TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDがOP&ED主題歌のみならず、作中の音楽制作も担ったアニメ『ガイコツ書店員 本田さん』。ここではTECHNOBOYSの松井洋平、石川智久、フジムラトヲルの3人と、OP主題歌「ISBN~Inner Sound & Book’s Narrative~」で本田さんとして参加した斉藤壮馬の4人による豪華対談が実現!捧腹絶倒のトークをここにお送りする!
――今回の『ガイコツ書店員 本田さん』という作品の印象を皆さんに伺いたいのですが。
フジムラトヲル そこは元書店員の松井さんから(笑)。
斉藤壮馬 そうですね。レコーディングのときにも書店あるあるをお話しくださいましたし。
松井洋平 書店あるあるをね(笑)。本当に想像を絶するくらい、いろんなお客さんが来ます。
――原作の方もすごいですが……。
松井 これは氷山の一角だと思っていただければ。
斉藤 むしろ描ける範囲の表現だそうですね。
松井 逆にセレクトに困っただろうなってくらいに起こるんですよ、様々なことが。やっぱりマンガにするときに柔らかく描かなきゃならないじゃないですか。でも柔らかく描けない部分のところも多いんですよ。そういう背景がいろいろと見えてきますね、僕からしたら。やんわりと、優しい気持ちになれるストーリーがいっぱいあって、それは素敵だなと思います(笑)。
斉藤 実際に書店で働いている方からも結構お手紙をいただくんです。原作がコミックエッセイなので、事実を元にしながらも誇張して描いているのかなと思うんですが、「このエピソード、そのままありました!」というのもいただいたりもします。僕も本が好きなので書店にはよく足を運ぶんですけど、バックヤード側を見ることはないですし。本屋さんって静かにしていなければいけない、みたいな空気があると思ってたんですけど、裏側は戦場なんだな、ということを知りました。それにマンガとしてもすごく完成されているなとも感じます。ただ、演じるとなってはめっちゃ大変だろうなと、そんな気は薄々感じていました。普段から、台本の自分のセリフがあるページの左上を折っているんですけど、この作品に関しては、すぐに折るのをやめました。セリフが多いので無駄だな、と(笑)。それくらい本当に密度の濃い原作だし、「たしかに本は何冊まで持つか悩むよな」とか、本好きにはたまらない内容だな、と思いながら読ませていただきました。
――フジムラさんと石川さんはそんなお話を松井さんから聞かれたりしなかったんですか?
松井 「俺、本屋でこんなことあったんだー」とか言わないよね(笑)。
フジムラ こっそり見に行ったことはあったけどね。働いてる姿を。
石川智久 一緒に行ったよね。
松井 え!?それ、俺、知らないんだけど!
フジムラ 見に行って、そしてすぐに逃げるっていう嫌な客だったよね。
石川 「あ。いたいた!」って。
フジムラ 僕も飲食業で働いていたんですけど、接客業って本当にいろんなお客さんがいらっしゃるので、原作のマンガを見ていても「こういうお客さん、本当にいるんだろうな」って思いながら読みましたね。僕はどちらかと言うとお酒を飲むお客さんの多い場所だったからちょっと違う種類ですが、いろいろなタイプのお客さんを見てきたので、「大変だろうなぁ」という同情も感じながら。どうしてもうまく、店員の側が接しなくてはいけないので、大変だろうなぁ、と実体験と合せながら読んでいました。
石川 本屋さんというと、トイレに行きたくなりますよね。
松井 言うよね。
斉藤 お決まりの現象ですよね。でも本屋さんってなかなかトイレを貸してくれないですよね。だからもしも本屋で、「100円でトイレを貸す」というサービスをしたら儲かるんじゃないかなって。
石川 いいね。でも本当に、「行きたくなるけどトイレはない」ということがよくあるな、と思い出しました。
松井 あと、書店あるあるとしてはね、人の生き死ににすごく敏感!「誰々が賞を獲った」とか、「誰々が亡くなった」っていうときは大変で。僕はPC関連の書籍担当だったので、普段は人の生き死にがあまり関係ないけど、唯一「今だ!」ってくらいに大変になったのは、スティーヴ・ジョブズが亡くなったとき。
斉藤 やっぱり!
