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INTERVIEW

2018.12.18

【北川勝利・藤村鼓乃美 ボーダーズの“音の場” season2】~#22 大塚編~

ボーダー柄の服のコンビが、サイコロ片手に“ノー・ボーダー”の精神でナイスな音楽を聴き歩く――。
「ボーダーズの“音の場”season2」第22回となる今回、ふたりが降り立ったのは大塚。近年では2013年に駅ビルが建造され、かつては飲み屋街のイメージもあった駅前とは違った印象に変化しています。北川さんも藤村さんも馴染みのない土地ではありますが、ふたりはここでいったいどんな音楽を聴くのでしょうか?

――さて、今回のボーダーズは大塚にやってきました。おふたりともあまり馴染みのない土地とのことですが……。

北川勝利 来るのは全員初めて?

藤村鼓乃美 用事がないですね。

北川 なぜ悪口から入った(笑)。

藤村 でも、なかなか来ることなくないですか?

北川 池袋までは用事で来ることあるけど……。

――駅としては池袋と巣鴨の間ですね。微妙に街道からもズレているんですよ。中山道が南側を走っていて、そちらは新大塚とか南大塚なんかの地下鉄の駅になっています。

藤村 新大塚は何線なんですか?

――新大塚は丸ノ内線で、茗荷谷の次で池袋の手前ですね。

北川 大塚駅はなんであそこにあるんだろう。訳あってのことなんですよね?

――一応繁華街ではあったそうです。丸ノ内線を通そうという計画もあったらしいんですが、あの辺りは谷になっていたのでできなかったんですよ。だから都電がまだ残っちゃってます。

藤村 しかもあの路面電車、踏切がないじゃないですか。今のご時世にあんな路線があるなんて思わなかったです。

北川 あの電車はどこからどこまで走ってるんですか?

――三ノ輪ですね。上野の北側からぐるっと外を回って、最後は早稲田まで行きます。

北川 へー。何かの回のときにあの電車見ましたよね。

――日暮里の回ですね。かなり初期の頃になります。

北川 線路脇で花と一緒に写真撮ったのを覚えてる。

――やたら人の墓を回っていた頃ですね。

藤村 この連載って、だいたいお墓かお寺を巡ってますよね。

北川 写真撮ることを考えると寺頼みになっちゃうよね。

――実は大塚という地名自体は、本当はもうちょっと東側なんですよ。駅があるのは豊島区で、地名の大塚は南東寄りの文京区にあるんです。電車を通す都合であそこを大塚駅としたんですね。

北川 でもなんか、駅自体は新しくて近代的な感じだった。

藤村 きれいでしたね。

――10年位前は立ち飲み屋が駅前にたくさんあるような駅でしたが……。

北川 今はもうその区画がないってこと?

――きれいになっていましたね。

藤村 商店街も思っていた感じと違いました。細かったり短かったり。

北川 一本ドーンと大きい通りがあるんじゃなくて、入り口からはブワーっとなんとなく広がってる感じだったね。で、何を見ようかという話になって……。

藤村 事前に「ライブハウスがたくさんある」って聞いてましたね。

北川 ごめんなさい、そんなイメージまったくない(笑)。でも確かに歩いているとライブハウスの看板は多かった。

藤村 ただどういう感じのジャンルをやってるのか、よくわからなかったですよね。

北川 大体間口が狭くて、閉まってるシャッターが細かった(笑)。

藤村 外側からのヒントがゼロでしたね(笑)。

――老舗であれば行ったことはなくても名前を聞いたことはあったりするものですが……。

藤村 でも新しくできたって感じでもなかったですね。

北川 僕らが知らないだけでフォークとかロカビリーとかのライブをやってるのかもしれない。

藤村 最初に見つけたライブハウスに至っては、隣に同じ名前のライブハウスが新しくできてましたね。

――ということは、そこそこお客さんが入っているのでしょう。

藤村 オープンマイクとかやってるんですかね。

北川 そこに夜な夜な歌いたい人が集まってる感じ?それはもうライブハウスじゃなくてよくない?

藤村 あとはどうしてもその隣の、105円で洋服が激安で売っているお店が気になってしょうがなかったです。

北川 あー、あったね。

――山手線の北側の雰囲気でしたね。

北川 入口のハンガーにかかっているやつだけが100円かと思ったら、「あれ中も全部じゃん!?」って。

藤村 激安です。

北川 結構賑わってた。寒くなってみんな買いに来たのかなって(笑)。

――そのあとは大塚天祖神社(旧巣鴨総鎮守 天祖神社)に行きました。

藤村 七五三がやってましたね。

――鎌倉時代から600年くらいの歴史がある神社らしいです。ただ、いまいち来歴がよくわからない。天祖神社という天照大神を祀った神社自体は東京の中でも板橋にあったりするんですが、神社本庁のホームページには大塚天祖神社のことが何も書いていないんですよ。「狛犬が子犬を連れていて、お乳をあげている」ということだけは書いてありました。結構珍しいみたいなんですが、今思い出したので写真を撮り忘れましたね。

北川 唯一の売りを逃した。

藤村 七五三の圧に押されて(笑)。

北川 で、そのあとはモスクに行ったのか。

――マスジッドですね。

北川 あれはあの周りに外国の方が多く住んでいるからあるんですか?

