REPORT
2019.03.09
2月23日、Zepp DiverCity(Tokyo)にてアイドルグループ・妄想キャリブレーションが“『妄想キャリブレーション LAST TOUR 2018/19 ~HOME~”のファイナル公演を開催。この日をもってグループ活動を終了することを発表していた彼女たちのLAST LIVEは、これまで彼女たちを応援してくれた妄想族(※妄キャリファンの総称)にこれまでの集大成を見せる、最強のライブだった。
この日のステージセットは、中央奥にグループロゴが据えられたのみ。その点から、最後のライブは磨き上げたパフォーマンス一本勝負!という意図が伺える。そしてOPSEが流れるなか、胡桃沢まひる・桜野羽咲・星野にぁ・雨宮伊織・水城夢子の5人が入場。それぞれがキレまくりのソロダンスで場内のボルテージを高めると、アグレッシブな彼女たちの初アニタイ曲「激ヤバ∞ボッカーン!!」からライブスタート。フロアを煽りながらのパワフルなダンスとともに、ラウドめのボーカルでも強い女性像を表現していく。しかもただ力強いだけではなく、サビ中の脚を開いたりといった細かい部分をピタリ揃えたりと隙もない。
こうしてファンに熱を与えてからの「いつだって世界にファイティングポーズ」では1-Aメロでの桜野の伸びの良いボーカルや、1-Bでの星野のパワフルなダンスが光る。また、1サビでは全員が振付を活用して前に出ながら笑顔で手を振れば、2コーラス目の冒頭では胡桃沢がフロアを煽ってさらにうまく乗せていく。
続く「旅は君連れ世は情け」では、頭サビをきっかけに全員がステージ上を縦横無尽に駆け巡る。その部分に代表されるようにアグレッシブなパフォーマンスの目立つこの曲だが、1-Bメロの胡桃沢・雨宮の非常にかわいらしいツインボーカルや、サビの振付などキュート寄りな部分も多く存在。かと思えば2サビ明けには胡桃沢のハイキックがきれいに決まったり、落ちサビは水城から桜野へ続くソロにエモーショナルさが感じられたりと見せ場が次々登場するのも魅力的だ。
最初のMCは、いつも通りの、かつ最後の「乙女の妄想∞無限大、妄想キャリブレーションです!」の名乗りからスタート。胡桃沢が「妄想キャリブレーションの今までを詰め込んだ、そしてメンバーの“これから”を示せるようなライブをします!」と誓うと、水城が“DJドリチャイ”としてのDJ経験を生かして「今日のためにライブ音源をMIXしてきました!」と予告。「ドリチャイMIX、スタート!」のコールに続き、メジャーデビュー曲「ちちんぷいぷい♪」からライブが再開される。Aメロはおしとやかめに、Bメロはバキバキにダンスとメリハリのついたパフォーマンスを繰り広げる5人。サビ中にひとりアイドルジャンプを決める桜野の打点の高さが目を奪う一方で、そのサビでは水城と星野が拳を大きく上げ、コールの上がるフロアを煽り続けていた。
そのまま続いた「Bang Bang No.1」では、スローな部分は滑らかに見せていく点がポイントで、サビでは水城が華麗にスピンを決める。そして2サビの「Bang Bang Bang!」の部分で雨宮がフロアにマイクを向け、さらに場内のボルテージを高めると、「only my railgun」から二連続でカバー曲を披露。こちらは桜野の力強さと切なさとを併せ持ったボーカルが、とりわけ楽曲とよくマッチ。メロ部では、スピード感はありつつも“強い”というよりも“美しい”との表現がピッタリなダンスで魅せてくれた。
また、続く「irony」も五者五様の切ないボーカルで歌われていき、なかでも2-Aメロの水城のソロが非常に伸びやかで魅力的だった点が印象的。終盤ではソロを次々リレーすると、星野の「あゆれでぃ?」のキュートなコールからそのまま「アンバランスアンブレラ」へ。胡桃沢の煽りで、頭サビ明けの会場が一体になる。Aメロの雨宮は、ダンスはキメつつも歌声にはサウンドにマッチするかわいさが強く、直後の桜野の力強いソロとのコントラストも際立ち、セリフ部ではそれぞれに大歓声が起こっていた。
歌唱後には、各メンバーの出身地である東京・宮崎・富山を“凱旋公演”としてめぐってきたLAST TOURの振り返り。星野の出身地・宮崎でのアンコールにて、彼女の好きなひまわりがフロアを埋め尽くしたエピソードなどが飛び出した。
さて、このMC明けも“DJドリチャイ”のMIXによるメドレーからスタート。その1曲目、胡桃沢が「はじまりの曲です」と紹介して始まった「夢のカケラ、愛のカタチ」は、インディーズ時代に誕生したものの音源化されなかった妄キャリ最初の曲。それを結成時からのメンバーである彼女が曲フリするというのも、非常に熱い流れではなかっただろうか。続く「たとえもう一人の私をみても…」では、Bメロ最後に鏡を叩くような星野・雨宮・水城の芝居風のパフォーマンスも、エモーショナルな歌声と結びついた非常に効果的なものに。また、少しミステリアスなメロディの歌い出しから始まる「何故なら私、妄想少女ですの」は、サビでのダンスはキュート寄りなもので、ステップの沈み込みは5人とも実に柔らか。そこから大きなコールを浴びたら、超キュートな電波曲チックな「もっとずっとキュンとしたいの」を続ける。
