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2019.09.28

ユニットコラボで生まれる一期一会の可能性。「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 6thLIVE TOUR UNI-ON@IR!!!! SPECIAL」SSA追加公演DAY1レポート

ユニットコラボで生まれる一期一会の可能性。「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 6thLIVE TOUR UNI-ON@IR!!!! SPECIAL」SSA追加公演DAY1レポート

「アイドルマスター ミリオンライブ!」ライブツアー「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 6thLIVE TOUR UNI-ON@IR!!!!」の集大成となる追加公演「UNI-ON@IR!!!! SPECIAL」初日が2019年9月21日、さいたまスーパーアリーナにて開催された。

初日公演には中谷育役の原嶋あかり、七尾百合子役の伊藤美来、松田亜利沙役の村川梨衣、高山紗代子役の駒形友梨、高坂海美役の上田麗奈、福田のり子役の浜崎奈々、横山奈緒役の渡部優衣、佐竹美奈子役の大関英里、ジュリア役の愛美、最上静香役の田所あずさ、ロコ役の中村温姫、舞浜歩役の戸田めぐみ、永吉昴役の斉藤佑圭、周防桃子役の渡部恵子、島原エレナ役の角元明日香、宮尾美也役の桐谷蝶々、篠宮可憐役の近藤唯、野々原茜役の小笠原早紀、伊吹翼役のMachicoが出演、ゲストユニットに所属する所恵美役の藤井ゆきよ、豊川風花役の末柄里恵、桜守歌織役の香里有佐、望月杏奈役の夏川椎菜、百瀬莉緒役の山口立花子がゲスト出演した。

今回のツアーの地方公演は、765プロ劇場事務員・青羽美咲が司会を務める架空の音楽番組「UNI-ON@IR!!!!」に各4つのユニットが出演するコンセプトだった。追加公演となる「UNI-ON@IR!!!! SPECIAL」にはDAY1、DAY2それぞれに仙台・神戸・福岡の各公演から2ユニットずつが参加して、2日通すと全てのユニットが登場する。

「UNI-ON@IR!!!! SPECIAL」DAY1の参加ユニットは、閃光☆HANABI団、りるきゃん ~3 little candy~、Cleasky、トゥインクルリズム、D/Zeal、Jelly PoP Beansの6つ。さらに「ビッグバンズバリボー!!!!!」組、「出撃!アイドルヒーローズ」組、「オーディナリィ・クローバー」組がゲストユニットとして登場した。

ステージ構成を見ると、メインステージは各地方公演と同じ感じ。メインステージ両サイドに会場の内側を向いたサブのスクエアステージが用意されているのは、各地方公演から増えた人数に対応するためだろうか。メインステージ中央から花道を抜けると、四角いシンプルなセンターステージがある。浜崎奈々がセンターステージをリングに見立てて3カウントを響かせた「3rdLIVE TOUR BELIEVE MY DRE@M!!」を思い出す構成だ。

青羽美咲による番組(ライブ)コンセプト紹介後、6ユニットがそれぞれのユニット衣装をまとって登場しての「Brand New Theater!」でライブは開幕。地方公演の1.5倍のユニットがステージに揃う光景は大会場にふさわしい華やかさだ。

各ユニットが繰り広げる番組プログラムのトップバッターを務めたのは、閃光☆HANABI団(駒形友梨、上田麗奈、浜崎奈々、渡部優衣、大関英里)! 神戸公演にも登場した和太鼓集団「梵天」の女性パフォーマーたちと共に、「BORN ON DREAM! ~HANABI☆NIGHT~」「MOONY[打上げ☆HANABI ver.]」「咲くは浮世の君花火」を披露。メンバーが驚くほどの会場の盛り上がりに包まれたステージは、このライブがツアーを締めくくるお祭りであることを感じさせた。和太鼓アレンジされた「MOONY」では、Cleaskyの角元明日香と桐谷蝶々が応援出演。祭り団扇を持ったふたりは、階段にちょこんと腰かけて仲良くお祭りを楽しんでいた。

