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INTERVIEW

2018.12.25

オリジナルとカバーの2部構成で自身を振り返る!鹿乃 3rdアルバム『rye』インタビュー

オリジナルとカバーの2部構成で自身を振り返る!鹿乃 3rdアルバム『rye』インタビュー

様々なボーカロイド曲のカバーで話題を集めていたシンガー、鹿乃がメジャー・デビューを果たしたのが2015年。以降はアニソン・シーンでも存在感を見せていた彼女が、レーベルを変えて原点回帰となる3rdアルバム『rye』をリリースする。自身のこれまでを振り返るという意味で、オリジナルとカバーの2部構成となった本作。自身と聴く者の“思春期”を思い出させる一枚はどのようにして生まれたのか? そして着ぐるみとは? あらたなステージで躍動する彼女に話を聞いた。

――ニューアルバム『rye』は、オリジナル曲からなるSide-Aと新録のカバー曲から成るSide-Bという構成になりました。

鹿乃 レーベルも変わって原点回帰という考えがまずありました。以前から私がずっと聴いてきたクリエイターの方に楽曲制作をお願いしてオリジナル曲を作ってもらうというSide-Aと、元々私のことを好きでいてくれるファンの方に向けた、自分がやりたかったことを詰め込むというかたちでボーカロイド楽曲のカバーというSide-Bという構成にしたんですね。

――自分の好きなクリエイターの楽曲や、ボカロ楽曲のカバーをすることで自分のルーツを振り返るような作品でもあるんですね。

鹿乃 まさに振り返るにはいい機会だった気がします。

――これまではアニメ作品に合わせてさまざまな楽曲を歌ってきましたが、今回は自分やりたいことを思い切りやってみようと。

鹿乃 今までやってきたことも好きですけど、今回はそこからさらに、「私がこんなにめちゃくちゃ好きなんだから、当然みんなも好きだろう」という感覚でやってみました。ある意味ワガママなアルバムだと思います。

――ファンも知っていることですが、鹿乃さん本来としてはちょっとダークだったり内省的な世界観が好みですしね。

鹿乃 今回のアルバムのテーマは“思春期の内面を描く”ことだったので、それに合わせて内面の葛藤を歌う曲が自然と多くなりました。個人的にはそこは歌いやすかったですね。

――ワガママに自分の好きなことをやるアルバムということで、今回じんさんに楽曲を依頼していることもそれに当たるわけですか?

鹿乃 鹿乃として活動を始めてから何年も経ちますけど、「歌い手としての私の青春時代っていつなんだろう?」って思ったときに、じんさんの曲を歌っているときが鹿乃としての青春時代だったんだなって思って。

――なるほど、青春や思春期を描くにあたって、自分自身の青春を投影するにはじんさんの存在が不可欠だったと。

鹿乃 1st、2ndアルバムの頃からお願いしたかったんですけど、今回満を辞して。それぐらい思い入れが強かったです。

――そのじんさんの作詞作曲による「「Q」&「A」」ですが、制作にあたってじんさんにはどのようなお話をしましたか?

鹿乃 元々じんさんの曲のなかでも「空想フォレスト」とか「ワールド・コーリング」みたいなオシャレな楽曲が好きで。ただ最初はアルバムのテーマと、とにかく「めちゃくちゃ書いてほしい」という気持ちをお伝えしました(笑)。

――この曲からすでにわかりますが、アルバムの“思春期”というテーマがサウンドや歌詞からもよく出ていますね。切なくて甘酸っぱくもあり。

鹿乃 また“大きく変わる”という転換期でもあります。思春期って良くも悪くもなるし、本当に混沌としていて。私自身も環境が変わった3枚目で思春期をテーマにしたアルバムを作ることができてよかったです。

――各クリエイターさんがそれぞれテーマである思春期をさまざまな角度で切り取ったわけですね。

鹿乃 思春期って通らなかった人はいないと思うし、中学生の頃にノートの端に思わず書いてしまった何かをあとで見つけて「わーっ!」って恥ずかしくなることはあると思うんですけど、ある意味いちばん自分に素直だった時期なのかなって。大人になるとそういう恥ずかしい言葉や行動ってできないですしね。曲をお願いしたみなさんも思春期の恥ずかしい想いを引っ張ってきてくれたのかなと。

――クリエイターさんそれぞれの思春期を思い返してもらったと。鹿乃さんは思春期の頃はいかがでしたか?