松井 もう、棚の隅の方に置いてあったスティーヴ・ジョブズの本を平置きして。「今、売れろ!」と。
斉藤 世の中の動きをすごく把握した並べ方ですよね。
松井 だから書店に行って、そこで面出しされている本の著者を調べれば、世情がわかるし、敏感なのも書店なんです。
――そんな『ガイコツ書店員 本田さん』のOP&ED主題歌の楽曲制作のお話が来たときにはどのようなことをお感じになったのでしょうか。
フジムラ 「結構激しめな曲で」というのは発注としてありました。でも名義としては「TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND feat.本田」なので、オープニングとして成立して、なおかつTECHNOBOYSの曲としてだけでも成立するような曲にするにはどうしようか、というところから制作は始まった感じですね。
石川 もう、その着地点が見当たらなくて。
フジムラ ギターサウンド自体が僕たちの曲には基本的にないので。
松井 ただアイデアとして「ISBN」(国際標準図書番号)って叫びたいっていうのだけはありましたね。
石川 ハードにするなら叫ぶしかないよねってことで。そこから「斉藤さんは叫べるのかしら……」と(笑)。斉藤さんのこれまでの曲を聴いていると、そこまでハードな曲は歌っていらっしゃらないけれど、ここは斉藤さんに叫んでいただこう!ということで、「I!S!B!N!」と「Nine,Seven,Eight,Four!」と叫んでいただきました。
松井 地球上に「I!S!B!N!」って叫ぶ曲はないですから。
斉藤 そうですね。
松井 多分、今後も出ないから。
(一同爆笑)
――ギターで、というのは最初からあったんですか?
石川 ハードめに攻めろと言われたら、そうなりますよね。シンセではハードな曲というのは無理でしょうね。
松井 どうせだったらちゃんと、変態ギタリストさんに頼もうと思って、レコーディングでは山本陽介さんというギタリストにお願いしたんです。『コンクリート・レボルティオ』というアニメのエンディングや劇伴をやっていて、僕らも繋がりがあったのでお願いしてみたら快く引き受けてくださって。でも思っていた以上に変態さん(笑)。
石川 着ているものからもう変態だった(笑)。柄に柄。こんなに派手な人だったんだ!って思いました(笑)。
松井 僕らは正統派ギタリストに正統派でやってもらおうと最初は思っていたんですけど。普段は試せないようなことを「やってみていいですか?」って自分から目を輝かせて言ってくる感じで。最終的にはギターを弾かずにエフェクトだけを弄っているというね(笑)。
石川 プラグだけ、とか(笑)。ギターじゃないじゃん。
松井 ギタリストじゃなかった(笑)。普段我々がシンセでやっていることと変わりがなかった(笑)。そんなことまでやっていただいて、ゴリゴリのギターサウンドで、しかも他にはない形で表現してもらいました。ギタリストが言ってたから間違いないよね。「ほかにはない!」って。
石川 うん。こんなことやらせてもらえないからって。
――そんなTECHNOBOYSさんですが、斉藤さんとの作業はいかがでしたか?
松井 アイディアをたくさんいただいて。しかもそれがすごく面白いんですよね。「それいだたけるならぜひ!」という感じで。
斉藤 途中から「とりあえずやってみましょう!」っていうやりとりが多かったですしね。とにかく楽しかったです。歌詞にもすごく遊びがありますし、真面目に実験的なことをする、というのがすごく楽しい試みだな、というのはオファーをいただいたときから感じていました。松井さんとフジムラさんのディレクションもとにかく優しかったです。美味しいスイーツのお店の話とかをしながら、だんだんみんなハイになっていきましたよね(笑)。最初の30分くらいは「ここはどうしましょうか」とか、結構じっくりとお話をさせていただいて、録りながら「これもやってみよう」「こっちはどうだろう」みたいな感じで、優しく盛り上げてくださったので、非常に楽しいセッションだったなと思います。
――斉藤さんからあがってきたアイディアで面白かったものを教えてください。
松井 本田さんらしさをどう出していくか、というところは悩んだんです。やっぱりある程度のカッコ良さは出したいな、という部分はみんなで共通項としてありつつも、どうしていくかというところでハイブリッドにしていこう、とおっしゃったんですよね。
斉藤 そうでしたね。
松井 「ハイブリッドでいく」という方向性が決まったときに、腰を据えられて、「じゃあ、ここはこうしましょう」とか「叫んでみましょうか」とか本田さんなりの叫び方が出てきたり、こちらから提案させていただいたところもあったり、最後に「断末魔みたいな声を聞かせてください」とお願いしたり。
斉藤 金属音みたいになっていましたね。たとえばAメロでいうと、「震撼」とか「一択」とか結構シャープな発声をしているんです。本田さんって僕の地声に近い発声というか、あまり喉を締めずに声を出しているんですけど、ずっとそれでいっていても「もうこれ以上……収まらな~い」のところだけ本田さんの地声でやっていて。歌詞にもギミックがあるんですが、歌詞の複合的な意味を声でも表現していこう、という感じでやらせていただきました。
――松井さんの歌詞はいかがでしたか?
