第一章「怪獣惑星」、第二章「決戦機動増殖都市」とゴジラ・アースのあまりにも強大な力を見せつけて来たアニメ版「GODZILLA」。全三部作の最終章「星を喰う者」がいよいよ公開となる。そんな「アニゴジ」を歌で繋いできたXAIへのインタビューを敢行。第三章の主題歌である「live and die」に込めた想いを聞いた。
――いよいよアニメ版『GODZILLA』の第三章、最終章が公開となりました。第二章の終わりが辛すぎたのもあって……「第三章かぁ……」と(笑)。
XAI 辛かったですね。私も「ユウコォォォォ!」ってなりました(笑)。多分、ご覧になった方は皆さん、同じ気持ちになったと思います。虚淵 玄さんだなぁ……と。いい意味で、しんどい!と。
――アニメ版『GODZILLA』三部作を歌で繋いできたXAIさんですが、今、どのようなお気持ちですか?
XAI 第一章、第二章でもお話をしてきたんですが、やっぱり声優さんや制作陣が本当に豪華ななかで『GODZILLA』という作品の全三章が完結して。第三章を拝見して、それぞれの章の持つ役割であったり、虚淵さんをはじめとした制作陣の皆さんの問いかけがひしひしと伝わってくるのを感じたんですね。デビューからこの作品に関われたことはすごく大きなことだな、と強く思っています。
――ずっとご自身の曲が寄り添う作品。それはとても稀有な機会ではないかと思うのですが、ご自身と『GODZILLA』はどのような関係だとお感じになりますか?
XAI 『GODZILLA』って、メタファーというか。作中でも、人間に下された制裁じゃないですが、そういう役割を担っている。そんな存在に、今を生きているひとりの人間として、若者として向き合うということも、自分にとってこれからを生きていくうえでも意味のあるもので、とても大きな存在になったと思います。
――前2作を受けたうえでの「live and die」ですが、この曲を作るにあたってはプロデューサーである中野雅之さんとはどのようなお話をされたんでしょうか。
XAI やっぱり一章、二章と一緒に作らせてもらって、この先のことはわからないけれど、三章でひと区切りになるんですね、中野さんと制作をさせていただくのが。それで「この先のことはわからないけれど、今回で君は“中野ミュージック”を卒業していくわけだから、自分自身からも制作からも逃げずに、甘えを許さずにストイックに制作と向き合っていこう」という中野さんの言葉が念頭にあった、というのがまずひとつです。あとは、これから人前に出て、アーティストとして活動していくうえでのメンタリティだったり、もっと掘り下げてひとりの人間として生きていくのはどういうことなのか、ということも身に付けていかなければいけない、といったお話やアドバイスをいただいて。前作よりも、もっとコミュニケーションや軸の部分はあったんじゃないかと思いますね。
――この数年、中野ミュージックでどんなことを吸収して、どんなことを学んだと感じますか?
XAI 中野さんは本当に、無駄なものをそぎ落とした状態の人というか。ストイックに音楽に向き合っている人なので、音楽をやって生きていく、アーティストとして生きていくというのはどういうことなのかを教えてもらったと思います。あとは、今まで自分が見ないようにしてきたことにすごく深く踏み込んでくださって、ぶち壊してくれた。今回で中野ミュージックを卒業というのはあるんですけど、自分がそこで学んだことは、「アニゴジ」という作品の根底に流れているものでもあると思うんですけど、これからどうやって生きていくのか、ということが大きいのかな、と思いますね。
――その言葉が今回の「live and die」にも繋がっているような印象を受けます。楽曲のテーマとして今回掲げたいもの、込めたかったものは何でしたか?
