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2018.11.02

アーティスト・ReoNaの「誕生」を描き出した10代最後の夜。ReoNaワンマンライブ“ReoNa ONE-MAN Live 『Birth』”ライブレポート

アーティスト・ReoNaの「誕生」を描き出した10代最後の夜。ReoNaワンマンライブ“ReoNa ONE-MAN Live 『Birth』”ライブレポート

2018年にアニメ音楽のシーンに颯爽と登場した期待のシンガー、ReoNaのワンマンライブ“ReoNa ONE-MAN Live 『Birth』”が、10月19日(金)に東京・Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREで開催された。この日は彼女にとって20歳の誕生日のちょうど前日。つまりは10代最後の日ということになる。自身のオリジナル曲はもちろん、神崎エルザ starring ReoNa名義で発表したナンバー、そして思い入れの深い楽曲のカバーを歌い重ねていくことで、アーティスト・ReoNaの「誕生」を描き出す一夜となった。

この日の会場となったMt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREは、座席に座りながらゆったりと楽しむことができる、コンサートホールタイプのライブハウス。ステージには楽器や照明器具がぐるりと並べられ、決して派手さはないが、そのぶん親密な空気が漂う。バックバンドのメンバーがステージに上がってスタンバイすると同時に照明が暗転し、ReoNaがゆっくりと登場。まずは愛用のアコースティックギターを手にし、神崎エルザ starring ReoNa名義で発表した楽曲「ピルグリム」でライブをスタートさせる。

神崎エルザ starring ReoNaとは、ReoNaがTVアニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』(以下、『GGO』)に登場する歌姫・神崎エルザによる劇中歌を担当した際の名称。「ピルグリム」はその中でも一番最初に公開された楽曲であり、いわばReoNaというアーティストがメジャーシーンに姿を現した「始まり」の楽曲でもある。「巡礼者」としての覚悟を示したような歌詞は、新しい一歩を踏み出すのに相応しい内容で、照明の眩い光を背にしながらアコギをかき鳴らす彼女の、朝露のように儚くも美しいニュアンスを湛えた歌声は、この先の明るい旅を予感させるものだ。

MCでは一言一言を噛み締めるように、ゆっくりと言葉を紡ぎ出していく彼女。「今日という日をずっと心待ちにしてました」と喜びの気持ちを伝えたのち、「それではみなさん、おやすみなさい」という挨拶を合図に、自身のオリジナル曲「おやすみの詩」、そして同曲が生まれるきっかけとなったデビュー前からのレパートリー「怪物の詩」を立て続けて歌唱する。明滅するライトと荒々しいバンドサウンドが激情的な景色を広げるなか、ReoNaは息苦しさと力強さが入り交ざったようなボーカルで、閉塞的な状況の中での心の叫びを形にする。そこからさらに未CD化のナンバー「Let it die」を披露。スケールの大きなメロディーとエモーショナルなアレンジメント、英詞パートを含む楽曲の新味が、彼女のシンガーとしての新しい可能性を引き出す。

小学生の頃からアニメソングやボカロソングを聴いたり歌っていたという彼女は、続いてその中から2曲をカバー。まずはTVアニメ『東京喰種トーキョーグール√A』のEDテーマとして知られるamazarashi「季節は次々死んでいく」で、幾多の絶望の季節の先にある「今」を炙り出す。続くジミーサムP「Starduster」ではミラーボールが星空の世界を演出するなか、悠久の時を超えて出会えるかもしれない「愛」への希求をドラマティックに描写。その歌詞には「怪物の詩」のテーマにも繋がるような部分があり、今回のライブではカバーの選曲にも彼女がアーティストとして表現したいテーマや方向性が反映されていたように思う。

続くMCで、神崎エルザの劇中歌にて自身の憧れだったアニメソングを歌うことができ、本当のバースデーとはまた違った意味での「誕生日」ができた喜びをあらためて言葉で表すReoNa。ここで神崎エルザ starring ReoNa名義で発表した楽曲のなかから、『GGO』劇中の戦闘シーンで使用された2曲「Disorder」「Independence」を続けて披露する。起伏に富んだ目まぐるしい展開がピトフーイを彷彿させる前者、圧倒的な疾走感で畳みかける後者――双方ともステージから放出される熱気はすさまじいもので、観客もクラップやペンライトで応酬して熱狂的な空間を作り出す。

アップチューン二連弾で会場を一気にヒートアップさせたReoNaは、続いて「ここからはゆっくり聴いてくれたらうれしいです」と語ってアコースティックコーナーへ。照明が消されて真っ暗闇となったステージに、ReoNaだけが浮かび上がるように小さな灯りが灯され、アコギのみをバックに蝶々P「心做し」のカバーを切々と歌い上げる。彼女はそこからさらに森山直太朗「生きてることが辛いなら」を歌唱。“生きてることが辛いなら いっそ小さく死ねばいい”という歌い出しのフレーズが印象的なこの楽曲だが、その言葉には、痛みを知っているからこその無責任ではない眼差しが感じられる。それはReoNaが志向する表現と近しいものではないだろうか。

