INTERVIEW
2019.09.10
今年4月から放送されたTVアニメ『ぼくたちは勉強ができない』から生まれた声優3人による音楽ユニット・Study。これまでシングルとミニアルバムをそれぞれリリースしてきたが、そんなStudyの楽曲でほとんどの歌詞を手がけているのがくまのきよみ、こだまさおりのふたりだ。デビュー曲「ready STUDY go!」、アニメのOPテーマ「セイシュンゼミナール」、そしてミニアルバム『PROGRESSIVE」で、ふたりはStudyに、どんな言葉を贈ったのか? Study×くまのきよみ×こだまさおりによるスペシャル座談会、スタート!
※『ぼくたちは勉強ができない』公式サイトでは、Studyのミニアルバム『PROGRESSIVE』リリースを記念したスペシャルインタビューを掲載中!ぜひそちらも合わせてご覧ください。
■スタッフインタビュー:作品プロデューサー中山 & 音楽プロデューサー山内
■クリエイターインタビュー第1弾:細井聡司 & a2c(MintJam) & 柏森 進(MOSAIC.WAV)
■クリエイターインタビュー第2弾:細井聡司 & a2c(MintJam) & 柏森 進(MOSAIC.WAV)
■クリエイターインタビュー第3弾:細井聡司 & a2c(MintJam) & 柏森 進(MOSAIC.WAV)
――本日はStudyの楽曲の歌詞の多くを手がけられた作詞家のおふたりにお越しいただきました!
こだまさおり お手柔らかにお願いします(笑)。
くまのきよみ こういうの慣れてないので(笑)。
白石晴香・富田美憂・鈴代紗弓 よろしくお願いします!
――では座談会を始める前に、まずはStudyの3人に改めてこの半年の音楽活動を振り返っていただきましょう。
白石 アフレコが始まる前からこの3人でStudyとして活動させていただいて、アフレコだけでなく、アーティスト写真やMVの撮影、イベントやリハーサルなどで一緒にいることが多かったので、どんどん仲が深まっていきました。この半年で3姉妹みたいな感じになれたのかなって思います。私にとって、ふたりは頼りになる妹という感じです。
鈴代 頼りになれてるかなあ(笑)。
白石 ライブやニコ生とかでも、3人一緒にいると安心感がすごくあるんですよ。どんどんチーム感が出てきたなっていうのを最近強く思いますね。最初は「3人でユニットをやらせていただけるんだ、うれしいな」というところから始まり、「えっ、MV撮影!? ミニアルバムですか!? いいんですか!?」って、どんどん活動が広がっていくのがさらにうれしくて。そうしたなかで、自分自身の課題も見つかり、少しは成長できた半年なのかなって思います。
富田 怒涛の半年間だった、という感じがします。あまり歌ったことのないタイプの歌がうたえたり、振り付けができるようになったりと、ポテンシャル面で自分的にもStudy的にもすごく成長できた半年間だったなと思いますし、これからのワンマンでもどういうふうにStudyとして成長できるかが楽しみですね。はるにゃん(白石)も言っていましたが、ほんとに「3姉妹」みたいな感じなんです。仲がいいだけじゃなくて、リハーサル中でもダンスの表現もはるにゃんやおさゆ(鈴代)をお手本にすることもあるし、お互い高め合えている感じがしていて、そういう意味でもチーム感が出てきているのかなって思います。
鈴代 本当にあっという間の、濃縮された半年だなって思います。私はこういう活動が初めてだったので、レコーディングもどう臨めばいいのか?というところから始まったんですね。だけど、はるにゃんと美憂ちゃんという、多方面で活躍されているふたりを仲間としていちばん近いところで見られるという貴重な時間があって、毎回会うたびに楽しい一方で本当に刺激を受けています。食らいついて頑張らなきゃっていう半年間でしたし、こうやって素敵な活動をさせていただけるスタッフさんやふたりに感謝したいなって思っています。
――そんなStudyの音楽にまつわる歌詞という面において、くまのさんとこだまさんにお伺いします。Study最初の楽曲である「ready STUDY go!」の作詞を手がけられたくまのさんですが、まずアニメ制作サイドからどんなオファーが来ましたか?