XAI 題名にもあるんですけど、生きて死んでいく、ということを「アニゴジ」を観たうえで感じたんです。人間って毎秒ごとに生まれ変わるというか。この歌詞自体は一晩の出来事を描いているんです。毎夜毎に生きて死んでいくっていう、メッセージやインスピレーションみたいなものを中野さんのデモを聴かせてもらったときに感じて。暗闇の中を落ちていくんだけど、その落ちていく中で魂が燃えるような。爆裂に弾けていって、そこで初めて生きていることになるんだ、という、そんなインスピレーションを受けたので、そういう決意や勇気を抱いて生きているわたしたちへの問いかけでもあります。これまでの「WHITE OUT」(第一章主題歌)や「THE SKY FALLS」(第二章主題歌)とは違った、私自身の想いみたいなものがそのインスピレーションには籠っているんじゃないかって感じたんですね。そこを聴いていただきたいと思って。あとはサビの“I was the king”っていう言葉も、「アニゴジ」を観たあとに聴いたら、はっとしてもらえるんじゃないかって。kingはゴジラのことでもあり、人としての使命みたいなものを背負わされてしまったハルオのことでもあり、それを受け止めた私という存在でもある、と思っているので。そういうところも聴いて欲しいです。
――歌いながら最も意識したのはどんなところですか?
XAI やっぱりその“I was the king”というところです。中野さんからもこのkingが聴こえることが大事なポイントだと思うからそこはていねいに、というお話をされていましたし、私自身もそう感じていましたから。
――レコーディングはいかがでしたか?
XAI 最終章だったので、第一章、第二章のレコーディングにも増して厳しさがありました。本当に厳しかったです。自分が歌詞を書いたので、想いが強すぎてしまうと、聴いている人には強すぎてしまう表現になってしまうんですね。その塩梅というか…
表現をして誰かに届ける、という行為はすごく気を付けなきゃいけないことなんだ、というメンタリティが培われたのは、今回数多くアドバイスをいただいたうえでもすごく大きなことでした。
――こうしてストイックに、ご自身とも向き合って作られた楽曲ですが、実際に完成した今のお気持ちは?
XAI 第二章が終わったときには「次に第三章があるんだ」という気持ちだったので気の抜けない感じでもあったんですが、今回はほっとしています(笑)。無事終わったー……、という安堵感もあり、でも今回の「live and die」の歌詞は自分の中でも素直に書けて、ここに綴った問いかけみたいなものも、今後の自分のアーティスト活動の軸を担っていくような内容になっていると思っているので、そういうものを書けて、それを聴いてもらえるのはとても楽しみです。今回で中野ミュージックを卒業ですが、「この後も僕は見ているからね」と中野さんからもおっしゃっていただいたので、気を抜かずにもっと頑張らなきゃいけない、という気持ちがすごく強いです。
――そんなお気持ちも刻めた一枚。トレーラーで予告映像と共に流れていますが、実際にご覧になってどんなことをお感じになりましたか?
XAI 第一章も第二章もかっこよかったんですけど、第三章はまた特にかっこいいなぁって思いました。第三章で終結する、そこで流れる曲に相応しいものになったんじゃないかと自分でも改めて思いました。
――劇場で聴きたいですね。そしてカップリングの「エバーグリーン」ですが、こちらの曲はすべてを包み込む大きな存在感のある一曲ですね。
XAI この曲はねごとの蒼山幸子さんの本当に素敵な歌詞で。さすがだな、と思いました。中野さんのホーリーで壮大な曲に幸子さんのシンプルだけどすごくロマンチックで、でもどこか影のある歌詞がマジックを起こしている曲だと思います。あと、この曲は劇中のすごく大事なシーンで流れるんです。私、きっと泣いてしまいます。はっとさせられるんじゃないかと思いますし「グッドバイ エバーグリーン」という言葉も、「今大事だと思っていたことが次の瞬間には形を変えてしまうこともある」という幸子さん自身からの深いメッセージも込められていて。グッドバイと言っているけれど、新しい一歩を踏み出すためのおまじないみたいな言葉になればいいなと思いながら書かれたそうなんです。作品を観て、みんながそういう気持ちになるんじゃないかな、と思うんですね。「グッドバイ エバーグリーン」という言葉に。絶望の中にある希望を歌っているとも思うので。
――タイトル曲では常に生まれ変わる想い。そしてカップリングでは一歩前へ踏み出す想い。軸の通ったシングルになりましたね。
XAI そう思います。
――蒼山幸子さんの歌詞を歌われてどんな印象がありますか?
