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INTERVIEW

2018.11.28

angelaの音楽的な初期衝動とは何か?劇場アニメーション『K SEVEN STORIES』エンディング主題歌集『K SEVEN SONGS』インタビュー

2018年7月より毎月1作ずつ公開されてきた劇場アニメーション『K SEVEN STORIES』全6作のエンディング主題歌集『K SEVEN SONGS』をリリースしたangela。過去のTVシリーズや劇場版を含め、本シリーズで20曲以上を手がけてきたangelaにとって『K』は初期衝動から作る楽曲であるという。アーティストとしての根源的なその思いについて、楽曲制作を通じてうかがったところ、楽曲制作だけでなくatsukoの歌唱スタイルのルーツにまで話題が及んだ。angelaのPast & Nowを知る必読インタビューだ!

本人に直撃! angelaにバンドの意識はあるか否か

――先日の“angela Live 2018 All Time Best in 日比谷野音”の最後で、KATSUさんは今年の活動はアルバム『Beyond』ツアー、15周年河口湖ステラシアターライブ以降、「SURVIVE!」や『K SEVEN SONGS』など、『K』の主題歌制作に没頭されたとお話されていましたね。

KATSU そうですね。今年は『K』の年だったという印象がすごく強いですね。

atsuko 最初は昨年の秋くらいでした。『Beyond』の制作作業と並行して90秒くらいの歌詞が載ったデモを制作して、年始のツアーが終わってからレコーディングに入っていった感じですね。

KATSU 制作順でいうと「SURVIVE!」が最初で、次に『Beyond』に収録した「SEVEN STORIES」(イメージソング)を作り、その後は順番にEDテーマの各曲を作っていきました。

atsuko だから、やっと発売できるなという感覚です。長かった(笑)。

――聴かせていただいて、ギターソロがある曲が多くとてもかっこよかったです。夏にリリースした「SURVIVE!」のインタビューで、『K』には、バンドを始めたときのような初期衝動があるとお話されていました。現在のangelaは多彩なジャンルの歌を歌っていますが、ご自身としては現在も「バンドであるという意識」はお持ちでしょうか?

KATSU 僕もatsukoもそれぞれ別ではありましたがバンド出身ですから、精神的にバンド出身という意識がありますね。

atsuko KATSUさんなんて、当時はドラマーでしたからね。それでANGELAを結成して、ふたりになったときにボーカルとドラムの組み合わせだとライブがしづらいということで、当時流行り始めていた打ち込みを使って、KATSUさんがプレイヤーとしてはギタリストに転向したわけです。

KATSU ただ、打ち込みといっても、シーケンサーを使って今のPCでできることの1/50くらいの時代です。特にグルーヴとかランダムさにおいては生のバンド演奏には勝てない部分があり、それぞれの良さを上手く使って必要最小限で最大の効果を生む方法を考えていきましたね。

atsuko この打ち込みという形態が、いわゆる4ピースのバンドだけではできない音楽をやりたいと思っていた私たちに向いていたんでしょうね。そんなわけで、精神的にはバンドが原点にあるのですが、音楽的にはやりたいことが多すぎたという(笑)。いろんなことをやりすぎて自分たちが何屋さんか分からなくなったこともあったし、オーディションでも「君たちは何がやりたいの?」と言われ続け全然デビューできなかった、というのが約20年前のことです(笑)。でも、アニメの世界は音楽的にはロックもあればファンクもあり、作品の舞台も大宇宙から体内で働く細胞の世界まであるわけです(笑)。そういう細分化された世界を表現するには、やりたいことに全部手を付けてきた私たちに向いているなと。それは自分たちにとっても楽しかったです。

――今回6曲の新曲を各エピソードに向けて作られていきましたが、制作にあたって、お手元にはどのような資料がありましたか?

KATSU 『K SEVEN STORIES』のシナリオや、過去のコミカライズを読んだりしました。

atsuko あとは第4章の『Lost Small World』が、先に2.5次元ミュージカルになっていましたので、それを観たり、ノベライズを読んだりしていました。実際の制作作業にあたってはシナリオがメインでしたね。

――6曲全体を通じてはどのようなチャレンジがあったと思いますか?