――だと思います。「マスジッド」はマレー語なので、マレーシアのムスリムが多く住んでいるんじゃないかと。マレーシアにはマスジッド・ネガラという国立のモスクがあって、マスジッドはマレー語でモスクを指しているんです。マレーシアは国教がイスラム教なので、近くにハラール(イスラム法上で許されているもの)の食材屋がありましたね。

藤村 それはないと困りますよね。マンションの2階みたいなところにありましたけど。

――看板はあるけどどこが入口なのかわからないという。

北川 あれ、イスラム教はお肉が食べられないんでしたっけ?

――豚肉とアルコールが駄目なんです。ハラールというのはイスラム教徒がどう生活するかの規範なんですよ。だから実は歯磨きのハラールがあったりするそうです。

北川 え、どういうこと。

――歯磨き粉に制限があったりするんです。

藤村 成分的な問題で?

――そうです、アルコールが入っていたら駄目だったり。それをチェックしてOKが出たものがハラール認証を受けているんですね。

北川 じゃあそのお店で売っているのものは、全部違反していないものなんですね。面白いな、中を見ればよかった。

藤村 日本で売ってるものだと、日本語のラベルを見るだけじゃわからないですもんね。入っていくのに勇気がいる、本当にマンションの1室って感じでしたもんね。

――アジア食材屋さんではあまり珍しくない形式なんですけどね。

藤村 でもマンションと隣の家のちょうど間くらいに看板があったので、「どっちだ?」ってなりましたね(笑)。

北川 お家もだいぶ風情のある感じだった。

藤村 趣深い感じでしたね。

北川 まだこういう感じのお家がたくさん残ってるんだって思った。

――あの辺りから雑司ヶ谷の方は、古い住宅が残っていますね。学生向けのアパートというか、靴を脱いで入るような下宿がまだちょっと残っているんですよ。

藤村 あと今日のメインは、閉店セールですかね。

北川 1回通り過ぎて、気になって戻ってきたよね。

――取材を拒否され続けた結果、時間が余り過ぎましたね。

北川 語れるものがなさ過ぎてね(笑)。

藤村 電池を見つけちゃったんですよね。

――そう、エネループを見つけてしまったんですよ。

北川 たまたま僕、今まで使っていたエネループが何日か前に駄目になってしまって。新しいのを買おうと思ってたんですよね。

藤村 ま、よく見たら別の電池だったんですけど。

――でも元は一緒なんですよ。もう売られちゃいましたけどエネループの三洋はエボルタのパナソニックの子会社だったので。

藤村 でも充電器はなかった。本日までの閉店セールでしたからね。

北川 カメラマンさんが「これも、これも」ってすごい買ってた。

藤村 思ったよりすごい食いついてましたよね。

北川 「カゴないですか?」って言いだして、8000円分くらい買ってたね(笑)。

藤村 私もカメラのレンズにつけるキャップをなくしてしまっていたので、「あっ、ある。でもサイズがわからないな。いくらかな」と思っていたら「ご自由にお持ちください」って書いてあったので一応もらっておきました(笑)。

北川 今日いちばんうれしかったのは、電池を買えたことだね。

藤村 細胞が見える顕微鏡カメラも売ってましたよ。

北川 あったね。デジタル顕微鏡、500円(笑)。やっぱ買えばよかったかな……。

藤村 3台くらいあったからまだ間に合いますよ。

北川 今戻れば……(笑)。えっ、実際に使ってみたの?

藤村 見ました見ました。手のシワ。

北川 手のシワは、肉眼でも普通に見えるんですけど。

藤村 もっと細かく、肌年齢をチェックするやつくらい見えましたよ。

北川 写真は撮れるのかな?