「咲くは浮世の君花火」ではHANABI団の5人が花道を通ってセンターステージに移動する間にJelly PoP Beansがメインステージに登場してダンスでサポート。ユニット同士のコラボを散りばめるのもSSA公演のコンセプトのようだ。“デビュー戦”のセンターステージを思い出したという浜崎は、「今度はみんなでこのステージに立てたことが嬉しい!」とやりきった笑顔を見せていた。

りるきゃん ~3 little candy~(以下、りるきゃん。近藤唯、小笠原早紀、Machico)は「ハルマチ女子」「Do-Dai」「彼氏になってよ。」を披露。体調不良で一時休業していた小笠原もぴかぴかの笑顔とパフォーマンスを見せてくれた。小笠原が茜として挨拶した後、彼女自身が声を発した時の会場の大歓声は一際大きく、暖かかった。「Do-Dai」ではメインステージ上段に茜ちゃん(着ぐるみ)が登場。りるきゃんの3人とダンサー2人、茜ちゃんのダンスがバッチリシンクロするのはインパクトがあり、重ねた練習を感じさせた。3人がセンターステージに移動してくると、りるきゃんの衣装のスカートってこんなにも不思議な色合いに輝いてゴージャスだったのか、と感じたのはセンターステージの近さと大会場の照明効果だろうか。近藤は花道を「ランウェイのつもりで」と表現。仙台公演では3人がウォーキングでステージをランウェイのように見せていたが、それが現実の光景として広がった。

「彼氏になってよ。」でりるきゃんのターンは終わり……と思いきや、ここでステージにJelly PoP Beansが登場! りるきゃん×Jelly PoP Beansの最高にポップでキュートなコラボによる「fruity love」を披露した。オリジナルメンバーの小笠原と中村がこの曲を一緒に歌うのはリリースイベント以来ということもあり、いつか2人でまた披露したいと夢が広がっていた。そのことをすごく喜んでいたのがMachicoで、大好きな「fruity love」を2人と一緒に歌えて本当に嬉しそうだった。

ここで最初のゲストユニット「ビッグバンズバリボー!!!!!」チーム(渡部優衣、上田麗奈、駒形友梨、末柄里恵、藤井ゆきよ)が登場、「ビッグバンズバリボー!!!!!」を披露した。灼熱の真夏の砂浜をイメージさせる燃え上がるようなテンションと疾走感は彼女たちならでは。間奏ではセンターステージをビーチバレーコートになぞらえての熱闘が繰り広げられた。この一曲の一瞬、駆け抜けて燃え上がる時間のためだけに2日目組の末柄、藤井が参加しているのがなんともぜいたくだ。

Cleasky(角元明日香・桐谷蝶々)は「虹色letters」「笑って!」「想い出はクリアスカイ」を披露。「虹色letters」では、メインステージ両サイドのバルコニーのスクリーンに教室の背景を映し出して、ステージを学校に見せた。センターに歩み寄った2人は手をつなぐと、小走りにステージ上段に駆け上がって、背中合わせでキメポーズ。その頭上に美しい虹がかかった。

「笑って!」では青い傘を差す桐谷、教室で想いを込めた手紙を封筒につめる角元、と物語を感じさせるパフォーマンスを見せた。エンディングとなるアウトロでは、雨宿りする角元に桐谷が傘を差しかけ、角元が手紙を差し出すストーリーが綴られた。

「想い出はクリアスカイ」は歌唱前の曲紹介を美也とエレナとして行なったが、それだけでアイドルがそこにいるような臨場感がぐっと増す。青空を背景にしたステージで、2人は舞台両翼のサイドステージまでダッシュすると「SSA、盛り上がってる?」「私たちの青春、受け取ってください!」。Cleaskyの物語の色が強いステージだったが、この曲では素の美也らしさ、エレナらしさも感じさせた。

