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INTERVIEW

2019.03.13

TVアニメ『ドメスティックな彼女』EDテーマ「わがまま」に込めた思いを聞く!瀧川ありさインタビュー

TVアニメ『ドメスティックな彼女』EDテーマ「わがまま」に込めた思いを聞く!瀧川ありさインタビュー

聴くだけで映像が思い浮かぶセンシティブな感性と風景を、ほんの少し陰りを帯びながらも透明感あふれるグロッシーな歌声で届けるシンガーソングライター・瀧川ありさ。デビュー4周年を迎え、3月6日にリリースされた彼女のニューシングル「わがまま」は、現在放映中のアニメ『ドメスティックな彼女』のEDテーマだ。恋愛中、誰もが共感する心の揺れ動きを歌い上げる「わがまま」と第8話のスペシャルエンディング曲としてオンエアされたばかりの「always」に、込めた想いを語ってくれた。

――「わがまま」がEDテーマとなった『ドメスティックな彼女』は、高校生・藤井夏生と教師である義理の姉・陽菜、なりゆきで夏生と初体験してしまった義妹・瑠衣との3人の複雑な心情が重なり合う恋模様を描いた物語ですね。1月からオンエアが始まり、まさに物語も佳境に入っています。作品にはどんな印象を持っていますか?

瀧川ありさ 作品自体の面白さは、巷の噂で以前から聞いていたんです。少年漫画誌の連載なんですけど、物語の主軸はとてもピュアな恋愛模様。人と人との関わりが深く描かれていて、私もすごく共感できました。なので、EDテーマを書き下ろすことになったときも、スッと曲が生まれたんです。原作が刺激的なので、そのイメージが強かった方にも、「わがまま」はピュアで真っ直ぐな曲にしたいと思いました。

――物語の主軸にいるのは夏生、陽菜、瑠衣。「好き」という気持ちを巡って気持ちが揺れ動きますが、誰にいちばん共感しますか?

瀧川 共感できる人物は、毎話変わるんですよね。だから「わがまま」も自分が書いた曲でありながら、エンディングで流れるたびに、曲の中の主人公が変わっていく感覚がして。でも作品全体からは、夏生の心の声がいちばんよく聴こえるので、そこに共感することが多いかな?

――陽菜、瑠衣の気持ちは、同じ女性としてどう感じます?

瀧川 自分の好きな人が、違う人を好きと気づくとか……陽菜、瑠衣の女子ふたりには、友達目線で助けてあげたい、救ってあげたい気持ちになっちゃいますね。前から好きだった年上のお姉様と、偶然にも身体の関係を持ってしまった妹との共同生活なんていう始まり方はドラマティックですけど、アニメで描かれている日常の風景はすごくリアルで、実写の恋愛ドラマを観ているような感覚で楽しめますよね。

――現代的で刺激的なシチュエーションはいくつも出てきますけど、人を好きになる気持ちのもどかしさ、つらさや悩みは、今も昔も変わらず。普遍的だなと思いますよね。

瀧川 そう、ほんとそうなんですよ。だから「わがまま」を、すんなり書けたというのもありますね。

――その「わがまま」はどんなふうに作っていきました?

瀧川 原作を読み、アニメの脚本をいただいてイメージしていったんですけど、頭のフレーズがふっと思い浮かんで、スルスルするっと書けました。脚本にはセリフだけが書かれているんですけど、それだけでもアニメの空気感やみんなの気持ちの間が感じられたんです。恋愛中の気持ちの探り合いというのかな? 思わせぶりな態度だったり、恋はお互いがどういう気持ちなのか分からないところが、楽しいし苦しい。そんな、現在進行形の恋する想いを書けたらいいなって。まだ答えが出ていない、思春期まっただ中の感じを。

――ふっと思い浮かんだ頭のフレーズというのが、“あぁ君にだけわがままになっていく”。

瀧川 まさに、恋をしているときの矛盾した気持ちですよね。恋に限らず、友人関係もそう。「~ちゃんが取られちゃった」みたいな、女の子同士の複雑な友情を私も経験しているし(苦笑)。この間も、友達と高校時代の話をしていて、修学旅行で一緒に回ろうと言ってた子が、当日になって違うグループに行っちゃって、その子ひとりが他の子たちの中に入れられて、軽く根に持ってるって話しを聞いたり(笑)。親しくなればなるほど、人間関係に人はわがままになりますよね。男女ならなおさらだと思う。

――この曲の中の主人公は、好きな人に対してどんどん「わがまま」になっていく自分を苦しく思う。だけど、その気持ちを止められなくて、自分らしさを失っていることにも悩んでしまう……分かりますよね、その気持ち。

瀧川 そう。だから、わがままな子は、羨ましいなって思うんです。それはイコール、自分がわがままを言えないから。わがままは悪いことだという認識があるから、わがままな感情が出たときに、抑えなきゃと思う。わがままが悪いと思う気持ちが、素直な気持ちを伝えられない足かせになってしまうんですよね。

――もどかしいですよね。「好き」なんだから、「好き」って言えばいいじゃん!と、大人になれば思えるんですけどね(苦笑)。歌詞の中にも“大人になれば こんなことで悩まずに 上手く生きられるかな”と言ってますし。

瀧川 そうなんですよね。でもそうできないのが恋愛の当事者だし、そこで悩むこと自体が青春。自分の気持ちに振り回されちゃう。「わがまま」という言葉自体も不思議なんですよ。

――というのは?

