TVアニメ『マクロスΔ』内の戦術音楽ユニット、ワルキューレのメンバー・美雲ΔJUNNAとして衝撃的なデビューを飾り、ソロ・アーティストとしても活動を続けるシンガー、JUNNA。彼女の3rdライブツアー“JUNNA ROCK YOU TOUR 2018-2019 ~18才の叫び~”が開催された。今回のツアーは、昨年リリースした1stフルアルバム『17才が美しいなんて、誰が言った。』を引っ提げてのツアーとなる。ここでは1月6日に新木場スタジオコーストで行なわれた東京公演2日目のレポートをお届けしたい。
会場に到着すると、新木場スタジオコーストのフロア両端には「出来るだけみんなの近くで歌いたい」という彼女の思いを反映させた左右へと伸びる花道が用意され、アルバムのジャケットを思わせる赤いオペラ幕がステージを覆っている。そこに大音量の四つ打ちが鳴りはじめ、赤い照明が点滅してコーラスも加えた6人組のバンド編成でJUNNAが登場。「やってられないよ」でライブをはじめ、「オーオーオー」というサビのコーラスを早くも観客が合唱する。その後もミニアルバムのタイトル曲「Vai! Ya! Vai!」、「楽しんでいきましょう!」と伝えてはじまった「情熱モラトリアム」、「もうヤダ!」など、序盤は初期からの彼女のトレードマークとも言える熱量全開のロック曲中心のセット。力強い歌声を生かしたロック・シンガーとしての魅力を全開にして、観客を一気にライブに引き込んでいく。
とはいえ、1stフルアルバム『17才が美しいなんて、誰が言った。』にも様々なタイプの楽曲が収録されていたように、現在の彼女の音楽性はより幅広いものへと変化している。それを伝えるかのように、「狂ったカンヴァス」では民族音楽的な要素を加えたロック・サウンドを力強い声で歌いあげると、「赤い果実」ではリズミカルなベースやカッティング・ギター、華やかなホーンが躍動するディスコソウルへ。左右に伸びた花道を使って観客の近くに向かい、さらにフロアを盛り上げる。「JINXXX」ではアフロビート風のパーカッションが印象的なクロいグルーヴのファンクに変わり、間奏ではコーラスを担当するバンドメンバーとともにダンスを披露。多種多様なグルーヴを乗りこなしていく雰囲気は、気づけば鉄壁のバンドを従えたソウル/ファンク・シンガーのようだ。
以降は、歌い出しの歌詞も印象的なギター・ロック「大人は判ってくれない」を経て、タイトルとは裏腹に、普段は明かさない“本当のこと”が表現された等身大の歌詞を持つ「本当のことは言わない」へ。そのアウトロでJUNNAが一旦ステージを去ると、続く「ソラノスミカInst~18才の叫びversion~」ではバンドによるインストゥルメンタルな演奏によってしっとりとした雰囲気が広がった。
こうした全体の構成からも伝わる通り、今回のツアーは彼女の歌声の様々な表情や、豊かな表現力が伝わるものになっている。初期は力強くパワフルなボーカルを生かしたロック曲を中心としていた音楽性が、作品ごとに多彩になったのと呼応するように、初期からのクールで力強いボーカルはもちろんのこと、今ならではの優し気な歌声、感傷的な歌声……と、楽曲が変わるごとに声の表情もカラフルに変化していく姿が印象的だった。そういった意味で最も印象的だったのは、中盤の「Be Your Idol」。ここではフルアルバムの中でも唯一キュートな雰囲気が印象的だった楽曲に合わせて、ガーリーなドレスに衣装チェンジしたJUNNAがハットやステッキ持って歌い踊る、往年のミュージカル・スターのようなパフォーマンスを披露。バンド・メンバーと一列に並んでお揃いのステップを踏んだダンス・パートや、一度演奏が鳴りやんだあと、JUNNAがステッキを振るとカラフルな演奏や照明がふたたび広がっていく演出は、彼女のライブにまたひとつあらたな魅力を加えるようだった。
そんなパフォーマンスに「意外でしょ?」と少しはにかみつつも、「可愛い曲はこの1曲だけとして、後半戦盛り上がっていきましょう!!」と伝えると、以降は怒涛の展開へ。真っ赤な照明を受けながらギター・サウンドと力強い歌声を全開にした「Stppin’Out ~extended version~」ではステージの両端までを広く使ったり、ステージ中央のお立ち台に足をかけたりしながら観客をひたすら煽り、巨大な熱気が会場を覆う。続くワルキューレの楽曲「いけないボーダーライン」では、イントロが鳴った瞬間に観客のペンライトが美雲ΔJUNNAカラーに! とはいえ、どこかミステリアスな雰囲気を持った美雲としての歌唱に徹している雰囲気のワルキューレでのライブとは異なり、観客を積極的に煽るエネルギッシュな姿は、まさに“ソロ・シンガー・JUNNA”としての「いけないボーダーライン」だ。