松井 書店員の気持ちを描くような歌でもないので(笑)。できるだけダブルミーニングをもたせたものにしたいなと思ってはいたんですけど……。どうせやるなら、と全編においてダジャレを入れました。あとは本田さんの主題歌をやるってプロデューサーから聞いたときから「ISBNって叫びたい」っていうのがずっとあって。ただ本田さんが歌うことになったし、ハードにはならないよねってことで「ISBN」って叫ぶのはお蔵入りかなと思ったんですけど……、ハードに歌ってくれって発注に戻ってきました。
フジムラ 元書店員のいる作曲家チームでなければ「ISBN」って歌う曲は作らないだろうね。
松井 歌詞にしようぜ!って言わないですよね。でもこれをきっかけにみなさんが本についているISBNの番号を意識してくだされば。ひとつ雑学としてね。書店員としてはISBNコードで伝えていただければ、確実に本を探せるからね。
斉藤 間違いない(笑)。「あの……ガイコツの……」
松井 「なんだろう?医学書かなぁ……?」っていうことにはならないですからね。
――雑学ですね(笑)。そうして斉藤さんの声が入ったトラックが、アレンジ担当の石川さんの元へ。
石川 やってまいりました。そして加工に次ぐ加工というね(笑)。
――ミックス作業はいかがでしたか?
石川 最初に僕の方でプレミックスをするんですけど、なかなか音圧がすごくて声が前に出てこないので、これをどうしようかなっていうのが大変でした。バランス感覚を要しましたね。TECHNOBOYSってそもそも音が多いんです。本当はこんなになくてもいいんですけど、多いので、それを下げたり出したり、ちまちまと夜中に作業をするわけです。そしてそれをエンジニアさんにお送りして、ちゃんとわたしが意図したものを反映させてくれるわけです。それを聴きながら「さすがだな」と。とにかくオタクになりながら作業をしていました。
――レコーディングもすごく楽しかったんだろうな、と思える華やいだ音ですよね。
石川 もうね、本田さんの気分でしたよ。棚がもう……。
松井 収まらない(笑)。うまい!
フジムラ とりあえず入れておけ、でしょ?(笑)。
松井 こんなの発注した覚えないよー!とかね(笑)。
石川 夜中に叫びました。「なんだこれー!再生できるかこんなものー!!」って。
斉藤 「求められているモノはなんなんだい?」と。
松井 だから全体的に本田感あるよね。
石川 すごくシンパシーを感じる。
――そんな1曲が完成した今、どのようなお気持ちですか?
松井 よくまとまったな、というのがまずひとつですね。
フジムラ ちゃんとTECHNOBOYSらしさも出つつ、キャラソンの性質もちゃんと持っている作品に出来たな、という実感があります。それはレコーディングのときにディスカッションがちゃんとできたからだと思いますね。今回はオープニングは、僕らTECHNOBOYSとしての曲でもあり、キャラソンでもある、というところを加味しながらすごくていねいに作れた、というのはあります。すごく納得のいく作品になりました。面白いし、一回聴いただけでは見つけられないギミックも多いので、それも楽しんでもらいたいですね。
松井 本当に“feat.本田”感が出ていますよね。
斉藤 そうですよね。曲をいただいたときには、曲もカッコいいけどあくまでも本田さんとしてなので、どういうふうに歌えばいちばん魅力を引き出せるかなと思ったんですけど、結果、ディスカッションからのレコーディングを経て自分もすごく楽しくやらせていただきましたし、この曲からアニメが始まって、15分間わしゃわしゃっと物語があって、素敵なエンディングに繋がっていく、というひとつの流れが見えるような曲に仕上げていただいたので、本当にありがたいなと思います。
石川 ライブが楽しみですね。
松井 ぜひ歌ってもらいたいですね。
フジムラ でも楽器を弾くのも大変(笑)。
斉藤 これは書店員全員集合バージョンとかもあるといいですよね。
松井 なんだったら書店員集めてライブしたいですよね。みんな、首振ってるのかなって思ったら頷いてる、みたいな(笑)
斉藤 あるあるのライブですね。
――この曲はきっとカラオケなどにも入って、アニメをご覧になった皆さんが歌うのではないかと思いますが、歌うときのポイントを教えてください。
斉藤 歌う際には……好きに叫べばいいんじゃない?と。1曲ガーッと叫びきるとすごく気持ちがいいと思うので、ぜひ叫び切ってもらいたいです。
松井 タイトルも「ISBN~Inner Sound & Book’s Narrative~」ってことで、体の中から湧き出るサウンドと本の物語、ということですしね。それもおっさんのダジャレを若い人が歌っているからまたいい!これぞハイブリッド!