瀧川 英語では、「わがまま」という言葉に直訳がなくて。「身勝手」とか似たような単語はあるんですけど、日本人が思う「わがまま=良くないこと」という意味が含まれるニュアンスを、完全に表現する言葉はないみたいで。

――なるほど、海外では自己主張することが当たり前って言いますからね。

瀧川 そうそう。そこが日本人のメンタルとはまず違うんだなって。だから、この4文字が深いんです。もし『ドメスティックな彼女』を海外の人が観たときに、「君にだけわがままになる」というフレーズが英訳でどう伝わるのか?それも知りたい、面白い言葉だな思って、タイトルにも「わがまま」と付けたんです。日本語の繊細さを、あえて使ってみようと思って。

――余談ですけど、日本人がよく悩まさる「肩凝り」という言葉も、欧米人は首をかしげるって言いますしね。肩が凝るというニュアンスが、伝わらないらしいですね。言葉の持つ意味の違いって面白い。

瀧川 じつは私も、人に揉んでもらうと「肩凝りがひどい、こんなガチガチな人初めて」ってよく言われるんですけど、まったく自覚がないんですよ。生まれてこのかた「肩が凝ってるな」と思ったことがなくて! 次は「肩凝り」の曲を書こうかな、きっといい曲になりそう(笑)。

――ぜひ聴いてみたいですが……話を「わがまま」に戻します!(笑)。瀧川さんの作曲は、曲調の透明感も大きな魅力ですが、「わがまま」もメロディも静かなサウンドも、とても染みます。

瀧川 あえてスッとさせたんです。歌詞がいろいろな意味での“気持ちの途中”を描いているので、歌詞のニュアンスのままに曲を激しくしちゃうと、押しつけがましいなと思って。気持ちのまっただ中にいる人が私だったら、鬱陶しい曲には共感できない。わざと盛り上げると……“大人から見た思春期”になっちゃうなと。「恋愛のつらさって、こういうもんでしょ?」みたいな。

――ああ! たしかに。

瀧川 音楽的にはフックを入れつつも、全体的にはきちんと美しい曲でありたいなと。歌が映えるサウンドは、あえて目指しましたね。

――だからこそ、ボーカルの説得力はますます増していますよね。

瀧川 ありがとうございます! それはきっと、去年、歌とギター1本で弾き語る全国ツアーを経験して、自分の歌い方のニュアンスというのが、掴めたからかもしれないです。

――と同時に、「リスアニ!」本誌で瀧川さんに1stアルバム『at film.』でインタビューした際、映像が思い浮かぶ歌詞にこだわっているとおっしゃっていましたが、「わがまま」の歌詞の映像的な表現にも、思わずハッとさせられます。例えば、“ほどけてしまった靴紐で歩くみたいに 危なっかしくてそれでももう立ち止まれない”。恋愛中の想いって、まさにそうですよね。

瀧川 これは、私がいつも靴紐がほどけながら歩いているから、出てきた言葉ですね(笑)。

――物理的に?

瀧川 はい、物理的に(笑)。ほどけてる靴紐って、他人のほうが気にするんですよね。そのままだと、転んじゃうよって。でも、私は「まだ行けるでしょ!」と思って、次の信号まで歩いちゃう(笑)。それって、人生と一緒だなって思うんです。靴紐はしっかり結んで歩くのが、危なくないルールだって。でも恋愛に限らず、当事者には自分だけのやり方があるじゃないですか。

――歌詞では「もう立ち止まれない」と言ってますけど、当事者の心の内には「立ち止まらないぞ」という想い、危ないと分かっていても「立ち止まりたくないんだ」という想いもあるのかな?

