INTERVIEW
2019.06.12
TVアニメ『W’z《ウィズ》』の主題歌や、ヘヴィメタルバンドUnlucky Morpheusのボーカリストとして活躍するFukiが、6月12日に待望のセカンドソロアルバム『Million Scarlets』をリリース。その中の2曲にコーラスで参加したのは、「のんのんびより」や「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」に出演する人気声優の小岩井ことりだ。読者も「なぜこのふたりが?」と思ったことだろう。そのエピソードは対談本文をお読みいただきたいのだが、内容は楽曲制作にとどまらず、互いの作詞方法の違い、声の出し方の本質を突いた話題まで、メタルと声優の世界に留まらない多岐にわたる話題にまで及んだ。ロング対談をたっぷりとお届けする。
――まず今回の組み合わせに驚いたのですが、おふたりの出会いから教えていただけますか?
Fuki 初めてお会いしたのは2012年頃だったと思います。当時、私はLIGHT BRINGERというバンドで活動をしておりまして、そのラジオに小岩井さんがゲストでいらしたんです。そのときが最初で、今年のはじめにアニメ『W’z《ウィズ》』の大阪でのイベントで「お久しぶりです」とご挨拶して、今日で3回目なんですよ。
小岩井ことり 私はメタル好きで、Unlucky Morpheusも聴いていたのですが、ボーカルを務めるFukiさんとラジオでご一緒したFukiさんが同一人物だとは、はじめ分からなくて(笑)。
Fuki むしろ、私はことりさんが聴いていらしたことに驚いたんです。メタルって、けっこう好き嫌いが分かれる音楽ジャンルだと思いますが、ことりさんはどんなきっかけで目覚めたんですか?
小岩井 以前から興味はあったのですが、自分とはちょっと遠いジャンルかなと思っていたんです。私は吹奏楽部だったので、オーケストラや吹奏楽部的なジャンルとの関わりはありつつ、なかなかバンドの方にまでは足を踏み出せずにいたところ、Nightwishをきっかけにメタルをいろいろと聴くようになりました。知り合いのエンジニアさんから教えてもらった「Ghost Love Score」が、豪華なシンフォニックの曲で、シンフォニックとバンドがこんなにきれいに組み合わさるジャンルがあるんだなと思って、そこからより好きになりました。
――シンフォメタルと言えばまさにFukiさんもルーツが近いですね。
Fuki 私のメタルルーツは X Japan なんです。彼らもクラシックとロックを融合したサウンドですから、傾向として近いですね。私もシンフォニックだったり弦がいっぱい重なっているようなメタルが好きですし、Nightwishはライブでカバーをしたくらい好きなバンドです。
――そして今回、Fukiさんのソロアルバム『Million Scarlets』にDual Alter World(小岩井とBLOOD STAIN CHILDのRYUが1月に結成したバンド)が、アレンジ&コーラスで参加するに至った経緯を教えてください。
Fuki 元々はレーベルのご縁なんですよね。今年の2月に私がFABTONEから「神様はきっと」(テレビアニメ『W’z《ウィズ》』EDテーマ)をリリースして、同じレーベルにRYUさんのいるBLOOD STAIN CHILDが所属していたのがきっかけです。BLOOD STAIN CHILDとは対バンもしたことがあり、よく存じ上げています。ブラステもピコピコとメタルを融合した先駆者なので、Maoくん(LIGHT BRINGER、本作では作曲・共同プロデュース)の曲を編曲してもらったら面白いよねという話になって、今回コラボできた形ですね。
――小岩井さんのDual Alter Worldの結成はどのようなきっかけで?
小岩井 私もメタルをやりたいなと思ってはいたのですが、メタルってボーカルだけではなく楽器パートも大事ですから、ひとりでやるには難しいジャンルだなとずっと思っていたんです。そうしたらRYUさんから事務所経由でお声がけをいただいたという形です。
――今回のアルバムでは「君の居ない世界」と「Habitable Planet」にDual Alter Worldとして参加されています。
小岩井 私はコーラスのほうで、RYUさんが編曲という形でご一緒させていただいています。
Fuki 曲はどちらもMaoくんが書いています。編曲の方向性はRYUさんにお任せして、仕上がってきたものに私が歌詞を書きました。
――どのようなテーマでしょうか?
Fuki この2曲は世界観を共有しています。私は「人間と吸血鬼」みたいに寿命が違う種族の関係性を歌詞のテーマにすることが多いのですが、「君の居ない世界」と「Habitable Planet」は両方とも人間とロボットの話になっています。「君のいない世界」では、人類は壊れてしまった地球を捨て宇宙船に乗ってほかの星を探しに行き、残されたロボット的な存在は地球で最後まで戦うという世界観です。「Habitable Planet」はその何百年後も未だに宇宙船で居住可能な星を探して宇宙をさまよい続けているというお話です。私が歌っているのは主人公の「僕」で、ことりさんには、その先の星で待っている誰かを歌ってほしいとお願いしました。先ほどNightwish好きだとおっしゃっていましたが、ことりさんはコーラスコーラスした声やファルセットがめっちゃお上手なんです。「Habitable Planet」の英語コーラスの部分は、私には絶対出せない柔らかい雰囲気をことりさんが入れてくれたのでうれしかったです。
小岩井 ここは「浮遊感」という指示がありましたね。しっかりしたディレクションをいただいたので、できるだけ沿えるように頑張りました。自分はまだまだ歌手ではなく、声優だと思うので、その声優だからこそ出来る演じ分けというか、いろんな種類の声でできたらと思ってやってみました。
Fuki ことりさんは、きっとできるだろうと思ったので、具体的な指示をバンバン入れました(笑)。それこそ、当時のラジオではすごくかわいい声のキャラ(『じょしらく』波浪浮亭木胡桃)を演じられていたんです。ラジオの場でも聞かせてもらいましたし、キャラクターソングも歌われていたので、とても器用な方だという印象がありました。
小岩井 本当に細くいただけたんですごいやりやすかったです。
Fuki 「お任せ」とされるのとどっちが良かったですか?
小岩井 これは私の課題なんですけど、やっぱりまだ「アーティスト」ではないんですよ。声優という職業は技術職で、職人仕事に近いんです。だから「こういう形にしてください」と言われてやるのが仕事。自分から「これをこういう彩りに」と、一本の自分というアーティストの方針でやっていくのにはまだ慣れてないので、指示をいただけた方がやりやすいです。
Fuki よかった。シンガーに頼んでいたら「指図すんな!」と言われたかもしれません(笑)。
小岩井井 でもそれがアーティストなんですよね。
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