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INTERVIEW

2019.11.27

TVアニメ『ゾンビランドサガ』ベストアルバムリリース記念 境 宗久(監督)×JUNJUN(振付)スペシャル対談

TVアニメ『ゾンビランドサガ』ベストアルバムリリース記念 境 宗久(監督)×JUNJUN(振付)スペシャル対談

ゾンビとして生き返った少女たちがプロデューサーに導かれながら、佐賀県を救うためにご当地アイドルとして活動するという、新感覚ゾンビアニメ『ゾンビランドサガ』。

2018年10月~12月の放送後も佐賀県をリアルに活性化している『ゾンビランドサガ』と、同作品のヒロインたちから成るアイドルグループ、フランシュシュ。第2期『ゾンビランドサガ リベンジ』制作の発表に加え、3月にはまさかの舞台化、さらに声優陣による幕張イベントホールでワンマンライブも決定と、日本全国で『ゾンビランドサガ』ブームは留まることを知らず、“伝説”を更新し続けている。

そんななか、11月27日に待望の主題歌&劇中歌集『ゾンビランドサガ フランシュシュ The Best』がリリースとなる。アルバム発売を記念して、境 宗久監督と、コリオグラファー(振付師)JUNJUNによるスペシャル対談が実現。楽曲の振付制作にまつわる貴重なエピソードを明かしてもらった。

――第1期放送が終わって約1年となりますが、第1期を終えられた感想を教えていただけますか。

境 宗久 完成させられたことにホッとしました。初めてやることも多かったので完走できたことが本当にうれしくて。それを皆さんに喜んで観ていただけたことが、今のモチベーションに繋がっています。東映アニメーション時代の同僚にも「面白いの作ったね」という連絡をもらって。作ってる者同士でそういう会話をすることって基本的に少ないんです。そこまで反応がもらえると思っていなかったからうれしいです。

JUNJUN 最初は、“自分の役目をちゃんと果たせたのかな”という心配がありましたが、実際にアニメを観たら私が思い描いていたことがしっかりと映像になっていてすごくうれしかったです。

 モーションキャプチャー(現実の人物や物体の動きをデジタル的に記録する技術)の撮影現場だと最終形が見えにくいですもんね。不安な部分は大きいだろうなと思っていました。

――『ゾンビランドサガ』の3DCGの振付パフォーマンスが撮影されるまで、裏側でどのようなことが行われているのかを伺えればと思うのですが、その前にJUNJUNさんはどんな経緯で『ゾンビランドサガ』の振付を行うことになったかを教えていただけますか?

JUNJUN 最初は「アニメのモーションキャプチャーで使うための振付をお願いします」という依頼だったんです。作品資料を読み進めていくうちに「凄い作品だ!」と思いました。それぞれのキャラ設定、死に方、時代感……いまだかつて見たことのない内容で、一体どんなアニメになるんだろうと。でもいちばん気になったのは、なんでゾンビなんだろうということでした(笑)。その理由は仕事を進めていくうちに分かったのですが、はじめはビックリしました。

 わははは!最初はみんなそう言うんですよ(笑)。

JUNJUN ゾンビというタイトルから、最初は“ゾンビダンス”のように手をダランとさせた状態でキャラクターを踊らさせる……といった振付をイメージしていました。でも実際は真逆で“人間らしさをどれだけ追及できるか”だったんですよね(笑)。

 最初の打ち合わせでそんな話をしましたよね。そのときもまさに、ここの場所(MAPPAスタジオ)に来ていただきました。さっき古いフォルダを漁って、当時の打ち合わせ用のメモを見ていたんですが、(JUNJUNさんに)発注をしたのが2016年で。

JUNJUN え~!そんなに前なんですね。自分でもビックリします(笑)。

――アニメ放送より2年前だったんですね。

 はい。でも最初の楽曲の振付をしていただいてから、しばらく動きがなかったんですよね。

JUNJUN そうでした!だからもうお話がなくなっちゃったのかな?って。で、忘れかけてたころに「はじめます!」ってバババッと楽曲が送られてきて、1週間で6曲ほど振付を作りました。基本的に全曲を総括しているんですが、Megという信頼するダンサーにも手伝ってもらいました。

 そうでしたね。そこに至るまでたくさん時間あったはずなのに、本当に申し訳ない……。

――普段の振付制作ではなかなかないスピード感でしたか?

JUNJUN そうですね(笑)。しかもフル尺で、1曲5分ほどあったので。でも曲によって音も速さもコンセプトも違うので作りやすかったし、楽しかったです。後々のことも考えて丁寧に作っていきました。基本的にほぼほぼお任せスタイルだったので、振付師としてすごくうれしいことでした。

――さきほど“人間らしさをどれだけ出せるか”という話がありましたが、フランシュシュの振付を作るにあたって意識されたことは、どんなことでしょうか。

JUNJUN 一人ひとりのキャラを躍動させること。7人のキャラクター性、生命力を感じるようなエネルギッシュさ、ライブ感をどれだけ活かせるかというところに注力しました。また、お客さんと一緒に楽しめる振付にしたいなと思っていました。

 個人的に知りたいのですが、どういうところから振付を作られていくんですか?どの曲もフォーメーションが凄いので、よくこういうまとまり方を思いつくなぁと思っていたんです。ダンスの流れ、自分だったら頭こんがりがりそうだなと(苦笑)。

JUNJUN 最初に曲を聴いて、全体のイメージを膨らませてから、構成を作っていきます。ここは小さくなって、次はお客さんを意識して……など、そういった流れを決めてから、振付を考えていくんです。基本的にサビから作ることが多いです。でも実はいちばん力を入れているのはイントロです。イントロで曲のイメージがパッと伝わるように、シンプルで、分かりやすい動きにはしたつもりでした。

