2018年12月28日、アニメやゲームの劇伴作曲家として活躍する梶浦由記と椎名 豪が“Composers Summit Concert 2018”を開催する。しかもスペシャルゲストとして、やはり数々の映像作品で音楽を手がけている千住 明が参加。名だたるミュージシャン・ボーカリストや東京ニューシティ管弦楽団を率いて3人の作曲家は、多くのファンを沸かせるに違いない。セッションコンサートでは当然数多くのアニメ劇伴楽曲も披露され、両名はプレイヤーとしてもステージに立つ。そんな話題について梶浦と椎名が言葉を交わし合った。
――おふたりはゲーム、アニメ、実写映像作品と様々なジャンルで音楽を担当されていますが、特にアニメにおいて意識される点はあるのでしょうか?
椎名 豪 特殊効果でパーティクル(雨や雪など粒子状のものをシミュレーションして映像に加える特殊効果)ってあるじゃないですか。最近では例えば、3DCGで花びらをひらひら散らすとか、ああいうものにシンセのキラキラした音を合わせるということはできるだけしています。効果音に近いものを曲に合わせることでテンポが合った効果音になるというか。なので、曲に織り交ぜることはよくあります。ほかにも、歩いたときの1歩目に「ダンッ!」って合うようにしておくとか。アニメの場合、ゲームと違ってループする必要はないですし、尺合わせでやってくださいと言われた場合、基本的にそういうところは攻めていきますね。決めポーズというところには、「こういう音が入ったら気持ちいいだろうな」という音を曲に入れ込んでおくとか。元々僕は、「はったり」をかますのが好きなんですよ。「はったり」と言ってはいけないのかもしれませんが。キラキラした感じもそうですが、最近のアニメでよく描かれる風がふわっとした感じとかはフルートで風っぽさを表現することがよくあります。
梶浦由記 私は、アニメ音楽を作り始めた頃に思ったんですが「広さ」を忠実に表現するようにしています。異論はあるところかもしれませんが。実写の場合は裏切ってもいいんですよ。例えば、すごく広い野原のシーンで、すごくドライなピアノを流してもかっこよくなります。でも私の感覚では、アニメでそれをやってしまうと絵が縮まってしまう。人間って実写を観るときは、周囲をよく理解しているので勝手にいろいろと想像できると思うんです。でもアニメの場合は、ある程度音楽で空間の先を示唆してあげる方が効果的だと思います。「この空間はすごく広いんだよ」って。画面の外にも広がっている世界を音楽で足してあげるということですね。画面の広さを裏切った音楽は余程の事がなければ作らないですね。あと暗さ。暗いところで明るい音が鳴っているとやっぱり浮いてしまいます。ただ、背景美術を資料でいただいていても、絵として動いていないと画面の暗さって意外とわからないものなんですね。キャラクターたちの後ろにある暗闇がどの程度なのか、この物語の暗闇がどれくらいなのか。背景音楽ってその暗闇合わせで作ることがわりとあるので、後ろにある闇の量や重さが大切になってきます。それがない作品もありますよね。なのに、ドスンと重い音楽を作ってしまってはいけないので、重量感や広がり、湿度といった空気感などはきちんと理解しておきたいです。というか、そこを間違うと、アニメの質感が違って見えてしまうので。そこは実写よりももっと気を付けるところだと思っています。
――アニメの場合、音楽が映像を補完するという意味で共通していますね。
梶浦 そうですね。ある程度やったほうが効果が高いですよね。
椎名 そう思います。
――作曲家としての活動以外に、梶浦さんはここ10年ほどライブを重ねてきましたし、椎名さんも最近はステージに立つことが増えています。今回、プレイヤーとしてコンサートに立つことに対してどのような心境をお持ちですか?
椎名 僕が最初にコンサートをしたのは2017年(『テイルズ オブ オーケストラコンサート 2017 feat. テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』)だったんですが、開催前の2週間は1日6時間、ずっとハンドトレーナーで指を鍛えて練習していました。ピアノの先生にもついて頂きながら。
梶浦 ハンドトレーナーは私も持っています(笑)。
椎名 小指で音を出せなかったんですよね。あと、両手が一緒に動いてしまうし。その2週間は本当に地獄でしたね(笑)。自分が作った曲がピアノ中心ということもあったので仕方ないんですが、実はちゃんとピアノを触るのはそのときが初めてだったんです。ピアノに個体差があることも知らなかったので、練習室で使っていたピアノと、リハで用意されたピアノと、本番で使うピアノで感覚が違っていたときも驚きを隠せませんでした。ゲネで失敗したときは、どう収拾すればいいのかと本当に悩みました。
――コンサートとなるとそのときのことが思い出されますか?
