています(笑)。
――使用楽器についてなのですが、ゲーム原作であるにもかかわらず電子音がない印象です。
西木 そうですね。基本オーケストラの重厚なサウンドで行きたいという監督のご希望で。ただ日常を固いサウンドにしてしまうと息苦しいので、そういうところにはキックの四打ちのリズムを入れています。後半にセイレーンの企みが明らかになる場面では、デジタルノイズっぽい音を入れています。結構難しかったのですが、全体的にあまり軽い感じにしたくなかったんですね。日常曲にしてもキラっとした音にしたかったというか、キャラクターたちの可愛さを抒情的な音楽で表現したくて。シンセの音を入れることも考えたんですが、そうすると軽くなり過ぎちゃうかなと。なのでシンセ感は抑え目にしています。ただシンセが作品の時代背景的にそれを使うことが好ましくないという話ではなく、キャラクターの心情を表す方が大事だろうと思って、今回はシナリオを一番効果的に演出するにはシンセじゃないほうがいいだろうという判断ですね。
――海戦がテーマの作品ですが、これを音楽で表現するというのはどういう難しさがあるのでしょう?
西木 海戦ということを特に意識はしませんでした。そこが大事なテーマではないと思っていて、もちろんアズールレーンは海をテーマにした作品で、艦船をモチーフにしたキャラクターや史実をベースにしたキャラクターになってはいるのですが、海で戦っているということを表現する必要はないのかな、と。演出の上でも、キャラクターそれぞれが魅力的に描けるように心がけています。例えばエンタープライズなら、最強のキャラクターなんだけど、戦いで自分の負傷を顧みなかったり、苦しい過去もあったりと陰があるので、ヒロイックではあるけれどもどこかちょっと悲しみがある曲にしたかった。重桜も表面上は敵役っぽく出てきますが完全に敵というわけでもなく、重桜には重桜の哲学や思いがある中で、物語の役割的に悪者っぽさを出さないといけないので、完全に悪ではなく重桜の悲しみを感じつつ、各陣営の色が出るように和っぽい楽器を使っています。ただ、まんま和にもしたくなかったところが難しかったですね。
――各陣営の曲について伺います。ロイヤルに関してはお茶会の曲がテーマになるのでしょうか?
西木 お話の中でロイヤルのテーマですといった曲を入れるシーンがなく、特にテーマ曲は作っていません。お茶会の曲は、正統派でクラシカルな音楽にしたいけど、綺麗なクラッシックの曲ではなくちょっと歪んでいるというか、お茶会に参加している艦船が一癖も二癖もあるキャラクターたちなので、ちょっと不思議な音楽にしたいというオーダーでした。
――重桜はわかりやすく和的な楽器を使われていますが、ほかの3陣営は楽器に差をつけようと思われましたか?
西木 あまりないですね。差をつける必要はないかなと。楽器による明確な差ががなくてもストーリーは成立すると思っています。陣営ごとというより初期艦のラフィー、ジャベリン、綾波の関係性が物語の主線としてあって、彼女たちの心の交流であったりとか、ラフィー、ジャベリンを主軸にしたアズールレーン内の絡みであったりという部分を描く方が主になりますね。
――その他陣営として寧海、平海の東煌がでてきますね。
西木 最初監督から、その他陣営の音楽は「いらないといえばいらないんですが」と言われました。トラックリストを埋めるほど出番があるわけでもないと伺っていたんですが、僕が入れたいと言いまして。最初はSEで対応しましょうかという話で進んでいたんですが、僕がこの2キャラが好きだったということもあり、できたら作りたいとも思っていたので。
――ちなみに曲を聞かれて監督から感想はありましたか?
西木 それが何もなくて……(笑)。何もないのは信頼していただいている証拠なのかなと。天衝監督は細かい方でビジョンを細かく持っているので、監督の中で違うというものに関しては、それを言ってくるだろうと思っていました。それが全くなく、レコーディングの前に全曲デモを出したんですが、特に何もおっしゃらなかったので、監督的には正解だったのかなと思っています。
Interview & Text by 田中尚道(クリエンタ)
●作品情報
TVアニメーション『アズールレーン』
TOKYO MX 毎週木曜23:30~
サンテレビ 毎週木曜25:30~
KBS京都 毎週木曜25:30~
BS11 毎週木曜23:30~
AT-X 毎週金曜22:00~(リピート放送 毎週月曜14:00~/毎週木曜6:00~)
各配信サービスでも配信中
※放送日時は変更となる可能性がございます
【スタッフ】
原作:Manjuu Co.,Ltd./Yongshi Co.,Ltd.「アズールレーン」(Android/iOS用スマートフォンアプリゲーム)
監督:天衝
シリーズ構成:鋼屋ジン
キャラクターデザイン/総作画監督:野中正幸
コンセプトデザイン:MAGNUM
美術監督:扇山秋仁
美術設定:塩澤良憲
色彩設計:林可奈子
CGディレクター:比嘉芳明
撮影監督:千葉大輔
編集:武宮むつみ
音響監督:土屋雅紀
音響制作:ダックスプロダクション
音楽:西木康智
音楽制作:ストレイキャッツ
音楽プロデューサー:木皿陽平
オープニング主題歌:May’n「graphite/diamond」
エンディング主題歌:鹿乃「光の道標」
アニメーション制作:バイブリーアニメーションスタジオ
【キャスト】
エンタープライズ:石川由依
ベルファスト:堀江由衣
赤城:中原麻衣
綾波:大地 葉
ラフィー:長縄まりあ
ジャベリン:山根希美
ほか
●リリース情報
TVアニメーション『アズールレーン』Vol.1
【Blu-ray 初回生産限定版】
12月4日発売
品番:TBR-29291D
価格:¥6,800+税
1話~2話収録
初回生産限定特典
封入特典
・スマートフォン向けアプリゲーム『アズールレーン』内で使えるシリアルコード(Android専用)(※「ハオ」先生描きおろし「エンタープライズ」オリジナル着せ替え)
・特製ブックレット(20P)
・オリジナルサウンドトラックCD①
初回・通常共通特典
・描き下ろし三方背アウターケース
・デジパック仕様
映像特典
・ノンクレジットオープニング/エンディング
・PV集
※特典内容に関する詳細は各店舗にお問い合わせください。
※特典のデザイン、内容は予告なく変更となる場合がございます
© Manjuu Co., Ltd., Yongshi Co.,Ltd. & Yostar, Inc./アニメ「アズールレーン」製作委員会
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