INTERVIEW
2019.11.20
「忘れたくない出来事のことを書いた曲も入っていますし、大切に歌って、大切に聴いて、今の気持ちを忘れずにしたいですね。宝物の1枚です」（佐々木）。
11月20日にTVアニメ『デュエル・マスターズ！！』のEDテーマ「カーテンコールを揺らして」をリリースする佐々木李子。アーティスト盤には、表現者としての挑戦となった朗読1編、この1年で得た悔しい気持ちや挑戦する思いを封じ込めた自作詞曲などが収録される。大きな成長を見せ、さらにたしかな歌唱力を爆発させる1枚。
――今回、ミニアルバムをリリースという話になったとき、どのような1枚にしたいと考えましたか？
佐々木李子 どんな曲を入れようかという話になったとき、やっと自分をさらけ出せるようになってきたと最近感じていたので、自分で作詞した曲を入れたり、その曲を元にした物語を歌以外で表現した朗読を提案してみたり、アルバムも自分を出した1枚にしたいとお話しました。
――さらけ出せるようになったというのはどういう部分ですか？
佐々木 いろいろな人と関わる中で無意識に変わっていったと思うんですけど、周りの人からも「李子ちゃん、変わったね」ということを言われることが多くなったんですね。例えば、エレベーターで一緒になった事務所の社員さんに自分から話しかけるとかも、前は全然できなかったんですけど、今は結構できていて。事務所の忘年会で社員さんと仲良くなりたいと思って、でも名前を覚えるのが苦手だから一人ひとりの名前と特徴を書いてみるとか。自分の心を開けなかった今までと違って、アフレコ現場でも隣の方と話をしたり、ご飯を一緒に行ったり、オープンになれてきている感じがします。
――何かきっかけはあったんですか？
佐々木 いつも近くにいるスタッフさんから言われたからだと思いますね。ライブのパフォーマンス指導をしてくださる先生も、「李子ちゃんの素性がいまだにわかんない」と仰られて……。反省しました。ライブの映像を見直していてもお客さんとのコミュニケーションがうまくできてないので、自分を変えたいと思うようにはなりました。
――ミニアルバムの中で佐々木さん発信で作り上げられたところを具体的に教えてもらえますか？
佐々木 アーティスト盤のジャケット写真は7曲目の「Empty Doll」のイメージになっていて、ジャケットからミニアルバムの世界に入れるように、という考えでした。曲も、最初に幻想的な曲から始めています。でも、やっぱり表題曲を早く聴いてもほしいので2曲目に置いて。それから、ロックな曲で盛り上げつつ最後の曲には「こうやって今でも歌わせていただいてるのは皆さんのおかげ」という感謝を込めたバラードを入れています。最後の最後に朗読を持ってきたのは、お話しした幻想的なイメージで終われるようにというか、物語感を意識したところですね。
――朗読を入れるというアイデアはどこから生まれたのでしょうか？
佐々木 ミニアルバムをリリースすることが決まったとき、歌以外の何かを入れてみようという話が出たんです。その打ち合わせがちょうど、去年の4月からやっているストーリーライブのお稽古時期で。そのストーリーライブを見に来てくださっていたMAGES.さんから、「声優活動もしているという要素を入れてみては？」という意見をいただいて、私から朗読を提案しました。
――朗読「人の形の私」は、佐々木さんが作詞した「Empty Doll」が元になっています。「Empty Doll」を書いたきっかけというのは？ストーリーライブの「SynapstoRy」のためだったのでしょうか？
佐々木 私はミュージカルをやっていたからなのか、台本に書かれている通りにやれば褒められる、みたいなところがあって。でもストーリーライブやライブをしているなかで、パフォーマンスの先生にも「ロボットみたいだよね」と言われるとか、いろいろな人と出会う中で、それでは歌で気持ちが伝わらないことに気づいたんですね。そういった、感じたことを大事にしたくて日記に書き留めていたんですけど、プロデューサーさんから「曲を書いてみない？」と言われまして。それで書いたのが「Empty Doll」でした。だから最初の歌詞は人形のところがロボットになっていて。あと実は、最初は自分でメロディもつけて提出しました。
