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2019.05.24

「旅」をコンセプトにした渕上 舞2ndライブ“Journey & My music”レポート

「旅」をコンセプトにした渕上 舞2ndライブ“Journey & My music”レポート

声優アーティストとして活躍する渕上 舞のワンマンライブ“2nd LIVE “Journey & My music””が、4月28日(日)に東京・中野サンプラザで開催された。2018年1月に待望のアーティストデビューを果たし、これまでにアルバム1枚、シングル2枚、ミニアルバム1枚を発表してきた彼女。セカンドライブとなる今回の公演では、最新作『Journey & My music』における「旅」というコンセプトを演出にも組み込み、キャラソンのセルフカバーも含め彼女のこれまでのキャリアと人生を辿るような内容になった。

会場では開演前からアンビエント風のSEが流され、どこか厳かで静謐な雰囲気がこれから始まるライブへの期待を徐々に高めていく。やがて照明が落ちて、ミニアルバム『Journey & My music』の1曲目に置かれていたメルヘンチックなナンバー「My music」をオープニングSEに、ステージを覆っていた幕が上昇。渕上の清らかなコーラスが場内を満たすなか、宮殿のように華麗な舞台とバンドメンバーが姿を現し、さらにステージの左右からスワンの恰好をした二人の少女が登場し、バレエダンスを披露。開始数分で一気にファンタジックな世界に引き込む。

そのホーリー感漂うムードから一変、ハードなダンスビートが流れ出したかと思うと、本日の主役である渕上が「にゃ~ん」と艶めかしい鳴き声とともに登場。『Journey & My music』のリードトラック「BLACK CAT」でライブをスタートさせる。渕上の衣装は黒をベースに紫の差し色を加えたセクシーなドレスで、もちろんネコ耳も着用。キャットウーマン風の女性ダンサー2名を従えて、早口ラップと甘さだけではないスパイスをまぶした歌声、猫のようにしなやかな動きで、現代を強く生きる女性像を描き出す。間奏ではステージ中央に置かれたイスに座り、片手で扇子を扇ぎながら優雅に会場を見渡したりと、様々な仕草で観客を手玉に取る。

そこから間髪入れず人気のダンスナンバー「フラミンゴディスコ」に繋げ、彼女の「みんなで一緒にダンスターイム!」との言葉を合図に会場はダンスフロアに早変わり。ハイエナジー風のアレンジで原曲よりもさらにディスコティックな雰囲気を増した楽曲もさることながら、ミラーボールが瞬かせる七色の光と、お立ち台に乗ってジュリ扇っぽい扇子を振るダンサーたちを見ていると、身体が自然と動いてしまう。続くR&B調の「アイTACTICS」では歌い出しから情感豊かなボーカルを披露し、改めて歌唱力と表現力の高さを見せつける。

立ち上がりは都会的なナンバーの3連発でキメた渕上は、ここでネコ耳を外してこの日最初のMCに。意外にも中野サンプラザのステージに立つのは初だという彼女。見慣れない景色なので緊張もあると明かしつつも、『Journey & My music』の「旅」というコンセプトに倣って「ここからいろんな場所に旅に出ましょう!」と元気いっぱいに宣言する。そして「次はどんな景色が見えてくるんでしょうかね?」という言葉に続いて、スクリーンには白い鳥が寒そうな空を飛んでいく様子が映され、神秘的なエレクトロニカチューン「雪に咲く花。蜃気楼。」へ。渕上の美麗なハーモニーとアコギの繊細な音も相まって、ステージには厳しくも美しい冬国の光景が浮かび上がる。

切なさが募るバラード「ラララ~君へ贈る歌~」では格子模様の影の入ったライトが渕上を照らし、曲の展開に合わせて夕焼けみたいなオレンジ色、夜のように深い青と色味が変化していくことで、時間の経過および曲の主人公の心情の移り変わりをドラマティックに表現。その次の「部屋の窓から見る花火」ではステージの前面に透過スクリーンが張られ、映像演出を組み合わせることで、情緒たっぷりな夏景色を描写。曲のラストでは花火の映像が映されて、まるで曲の世界観に入り込んでしまったような気分に陥ってしまう。