――キャプチャできるようになっているみたいでしたよ。

藤村 でもいつ使えばいいのか……(笑)。

北川 ここが今日一で盛り上がりましたね。

――大塚は本当に史跡の類が何もなくて。街道筋からちょっと外れているからか、お寺や神社があまりなくて実に不思議な土地でした。でも大塚は荒川線の乗り換えがあることもあって、乗降客の最低は鶯谷なんですよ。

北川 たしかに鶯谷よりは駅が大きかった。駅自体はアトレとかあって、恵比寿にも負けてない感じだったし。

藤村 鶯谷より人が住んでる感じでしたね。でもなんだか楽しかったですよ。焼肉屋さんの前で北川さんに写真撮ってもらったし。

北川 炭火焼肉「頂きまんもす」ね(笑)。

――山手なのに下町風情のある町でしたね。それでは今回の選曲にいってみましょうか。

★北川’s Select★
「間違いだらけの神様」TWEEDEES(アルバム『DELICIOUS.』より)

北川 ちょっと前に出た、沖井(礼二)くんがやっているバンドのアルバムの曲です。ちょっとだけ参加してます。最後にラララって歌ってるだけなんですけど。

藤村 コーラスをやったんですか?

北川 たまたま別のことでメールしたら、「今空いてたらすぐ来てくれ」みたいに言われて「あー、はい」って(笑)。ラララって言いに行ってきました。

藤村 『DELICIOUS.』ですよね、私も聴いてますよ。9曲目ですか?気にして聴いてみよう。

北川 みんなで歌ってるからわかんないかも。そしてもう1曲は……。

★北川’s Select★
「黄昏のダイアリー」RYUTist(りゅーてぃすと)

北川 新潟のアイドルの、RYUTistのシングル曲です。

藤村 ああー、これも沖井さんたちがプロデュースしてますよね。

北川 そう。沖井くんが前のシングルの曲(5th single「青空シグナル」)を書いてて、今回は沖井くんと僕が共作で作曲とアレンジを一緒にやってます。

藤村 Twitterで物議を醸してたやつですよね。北川さんが怖い人だって(笑)。

北川 そう!新潟まで歌を録りにいったときに、僕と沖井くんは楽しくやってたんですけど、RYUTistの4人と向こうのスタッフの人が「北川さんの誕生日だからケーキを用意したんだけど、ケーキとか出したら怒り出すんじゃないか」って話してたらしくて(笑)。

藤村 なんでそんな風に思われちゃったんですか(笑)。

北川 わかんない。「現場がピリついてて怖い」みたいに思われてたみたい。僕と沖井くんは上機嫌でワイワイ楽しくやってたのに。「イタリアン」って焼きそばにトマトソースがかかってる新潟の食べ物があって、それを買っていって現場で食べたりすごい楽しくやってたつもりだったんだけど……。なんだったら懐いてもらおうと思ってお土産全員分買っていったり。

藤村 それが逆に怖かったのか……。

北川 レコーディングが終わってケーキも出てきて、「みんなも食べよう!」って仲よく食べて。でもそのあと「北川さんが怖くて、どう反応していいかわかんなかった」「現場もピリついてた」ってTwitterに書かれてて(笑)。

藤村 LINEのやり取りとかも載ってるんですよ。「ケーキ出したら怒られるんじゃないか」とか。私はそれを見ながら「めっちゃ面白いこと起きてる!」と思ってました(笑)。

――にこやかに喋ってたのに豹変した人が過去にいたんですかね。

北川 バースデーケーキをサプライズで出されて、「祝ってほしくないんだよ!」って怒り出す人ってなんなんだ(笑)。

藤村 でも北川さんってめちゃくちゃ笑うってタイプの人でもないじゃないですか。

北川 レコーディングのときは結構ゲラゲラ笑ってたんだけどなあ。何が怖かったんだろう。

藤村 緊張してたんですかね?

北川 それは言ってた。「緊張してます」って言ってたから、お土産で和ませたつもりだったんだけど……。

藤村村 それがむしろプレッシャーになったのかも(笑)。

北川 あと新潟では駅にレインボータワーっていうのがあるってガイド本に書いてあったので登りたいなと思っていたら、その本が古かったらしくてもう壊し始めてたんですよ。でもそこでご当地キャラの「ばんにゃい」っていう猫に会いました。

藤村 ボーダーの猫ちゃんですよね。

北川 スタッフのお姉さんが一緒に写真を撮ってくれて、Twitterにアップしたりしました。

藤村 それに私が「ボーダーズだ!」って言ったら……。

北川 「次回からはこのふたりでやります」って返した(笑)。

藤村 待って待ってー!(笑)。たぶんばんにゃい喋りませんよ。

――ただ、置いておくだけで形になるというのはちょっといいですね(笑)。

藤村 あれ?私クビかな……(笑)。

――大塚より新潟の方が盛り上がってしまいましたね。では藤村さんの選曲をお願いします。

藤村 じゃあ私はその話つながりで……北川さんに誕生日プレゼントです!怒られるかなって、いつ渡そうかと悩んでたんですけど(笑)。

北川 おおー、ありがとう。やめてよ、誕生日祝うと怒られるってキャラつけるの(笑)。

藤村 ちゃんとボーダーですよ!