閃光☆HANABI団×Cleaskyのコラボでは、「THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!」挿入歌「ラムネ色 青春」を披露。この曲とユニットの組み合わせがなかなか絶妙で、カラーは違ってもどちらも夏空をイメージさせるユニット。海美として明るく激しい表現が多い上田の優しい表情と歌声や、桐谷の元気で前向きな歌声など、ユニットとはちょっと違うプラスアルファを引き出していた。感慨深かったのは、歌唱メンバーに横山奈緒役の渡部優衣と佐竹美奈子役の大関英里が含まれていたこと。「輝きの向こう側へ!」にはバックダンサーの新人として参加していた奈緒と美奈子を演じたふたりが、こんなにも大きなアリーナで先輩たちの楽曲を生き生きと披露している様子に、この舞台もきっと輝きの向こう側にある世界なのだと感じた。

Jelly PoP Beansは、「ART NEEDS HEART BEATS[Four Heart Beans Ver.]」「I did+I will」「月曜日のクリームソーダ」を披露。「ART NEEDS HEART BEATS」はロコのソロ曲をJelly PoP Beans4人の歌として再解釈。4本の光条の中それぞれの歌声を響かせた。ユニットとして登場すると、戸田が髪のサイドから後ろを歩カラーの紫に鮮やかに染め上げている再現度の高さが一際目にとまる。とにかくアドリブやサプライズが多いのがJelly PoP Beansのステージで、「ART NEEDS HEART BEATS」では中村が「SSAとのフィーリング!」と歌詞変えしていた。

「I did+I will」ではゆったりとしたノスタルジックな音の世界と、カラフルで大胆な色と光の使い方が印象的なロコの斬新なアート空間が交差する。曲調に合わせた優しい歌唱の解釈が4人それぞれに違って驚くほど個性的。間奏の指差しダンスの連鎖やアウトロで4人がぴたりと静止するキメなど、動きでも見せるステージだった。MCで斉藤より、前日が昴の誕生日であることが明かされると、会場は祝福の大歓声に包まれた。

「月曜日のクリームソーダ」にはゲストアクトとしてタップダンサーズが登場。スケールの大きなエンターテイメントステージを繰り広げた。この曲では会場のプロデューサーたちもクラップや「パッシュワ!」のコールで一緒に盛り上げるのだが、さいたまスーパーアリーナでもぴったりとクラップとコールが揃うのは流石の一言だ。福岡公演では中村が曲中に仲間たちへの感謝の気持ちを伝えるサプライズがあったのだが、今回は仲間の戸田、斉藤、渡部から「選んでくれてありがとう!」と(作中の物語の中で)ユニットをプロデュースするリーダーであるロコへの感謝が伝えられて、中村を素でびっくりさせていた。地方公演と共通のセットリストの中に変化がたくさんあって、ユニットとして活動していく中で4人がかけがえのない仲間になっていった物語が伝わってくるステージだった。

「月曜日のクリームソーダ」後半には閃光☆HANABI団が応援出演、階段に腰かけた5人は和気藹々とクリームソーダを楽しんだ。楽曲の最後は、HANABI団も一緒にクリームソーダを掲げてキメた。この曲のあとにはHANABI団とJelly PoP Beansが、ステージをサポートした和太鼓集団梵天、そしてJelly PoPタップダンサーズにステージでインタビューを行なう一味違った企画も。タップダンサーズの中にアイマスのPがいることが明かされたりと、ツアーを一緒に戦ってきたサポートチームの素顔が垣間見える時間だった。

ゲストユニット2番目の登場は「オーディナリィ・クローバー」チーム(香里有佐、田所あずさ、夏川椎菜、山口立花子、桐谷蝶々)が登場、「オーディナリィ・クローバー」を披露した。センターステージに登場した5人は、優雅に舞うようなダンスと歌声を披露。ゲームのバーストアピールの動きを再現したり、ハイタッチをかわしたりの動きもかわいらしく楽しい。歌っている5人がみんなやわらかで楽しそうな笑顔を浮かべているのが印象的で、夏川の末っ子らしさがとびっきりかわいく、きらきらと輝くようだった。アウトロの軽やかな足運びも完全再現。余韻が残るSSAに、桐谷の「にゃーん」の声がかわいらしく響いた。