椎名 そうですね。しかも、オーケストラと一緒のコンサートだったんですよ。本番になったら、同じメロを弾いているのにチェロとホルンの音が16分音符くらいズレて聴こえてきて……。それを頭で整理できないし、自身に経験がなかったので、指揮のどこを見ていいのかもわからず、途方に暮れました。
梶浦 生まれて初めてがオケコンというのはすごいですね。
椎名 『テイルズ オブ』シリーズの曲を演奏するコンサートだったんです。今もまだ、演奏していて気持ちいいというところまではいかないですね。正直、必死です。
梶浦 もう取り組み方が素晴らしいと思います。私も見習わなくてはと。
――梶浦さんはバンド出身ですし、ライブやコンサートは慣れた場所に思えますがいかがですか?
梶浦 アマチュアバンドの頃はライブをやっていましたが、プロになってからは完成された音源を作るということに喜びを見出していたので。ライブに大きな編成の楽器群を呼ぶことは難しいですし、計算し尽くした音響で聴いてもらうこともできないので、ライブで再現するということにそこまで興味はなかったですね。私の曲はコーラスもすごく重ねますし。でも、久しぶりにライブをやってみたら皆さんがすごくうれしそうに音楽を聴いてくれるので、その印象が強く心に残って……。同時性にハマってしまったんですね。ライブをやる理由はただただそれだけです。本当にあんな天国はないと思います。私の曲を聴くために皆様が集まってくださるなんて。しかもチケットを購入していただいてまで。
だから私にとってライブは、一所懸命作った曲をうれしそうに聴いてもらえる場所、つまり「ご褒美」なんです。曲を書くのは仕事(笑)。「頑張ったからライブをやろう」「だから聴きに来て」という感覚です。私のピアノは上手くないですが、私がいつもスタジオで聴いていて「うわー♪」ってなるプレイヤーさんを呼ぶので、聴いている人たちにも「うわー♪」ってなってもらおう、その思いです。それが達成できたら私はハッピー(笑)。
椎名 うわー、反省ですね。もう(楽譜に)シャープが多いくらいで文句を言わないようにします(笑)。
梶浦 あ、私も言いますよ。自分の曲を見て、「何?Fシャープメジャーって?死ぬじゃん」とか(笑)。
――でも、たしかにファンの皆さんに直接届けられる場であり、直接反応を見られる場所でもありますね。
椎名 そうですね。もう少し余裕を持ちたいですね。
梶浦 椎名さんはいい意味で真面目でいらっしゃるから。完璧なものを届けようという気持ちが強いんだと思います。私は「完璧じゃなくても皆と会えるならいいかな」というところが半分くらいあって、みんなが喜んでくれたら私もうれしいんです。だから絶対に自分でも楽しむことにしていますし、来てくれた人にも絶対楽しんでもらいたい。そのためにしっかり準備をします。ライブってエンタメだと思うのでやっぱり楽しんでほしいですね。
椎名 やっぱり反省です(笑)。でも、こちらが楽しんでいることって伝わりますよね。
梶浦 楽しくはないですか?
椎名 まだ客席の反応を見られるような余裕はありませんが……楽しみたいです!
梶浦 私はニヤニヤしていますよ。「どうだ!」って気持ちで(笑)。
Interview By 冨田明宏 Text By 清水耕司(SEVEN DAYS WAR)
●イベント情報
Composers Summit Concert 2018
開催日時:2018年12月28日(金)開場 16:30/開演17:30
会場:東京国際フォーラム ホールA
チケット:プレミアムシート12,000円/一般席8,800円
一部 演奏予定作品
梶浦由記
Fate/Zero、他
スペシャルゲスト :千住明
機動戦士Vガンダム
鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST、他
※上記以外の作品も演奏を予定しております。
※椎名豪の演奏予定曲も後日、 一部発表を予定しております。
出演者
梶浦由記(Pf.)椎名豪(Key.)
スペシャルゲスト:千住明
Vocals:今井麻美、 KAORI、 笠原由里、 Joelle、 YURIKO KAIDA
Musicians:
・東京ニューシティ管弦楽団
・今野均ストリングス
・是永巧一(Gt.)
・馬場一人(Gt.)
・高橋“Jr.”知治(Ba.)
・長谷川淳(Ba.)
・五十嵐宏治(Key.)
・ピアニート公爵(森下唯)(Pf.)
・佐藤強一(Dr.)
・阿部薫(Dr.)
・大平佳男(Mp.)
MC:冨田明宏
※順不同
チケット
プレミアムシート:12,000円(税込)
※特典:前方席・プレミアムシート限定記念品・専用口からのご入場
一般席:8,800円(税込)
※全席指定
※未就学児童入場不可
※お一人様1公演につき4枚まで
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本公演に関するお問い合わせ:KMミュージック045-201-9999(平日11:00~18:00)
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