北川 しかもめちゃ暖かそうな。

藤村 そうです。次回はこれ着てきてくださいね。

北川 そうしよう、ありがとうございます。

藤村 おめでとうございました。誕生日当日におめでとうと言おうと思っていて、夕方までは覚えてたんですよ。でも忘れちゃって(笑)。次の日に北川さんと連絡取ってる最中に思い出して……。

北川 「遅れましたが、おめでとうございます」って。遅いよ(笑)。

藤村 去年は私の誕生日も祝ってくれましたし、我々もすっかり仲よくなりましたね。

北川 今?今更その話(笑)。

藤村 Twitterで「北川さんは怖い人かもしれない」って言われてるのを、フフッって笑いながら見てましたよ。

北川 否定してあげてよ(笑)。

藤村 普通に喋る分には全然緊張しないですけど、今でもコーラスじゃないもののレコーディングってなると緊張します。

北川 藤村には色々言いやすいから余計に緊張するかも。

藤村 あっ、そうそう曲でしたね。今回の私の選曲は……。

★藤村’s Select★
「あの子が横に座る」ユアネス

藤村 残念ながら思い出がほとんどないので、私と同じ福岡出身のオススメのバンドの曲を……。

――今回は誰も大塚に思い出がないので仕方ないですね。

藤村 ユアネスというバンドです。他のバンドを見に行ったときに対バンでユアネスが出ていて、そこでめちゃくちゃいい曲だなと思って、帰りにユアネスのことしか考えられなくなって。同じ福岡出身だから親近感も感じて音源を探したんですけど、当時はCDがHPの通販で売り切れになっていたんですよ。「YouTubeでしか聴けないのかー」と思ってたら、やっと配信になったんです。11月に新しいCDも出たみたいなので、それも聴くのが楽しみなんです。

北川 へー。しかしなんであんなに怖がられたんだろう。

藤村 興味持ってくださいよ(笑)。今、私の中で激熱なバンドです。でもその件は多分、今までレコーディングしてきた中では北川さんのディレクションが強めに感じたのかも。

北川 沖井くんがメインでやってくれてたんだけど、僕が沖井くんに対して当たりが強かったのが怖かったのかもしれない。「はぁ?」とか「全然ダメ」とか。

藤村 沖井さんに言ってたんですか?

北川 だってメンバーは全然悪いとこないから。「すごいいい」「すごいかわいい」ってずっと言ってた(笑)。

藤村 「沖井さんに言ってるようなこと自分たちにも言われるんじゃないか」からの「ケーキを出したら怒られるんじゃないか」だったんですかね……。

――たまに現場に、対外的には丁寧なんだけどアシスタントにはやたらキツイおじさんとかいますよね。

北川 あー。あれは怖い。

藤村 ヒッってなっちゃう。

――身内に対してそういうスタンスだと声を掛けられないですよね。クラシック業界だと蹴りが入るとか言いますし。

藤村 それだ!

北川 俺はやってないよ!沖井くんに「何やってんだ!」って蹴りを(笑)。

藤村 怖いよー(笑)。私はTwitterでのそのやり取りを見てめちゃめちゃ笑いましたけどね。

北川 結構ショック受けたよ……。Twitterをやってるメンバーの子がいて「怖くなかったよね?」って聞いたら、「すごく優しくしてくださって。緊張して最初はちょっとだけ怖かったけど……」って返事がきて。なんか余計に印象が悪くなっちゃった。聞かなきゃよかった(笑)。

――同意を強制してる人みたいですもんね(笑)。

北川 やっぱり何か与えないと怖いんだ……。

藤村 その返事も震えながら打ったんでしょうね。大丈夫ですよー、北川さんは優しい人ですよー(笑)。

――それでは今回はこんなところで、次回の駅を決めるサイコロを振りましょう。北川さんお願いします!

北川 それっ。

――サイコロの目は「2」ということで、次回訪れる駅は原宿に決定です!竹下通りがあったり、さすがにみなさん原宿には多少なりとも思い出はありますよね。

藤村 そうですね、一応。

北川 大塚に比べたら何かしらは(笑)。

――それでは次回はおふたりの思い出が聞けるのも楽しみにしております!

(原宿編へ続く!)

Interview By 田中尚道(クリエンタ)、Text By 青木佑磨(クリエンタ)
Phtography By 山本哲也


●今回のSelect Song
★北川’s Select
「間違いだらけの神様」TWEEDEES(アルバム『DELICIOUS.』より)

●今回のSelect Song
★北川’s Select
「黄昏のダイアリー」RYUTist(りゅーてぃすと)

●今回のSelect Song
★藤村’s Select
「あの子が横に座る」ユアネス

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