――歌詞の内容は体験談と聞いたんですが？
佐々木 はい、実際にライブが「下手」と言われたこともありますし、あと、自分でも「下手だ」と決めつけていた時期があったんですね。ライブで歌うとお客さんの反応がすぐわかって。例えば自分が緊張して中途半端な気持ちで歌うとお客さんも同じような表情になっていると感じるんです。2番のBメロの“真面目なやつに限って結局無個性で”がいちばん好きなところなんですけど、「真面目にやっているだけで本当の自分の気持ちはここにないのかな」と思ったことを書きました。
――その意味では、「Empty Doll」を書いた頃と、今回の「カーテンコールを揺らして」ではかなり自分の歌も変わったと感じますか？
佐々木 変わったと思います。特に作詞させてもらった曲では、気持ちが伝わることがいちばんだと考えてレコーディングに臨みました。何回歌っても何が正解かわからなくなってはいたんですけど、それでも自分が納得がいくまで歌い続けて。以前だったら、プロデューサーさんからOKが出たら、それで自分も納得していましたけど、今は自分の意見も言えるようになってきました。「Empty Doll」のAメロでは、人形が本当に無表情で歌うなら、というところを相談もしていました。最後のサビは、空っぽの人形みたいな自分が見守ってくれる視線に気づくことで世界が色づいて見えてくる、という気持ちを書いているんですけど、ここも実体験なので気持ちを込められたと思います。これからも大事に歌いたい曲ですね。
――「Empty Doll」と朗読「人の形の私」、文章をどのように変えたのか、また、ふたつの表現方法を体験して感じた違いなどについて教えてください。
佐々木 「Empty Doll」の歌詞は元々、朗読するために書かれてはいないので、物語の流れが入ってくるように言い方を変えましたし、間を大事にしながら録っています。あとは、イメージする主人公はどちらも同じなんですけど、朗読では一つひとつの言葉に込めたものが伝わるようにわかりやすく、というところは意識しました。やっぱり声だけで思いを伝えるっていうの本当に難しくて。強く心を込めたいところをただ強く言うだけでは伝わらないし、悲しい部分を涙声で読むだけでも伝わらないし。まだまだ声優のお芝居勉強中ですね。でも、自分が出せる精一杯の思いで録りました。
――気持ちを増幅してくれるメロディがないぶん、本当に声だけで表現しなくてはならない朗読ですが、一方で間を自分でコントロールできますしね。
佐々木 そうなんですよね。自由だからこその難しさもあるんですけど、自分がやりたいようにできるというところはすごく楽しかったですね。
――聴く側も、歌と朗読という違う表現方法を聴き比べられるところがありますね。
佐々木 最近は歌だけではなく、ギターも頑張っていて、自分が表現したいことを違う手段で作っていきたいという気持ちが強くなっています。それもあって、今回は朗読に挑戦させていただきました。
――表題曲で新曲の「カーテンコールを揺らして」も佐々木さんが作詞されていますが、こちらはどういった思いが込められていますか？
佐々木 この曲も詞先で、「Empty Doll」は「こういう過去があって今の私がある」という詞なんですけど、「カーテンコールを揺らして」はまさに今の自分が書かれています。詞の言葉も日記から少しずつ取っていて。実は、今までずっと音楽と歩んできて自分が初めて「もう歌えないかも」とすごく絶望して、マイクを持てない時期があって。日記も書けない、何も残したくないと思うほど壁にぶち当たったことがあったんです。それでもいつも周りにいてくれるスタッフさんが、「大丈夫だよ、私たちがいるよ」「李子ちゃんならできるよ」って言ってくれたり、家まで来てくれたり会場まで一緒に行ってくれたりしたんです。ライブでもすごく震えてしまって、ちょっと泣いてしまったんですけど、お客さんは「もっと歌を聴かせて」って言ってくれました。そういう声のおかげでまた歌えるようになったので、その出来事を大切にしたいと思って、歌詞にしました。ちょうど1年くらい前のことでしたね。タイトルの「カーテンコールを揺らして」にはアンコールという意味もあって、私を光の差す場所にまた連れてきてくれたという感謝も込めています。