ここで改めて『Journey & My music』のコンセプトについて説明する渕上。その内容とは、渡り鳥が様々な国や街を旅するなかで出会った景色を音楽で描いたものだったが、それは渕上自身の声優としての活動にも重なるのだと言う。声優としていろんな作品に関わり、作品ごとに様々なキャラクターを演じ、ときにはキャラソンを歌い、キャラクターとしてステージに立ってきたが、そのキャラクターと一緒にいる時間は永遠ではなく、短い場合は3か月(1クール)で終わってしまう――そうした部分が『Journey & My music』で描いたテーマともリンクし、彼女は本作を制作中に自分もある意味で渡り鳥だということに気づいたそうだ。

そんな渡り鳥の彼女が次に向かった場所は「もっとあったかいところ」ということで、続いてはハートウォーミングなフォークロック「ファインダー」を披露。スクリーンに大写しされる渕上の映像には、まるでファインダー越しで見ているような仕掛けが施され、曲の最後にはシャッター音と同時に彼女の笑顔が写真に収まる風の演出も。お次の華やかなポップチューン「Cute Appeal」ではキュートに振り切った歌と振りで魅了。さらに客席もクラップで盛り上がった「Beautiful Sunday」では投げキッスをサービスし、ハウシーなビートとエモーショナルな歌声が高揚感を誘う「Migratory」で最高の山場を作り出して渕上は一旦退場。そのままバンドメンバーによるセッションに雪崩れ込む。

谷島シュン(AstroNoteS)がステージ前のステップに上がって情熱的なギターソロを披露してセッションの幕が閉じると、今度は裾の長い真っ赤なドレスに着替えた渕上が「オーレー!」と登場して、フラメンコ風の熱いナンバー「バレンシアガール」に突入。再びダンサーを従えつつ、長い裾をヒラヒラとはためかせながら力強くも華のある歌声を会場いっぱいに響かせる。途中で「オーレー!」の声出し合戦を客席と楽しんで一体感を高めた後は、キャラソンカバーのコーナーへ。この日彼女がセレクトした楽曲は、TVアニメ『暗殺教室』の第2クールOPテーマ「自力本願レボリューション」。渕上が潮田 渚役として参加した3年E組うた担(渚&茅野&業&磯貝&前原)によるパンキッシュなロックチューンだ。ここでダンサーが渕上のドレスの裾を持ってクルッと回ると布が取れて、衣装の形が変化。体操服&ジャージに着替えたダンサーとともに、エネルギッシュな演奏に合わせてみんなで一緒に「起立。礼。ロックオン!」と歌って盛り上がる。

続くMCで、『暗殺教室』はメインキャラクターで男の子役を演じた初めてのアニメということで、「自分にとって、とても大切な作品」だと語った彼女。「みんな、まだまだいけるよね?」と客席を煽ると、今度は『ガールズ&パンツァー』の主人公・西住みほ役として歌ったキャラソン「I Found My Way」を歌唱。エッジの立ちまくったゴリゴリのロックサウンドをバックにパワフルかつ抜けの良いボーカルを聴かせ、オーディエンスもコールを入れながら熱狂する。そしてその熱気を引き継ぐように自身のシングル曲「リベラシオン」を畳みかけ、客席のボルテージをさらに引き上げると、今度は彼女のアーティストデビュー曲でもある「Fly High Myway!」へ。最初の“wow wow wow…”のフレーズでたっぷりとコール&レスポンスすると、ギターとベースの竿隊もステージ前に出てきて客席の興奮は最高潮へ。渕上のサビで一気に伸びるクリアボイスは、まるで遥か上空へと飛翔する鳥のよう。音と歓声に突き動かされるように、ステップを踏みながら優雅に舞う彼女の表情は実に晴れやかだ。ラストの力強いロングトーンに至るまで、澄み渡った青空のような景色を見せてくれる名演だった。