ReoNaは歌い終わったあと、自身が標榜する「絶望系」というキャッチフレーズについて触れ、「私は、私が辛いときに、自分を重ねられる曲がなかなか見つからなくて。家族との不和、孤独、絶望感、身近な苦しみのはずなのに、なんで代わりに言葉にしてくれる人がこんなに少ないんだろうと思って」「いろんな絶望に触れてきた私だからこそ、疲れて、悲しんで、苦しんでる人たちに、私の今までが響くことで、癒しになることができればと思っています」と、みずからの創作の源泉について語る。そして次の曲「トウシンダイ」へ。この曲も「怪物の詩」と同様に彼女がデビュー前から歌ってきたナンバーで、大人になると共に失っていくであろう何かを手放したくないという気持ちを、願うように歌う姿が印象的だった。

さらに「何が幸せなのかは人それぞれで、押し付けられると、逃げたくなってしまう」と語った彼女は、人間同士の分かり合えない気持ちをカナリアとの関係性で比喩したようにも取れる「カナリア」を、どこか感傷的な声でじっくりと歌い上げる。途中のファルセット部分で聴かれた島唄のような歌い回しは、彼女自身が奄美大島出身ということが関係しているのかもしれない。その後、再びバンド全員が演奏に加わって、Aqua Timez「決意の朝に」をカバー。辛い気持ちを押し隠すのではなく、自分自身の一部として受け止めようという楽曲のメッセージが、ReoNaならではの表現によって心にしっくりと馴染んでいく。

ここでバンドメンバーの紹介を挿み、再び神崎エルザ曲の披露へ。まずはショパン「別れの曲」をモチーフに使った爽やかで眩いナンバー「ヒカリ」、そしてムソルグスキー「展覧会の絵」のメロディーを引用した「step, step」と続け、開放的なサウンドと伸びやかなボーカルで会場の景色を一変させる。さらにミディアムテンポのロック曲「レプリカ」で模造品の人生にノーを突きつけると、『GGO』の最終話で神崎エルザがライブで歌った「Rea(s)oN」を歌唱。生きる理由を見つけた喜びが表現された歌詞は、神崎エルザの心情に寄り添ったものだが、曲名がReoNaの名前のアナグラムとなっていることからもわかるとおり、おそらくReoNa自身のパーソナルともリンクするもの。再度アコギを手に弾き語った彼女が、終盤の“そしてあなたがいる ただそれだけで 命は輝くから”というフレーズに込めた感情の熱は、オーディエンスの心にも火を灯したはずだ。

そして「どれだけ楽しくても、終わりが来てしまうのは、こんなに寂しいんだね」と素直な気持ちを吐露した彼女は、この日最後のナンバーとして、ReoNa名義の「デビュー曲となったTVアニメ『ハッピーシュガーライフ』のEDテーマ「SWEET HURT」を披露。ただ甘いだけでなく、痛みや儚さも含んだ「愛」を描いたこの楽曲を、繊細かつふくよかな歌声に乗せて表現する。特に“わたしの命をあげよう”という歌詞は、まるでみずからのライブを見に来てくれた人たちへの感謝の言葉のようにも響き、ライブは祝祭的な高まりと共に大団円を迎えた。

バンドが演奏を続けるなか、ReoNaはライブ終了時のお決まりのセリフ「じゃあな」と挨拶し、客席に向けて丁寧にお辞儀をして退場。アンコールもなく、神崎エルザ starring ReoNaとしての「始まりの歌」で幕を開けて、ReoNaとしての「始まりの歌」で締め括る構成の潔さが実に彼女らしい。来年には東京・名古屋・大阪・福岡の4都市を巡る全5公演のワンマンツアー“ReoNa Live Tour 2019 “Wonder 1284””の開催も決まっているが、彼女のアーティストとしての新たな「誕生」を目撃できたのはこの日の公演のみ。その瞬間に立ち会えた人は、間違いなく幸運だったはずだ。

Text by 北野 創(リスアニ!) Photography By 山本哲也

“ReoNa ONE-MAN Live 『Birth』”セットリスト
10月19日(金)【東京】Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

<セットリスト>
M1. ピルグリム
M2. おやすみの詩
M3. 怪物の詩
M4. Let it die
M5. 季節は次々死んでいく
M6. Starduster
M7. Disorder
M8. Independence
M9. 心做し
M10. 生きてることが辛いなら
M11. トウシンダイ
M12. カナリア
M13. 決意の朝に
M14. ヒカリ
M15. step, step
M16. レプリカ
M17. Rea(s)oN
M18. SWEET HURT

●ライブ情報
「ReoNa Live Tour 2019 “Wonder 1284”」
2019年2月23日(土)大阪・BananaHall(OPEN 17:00 / START 17:30)
2019年2月24日(日)愛知・E.L.L(OPEN 17:00 / START 17:30)
2019年3月1日(金)福岡・DRUM Be-1(OPEN 19:00 / START 19:30)
2019年3月9日(土)東京・東京キネマ倶楽部(OPEN 17:00 / START 18:00)
2019年3月10日(日)東京・東京キネマ倶楽部(OPEN 16:00 / START 17:00)

オフィシャルFC「ふあんくらぶ」会員限定2次チケット先行
受付期間:2018年 11月 2日(金)18:00 ~2018年11月11日(日)23:59
プレイガイド:イープラス
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