――挫折を感じる出来事があったということですか？
佐々木 そうですね。人生で初めての。
――周囲の力で乗り越えたあと、自分の中で何か変わりましたか？
佐々木 それまでは自分のために歌っていたところが大きかった気がしますけど、乗り越えてからは、同じような気持ちの人が私の音楽で少しでも救いになれたらいいな、という気持ちが強くなりました。
――同曲は『デュエル・マスターズ！！』のEDテーマでもあります。
佐々木 「カーテンコールを揺らして」が出来上がったあとにタイアップのお話をいただきました。2018年度の『デュエル・マスターズ！！』でもタイアップさせていただいたんですけど、今回も担当させていただけて、本当にうれしい気持ちです。『デュエル・マスターズ！！』のストーリーにも合わせて歌詞も書き換えています。例えば、サビの終わりの“切り札がこの手の中にあるなら”ですね。「カーテンコールを揺らして」は好きな曲にしていいと言われていたので、もう闇が深くて。でも、『デュエル・マスターズ！！』は主人公の（切札）ジョーくんが仲間と一緒に頑張っていく様子が描かれますし、私自身もいろいろなことを乗り越えて光差す場所に行けたというところで、光要素が多めになっています。
――闇バージョンにはどういった言葉が入っていたんですか？
佐々木 “歌う意味などありますか”なんかはかなり闇のままなんですけど、消えてしまった部分だと「息を止めているほうが楽だった」とか「明日地球が割れたらいいね」とか、「諦め」の歌詞でした（笑）。
――デビューからの3年間の中でも大きな1年になりましたね。
佐々木 そうですね。でも、3年間ずっと濃かったですね。出会いって大事なんだと思いました。自分目線でいろいろなことを考えちゃってしまうタイプだったんですけど、人と会話するといろいろなことを知ることもできるし、共有もできるので、挑戦したいことも増えて、目指すものも大きくなって、自分の世界が少しずつ大きくなった3年間だったと思います。
――今回のミニアルバムに収録された曲もそうですが、いろいろな作品で歌ってきましたしね。
佐々木 震災復興のアニメだったり、ドロップキックして血が吹き飛ぶアニメだったり（笑）。ゲームもいろいろなジャンルのものを歌わせていただいてるので、本当にいろいろな世界を旅している感覚を味わっています。
――タイアップ曲の中で『竜星のヴァルニール』や『幻想マネージュ』といった作品にも関わり。
佐々木 そうなんですよ。『幻想マネージュ』は遊園地が舞台なので、主題歌で新曲の「Histoire du Réve」を歌うときは遊園地で歌っているような気持ちになりました。イメージしながら世界に入り込むことが大好きですし、世界観を大事にいつも歌っているんですよね。聴いている人にもそれが伝わっていたらうれしいなと思うんですけど。でも、好きなことができているので幸せな気持ちになります。
――新曲は表題曲と「Histoire du Réve」以外にもう1曲、志倉千代丸さんによる「重ね合わせの猫箱」が。これはゲーム『うみねこのなく頃に咲〜猫箱と夢想の交響曲〜』の主題歌ですね。
佐々木 小学生くらいから、『ひぐらしのなく頃に』が大好きで漫画もアニメも楽しんでいたので、シリーズの作品に関わらせていただけて光栄です。『うみねこのなく頃に』はお話をいただいてから原作を読んだりアニメを見させていただいたりしたんですけど、やっぱり1回では理解できない複雑な世界で。でも、推理するのも大好きなので、すごく面白かったです。この新曲も今までに歌ったことのないような曲調だったのでミニアルバムの曲でいちばん苦戦しました。「千代丸さんの世界だな」って感じの1曲ですよね。ゴシック系というか、テンポが速くて、歌詞も難しい漢字がいっぱい出てきて。単語の意味を調べながらていねいに歌いました。
――1月には2度目のワンマンライブも決まっていますが、ライブに対する心境も教えていただけますか？
佐々木 「ただ、君に歌いたい」というタイトルのとおり、一人ひとりに目を合わせて届けたいという気持ちです。いつもサポートしてくださる楽器の方とも心を合わせて。そこは今までと違いますね。先ほどお話ししたように、以前は自分だけに向いて歌っていた気がしますし、今は私の歌が一歩踏み出す勇気のきっかけになればという思いで今回のミニアルバムでも歌っているので、1曲1曲、歌詞に込められているメッセージを心の耳で聴いてもらえたらうれしいと思っています。
