話題のTVアニメ『転生したらスライムだった件』のエンディング主題歌「Another colony」を担当するTRUE。その突き抜けた歌声で、アニメの最後をかっこよく締めくくってくれている。「美しさやかわいさより、人間らしさを出せたら」と思って歌ったという、彼女の力強い歌声を聴いてほしい。
――最近、作詞家の名義である唐沢美帆さんの名前を、ワルキューレなど、本当にいろいろなところで拝見するのですが、そこからのファンもいるんですか?
TRUE いますいます。ワルキューレもそうですが『アイカツ!』で知ってくださった方も多い気がします。逆パターンもあって、TRUEを知ってくれている方が、唐沢美帆名義で作詞してる作品を見ようとしてくれていたりもするんですよ。私のデビュー曲がロボットアニメのオープニングだったので、『ガンダム』とか『マクロス』シリーズが好きな人は多いみたいです。
――作詞家とアーティストの両方で活躍されていますが、やはり自分でタイアップ曲を歌うというのは、また違う気持ちですよね。
TRUE そうですね。やっぱり自分で歌唱を担当するアニメというのは特別な気持ちはあります。私の人生の一部にもなるので……。特に今回の『転生したらスライムだった件』(以下:『転スラ』)は元々有名な作品だったので、お話が来たときは、「え?私が?」と思ったし、読んだら想像以上に面白くて。一気読みして、さらに何度か立て続けに読むくらい好きな作品だったので、「よっしゃ!来た!」と思いましたね(笑)。
――(笑)。どのあたりに面白さを感じました?
TRUE まず、昔のマンガやアニメなら、主人公は弱いところから始まって、だんだんと経験を積み重ねて強くなっていくパターンが多かったじゃないですか。でも『転スラ』って最初の何章かでチートスキルを習得して、無双になっちゃうんですよ。最弱であるはずのスライムなのに(笑)。でも、彼は強いんだけど、自分で戦わずして、仲間を集めて仲間を成長させていくんですよね。そしてそこにちゃんと一つひとつドラマがあって。今までにない面白さだなぁって思いました。
――水刃とか最強すぎますよね。
TRUE っていうか、捕食者スキルは無双過ぎますよ(笑)。
――4話の時点では、まだスライムのままでしたけど。
TRUE まだ序盤中の序盤で、オープニングの女の子は何ぞや?って感じですよね(笑)。でも、これからどんどん面白くなっていくので、見続けてほしいです!
――寺島拓篤さんの歌が流れるオープニングのアニメーションは、キャラクターデザインの江畑諒真さんが担当しているから、作画を見てるだけで楽しいんですよね。
TRUE エンディングも、クレジットの文字が切り替わっていくところとか、すごく手が込んでますよね。さらには5話から新たなエンディングに切り替わりました。歌詞の世界をきちんと絵に落とし込んでくださっていて。最後の横並びのシーンとか泣きそうでした。
――そのED主題歌「Another colony」は、曲をセレクトするところから始めたのですか?
TRUE そうです。でも、曲選びは結構苦戦しました。曲調でも悩んだんですが、それ以前に、自分の周りのスタッフ陣が変わった時期でもあったんです。いろいろな変化があり、新体制になっての第一弾だったんですね。続けていくためには、変化や進化は必要なことだとも思うんですけど、(新しいスタッフ)みんなが描く私の像がそれぞれ違ってて(笑)。「今まではこうしてたけど、もっとこうしてほしい」とか「もっとこうしたら素敵になります」とか、意見がバラバラだったんです。それならば一旦みんなの意見を聞いて咀嚼しましょう、みたいなことを繰り返していたので、曲自体もなかなか決まらず、最終的に決まったのがこの曲でした。
――今回は、ギターロックですね。
TRUE これまではどちらかというと元気で明るく楽しい、みたいなアーティストイメージがあったんです。それは『響け!ユーフォニアム』からのイメージでもあるので、すごく大事にしているんですけど、5周年にもなるし、チームも新しくなるならば、もう少し大人の女性として、地に足がついたような表現ができたらと思って、この曲を選びました。だからキーもこれまでよりグッと下げているんです。大人の女性として、言葉を届けるための歌を作りたいなというのは意識しました。
――みんなの思うTRUE像には意外なものもあったり?
TRUE ありすぎましたね(笑)。でも何周もして、最終的に楽曲もアートワークも、シンプルな方向に行ったような気がします。アーティスト写真もワンピースドレス1枚で、メイクも薄くてアクセサリーもなくて、靴も履いていないみたいな感じですから。どんどん削ぎ落とされていって、表現もよりシンプルになっていると思います。
――作詞に関してはどうですか?変化はありました?
TRUE 作詞に関してもテクニックというよりもシンプルな言葉でストレートに届くようにと考えました。それはリムルの生き方であり、私の生き方でもあると思うので。
――やはりアニメの持つものと自分の共通点を探っていくんですね。
TRUE そうかもしれないです。しかも探るのが上手になってる気がしますね。それは他のアーティストさんに提供するときもアニメの楽曲を作るときもそうなんですけど。「Another colony」もスタートは原作を読むところから始めたんですけど、作品を投影したうえで私が書きたいことは何だろうと考えていくと、先ほど話した変化の時期であり、自然と「負けちゃいけない」という、みんなの期待に応えたい、強くありたい!っていう思いを込めた歌詞が出てきたんじゃないかなって。
――それが自分の思いがいちばん強い言葉?