XAI 私は本当に幸子さんの歌詞が好きなので、やっぱり幸子マジックじゃないけれど、リフレインしていく「グッドバイ エバーグリーン」という言葉が巡る感覚はさすがだなって思いましたし、プライベートでも仲良くさせていただいているのですが、その中で感じる幸子さんの決意も感じてもいるので、ねごとのファンの方も「おっ!」と思うような歌詞だろうと思います。本当にうれしかったです。全三章通してご一緒できたことが。
――では映画『GODZILLA 星を喰う者』に期待していることを教えてください。
XAI この映画を観られた皆さんが、いろんな事を考えさせられる作品だと思うんです。第一章、第二章に続く、第三章。凄みがある作品というか。セリフひとつとってもすごく考えさせられるし、自分と照らし合わせて「自分はどうだろう」って思わされる。それはすごくしんどいことでもありますし、辛い事でもあるんですけど、そういうふうに受け取ってもらえる作品だと思うので、今、観る意味はとてもあると思います。ぜひ観ていただきたいです。多くの問いかけをしている作品だと思うので、様々に思考するきっかけになる作品になるといいなと思います。
――最後に、中野ミュージックを卒業してからの目標や野望を教えてください。
XAI 実は、卒業式もしたんです。幸子さんと中野さんとお食事をして「これで卒業となります」ってお話をしてくださる会を開いたんですが(笑)。でも卒業後もきっと中野さんは見ていてくださいますし、第一章から第三章までご一緒させていただいた時間もそうですが、楽曲も素晴らしい作品が出来たと思っているので、それをもっと聴いてもらえるように、そして学んだことが嘘にならないように、音楽に対して誠実にやっていかなければと思っています。どんなアーティストになっていきたい、というものはまだ自分の中で明確に持ってはいないんですが、「アニゴジ」という作品に出会えたこと「live and die」という歌詞を書くことができたことは、今後の自分のアイデンティティになっていくと思うので、そこに向き合いながらもっともっと進化していきたいです。多くの人に自分の曲を聴いていただける存在になっていきたいと思います。
Interview&Text By えびさわなち
●リリース情報
アニメーション映画『GODZILLA 星を喰う者』主題歌
「live and die」
11月7日 発売
【アーティスト盤】
品番:THCS-60229
価格:¥1,300+税
【アニメ盤】
品番:THCS-60228
価格:¥1,300+税
<CD>
1. live and die(アニメーション映画『GODZILLA 星を喰う者』主題歌)
作詞:XAI 作曲・編曲:中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)
2. エバーグリーン
作詞:蒼山幸子(ねごと) 作曲・編曲:中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)
3.live and die(Instrumental)
4.エバーグリーン(Instrumental)
【スタッフ】
監督/静野孔文・瀬下寛之
ストーリー原案・脚本/虚淵玄(ニトロプラス)
キャラクターデザイン原案/コザキユースケ
音楽/服部隆之
副監督/吉平”Tady”直弘・安藤裕章
プロダクションデザイン/田中直哉・Ferdinando Patulli
CGキャラクターデザイン/森山佑樹
造形監督/片塰満則
美術監督/渋谷幸弘
色彩設計/野地弘納
音響監督/本山 哲
【キャスト】
宮野真守 櫻井孝宏 花澤香菜 杉田智和 梶 裕貴 小野大輔
堀内賢雄 中井和哉 山路和弘 上田麗奈 小澤亜李 早見沙織 鈴村健一
主題歌:XAI「live and die」(TOHO animation RECORDS)
製作:東宝
制作:ポリゴン・ピクチュアズ
配給:東宝映像事業部
©2018 TOHO CO., LTD.
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