斉藤 いろんなものが融合していますから。
――本編も楽曲も楽しんでいきたいです。では最後に読者へメッセージをお願いします。
フジムラ 初めて音楽全般をやらせていただいたので、オープニングから劇伴、エンディングまでを通して聴いていただけるとうれしいです。物語のひとつの軸を音の面でも作れたかな、と思っていますし、音の面で演出できていると思うので、そこを感じてもらえたら。
石川 今回のテーマは「無責任」で。書店員の皆さんが大変な目にあっているなか、テレビの前で無責任にそのわちゃわちゃを俯瞰した目で見てるイメージで曲を作ったので、ぜひそのあたりを楽しんでいただきたいです。
松井 書店に行ったときに、この作品の音楽が頭の中に流れてくれたらうれしいです。「ISBN~Inner Sound & Book’s Narrative~」が頭をよぎって、思わず書籍の裏にあるISBNナンバーを見てしまったり、僕らの曲をきっかけに、本屋に行く人が増えてくれたらもっとうれしいです。
石川 この曲で「ISBN」の認知度が高まるよ。書店員さんが楽になる!
松井 本当に皆さん。本を探しに行くならISBNの番号を控えてきてくれると探しやすくなるので。よろしくお願いします。……って、何の話だっけ?
石川 ISBNの話。
松井 ISBNよ、届け!!!!
斉藤 繰り返しになってしまいますが、素敵な楽曲をいただけて、僕自身もオープニングを楽しく歌わせていただきました。一話15分ほどで非常に短い話にはなっているんですが、この曲から濃い話が始まりますので、ぜひ楽しんでいただきたいと思います。僕もこれから皆さんと一緒にオンエアを楽しみたいと思います。最近では電子書籍も普及していますし、僕も利用していますが、やはり紙の本の良さとか、書店で出会う偶然の一期一会みたいなものがすごく好きだったりするので、この作品をきっかけに、そしてこの楽曲をきっかけに、本屋さんに興味を持ってくれる方が増えてくれたらうれしいなと思っております。
Interview & Text By えびさわなち
●リリース情報
TVアニメ『ガイコツ書店員 本田さん』OP/ED主題歌
「ISBN ~Inner Sound & Book’s Narrative~/Book-end, Happy-end」
10月31日発売
品番:LACM-14803
価格:¥1,200+税
<CD>
1.ISBN ~Inner Sound & Book’s Narrative~/TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND feat.本田(CV.斉藤壮馬)
2.Book-end, Happy-end/TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND feat.高野 寛
3.ISBN ~Inner Sound & Book’s Narrative~(Instrumental)
4.Book-end, Happy-end(Instrumental)
●作品情報
TVアニメ『ガイコツ書店員 本田さん』
放送中
TOKYO MX毎週日曜25:35~
BS11毎週日曜24:30~
サンテレビ毎週日曜25:30~
KBS京都毎週日曜26:10~
J:COMテレビ毎週月曜22:30~
※放送日時は変更になる場合がございます
【スタッフ】
原作:本田「ガイコツ書店員 本田さん」(MFCジーンピクシブシリーズ/KADOKAWA刊)
監督:轟おうる
シリーズ構成・脚本:岡嶋心
キャラクターデザイン:柿木直子
音響監督:今泉雄一
音響制作:HALF H・P STUDIO
音楽:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
音楽制作:ランティス
アニメーションプロデューサー:齋藤雅弘、山脇光太郎
制作デスク:齋藤晃弘
アニメーション制作:DLE
製作ガイコツ書店員本田さん製作委員会
主題歌
OP「ISBN ~Inner Sound & Book’s Narrative~」/TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND feat.本田(CV.斉藤壮馬)
ED「Book-end, Happy-end」/TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND feat.高野 寛
【キャスト】
本田:斉藤壮馬
カミブクロ:三瓶由布子
ホウタイ:喜多村英梨
ランタン:斉藤貴美子
オキツネ:伊藤静
コオモテ:遠藤綾
ラビットヘッド:山本和臣
フルフェイス:安元洋貴
ガスマスク:羽多野渉
溶接マスク:増田俊樹
ケンドウ:西山宏太朗
アーマー:岡村明美
ペストマスク:日笠陽子
アザラシ:村瀬歩
魔術師:中尾隆聖
©本田・KADOKAWA /ガイコツ書店員本田さん製作委員会
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