TRUE そうだと思います。私、サビで同じ言葉を使ったりすることがあまりないんですけど、今回は自分自身に言い聞かせる意味でも、何度も出てきているのかもしれないです。あとはDメロの“敗北も勝利も 大嫌いなんだ”っていうフレーズもすごく気に入ってます。
――それも気になったんですけど、どういう意味なんでしょう。
TRUE 作品の世界観にも繋がるんですけど、自分に置き換えたときに、誰かと戦ったりすることに飽きちゃったんです。勝つ喜びも負ける悔しさにも飽きてしまって……。私は目標とか、こういうアーティストになりたいという明確なイメージがあってこの世界に入ったんですけど、追いかけるほどに自分とのギャップに気づくというか。憧れている存在になれるわけではないし、追いかければ追いかける程遠いなと感じることが多いんです。であるならば、敗北している自分も音楽にすればいいんじゃないかな?っていうことに気づいて。すごく未完成だったり未成熟な言葉も、音楽にすることで意味を持ってくれるんじゃないかなって思っていたところから出たフレーズなんです。
――すごく深いですね。どうしても勝ちたいって思いますからね、人は。
TRUE そうなんですけどね。そういうところで音楽を作らなくてもいいのかなって思えたんです。あと、リムルは異世界で仲間を増やし、国を大きくしていくけど、私も去年1年間ですごくいろんな国で歌をうたわせてもらって、そこでもらったものがすごく大きかったんです。そこから2コーラス目の“たとえば 言葉が違くてもいい”という歌詞が出てきたんです。ここは1年を通じて感じたことがそのまま言葉になっています。
――カップリングの「名前のない空腹」は、どんな曲ですか?
TRUE コンペで楽曲を決めたんですけど、周りからは、「決意や力強さを歌ったものにしてください!」「夢に向かう強さはどうですか?」って言われたんですけど「これ、ラブソングじゃない?」と思って(笑)。全然ラブソングっぽくない楽曲だからこそ、どうしようもなくもがいているような出口のない、さまよっているようなラブソングを書いたら面白いんじゃないかなと思って、ラブソングを書きました。
――ラブソングと言われると、もっとふわふわしたものを想像するんですけど、TRUEさんが言うと全然違いますね(笑)。
TRUE はははは。私、幸せなラブソングをほとんど書いたことがないかもしれない!聴いてくださった方が、「Aメロから絶望」って言ってました(笑)。手放してしまった恋愛、でも欲しくて、その欲しさの行き場がないみたいな。夜中にどうしようなくなって、バケツでアイスを食べるみたいな感じとも言われたんですけど、まさにそれだなと。食べても食べても満たされない欲望にもがいているような感じ。あと、実はこれも『転スラ』の作品からワードをいただいているんですよ。“捕食”とかはまさにそうですよね。
――ホントだ!でも繋がってはいないんですよね?
TRUE 繋がってはないです。デビューしたての頃は、挿入歌になってもおかしくないように作っていたんですけど、いつからかいろんな考え方が変わってきて、もっと自由でいいなって。前回のアルバム『Lonely Queen’s Liberation Party』が解放というテーマだったので、その制作前くらいから、どんどん解放していかないと自分のクリエイティブなところが狭まっていっちゃうなと感じてたんです。そういう意味でも、好き勝手思ったことを書いてます。
――でも、いつか幸せなラブソングも書いてくださいね(笑)。
TRUE じゃあ今度書きますかね~(笑)。
――今回のシングルは2曲ともライブで盛り上がりそうですけど、2月10日には5周年記念のライブがありますね。シングルコレクションというタイトルだから、すごいことになりそう。
TRUE まる5年経ってこれから6年目だよっていうライブなんですけど、なかなかない機会なのでシングル曲は全部歌おうかなと思っています。これまでのライブはアルバムを引っ提げてだったので、アルバム曲+何曲かだったけど、今回はそれも関係ないので。でも、5周年経ったからひと区切りというのも、なんか嫌なので、次に繋がるようなライブにしたいなと思ってます。
――先日のTRUEさんの恵比寿リキッドルームでのワンマンライブを見て、すごく空間が温かいというか。会場もだんだん大きくなっていき、その輪も広がっているなと思ったし、とても幸せな気持ちになったんですよね。
TRUE ありがとうございます。下北沢のライブハウスから始まって、ちょっとずつ大きくなっているんです。今では盛り上がり方も揃っていて、こうやってお客さんと一緒にアーティストって育っていくんだなという実感はすごくあるし、それはすごくありがたいことだなって思います。5周年記念ライブはvol.1と書いてあるので、vol.2、3と、見せ方をちょっとずつ変えて何本かやりたいなぁと思っているので、まだ何も決まってないんですけど(笑)、楽しみにしていてください。
Interview&Text By 塚越淳一
●リリース情報
TVアニメ『転生したらスライムだった件』エンディング主題歌
「Another colony」TRUE
11月7日発売
品番:LACM-14799
価格:¥1,200+税
<CD>
1:Another colony
作詞:唐沢美帆 作曲:中野領太 編曲:BBC
2:名前のない空腹
作詞:唐沢美帆 作曲:柴山太朗 編曲:成瀬裕介(onetrap)
3:Another colony(Instrumental)
4:名前のない空腹(Instrumental)
●ライブ情報
-TRUE 5th Anniversary Live-
Sound! vol.1 〜SINGLE COLLECTION〜
2019年2月10日(日)【東京】TSUTAYA O-EAST
開場 16:00/開演 17:00
料金:¥6,000+税
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