瀧川 そうそう、そうです。恋でも何でも、“途中”にいる人は、いつも矛盾した気持ちを抱えて、振り回されている。「わがまま」は、そういうことも歌いたかったです。

――そしてカップリングの「always」は、『ドメスティックな彼女』第8話のスペシャルエンディング曲として先日放送されたばかり。視聴者の皆さんの記憶にも新しいナンバーです。

瀧川 はい。「わがまま」を気に入ってくださったアニメの制作スタッフさんから、紆余曲折あった夏生の恋模様にひとつ幸せが訪れる第8話のエンディングをぜひ、と言っていただけて書き下ろしたんです。「わがまま」は、まだ関係性がはっきりしていない頃の曲なんですが、「always」は確信のある曲にしたかった。より作品の中に踏み込んだ、私が今まで書いてこなかったテンポのスローバラードになりました。こちらも、口ずさんでいるうちにサビのメロディがぼんやり浮かんで、“I’m Always here for you”というフレーズが最初に湧いてきた。そこから引っ張られるように、自然と歌詞がのっかっていきました。

――「わがまま」を乗り越えた先に見えた、幸せを歌っているように思えますね。

瀧川 そうですね。第8話の脚本を読んだとき、夏祭りの帰り道、夏生と陽菜が一緒に歩くシーンがとても印象深くて。ふたりで歩く夜道と私たちの人生を掛け合わせたとき、そこに光が見えるイメージで。

――誰かと出会い、大切に思い合うことで見えた希望を、愛していこうと。「わがまま」もそうですが、恋愛に限定せずとも、人が生きるうえで大切にしたいフレーズがたくさん散りばめられています。“鏡の自分目を合わせないような 無理しなくていいから”という歌詞にもドキッとしました。

瀧川 私も、鏡の中の自分には、なかなか目を合わせられないんですよ。自分に向き合うって、一番辛いことだから。人前で自分の気持ちを偽れば偽るほど、自分についた嘘がつらくなる。自分に嘘はつかなくてもいいし、大切な人がそうなったときに助けてあげられる関係が、いちばん幸せだと思うんです。人と関わらないと、自分が何を考えているかには気づけない。でも大切な人といると、お互いが自分というものを気づかされる。そこに発生する光を大切にしたいな、という気持ちを込めました。

――まさに「わがまま」で自分に向き合い、つらい想いをした人が、それを乗り越えて掴んだ希望が「always」にはありますね。アニメの物語に寄り添って聴いていただいても、自分の生き方になぞらえて聴いてもらっても心を打つ2曲になりましたね。

瀧川 私にとっても、曲の書き方としていちばん、人の心情にフォーカスを当てられた2曲だと感じます。曲で風景を描きたいという想いはそのままに、シンガーソングライターとしての幅を広げることができました。デビュー当時は、メジャーデビューなんだから、楽曲もメジャーらしくしなきゃと頑張って作っていたんです。でも今は、無意識に作ると滲み出ていたアングラな感じがなくなって……“思春期の歪んだ闇”から抜けた感じ(笑)。曲の作り方も、ひとりよがりではなく、聴いてくださる方の気持ちに自然に寄り添えるように変わってきた気がします。

――新しい瀧川ありさの誕生を感じるシングルになりましたね。「わがまま」のMVで、ドラム演奏を披露されたのも、あらたな挑戦じゃないですか? デビュー当時の「リスアニ!」本誌のインタビューで、中学生時代にガールズバンドでドラムを叩いていたというお話は伺っていましたけど。

瀧川 そうなんですよ。まだ自分のライブでも叩いたことがないので、演奏姿を見せるのはこれが初めてなんです。

――なにか心境の変化が?

瀧川 ある日突然、叩きたくなったんです。今までも、プライベートでスタジオに入ってドラムを叩くこともあったんですけど……別に人前で叩いてみてもいいよね、と(笑)。「わがまま」の静かな情熱を表現するのに、ドラムを叩くという表現をしてみたかった。今後は、今まで披露してこなかった楽器を、ライブなどでもお披露目できたらいいなと思います。

――5月6日(月・祝)には代官山LOOPにて、今年初の「瀧川ありさワンマンライブ2019“Altair”」の開催も決定してます。もしかしたら、そこでドラムプレイが聴けるかも?

瀧川 あはは、あるかも!(笑)。まだ内容は決め込んでいないんですけど、開催日もゴールデンウィークだし、一夜限りのワンマン。今回もバンドスタイルでお届けするので、楽しい演出を考えて、幸福でスペシャルなライブにしたいです。ぜひ遊びに来てください!

Interview & Text By 阿部美香


●リリース情報
TVアニメ『ドメスティックな彼女』EDテーマ
3月6日発売

【期間生産限定アニメ盤(CD+DVD)】

価格:¥1,500(税込)

<CD>
M1.わがまま
M2.always
M3.わがまま –アニメサイズver.-

<DVD>
・「わがまま」Music Video
・テレビアニメ「ドメスティックな彼女」ノンクレジットED映像

【通常盤(CDのみ)】

価格:¥1,200(税込)

<CD>
M1.わがまま
M2.always
M3.わがまま –Instrumental-
M4.always –Instrumental-

●ライブ情報
3rdワンマンライブ
5月6日(月・祝) 東京都・代官山LOOP
OPEN16:30/START17:00
前売¥3,800

オフィシャルWEB先行 3月11日(月)12時~3月17日(日)23時59分
オフィシャルLINE先行 3月18日(月)12時~3月24日(日)23時59分
ローソン、ぴあ、Get Ticket先行 3月25日(月)12時~
一般発売日 4月6日(土)10時~

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