トゥインクルリズム(原嶋あかり、伊藤美来、村川梨衣)は「ZETTAI × BREAK!! トゥインクルリズム」「Fate of the World」「Tomorrow Program」を披露。神戸公演と共通セットリストでも全く不足を感じないのは、華やかな魔法少女衣装と武器をまとった絢爛なステージと、ネタ満載のプログラムが神戸の時点でSSAクラスの会場にふさわしいクオリティを持っていた証左だろう。

「ZETTAI × BREAK!! トゥインクルリズム」を歌い終えた3人が雷撃のようなエフェクトに打たれて倒れると、スクリーンには新たな敵・ギョーカイジン“パパ・ラッツィ”が登場。育と百合子がパパ・ラッツィの撮影のバッドマナーを糾弾するのだが、亜利沙は撮影する側に思えたのは気のせいだろうか。

トゥインクルリズムとパパ・ラッツィの激闘は続く「Fate of the World」で描かれるのだが、曲中にD/Zealがパパ・ラッツィの手先となって登場。田所がスチールカメラ、愛美が動画カメラを回してステージを動き回った。爆笑の演出だったが、このために田所が衣装の超早替えをしてきたと思うとそれも少し面白い。歌い終えて決めポーズをとるトゥインクルリズムの立ち姿のかっこよさはまさにヒロインの風格だった。

「Tomorrow Program」は、トゥインクルリズムが出演する作品のエンディング映像という趣向。スクリーンにはスタッフロールに歌詞を織りこんだ映像がしんみりと流れていくのだが、歌詞の中には業界用語やネタが満載。3人が階段にちょこんと腰かけるかわいらしい姿さえも、ひな壇トークで立ち上がってがっつく若手アイドルというネタの前振りになっている。

楽曲と歌唱が壮大でエモーショナルになるほど、ネタとのギャップで面白さが増す仕掛けの「Tomorrow Program」。情感豊かなバラードで際立つのが村川の歌声の大人っぽさと流麗さで、「ドイヒーな扱いでも~」のロングソロがため息が出るほど美しい。村川の澄んだボーカルと伊藤の情感豊かな情報量の多いボーカルが大いに盛り上げたところで、原嶋の「きみだよ」のワンフレーズが全てを持っていく、とてもバランスが良いユニットだった。

最後のゲスト枠「出撃!アイドルヒーローズ」からはMachicoと上田麗奈が登場して「インヴィンシブル・ジャスティス」を披露した。ふたりが拳を突き上げると、スクリーンに炎が吹き上がる。Machicoと上田というふたつの傑出した個性とテンションが火花を散らすようなステージだ。両サイドのスクエアステージに分かれて感情をぶつけあう2人だが、スクリーン映像のアシストもあって間近でバトルを繰り広げているような臨場感がある。りるきゃんでキュートな少女性を見せたMachico、閃光☆HANABI団で陽性の元気を弾けさせた上田、そんな2人が見せた闘志あふれるパフォーマンスに表現の多様性が見えた。上田は海美が演じる、海美であって海美でない様々な姿を表現することにプレッシャーを感じていたとのことだが、みんなの声援の力で海美になれた、楽しかったと語っていた。

ユニットラスト、DAY1のトリを務めたのはD/Zeal(愛美、田所あずさ)。1曲目の「ハーモニクス」は鮮烈の一言で、蒼と緋のトップボーカリスト同士のハーモニーを響かせた。「世界中に鳴り響いて!」のフレーズの後の余韻に満ちた空白にすごみが漂う。愛美はD/Zealとして期待されるものの大きさにプレッシャーを感じていたとのことだが、気持ちを吹っ切るきっかけになったのが、この曲で田所が垣間見せた楽しさ、爽快さを感じさせる表情だったそうだ。MCマイクを握った2人は、大トリを担い、受け取ったバトンを翌日につないでいく責任と喜びを語っていた。