鹿乃 今では本当に馬鹿だなって思うんですけど、よく撮れた写真にマジック直書きで、その当時好きだった歌手の歌詞を書いたりして……(笑)。

――ああ、似たようなことは必ずしていますね(笑)。

鹿乃 なんで直書きしたんだろうとか、なんでこんなぐにゃぐにゃした字を書いたんだろうとか、若干イラっとくる絵文字を使っていたんだろうとか(笑)。

――他人の話ですけど聞いている僕もぞわぞわしますね(笑)。

鹿乃 交換日記とか読んだんですけど、「何これ? 私?」というか(笑)。

――どんどん出てきますね(笑)。

鹿乃 アルバムを聴いている人たちにも思い出してもぞもぞしてもらったらいいのかなって思います(笑)。

――ほかのアルバム収録曲についてもお伺いします。TVアニメ『実験品家族』EDテーマの「春に落ちて」は先行配信された楽曲ですが、アルバムのテーマともピッタリですね。

鹿乃 たしかに思春期のときって友達や家族が世界のすべてだと思っていて、それで喧嘩とかすると、「ああ、私って世界でひとりぼっちだ」って殻に閉じこもっちゃったり。そういう気持ちも想像しながら歌いました。

――続いてはゆうゆさんによる「さよなら、アダムとイヴ」。

鹿乃 ゆうゆさんすごいなって思ったのが、1、2回聴いたら耳に残るんですけど、「よし、これで歌えるな」と思ってレコーディングに臨んだら私の力量が足りず、耳には残るけど口から出てこないという(笑)。

――耳に残るけど実際には複雑なことをしていますよね。お次は堀江晶太さん作編曲による「なんで」。ここでは鹿乃さんが作詞されていますが、いわゆる思春期のなかでも恋愛要素が多い内容になっていますね。

鹿乃 「なんで」はもう中高生の恋愛に夢見ている女性になりきって書きました。大人になって、友達からこんなメールが来たら笑っちゃいますよね。

――そういった思春期女子のモヤモヤを、あえての少ないボキャブラリーで書いているという印象ですよね。

鹿乃 思春期をこじられている人は「でもでも」「なんでなんで」「だってだって」「どうしてどうして」は繰り返すなと思って。で、そうやって聞くくせに答えはいらないんだなって思って、答えは自分で勝手に出す感じにしました(笑)。

――そこが堀江さんの甘酸っぱいサウンドとよく合いますよね。続いては、こちらも鹿乃さん作詞による「loop loop loop」。

鹿乃 この曲は本当に歌詞が出てこなくて、いちばん最初に出て来たのが“パッパッパ”の部分で、頭を抱えたという(笑)。でもそこから抜け出せないなら、意味のない言葉を散らかしてみました。「なんで」が女の子の思春期のイメージで、「loop loop loop」は少年というイメージです。

――ああ、なるほど男子だからもっと感覚的なアプローチになるわけですね。

鹿乃 よくわかんないけど大声を出しながら自転車を立ち漕ぎしていたなとか(笑)。よくわかんないけど友情を大事にしていたとか。

――よくわかんないけどというのが思春期男子のミソだと(笑)。続いて「狐狸之声」EDテーマとなった「HOPE」。ここでの歌唱が素晴らしくて、まさにあらたなスタートを切った鹿乃さんというイメージがあります。

鹿乃 最初は自分の好きなようにめちゃめちゃ大人っぽく歌ったんですけど、「暗い」と言われて全部撮り直したんですね。なので大人すぎなくて幼くないちょうど中間を出せたかなと。明るいアニメでいきなり暗い声聴きたくないよなと(笑)。やっぱりアニメが主役なのでそこは壊したくない。でも自分を出していかないと。

――Side-A最後はハヤシケイさんによる「Padding Blue」です。

鹿乃 ハヤシケイさんは歌詞に定評がある方で、前からご一緒させていただきたいなって思っていました。あとは5、6年前からずっと思春期っぽいツイートをしていたので、今回のアルバムでは外せないなと(笑)。

――人魚をモチーフにした歌詞がまた幻想的で、思春期というテーマにありながら独特な世界観になっていますね。

鹿乃 最後の水のボコボコっていうSEが、もがいて上に向かっているのか、もがくのやめて落ちていっているのか聴く人に委ねたかったので、あえていちばん最後に入れたんですね。

――こうした世界観の歌詞で歌ってみていかがでしたか?

鹿乃 歌いやすいというか、普段歌っているときは「歌詞のこの子どんな女の子なのかな?」ってイメージするので、今回そこはすごくイメージしやすかったですね。

――そうしたオリジナル楽曲で構成されたSide-Aに対して、Side-Bはボカロ・カバーとなっています。

鹿乃 今まで私がカバーさせていただいたものから選びました。基準は自分が好きなものでもあるんですけど、いちばん大事なのは聴いてくれている人だと思うので、みんなに喜んでもらえるかなっていうのがかなり大きかったです。あと単純にどれも難易度が高い曲なので、今の私が歌ったらどんなふうになるのかなっていうのが個人的にも気になって。

――かつて歌った楽曲を今の鹿乃さんが、しかもピアノかギター一本で歌うわけですからね。そこで心がけたことはなんでしたか?