KATSU これまで『K』の様々な楽曲を作ってきましたが、そのほとんどが、《赤のクラン》を主体としたものでした。ですが、今回「天狼の如く」(Episode 2)では《青のクラン》、「上書き世界」(Episode 3)では《緑のクラン》といったように、エピソードごとの主人公に対して主題歌を作っていくということが新しかったですね。『K』の最初のシリーズは、僕らも全体的に手探りでしたが、ここまでシリーズに関わってきたなかで、それぞれのイメージが掴めていたのでやりやすかったです。ただ、最後のエピソード6の「Nameless Song」については、「Circle Vision ~Nameless Song~」という、他のメディアでもまったく語られていない新作エピソードだったので、そこをどのように作っていくのかが課題ではありました。個人的にはこの曲がいちばん好きで、いちばん泣けるんです。今回、新作エピソードということで、一度終わった『K』を蘇らせてもらったという思いが強くありました。そこに対してどういう曲を作っていけばよいのかと考えたときに、ちょうど公開が12月だし、この作品を観た人はきっと温かい気持ちになるだろうと思ってangelaからのクリスマスプレゼントという思いを込めています。クリスマスソングそのものではなく、「っぽさ」が大事なんです。歌詞や楽器が具体的に、というよりもあくまで皆が持っているクリスマスらしいイメージをふんだんに採り入れています。

atsuko これまで『K』の主題歌といえば、テーマが怒りや孤独な戦い、寂しさといったもので、それをイメージして作っていくことが多かったのですが、今回は私自身シナリオを読んで感じたテーマは優しさでした。今までもないわけではなかったのですが、そこに焦点を当てたことが歌詞を書くうえでの新しい試みでしたね。あと、7月から毎月毎月、6本を観てくれるファンの方たち、そして曲を作った私たちも含めて「よくがんばったね!」と(笑)。そういう優しい気持ちになるような曲にしたい思いがありました。ただフワフワした優しさではなく、芯があって訴えかける少し憂いや切なさも表現できたらと思いました。

KATSU よく「angelaは『K』という作品に寄り添っている」と言っていただけるのですが、この曲だけはお客さんと一緒、その目線側に立つことを意識しましたね。

――先ほど挙げられた珍しいパターンとして、《緑のクラン》の五條スクナを主人公に置いた「上書き世界」があります。これはどのように作られていきましたか?

KATSU これ以外の主題歌は全部オープニングのように作る感じを残していたのですが、「上書き世界」だけはThe・エンディング曲らしくしたかったんです。スクナの葛藤を上手く描きたいという、当たり前といえば当たり前のエンディング曲の作りなのですが、普通に《緑のクラン》のテーマからするとデジタルな音楽に落ち着くと思うんです。そこで、改めて「当たり前のエンディングって何だろう」と考えたときに、僕の頭に浮かんだのは『ルパン三世』の大野雄二さんでした。彼が作ってきたエンディング曲らしい説得力・存在感は個人的に日本でいちばん尊敬しています。その世界観をangelaというフィルターを使って出してみたいという裏テーマがありました。そこに夕日に麦わら帽子というような日本人的なノスタルジーをこの曲でできたらと思ったんです。

――歌についてはどのようなイメージでしたか?

atsuko いつもの私の歌い方とは違って、ものすごく淡々と歌いました。それはこの曲に最も合う歌い方を考えたときに自然とこうなったんです。私は普段と違う歌い方をすることに一切の抵抗がないんです。「私の歌はこういう歌」とか、「これ以外の歌い方はできない」みたいなアーティスト性がなくて、曲に合うためなら声色変えて普段の歌い方とは違っても、それが作品にいちばん合うのであればいい。臨機応変に。

――それはangelaのatsukoさんの歌い方という、皆が想像つく柱が1本あるからこそできることなのでは?

atsuko いや、それが若くて自信がない頃からそれをやっていたんですよ(笑)。というのも、とにかくデビューしたかったので、流行っているものと似たようなものを作ればデビューできると思ったんです。だからZARDが流行っていたときはすごく爽やかに歌ってましたし、Charaさんみたいにウィスパーボイスで歌ったこともあったし、EGO-WRAPPIN’とかorange pekoeとかジャズっぽいのが流行ったらハスキーめの歌い方をしたりと、本当に自分というものがなくて(笑)。それが先ほどのオーディションの話とも繋がるわけです。で、そういった過去があるから曲調によって歌い方を変えることにはなんの抵抗もないんです。ただ、レコーディングはより集中してできるから良いのですが、ライブとなると激しい曲から切り替えていくこともあるので難しいとは感じますね。アニメの曲を15年作らせてもらってそういうこともいろいろやってきましたけれども、「それもangelaだよね」とお客さんが受け入れてくださるのがありがたいなと思っています。

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