福岡ではここからお互いの持ち歌をD/Zealバージョンで披露した2人だったが、今回は「餞の鳥」へ。セットリストの変更が何かが起こる予兆を感じさせる。向かい合って歌いあい、魂を響かせあう2人は一対の存在で、掲げた手元を合わせて翼を作り出す姿は、互いが欠かせない存在である比翼の鳥を連想させた。

ここで、ステージに登場したのはトゥインクルリズム。D/Zealのセットリストの間にコラボ曲を差しこんで来るのは予想の外だった。D/Zealとトゥインクルリズムのコラボ曲は「創造は始まりの風を連れて」。投票によって配役を決める企画シリーズ「THE@TER ACTIVITIES」から生まれた楽曲で、テーマは「剣と魔法のファンタジー」。5人曲で、伊藤美来と村川梨衣がオリジナルメンバーであることから、トゥインクルリズムの出番で歌うのは予想の範囲だったが、あえてD/Zealの出番に持ってくることできれいにサプライズが決まった。2年前の「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 4thLIVE TH@NK YOU for SMILE!!」で、村人Aを演じたロコ=中村温姫しかいない初日にサプライズでオリジナルメンバーのこの曲を持ってきた大胆な仕掛けを思い出す構成だ。

初期の伊藤は読書を愛する妄想がちな少女、という七尾百合子のキャラクター性に寄り添って、歌に想いを込める表現が多かったように思う。剣と魔法の世界の主人公という役柄をまとうことで、伊藤美来自身が本来持つボーカル、ダンス、ビジュアルのレベルの高さ、かっこよさを全開にしたのが彼女のセンター曲「創造は始まりの風を連れて」だった。彼女が戦う魔法少女の装いでセンターに立ち、D/Zealという強烈な個性と肩を並べて歌うのはそれだけで心が躍る。正面を視線でまっすぐに射抜いた伊藤が、照明の反転と共にシルエットを残す鮮烈さ。

この組み合わせだからこその強い印象を残したのが、“トゥインクルリズムというユニットをまとって”この曲を歌う村川梨衣の存在感だった。亜利沙ってこんなにかっこよかったっけ、と感じるほどのクリアで力強く、うねる歌声。伊藤美来や愛美、田所あずさと歌の力で渡り合う本物のボーカリストとしての一面は、ユニットコラボだからこそ引き出されたものだと思う。

そして、そこにワンポイント、キャラクターらしく、アイドルに化身することに特化した原嶋あかりが加わるのが本当に面白い。ボーカリストたちの共演の中でオリジナルな個性を見せる原嶋はまさに飛び道具だったが、その存在感はただの飛び道具ではなくミサイル級だ。歌う原嶋の表情はどきっとするほど真剣だった。

最高に熱くかっこいい「創造は始まりの風を連れて」という楽曲にD/Zeal、田所あずさと愛美のカラーはぴったりなのだが、そんな彼女たちとの共演が引き出したトゥインクルリズムの新しい一面がより強く印象に残ったのはコラボの面白さだと思う。終盤にソロを歌い継ぐエモーショナルな畳みかけでは、田所と愛美のボーカルの強みが特にバシッとハマっていた。

そして「創造は始まりの風を連れて」の余韻が消える前に、「アライブファクター」の強すぎるイントロが始まったのだからたまらない。原曲は最上静香と如月千早の楽曲だが、「THE IDOLM@STER MILLION THE@TER GENERATION 12 D/Zeal」に収録されたドラマ「天国の鳥」はジュリアとシズ(最上静香)とチハ(如月千早)の関係性と音楽を巡る物語だ。福岡公演での「餞の鳥」ではスクリーンに舞い散る羽根の中に千早を想起させる“青い羽根”が1本舞っていたりと、D/Zealの物語と如月千早の存在は切り離せない。ジュリアとしての愛美が千早のかわりに歌う「アライブファクター」は、このユニットのステージでは特別な意味を持つ。