鹿乃 ネットで活動しているとすごくうれしいことも、「えっ、そんなに酷い言葉を人に投げかけるの?」ということもあって、それが時が経っていろいろ感じて考えて、今回またカバーを歌うことで供養されるというか。

――たしかに、それこそ「ハロ/ハワユ」の動画をアップされた頃はまだネット上での音楽シーンというものも今ほど成熟していませんでしたからね。再生数もすごかったですが、それに比例してさまざまな反響があったと。

鹿乃 そうですね、ボッコボコにされました(笑)。初めてネット怖いなって思ったのもあの頃ですね。その混沌とした感じもみんなの青春でもあったのかなって。

――過去を振り返って良いことも悪いことも受け止める。それこそ供養ですよね。

鹿乃 前だったらもっときれいに歌おうとか、寂しいという感情はこういうことだよなって決めつけていたんですけど、あれから考え方や歌い方も変わりましたし。逆に2曲目は元々の歌い方も当時批判されたんですけど、私は今でもこの歌い方がいいと思っているので、「これでいくよ」っていう意味であえて当時と変えずに歌っています。

――鹿乃さんのルーツであり青春、そしてこのアルバムのなかでは“思春期”を振り返る意味で、やはりこのSide-Bは外せなかったわけですね。

鹿乃 そうですね、あの頃悔しかった自分の気持ちを浄化できたかなって。

――そうした浄化が完了したことで、あらたなスタートを切ることができると。

鹿乃 そうですね。着ぐるみも着ますし。

――最初聞いたとき、思わず聞き返しましたよ(笑)。しかも先ほど現物を見たら本格的な着ぐるみなんですよね。これを着ての活動もしていくぞと。

鹿乃 思春期こじらせたら着ぐるみ行っちゃったかと(笑)。やっぱり大人になるといろいろ吹っ切れるので。でも着ぐるみという実態化しただけで、もともと鹿乃って着ぐるみみたいなものなのかもしれない(笑)。

――ちょっと哲学っぽいですね(笑)。こうした新しい試みもどんどんやっていくべく2018年末にアルバムを出し、2019年に進んでいこうという。

鹿乃 やっぱり前に進むには一度過去のいろんなものを振り返らないと。2019年はあらたな武器も手に入れたのでがんばります(笑)。

――着ぐるみという強靭な鎧も手に入れましたし(笑)。

鹿乃 そうですね(笑)。もっと貪欲にいきたいです。ゆるキャラの動画も見て勉強していますし。

――そっちですか(笑)。一見「鹿乃、どうした?」って思われるかもしれないですけど、それが後々の活動に活きていくと思いますよ。

鹿乃 もしかしたら、「どうした?」って思われたまま闇に葬り去られていくかもしれないですが(笑)。でも歌っている本人が中に入っていることってなかなかないじゃないですか。試みとしてはちょっと面白いんじゃないかなって思います。失敗したら失敗したでそれはまた笑い話になるのかなと。数打ちゃ当たるとはまた違うんですけど、やらないことの方がもったいないかなって。

――そうした柔軟なスタンスでの鹿乃さんの2019年も楽しみにしています!

鹿乃 はい、次回は着ぐるみでお会いしましょう!(笑)。

Interview & Text By 澄川龍一


●リリース情報
3rd Album
『rye』
12月19日発売

【初回限定盤(2CD+DVD)】

品番:TECI-1609
価格:¥4,400(税込)

【通常盤(2CD)】3Pケース仕様

品番:TECI-1611
価格:¥3,500(税込)

<Side-A (Disc-1)>オリジナル盤
1.「Q」&「A」
2.春に落ちて
3.さよなら、アダムとイヴ
4.なんで
5.loop loop loop
6.HOPE
7.Paddling Blue

<Side-B (Disc-2)>カバー盤
1.ハロ/ハワユ
2.想像フォレスト
3.六兆年と一夜物語
4.小夜子
5.メリーメリー
6.クライヤ
7.ピエロ

<DVD>
「春に落ちて」ミュージックビデオ
「HOPE」ミュージックビデオ
「「Q」&「A」」ミュージックビデオ

●ライブ情報
鹿乃ワンマンライブ
2019年1月19日(土) 「鹿乃ライブ Days – L –」 開場 17:15 / 開演 18:00
2019年1月20日(日) 「鹿乃ライブ Days – R -」 開場 16:15 / 開演 17:00
会場:品川 Club eX

チケット
プレミアムチケット(指定/イラストチケット/来場時プレゼント付き ) ¥8,100(税込)※入場時別途ドリンク代
一般チケット(指定):¥5,940(税込) ※入場時別途ドリンク代
備考:小学生以上有料。未就学児童は入場不可。

発売中
問:キョードー東京 TEL:0570-550-799
※平日 11:00-18:00
土日祝 10:00-18:00

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