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REPORT

2019.07.07

3つの属性公演の扉を開けて、次なるステージへ!“THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 6thLIVE TOUR UNI-ON@IR!!!!”福岡公演「Fairy STATION」2日日レポート

いちばん後ろを守るアイドルの背中を支えるもの

ソロ、ユニット中心でなんでもありの後半パート。2日目は雨宮 天と田所あずさの「Decided」をトップに持ってきた。まとう衣装の赤と青の対比という点で、やはりオープニングのD/Zealとこのデュオを対置しているように見える。D/Zealがふたりでひとつの音を奏でるのに対して、こちらは個と個がお互いを表現しあう印象が強い。だが、少し前の時期に志保と静香がデュエットしたのなら、もう少しバチバチしたイメージだったのではないだろうか。志保が少し大人になり、静香が自分の居場所を見つけたことで、演じるふたりが歌に込めるものが少し変わってきた気がする。それでも、互いをより高みへと引き上げている関係性は変わらないように見えた。

ソロのトップバッターは野村の「恋心マスカレード」。大きなライブでのソロ披露は、前回のツアー“THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 3rd LIVE TOUR BELIEVE MY DRE@M!!”以来だろうか。その日は初めて立つ大舞台、曲頭に千鶴としての台詞を入れて“二階堂千鶴”をインストールしていた記憶がある。今回はアレクサンドラの気高き騎士衣装の力もあってか、シームレスにすっと千鶴の歌に入っている印象だ。歌声の安定と難易度の上がったダンス、それらがもたらす自信がパフォーマンス全体のクオリティと輝きを数段高めている。落ちサビのあでやかな表現力と、ステージに捧げられる幾千のオレンジの輝きが眩しく映った。

雨宮の「ライアー・ルージュ」。EScapeとしてのステージはココロを得たアンドロイドという表現のフィルターを通していた分、後半では北沢志保としての生の表現が見えた。個人的に「ライアー・ルージュ」といえば2013年末の公開録音でのライブでの表現力と目力の強さ、そして“THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 3rdLIVE TOUR BELIEVE MY DRE@M!!”でライブでの本格的な演出と噛み合ったパフォーマンスのすごみが印象に残っている。今思えば、あの頃の表現には、雨宮自身の張りつめた緊張感やテンションが志保とシンクロした、その時にしか出せないものがあったようにも思う。そして今は、当時と比べてアーティストとして表現者として飛躍的に成長した土台に、どう役者としての表現や感情を乗せていくか、というまた違ったアプローチをしている気がする。北沢志保の思い詰めた切実さはそのままに、より高みへ。そんな表現の羽化を感じるステージだった。

前半のユニット舞台とのリンクを感じたのが藤井の「フローズン・ワード」だった。まず、凛とした少年めいた衣装での歌唱は、それだけでイメージがガラッと変わる。そして、焦がれるほどに強く切ない感情を表現する上で、前半戦で夜想令嬢としてエドガーを演じていたことは藤井自身にも、受け取る客席にも影響を与えたはずだ。そして、彼女の抑揚豊かに想いを込める歌声と“演じる”という行為の距離の近さを改めて感じた。

「Catch my dream」は田所あずさと最上静香がつねに進化し、次のステージへの扉を開き続ける象徴のような楽曲だ。田所の研ぎ澄まされ、コントロールされた歌声の凄みを感じられる楽曲だが、今回はステージを楽しむ感情や喜びがより強く伝わってきた気がする。Fairy属性のセンター格というポジションとパフォーマンスに対する信頼感から、田所はライブでソロのトリを務めることが多かった。これまでそのプレッシャーと信頼に応え続けてきたわけだが、今回は比較的自由な立場だった影響もあるのではないだろうか。前日はジュリアが「スタートリップ」を歌った位置というのも心憎い。キメどころの「次のステージへ」のフレーズもきっぱりと潔く、伸びやかに満面の笑みで、そして噛みしめるように決意を込めて。多彩な表現と表情を見ることができた。胸元に手を当て、カメラを見つめる瞳はおだやかで、やりきった充実感を感じた。

野村、斉藤、南、山口の「brave HARMONY」。野村の歌い出しから山口の優しく上品な歌唱につながっていく歌い出しが新鮮だし、昴としての斉藤のまっすぐにカッコいいい歌声にはハッとする感じがある。先日のリリイベで渡部が「(JPBは)Fairyのキュート担当」と話していたが、同じ属性が集まるライブだからこそ、普段とはちょっと違う役割を果たすシーンも出てくる。「brave HARMONY」がライブを象徴する楽曲だった4thライブの武道館の頃に比べると、新鮮な組み合わせの新しい「brave HARMONY」で少し遊べる余地ができてきたのかもしれない。