そして早くもライブは本編最後の楽曲「Journey」に。『Journey & My music』でも最後に収められていた、まさに「旅」をテーマに作られたこの楽曲。彼女の声優やアーティストとしての活動の歴史が歌詞に織り込まれており、いわば人生を旅に見立てた、彼女自身の「これまで」と「これから」を描いたものになっている。彼女はMCで「大人になると嫌なこともたくさんありますが……(笑)」と会場の笑いと共感を誘いつつ、「私も頑張ります。そして、飽きた、もういいや、と思ったら辞めます(笑)」と発言。人を楽しませるためにはまず自分が楽しくなくてはならない、という彼女らしいスタンスが表現された言葉だ。とはいえ今ステージに立ってる理由について「やっぱり歌でみんなが笑顔になってくれる瞬間が大好きなんだろうなと思います」と語った彼女は、「まだ辞める気はないので」と念押ししたうえで、そういった人生観を詰め込んだ「Journey」を歌唱。心のおもむくままに大空を舞い、“新しい空 知りたい”と人生の旅を続ける彼女の自由な魂が、後半で劇的に展開する情感たっぷりなサウンドに乗せて届けられ、ライブを感動的に締め括った。

そしてアンコールは、渕上も熊代晴海役で出演したTVアニメ『プラネット・ウィズ』のEDテーマ「Rainbow Planet」で幕開け。ツアーTシャツに青色のロングスカート姿の彼女は、照明が激しく明滅するなか、凛々しい表情とキレのある動きで壮大な楽曲を歌い上げる。続いて「私の中ではあったかい感謝の気持ちを書いた曲なので、みなさんの心に届いたらうれしいな」と「Good morning!Hello?Good bye.」を語りかけるように優しく柔らかな歌声で披露。最後に「今日は本当に本当にありがとう。みんなのこと、だーい好き!」と感謝の気持ちを直接伝える。

その後のMCで彼女は「毎回ライブは楽しみだけど、会いに来てくれるか不安になるんです。でもこうして幕を開けると、みんなのあたたかい声と、私の大好きな青い光で照らしてくれて……もう、感動ですー」と今の素直な心情を吐露。客席もあたたかなムードに包まれる。そしてここで渕上からとっておきのお知らせが。まずは6月21日(金)に“ランティス祭り2019”に出演。続いてこの日のライブの模様が7月にMUSIC ON! TVで放送決定。そして8月30日(金)に“Animelo Summer Live 2019 -STORY-”に出演決定。過去に『暗殺教室』と『アイドルマスター シンデレラガールズ』でアニサマに出演経験のある彼女だが、ソロアーティストとしては初参加となる。さらに8月にはニューシングルのリリースも決定。3曲+この日のライブ音源を収録予定とのことで充実作になりそうだ。

そして「最後はやっぱりあの曲でしょ! みんなで歌って踊ろうぜー!」と歌われたのは、カーニバル気分全開のハッピーチューン「トロピカルガール」。サンバ風のリズムに乗せて会場中が「ランラランララ~♪」と楽しそうに大合唱する。後半ではバンドメンバーとダンサーの紹介が行われ、そこからさらにライブの最初に登場した子供のダンサーとツアーTシャツを着たスタッフもわらわらとステージに上がってみんなでダンシング! 一度演奏が終わったかと思いきや、渕上の「もう一回!」という合図でさらに盛大なカーニバルが巻き起こり、ラストは「せーの!」でジャンプして締め括られた。その後、渕上の提案で撮影タイムが設けられたりと(ただし「かわいく撮ってよ!」とのこと)、しっとり聴かせるパートはありつつも、最後まで彼女の「みんなと一緒に楽しみたい!」という気持ちが伝わってきた本公演。その旅がどこまでも続くことを、心から願ってやまない。

Text By 北野 創(リスアニ!)

渕上 舞“2nd LIVE “Journey & My music””
4月28日(日)東京・中野サンプラザ

<セットリスト>
1.BLACK CAT
2.フラミンゴディスコ
3.アイTACTICS
4.雪に咲く花。蜃気楼。
5.ラララ~君へ贈る歌~
6.部屋の窓から見る花火
7.ファインダー
8.Cute Appeal
9.Beautiful Sunday
10.Migratory
11.バレンシアガール
12.自力本願レボリューション
13.I Found My Way
14.リベラシオン
15.Fly High Myway!
16.Journey
En1.Rainbow Planet
En2.Good morning!Hello?Good bye.
En3.トロピカルガール

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