そんな物語を背負って──愛美自身もプレッシャーが大きかったと言う──歌う「アライブファクター」。原曲は田所あずさと今井麻美という表現者の真剣勝負であり、まっすぐに前を見つめる個と個の歌だ。2人の目線はもどかしいほど交わらず、それゆえに「君に憧れ 君を待ち焦がれ」のフレーズで交錯するふたつの魂は光を放った。D/Zealの楽曲で言えば、「ハーモニクス」の側により近い楽曲だったと思う。

だが“ジュリア”と“シズ”が歌う「アライブファクター」は、お互いに向かって歌いあい、想いと音を溶けあわせさせるようで。D/Zealで言えば「餞の鳥」に近いニュアンスを強く感じた。一度限りのライブ、一度限りのステージでの“感じ”をどの程度信用していいかと思案もしたが、ふたりの演者が直接向かいあうそのフレーズを聴いて確信に変わった。

「君に憧れ」
「君“と”待ち焦がれ」

関係性の変化を、ジュリアが放つたったひとつの助詞の置き換えで表現する言の葉のなんとさりげなく美しいことか。この曲はジュリアにとっては君と共に焦がれる歌であり、片翼をなくした鳥たちが共に形作る翼なのだと思う。この曲は間違いなく、D/Zealの「アライブファクター」だった。

何度聞いても泣きたくなるほど眩しい「DIAMOND DAYS」を全員で歌うと、各ユニットごとにステージを振り返ってライブ本編は締めに。最後の楽曲「UNION!!」の前振りはMachicoが行なったのだが、テンションを上げすぎてキャラが渋滞した感じのわちゃわちゃしたやりとりで、結果的に場を和ませていたのが彼女らしかった。

アンコール中には今後に向けての様々な発表が行なわれたのだが、特記しておきたいのは「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ(以下、ミリシタ)」の新規実装楽曲として「キラメキラリ」が発表された時の会場の異様な盛り上がりだ。新規曲発表で盛り上がるのはイベントの常だが、やよい、育、桃子の3人が歌い踊るムービーが流れた時の会場の盛り上がり、そして眩しいほどのオレンジの一斉点灯は、新発表というよりライブそのもののような熱さだった。それは「キラメキラリ」という時代を超える名曲の力であり、やよいがお姉さんとして育、桃子のセンターに立って歌う光景が多くの人の心に響くものだった証左だろう。「ミリシタ」のゲストコミュモードにPS3「アイドルマスター ワンフォーオール」に登場したオーバーランクアイドル・玲音(CV:茅原実里)の登場が予告されたりと、「ミリシタ」の世界のさらなる広がりと深まりを感じさせる発表だった。

アンコールの「Flyers!!!」では、最初にセンターステージに5人が先行して登場。ルミエール・パピヨン衣装をまとって、「ミリシタ」MVでの5人ライブを再現してみせた。センターに立つのはMVのセンター、七尾百合子役の伊藤美来だ。そして、再現要素がもうひとつ。「Flyers!!!」のMVでは3人がセンターステージから登場し、残りの2人はサイドステージから登場するのだが、現実のライブでも残りのメンバーがメインステージ両翼のサイドステージから現れてパフォーマンスを始めたのだ。思えば今回のステージ構成自体が、「Flyers!!!」MVをベースにしたものだった。

全体曲を5人、7人、7人という形で3ステージに分けて、まるでみっつのユニットの同時パフォーマンスのように色分けしたのは全体曲の新しい解釈。登場タイミングをずらすことで一時的に5人MVを再現したり、センターポジションを際立たせる見せ方は発明だった。花道とメインステージを駆けた19人はメインステージで合流し、一列になってのパフォーマンスを見せた。今回ゲストユニットメンバーは全員曲には登場せず、ラストナンバーの曲中にダンサーたちと一緒にサポートメンバーとして紹介されたのだが、これもDAY1の19人でのステージを作りこむこだわりの内かもしれない

最後の挨拶では、3つの地方公演と本公演をユニット単位で駆け抜けてきたからこその絆の深さ、ユニットの仲間ともっと一緒にいたい! という気持ちが多く聞かれた。DAY1とDAY2で出演メンバーが違う一期一会の追加公演だからこそ、全員がツアーと本公演を振り返る時間がしっかりあったのは良かったと思う。