本編終盤は観客とタオルを回してコール&レスポンスを決めた「Catch Me」を経て、間髪入れずに「紅く、絶望の花。」へ。また、自身でギターを手に取り、「ラスト、盛り上がっていくぞ!」と告げてはじまった「世界を蹴飛ばせ!」ではバルーンやキャノン砲から噴出した銀テープが宙を舞った。「次の曲は、私にとってすごく大切な曲です」。そう言って本編最後に披露したのは、ソロでの1stシングルをフルアルバム用にアレンジを変えた「Here ~album version~」。スパニッシュ~ラテン風の曲を、これまでの活動に思いを馳せるように歌った。
鳴りやまない歓声を受けて登場したアンコールでは、ワルキューレのマキナΔ西田望見のメイン曲「おにゃの子☆girl」を初めてカバーし、楽曲の肝となる中盤のコール「からの!」を観客とともに合唱。演奏後には「絶対私のキャラじゃないと思っていたけど、みんなに驚いてほしくて歌わせてもらいました」と語っていたが、その歌声は「Be Your Idol」以上にキュートな雰囲気で、ここにもソロ・アーティストとしての表現の広がりが感じられる。
とはいえ、この日最も驚かされたのは、「初披露の曲です」というMCを挟んで披露されたTVアニメ『賭ケグルイ××』のOPテーマ「コノユビトマレ」。ライブに先立ってMVで1番のみ公開されていたこの曲は、2番以降さらに複雑な展開が盛り込まれ、突如ピアノだけの静謐なパートが挿入されるなど、プログレやジャズ/フュージョン風の予測不可能な楽曲構成とエッジの効いたロック・サウンド、そして感情をえぐるようなボーカルが一緒くたになって耳を襲うスリリングな楽曲。1曲の中に激情が表現された感情のピークと、聴き手にゾクゾクするようなスリルを感じさせる囁くような歌声との両方が詰め込まれた、彼女の中でもとりわけテクニカルな楽曲だ。けれども、その曲をただ歌いこなすのではなく、徐々に声の表情を変化させ、終盤に向けて感情のうねりを生み出す様子は圧巻だった。
最後は公演を振り返りながら、「今回はセットリストを決めるところから参加させてもらって、みんなに楽しんでもらえるようにいろんなことを考えました。(中略)私の歌を聴きたいと思ってくれて、聴きにきてくれて、ありがとうございます。みんなの近くで歌を届けられるのがいちばんの幸せです。これからも、みんなとこんな時間をたくさんたくさん共有していきたいと思っているので、ついてきてくれますか?」と感謝を伝えると、「みんなとまた会える日を楽しみにして、次に繋がる曲を歌おうと思います!」と言ってギターを手に取り、フルアルバムのラスト曲「CONTRAST」を披露。様々な人々との出会いを経て広がったソロ・シンガーとしてのキャリアを、さらに未来へと繋いでいくような雰囲気でステージを終えた。
自身最長となる全20曲を披露したセットの中で、幅広い音楽性を横断しながら、ロックなボーカルからソウル・シンガーのような歌声、キュートな歌声まで様々な表情/歌で魅せたこの日のライブは、ソロ・デビューから1年半を経て、ますます豊かな表現力を増した今の“シンガー・JUNNA”の魅力を改めて教えてくれるようだった。2019年はどんな活躍を見せてくれるのか、彼女のこれからにもますます注目したい。
Text By 杉山 仁
“JUNNA ROCK YOU TOUR 2018-2019 ~18才の叫び~”東京公演2日目
2019.01.06@新木場STUDIO COAST
【SET LIST】
M1.やってられないよ
M2.Vai! Ya! Vai!
M3.情熱モラトリアム
M4.もうヤダ!
M5.狂ったカンヴァス
M6.赤い果実
M7.JINXXX
M8.大人は判ってくれない
M9.本当のことは言わない
M10.ソラノスミカ Inst~18才の叫び version~
M11.Be Your Idol
M12.Steppin’Out ~extenden version~
M13.いけないボーダーライン(※ワルキューレ楽曲)
M14.Catch Me
M15.紅く、絶望の花。
M16.世界を蹴飛ばせ!
M17.Here~album version~
EN1.おにゃの子☆girl(※ワルキューレ楽曲)
EN2.コノユビトマレ
EN3.CONTRAST
●リリース情報
TVアニメ『賭ケグルイ××』OPテーマ
「コノユビトマレ」
1月23日発売
品番:VTCL-35293
価格:¥1,400+税
<CD>
1.コノユビトマレ(TVアニメーション「「賭ケグルイ××」オープニングテーマ)
作詞:尾上文 作曲・編曲:白戸佑輔
2.ともだちと呼べる幸せ
作詞:JUNNA 作曲:kosekibeatz 編曲:河野伸
3.Sky
作詞:岩里祐穂 作曲・編曲: 白戸佑輔
4.コノユビトマレ instrumental
5.ともだちと呼べる幸せ instrumental
6.Sky instrumental
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