「ローリング△さんかく」でソロのトリ前という位置を任された渡部。「まだまだ行くよ福岡!」と会場を盛り立てていく。ステージにいる時の渡部はいつだって桃子で、いちばんテンションの高い、気持ちよく伸びて行く歌声の中にもキラキラした桃子の成分がある。歌声と演技を軸に桃子に化身するというか、歌って、演じている渡部を見ているとどんどん桃子そのものに見えてくるのは「声優」ならではの現象だろう。彼女のダンスは本当にていねいで反復を感じさせるのだが、過去のライブに比べると振付の密度がさらっと着実に上がっている。ラストは「きれいな〇になるよ?」の語尾の跳ね上げのニュアンスで観客の大合唱を呼びこんで、会場をひとつにしてみせた。

この会場で担当Pが、あるいはそれ以外の人たちもが、何より待ち望んでいたのは斉藤佑圭の「HOME RUN SONG♪」だったかもしれない。昨年6月の「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 5thLIVE BRAND NEW PERFOR@ANCE!」に斉藤は残念ながら参加できず、開演前に昴が会場で「HOME RUN SONG♪」をかけるという粋な演出があった。しかし、やはり会場で本人のパフォーマンスを見たいという気持ちもまた、大きくなったのを覚えている。そんな斉藤に用意されたのは、ソロのトリという大舞台だった。4人のダンサーを従えた斉藤が美しくキュートな歌声を奏で、元気いっぱいの全力パフォーマンスを見せる。客席のテンションを受けてさらに高まった歌声が、客席に描かれた緑のグラウンドに広がっていった。ラストのMCで、斉藤がミリオンのいちばん後ろを守るのは永吉 昴と冗談めかして言いながら、「でもその背中を押してくれるのはプロデューサー!」と心から感謝を伝えていたのが心に残った。

「Raise the FLAG」から「侠気乱舞」のつなぎはやはり最強の流れ。初日の客席が驚愕で突き抜けたテンションのまま駆け抜けたのに比べると、二日目は来るぞ、来るぞ……という期待感が爆発した感じが強い。「ミリオンライブ!」は初期はユニット曲を共通曲的に様々な組み合わせで歌うことが多く、4thLIVEの武道館あたりではオリジナルメンバーを揃えるアプローチが多かった。そして今、よりユニット数と楽曲プールが広がった結果、その両面で攻める柔軟なセットリスト構築が可能になったように思う。ラストを締めくくる「DIAMOND DAYS」は大団円感のあるしんみりする曲調でありながら、会場全体で腹の底から叫べる稀有な楽曲に感じた。

そして前述の通り、今回のライブではツアー追加公演“THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 6thLIVE TOUR UNI-ON@IR!!!! SPECIAL”(2019年9月21日・22日 さいたまスーパーアリーナ)の開催が発表された。「UNI-ON@IR!!!!」の4つのエクスクラメーションに込められた意味のひとつが明かされたように思う。三都市を巡った3属性、12のユニット全てがSSAに集う。ツアーを経て、そして3ヶ月の期間を経て、彼女たちが何を見せてくれるのかに期待したい。

Terxt By 中里キリ

「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 6thLIVE TOUR UNI-ON@IR!!!!」福岡公演「Fairy STATION」DAY2
2019.06.30 マリンメッセ福岡 セットリスト

M01:FairyTaleじゃいられない(フェアリースターズ)
-D/Zeal-(愛美、田所あずさ)
M02:ハーモニクス
M03:流星群
M04:SING MY SONG(アコースティックバージョン)
M05:餞の鳥
-夜想令嬢-GRAC&E NOCTURNE-(小岩井ことり、藤井ゆきよ、野村香菜子、山口立花子)
M06:昏き星、遠い月
M07:Everlasting
-EScape-(阿部里果、南 早紀、雨宮 天)
M08:I.D~EScape from Utopia~
M09:Mythmaker
M10:Melty Fantasia
M11:LOST
-Jelly PoP Beans-(中村温姫、戸田めぐみ、斉藤佑圭、渡部恵子)
M12:ART NEEDS HEART BEATS(Four Heart Beans Ver.)
M13:I did+I will
M14:月曜日のクリームソーダ

M15:Decided(雨宮 天、田所あずさ)
M16:恋心マスカレード(野村香菜子)
M17:ライアー・ルージュ(雨宮 天)
M18:フローズン・ワード(藤井ゆきよ)
M19:Catch my dream(田所あずさ)
M20:brave HARMONY(野村香菜子、斉藤佑圭、南 早紀、山口立花子)
M21:ローリング△さんかく(渡部恵子)
M22:HOME RUN SONG♪(斉藤佑圭)
M23:Raise the FLAG(藤井ゆきよ、阿部里果、戸田めぐみ)
M24:俠気乱舞(中村温姫、愛美、渡部恵子、小岩井ことり)
M25:DIAMOND DAYS(フェアリースターズ)
-ENCORE-
EN1:UNION!!(フェアリースターズ)
EN2:Brand New Theater!(フェアリースターズ)

©窪岡俊之 ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

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