――2020年に向けての抱負があれば教えてください。
佐々木 いろいろなことをクリエイティブしていきたい、と思っていて、最近作曲にもチャレンジしているんです。歌以外のことに触れることで広がる世界があるので、もっと視野を広げて、いろいろなことに挑戦し、それをちゃんと形にしたいと思ってます。
――先ほどギターを習っているという話もされていましたね。
佐々木 はい、アコギと、最近エレキギターも始めました。
――シンガーソングライターとしての佐々木さんに会える日を期待します。
佐々木 そうですね、作詞も作曲もできたらいいですね。頑張ります！
Interview & Text By 清水耕司（セブンデイズウォー）
●リリース情報
「カーテンコールを揺らして」
11月20日発売
【アーティスト盤（CD＋DVD）】
品番：USSW-0217
価格：￥3,000＋税
＜CD＞
1. トーラス（PS4『竜星のヴァルニール』ED）
2. カーテンコールを揺らして（TVアニメ『デュエル・マスターズ！！』EDテーマ）
3. When I…（PS4『竜星のヴァルニール』OP）
4. Freedom（アプリゲーム『紡ロジック』アナザーテーマソング）
5. Histoire du Réve（Nintendo Switch『幻想マネージュ』OPテーマ）
6. 重ね合わせの猫箱（CS版『うみねこのなく頃に咲～猫箱と夢想の交響曲～』OPテーマ）
7. Empty Doll（書き下ろし新曲）
8. Knot Alone（アプリゲーム『ドールズオーダー』バトルソング）
9. realization（PCゲーム『Deep one』主題歌）
10. Departure（PS4/PS Vita/Nintendo Switch『√レター Last Answer』主題歌）
11. 朗読 「人の形の私」
＜DVD＞
1. カーテンコールを揺らして（TVアニメ『デュエル・マスターズ！！』EDテーマ） MV
2. Freedom（アプリゲーム『紡ロジック』挿入歌） MV
【アニメ盤（CD）】
品番：USSW-0218
価格：￥1,500＋税
※TVアニメ『デュエル・マスターズ！！』描き下ろしジャケット仕様
＜CD＞
1. カーテンコールを揺らして（TVアニメ『デュエル・マスターズ！！』EDテーマ）
2. 重ね合わせの猫箱（CS版『うみねこのなく頃に咲～猫箱と夢想の交響曲～』OPテーマ）
3. Histoire du Réve（Nintendo Switch『幻想マネージュ』OPテーマ）
4.5.6. 1-3の各off vocalトラック
●リリースイベント情報
11月23日(土)アニメイト本館 開場13:30／開演14:00
11月30日(土)とらのあな秋葉原Ｃ店 開場13:30／開演14:00
12月1日(日) AKIHABARAゲーマーズ本店 開場17:30／開演18:00
●ライブ情報
「佐々木李子 2nd Oneman RicoRium ～ただ、君に歌いたい～」
1月13日（月・祝）
時間：開場17:15／開演18:00
会場：渋谷WWW
チケット代：前売4,500円(別途ドリンク代600円)
チケット一般発売中
・チケットぴあ：http://w.pia.jp/t/sasakirico/ Pコード：167-282
・ローソンチケット：https://l-tike.com/sasakirico/ Lコード：74322
・イープラス：https://eplus.jp/sasakirico/
問い合わせ先：渋谷WWW 03-5458-7685
●作品情報
TVアニメ『デュエル・マスターズ！！』
テレビ東京系にて毎週日曜あさ8時30分〜好評放送中！
(C)2019,Wizards of the Coast,Shogakukan,Mitsui/Kids,ShoPro,TV TOKYO
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