 「目覚めRETURNER」もイントロがカッコいいですもんね。最後にまとまっていくのも好きです。

JUNJUN 「目覚めRETURNER」は最初に振付を作った曲で。アニメのなかでも1曲目だったこともあって、まだ人間っぽく踊れない段階かなと。それで少しぎこちのない動きの振付にしました。担当の方からは「もっとかわいくていい」と言われたのですが「エレクトリックな音にも合ってるし、初回ですし、この動きがきっと“かわいい”に繋がるはず」と、私から進言させてもらったんです。結果的にすごく気に入っています。最後にまとまっていくところは後ろ向きなので、メンバーは大変だと思いますが……。

 「目覚めRETURNER」は、本当はタエが間奏で“ある動き”をするのが面白いんですよ。でも映像にもライブにも出ていないので、それはどこかで活かしたいなぁと思っています。あのタエは絶対にかわいい(笑)。

JUNJUN かわいいですよね!うちのスタッフも大爆笑してましたもん。

――すっごく気になりますね(笑)。ちなみに、タエの動きはかなり自由奔放ですが、どのように作られたんでしょうか。

 明確な答えがなかなか出せなくて、現場でいろいろやってもらいながらという感じでした。たえ役を演じてくれたダンサーの方は、本当はバリバリ踊られる方なんですよね。申し訳なかったなぁ(苦笑)。モーションキャプチャーの収録のとき思わず謝ってしまいました。「気持ちよく踊れなくてごめんなさい」と。

JUNJUN 私も謝っていました(笑)。たえちゃん役は何人かにお願いしたんですが、たえちゃんの動きはいちばん難しいので、うまい人じゃないと表現できないんですよ。ただ浮遊しているように見えても、計算された浮遊で。合わせるべきところはしっかり合わせるという感じでした。いろいろなやり取りをしながら、たえちゃんの動きは完成していった感じでしたよね。


――モーションキャプチャーの撮影現場はどんな雰囲気なんでしょうか?

JUNJUN 緊張感もありつつ、和気あいあいとしていて、とても明るい雰囲気でした。みんな役になりきって踊ってくれていて、To my Dearestでは感動して涙腺がゆるんだ覚えがあります!逆にタエちゃん役の子は死んだような顔で全身の力を抜いて脱力しながら踊ってくれていたので笑っちゃいました。

 皆さん楽しんで踊られていることが伝わってきて、自分にとってもすごくうれしいことでした。しかもキャラクター性も皆さんすごく理解してくれていて。

JUNJUN ダンサーがみんなキャラクターを意識してくれたのはすごくありがたかったです。リハーサルのときも、私服のなかにどんなアイテムでもいいから、それぞれのキャラクターの色を入れてきてってお願いしていたんです。リリィちゃん役の子はふたつ結びで来てくれました(笑)。

――身も心も役になりきるというのは、ダンサーの皆さんにとっても重要なことなんですね。

JUNJUN 大事なことだと個人的には思っています。クールな恰好でかわいらしいダンスを踊ってもイメージが変わってしまうように思うんですよね。だからできる限り近づけるようにしています。実際に声は出さないのですが、口パク的な感じで口を動かしながら踊ってもらいました。

――ところで参加されていたダンサーのかたの年齢はバラバラなんですか?

JUNJUN はい。キャラクターの身長とほぼ同じくらいの背格好のダンサーを集めたので、年齢はバラバラですね。最年少はリリィ役で、ほかは高校生、20代、30代といました。フランシュシュも年齢がバラバラなので、実際の世代感が出たと思います。

 リリィ役を演じてくれた女の子は当時小学5年生だったんですが、本当にそのまんまリリィなんですよ。偶然なんですが、名前も(高梨)莉(りり)ちゃんで。

――ほぼ一緒の名前!偶然とはいえ運命的なものを感じます。

JUNJUN 私の生徒で、身長も130cmと同じなんです。ものすごく踊れる子で、研究熱心なんですよ。毎日毎日(振付を)詰め込んでいたんですが、そういうことが初めてだったので戸惑いも多かったようで……泣きながら家に帰ったこともあったそうなんです。でもそれでも帰宅後に動きを研究して、歌詞も完璧に覚えて。寝言でも歌ってたらしいです(笑)。寝ながら手足も動くようで、親御さんがビックリしたみたいです。その後、アニメが放送になって、リリィがメインの回(第八話)を観たお母さんは号泣したそうです。まるで自分に言われたセリフみたいって。お父さんには「アニメのなかのお話だから!」と言われているみたいです(笑)。

 そんなことが(笑)。莉ちゃん、動きはキレッキレなんですけど、小学生らしい姿もあってかわいかったです。最初にムービーを撮りにいったときのダンスで、リリィをかこむ場面があったんです。そのときさくら役のダンサー・田中 夢ちゃんと目があって、クスッと照れくさそうに笑ったのがめちゃくちゃかわいくて。そのままアニメで使ったんですよ。


JUNJUN あれ、実はたまたまじゃなくて、いつもやるんですよ。

 え!? そうだったんですか!

JUNJUN 実は私もそこが好きなんです。恥ずかしさがあるようでニコって笑うんです。だからそれを拾ってもらえたのが嬉しかったですね。実は、莉は今度の舞台にリリィ役で出演するんですよ。オーディションを受けて……。

――なんと!それは楽しみですね。

 ある意味、分身なので(笑)。劇中のリリィと同じ動きをするわけですから。楽しみです。

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