くまの 音楽プロデューサーの山内(真治)さんから、突然メールが来まして。「単刀直入ですが、お仕事の依頼をさせてください」という。「こういう作品があって、かなり本格的にユニット活動をして行く予定なので歌詞をお願いします」という。それが去年の11月くらいかな? この3人でというメンバーのお名前と作品の概要と、どんな感じの歌詞で、既存の曲だとこんなイメージというのをいただいて。なのでそのときはまだ「ready STUDY go!」の曲はもらっていませんでした。
――すでに3人の情報があったわけですね。
くまの そこでまずググります(笑)。白石さんは前にもご一緒したことがあって、「あ、白石さんだ」って。
白石 私の初めてのソロでのキャラソンの歌詞を書いてくださったのがくまのさんなんです。
くまの すっごい難しい曲だったんですよね(笑)。
――その後、StudyはTVアニメ『ぼくたちは勉強ができない』のOPテーマ「セイシュンゼミナール」をリリースするわけですが、こちらの歌詞を手がけられたのはこだまさんです。こだまさんにはどんなオファーが?
こだま 歌詞の正式発注は去年の12月ぐらいですね。曲は山田(高弘)さんでアレンジが齋藤(真也)さんで、作詞はこだまでっていう3人は最初に決めてくださっていて。ヤマダマン(山田高弘)から「動き出したよ」っていうのは11月ぐらいに聞いていて、そこから原作を読みながら待つという感じでした。
――では、Studyについては正式発注のあとで知ったわけですね。
こだま 私の場合はあとからですね。
――デビュー曲である「ready STUDY go!」とOPテーマである「セイシュンゼミナール」とではオファーのされ方も変わってくるわけですね。
くまの そうですね。いちばん最初にお話をいただいたときに、「キャラクターソングではない、と。キャラクターの説明や物語を説明するものではない」と言われたんですよ。
白石・富田・鈴代 そうなんですね!
くまの だから原作も読み込みむ手前というか。深く読んじゃいけないと思って我慢しました。そうやってまず書いてみようと。
――なるほど。逆に資料(原作)を読み込まないということもあるんですね。
富田 いい意味でアニソンっぽくないのはそういうところなのかもしれないですね。
くまの そそうかもしれないです。原作のモチーフはむしろ使って、……でも、物語に添う必要はないです、という指示でしたね。
――勉強にまつわるワードは入れたいけれど、それが直接『ぼく勉』を示唆するような見え方であってはいけないということですね。そこはこだまさんが描くOPテーマとは性質がまったく違いますね。
くまの そうですね。「ready STUDY go!」は彼女たちのデビュー曲にする、という意思を、強く感じましたね。
――そういった性質の楽曲をStudyとしてはどう歌おうと考えましたか?
富田 おっしゃる通り、キャラクターソングではないのでキャラの声と私たちの声のカフェオレ的割合みたいな(笑)。自分=3、キャラ=7ぐらいの塩梅で、キャラクターと一緒に歌っているみたいなイメージでした。このデビュー曲で、Studyとしての歌唱の方向性が見えたのかなって思いますね。
くまの それって、難しくなかったですか?
白石 難しかったです……。
くまの 来兎さんから届いたデモは、ポップだけどリズムとか難しかったんです。ライブで歌うことも考えたら、あまり詰め込まないように、ストレートにいこうかなと思いました。そうそう!発注内容に“一抹の切なさ”が欲しいって書いてあったんです。
こだま たしかに切ないですよね。
くまの 原作タイトルは『ぼくたちは勉強ができない』じゃないですか。それって逆に言うと「できるはずだよ」「なりたいんだよ」っていう意志の現れのようにも思えて。今日はできてなくても明日は、って歌になればいいなと。生まれたてのStudyだから歌えるんじゃないかって。
白石 「ready STUDY go!」はすごく爽やかで前向きな楽曲だなと、最初に聴いたときに思ったんですが、歌っていると、だんだん爽やかさや前向きさだけでなく、切なさを感じるようになったので、今くまのさんのお話を伺って納得しました。
くまの オファーいただいたときに注文に“香辛料的な切なさが欲しい”って書いてあったんですよ。
鈴代 難しい!
くまの 「切なすぎるのはノー。明るさ、前向きさを際立たせるための切なさがほしい」ってなるほどと思いまして。2コーラス目の“サボりたいよ”とか“恋したいよ”とかの流れなんかもそうですが、どんなにまっとうに真剣に何かに取り組んでいても、お腹鳴っちゃったり、アクビ出ちゃったり(笑)人として当たり前の欲求は隠せないし、ついてまわる。わかってるんだけどつい自分を誤魔化したくなっちゃう瞬間とかも全部正直に、ストレートにStudyに歌ってもらえたら響くんじゃないかと思って。
白石 勉強のワードも入っている歌詞なので、学生の皆さんにすごく刺さるんじゃないかなと思っていたんですが、私もお仕事に行くときに聴いていると頑張ろうってなるんですよね。きっと大人にも通じるところはあるのかなって思いました。
くまの ありがとうございます……!