田所とMachicoの声かけから始まったラストナンバーは「Thank You!」。ありったけの感謝と笑顔をこめて、彼女たちのツアーの最後を締めくくった。

Text By 中里キリ

「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 6thLIVE TOUR UNI-ON@IR!!!! SPECIAL」DAY1
2019.09.21 さいたまスーパーアリーナ
<セットリスト>
M01:Brand New Theater!(ミリオンスターズ)
M02:BORN ON DREAM! ~HANABI☆NIGHT~(閃光☆HANABI団/駒形友梨・上田麗奈・浜崎奈々・渡部優衣・大関英里) with 梵天(和太鼓)
M03:MOONY[打上げ☆HANABI ver](閃光☆HANABI団/駒形友梨・上田麗奈・浜崎奈々・渡部優衣・大関英里) with 梵天(和太鼓)
M04:咲くは浮世の君花火(閃光☆HANABI団/駒形友梨・上田麗奈・浜崎奈々・渡部優衣・大関英里) with 梵天(和太鼓)
M05:ハルマチ女子(りるきゃん ~3 little candy~/近藤唯・小笠原早紀・Machico)
M06:Do-Dai(りるきゃん ~3 little candy~/近藤唯・小笠原早紀・Machico) with 茜ちゃん
M07:彼氏になってよ。(りるきゃん ~3 little candy~/近藤唯・小笠原早紀・Machico)
M08:fruity love(りるきゃん ~3 little candy~/近藤唯・小笠原早紀・Machico × Jelly PoP Beans/中村温姫・戸田めぐみ・斉藤佑圭・渡部恵子)
M09:ビッグバンズバリボー!!!!!(上田麗奈・藤井ゆきよ・駒形友梨・末柄里恵・渡部優衣)
M10:虹色letters(Cleasky/角元明日香・桐谷蝶々)
M11:笑って!(Cleasky/角元明日香・桐谷蝶々)
M12:想い出はクリアスカイ(Cleasky/角元明日香・桐谷蝶々)
M13:ラムネ色青春(Cleasky/角元明日香・桐谷蝶々 × 閃光☆HANABI団/駒形友梨・上田麗奈・浜崎奈々・渡部優衣・大関英里)
M14:ART NEEDS HEART BEATS[Four Heart Beans Ver.](Jelly PoP Beans/中村温姫・戸田めぐみ・斉藤佑圭・渡部恵子)
M15:I did+I will(Jelly PoP Beans/中村温姫・戸田めぐみ・斉藤佑圭・渡部恵子)
M16:月曜日のクリームソーダ(Jelly PoP Beans/中村温姫・戸田めぐみ・斉藤佑圭・渡部恵子) with Jelly PoP タップダンサーズ
M17:オーディナリィ・クローバー(香里有佐・田所あずさ・夏川椎菜・山口立花子・桐谷蝶々)
M18:ZETTAI × BREAK!! トゥインクルリズム(トゥインクルリズム/伊藤美来・原嶋あかり・村川梨衣)
M19:Fate of the World(トゥインクルリズム/伊藤美来・原嶋あかり・村川梨衣)
M20:Tomorrow Program(トゥインクルリズム/伊藤美来・原嶋あかり・村川梨衣)
M21:インヴィンシブル・ジャスティス(Machico・上田麗奈)
M22:ハーモニクス(D/Zeal/田所あずさ・愛美)
M23:餞の鳥(D/Zeal/田所あずさ・愛美)
M24:創造は始まりの風を連れて(D/Zeal/田所あずさ・愛美 × トゥインクルリズム/伊藤美来・原嶋あかり・村川梨衣)
M25:アライブファクター(D/Zeal/田所あずさ・愛美)
M26:DIAMOND DAYS(ミリオンスターズ)
M27:UNION!!(ミリオンスターズ)
-ENCORE-
EN1:Flyers!!!(ミリオンスターズ)
EN2:Thank You!(ミリオンスターズ)

 

©窪岡俊之 ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

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