さらにもう1曲「魔法のジュース」も変わらずハイスピードなナンバーだったが、2-Bメロでの水城と雨宮の猫の手のような振付も実にキュートで、星野の歌声もこの曲ではかわいいベクトルのものに。そこにこのブロック全体の落ちサビ的な位置に差し込まれたのが、「はじまりがはじまる」の落ちサビ。水城がソロを執ったこのパートは、彼女の歌声に加えて表情表現の巧みさも改めて感じさせてくれる。それに続いた「妄想が止まらない」での胡桃沢は、パフォーマンス・歌の両方から底なしの元気感を発揮。どの曲でも大きいステップは、この曲においてもよく映えていた。
ここでライブ前半戦が終了。胡桃沢がナレーションを務めた映像“HISTORY OF 妄想キャリブレーション 2013-2019”が上映され、約6年間の歩みをステージ映像やオフショットなどを交えて振り返っていく。そこでの胡桃沢の「たくさんの夢がかなうきっかけとなった、宝物の1曲です」とのナレーションを導入に、その「桜色ダイアリー」から後半戦スタート。ステージに再び現れた5人の衣装は、雨宮が手がけたものへと替わっていた。ミドルナンバーの中に細かいステップも織り交ぜてかわいらしく魅せたりと、ここまでとはまたひとつ違う表情を見せつつ、大切にこの1曲を届けていく5人。聴かせどころで効いてくる胡桃沢の歌声を筆頭に、Dメロでは5人それぞれのボーカルがよく映えるし、しなやかながらもジャンプの一つひとつが深く大きい、星野のパフォーマンスも目を引いた。
さらに続けたのは、そのカップリング曲「青春プロローグ」。タイトル通り青春感のある爽やかなかわいらしさを表現していく5人は、サビの前半では半円状になり向き合って目を合わせながら歌唱。大サビ前では雨宮が、「…気づいてる?」のフレーズをこの日はセリフのように届けた。
その爽やかさを引き継いだ「物語はまだ始まったばかり」は、ソロを歌うメンバーが次のメンバーへタッチしてソロをリレーしたりして魅せながら、前後列の入れ替えがあったりと目まぐるしいフォーメーションチェンジを織り交ぜながらの披露。落ちサビで「まっすぐに進むしかない!」と歌う胡桃沢は笑顔で、それでいて歌詞通りまっすぐ前を見据えて歌声を響かせていた。
そして5人だけで歌詞を紡ぎ、雨宮も作曲に携わった「五線譜」へ。このときの心の中を見せるかのように生々しく、少々クラブサウンド寄りのサウンドに乗せて歌っていく5人。ビートに合わせたダンスはありつつも、この曲は歌声で言葉に込めた想いを伝えることに重点が置かれていたような印象。Dメロでの雨宮のソロは、か細くて胸に刺さる、いとおしさも兼ね備えた歌声だった。
こうしてVTR明けの4曲を歌いきった4人。改めて桜野から「届けたい想いを盛り込んだライブ」であることが語られると、その桜野から今の想いが順番に告げられていく。
「最初は自信がなかったり、『自分は違うな』と思ってたんですけど、今では本当に、妄キャリに入ったことを誇りに思っています。それは私を応援してくださってる、出会ってくださった皆さんのおかげです。これからも歌の道を続けていきますが、今日はアイドルとしての誇りを持って、このステージに立ちたいと思います」と語ると、続く胡桃沢は「家族以上に一緒に過ごすなかで、いろんなことで丸裸になって心の内から付き合えるメンバーがいてくれて……本当に妄キャリになれてよかったなと思います」と語り、直前の映像についても触れ「妄キャリに入って声優という道を見つけられたから、こうやってナレーションで私なりの“道”を示しました。みんなとメンバーに見つけてもらった大切な道です」と涙をこらえながら自らの夢にも触れ、結ぶ。
また、水城は「妄キャリに必ず終わりの日がくるなら、今日でよかったなってすごく思いました。こんなに愛されて惜しまれてやめられるのって、すごく幸せ」と切り出すと、「こんなに大好きで大切な場所を手放すからには、5人もここにいるみんなも幸せにならなきゃいけない。妄キャリを通して見つけたいろんなやりたいことを通じて、できるだけ早くまたみんなに会えるように頑張ります」と今後への意欲を示してくれた。
そして、この日をもって芸能界も引退するふたりからの言葉へ。まず雨宮は「みんなの前に立つなかで、自分の中にたまらなく好きなものとか離したくないなって思うメンバーとか、生きてきて初めて大事にしたいものができました。だから私は“雨宮伊織”になれたこと自体がものすごく幸せで、所属していたグループが妄想キャリブレーションということが誇りです」と率直に語ると、「みんなが悲しんでくれる顔を見るのが辛くて。でも私はみんなに会えなくても、みんなの幸せを想像して頑張るので……」と続け、「これからも皆さん、健康で過ごして幸せになってください。約束です」と独特な切り口で締めくくると、星野は「昔は人と向き合うことが嫌いだったけど、今はメンバーにもファンのみんなにも一人ひとり向き合えるようになって。私自身が“星野にぁ”のことを好きになれたし、今日は私の理想のアイドルになれました。それはみんなとメンバーのおかげだなって心から思います」と涙をこらえながら感謝を述べ、「誰がなんと言おうと、妄キャリが最高のグループだし、今日だけは私が世界でいちばんのアイドルだと思います」と結んだ。
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