――そしてそのあとのこだまさんによる「セイシュンゼミナール」ですが、アニメのOPテーマとしてはどう作詞されていきましたか?
こだま くまのさんがさっきおっしゃっていた「キャラクターだけどキャラソンじゃない」というオーダーは私のほうにも来ていて。ただオープニングって、キャラクターが歌っていてもそれってキャラソンではないじゃないですか。どう転んでもその世界を歌うべき立ち位置の曲だと思うんですよね。なので、自然とキャラソンにはならなかったですね。イメージとしては“Studyというアーティストユニットが、タイアップで歌っている感じ”かな? 私は原作を読み込んだんですけど、やはり「作品からモチーフは拾っても、作品そのもののことは描かなくていい」と言われました。だからズバリ想像できるシーンというのはあまりないんじゃないかな? 例えば作品では(唯我)成幸がヒロインの教育係ではありますけど、“Mr. ティーチャー”は何にでも置き換えられるというか。
白石 それこそ歌詞に“Mr. ティーチャー 採点を!”って入っていることで、Studyを応援してくださる皆さんのことをティーチャーと呼ぶようになったんですよね。
富田 「ティーチャーはあなたたちだよ!」って。
こだま ありがたいですね。アーティストの曲ということで、お客さんと一緒に歌えるようなものが楽しいなと思って、Aメロの“Q. ”“A. ”っていうのも、ここ一緒に叫べるようにしたいなって。“採点を!”もそうですね。
鈴代 ライブでティーチャーもそのあと“百点!”って言ってくださいます。
こだま 盛り上がってこそのオープニングだし、そう思って作りました。
白石 あと歌い分けも、ひとつの言葉を3人で分けて歌う、細かい歌詞割りになっていたので、ユニットの呼吸が合っているかが試される感じがしました。なので、レコーディングのときは、先にレコーディングしていた2人の声を聴いて、繋がりを意識して臨みましたね。
――たしかに“未だズバリ正解はない”というフレーズを3人で細かく歌い分けるというのは新鮮でした。そこもこだまさんが分けていったんですか?
こだま そこは山内さんとも相談しつつですね。例えば“未だズバリ正解はない”を細かく3人で分けるにしても、最後の“ない”で3人がユニゾンするっていうのはありそうであまりないと思うんですよ。“正解はない”まで(武元)うるか(鈴代)がいくような歌割りになりがちかなと思うんですけど、山内さんが今の“ない”を3人がユニゾンするようにご提案くださって、「なるほど!」って勉強になりました。
富田 2番のAメロの“鼓動がうるさい”という歌詞を、私は家で練習してきた歌い方だと“こどーがうるさい”だったんですけど、レコーディングのときにこだまさんが“こどうがうるさい”がいいかもってアドバイスをくださって。完成したのを聴いたときに“たしかに!”ってなったんですよ。
こだま 細かくてすみません(笑)。
富田 いえいえ! こだまさんは別の作品やユニットでも作詞をしてくださっているんですけど、こういうタイプの曲は初めてだったので、自分のなかでも新しい発見があり、それこそ勉強できたなって思います。
鈴代 Dメロの落ちサビのところで、美憂ちゃんが“努力なんて”って切なげに歌ってらっしゃっていたんですけど(笑)。
富田 らっしゃっていた(笑)。
鈴代 その前の“報われない”は私が歌うんですけど、レコーディングの順番では美憂ちゃんが先なんですね。だから“報われない”を歌うときは、すでにある美憂ちゃんの“努力なんて”に繋げたいっていうのがあって、そこは結構苦戦しつつ頑張りました。ちなみに歌詞で言うと、“最上級の落第点で未来を叫べ”という部分が好きです。最上級なのに落第点、「すごい!」って(笑)。
――“目指してオールA”から始まる最後のパートの歌詞は、景色がガラッと変わる印象があります。
こだま いいですよね、ここ。ヤマダマンとシャイニー(齋藤)さん流石だなって。大団円感があってすごく泣けるなと思いました。それと同時に、このメロディに負けない歌詞をつけなきゃと思って緊張もしましたね。
富田 振り付けの先生も大団円感を意識していて、正面、右、左ってお客さんを見渡して「ありがとう」っていう振りになっているんですよね。
こだま 私もそういうイメージでした、宝塚のカーテンコールみたいな。
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