ぽん(ボーカル)と小島英也(ギター/トラックメイク)からなる音楽ユニットのORESAMAが、ワンマン・ライブ“ワンダーランドへようこそ ~in AKASAKA BLITZ~”を9月13日に東京・マイナビBLITZ赤坂で開催した。
昨年10月より「ワンダーランドへようこそ」と銘打った単独公演を展開してきたORESAMA。初回のTSUTAYA O-WEST公演、2018年1月のShibuya WWW X公演、同年4月の恵比寿LIQUIDROOM公演と、回を増すごとに会場の規模が拡大してきたことからもわかるとおり、彼らの音楽は今、大きな広がりを見せている。それはORESAMAがこの1年半のあいだに数々のアニメタイアップ曲を手掛けた影響も大きいだろうが、何よりも彼らの楽曲とライブにそれだけの力があるから。今回の公演は、そのことを十二分に証明する内容だった。
フロアいっぱいのお客さんで熱気が上昇するなか、照明が落ちてこの日のライブが開演!真っ暗闇のステージにひとりのダンサーが登場し、中央の高台にスタンバイすると、地面から緑色のレーザー光線が照射される。ダンサーはその光に手を差し伸べて客席方向へ反射させたり、ライトセーバーのように操ったりと、レーザーを使ったパフォーマンスでオーディエンスを魅了。近未来感に満ちた空間を作り出して、会場の期待感をいっそう高める。
そしてぽんとギターを携えた小島、サポート・メンバーの三浦光義(ベース)とMONICO(DJ)が登場。「今夜は最高の夜にしましょう!」(ぽん)という声を合図に「ワンダードライブ」からライブをスタートさせる。舞台には、ぽんが立つステージ中央の台以外にも、左右に大きな台が備え付けられており、竿もののプレイヤー二人はそれぞれの台に乗ってみずからの演奏をアピール。DJブースはさらに大きい2.5メートルほどの高さの台の上にあり、お客さんが4人それぞれのパフォーマンスをしっかりと見ることができる工夫がなされている。
1曲目からレーザー光線があちこちに飛び交い、ミラーボールが煌めく豪華絢爛な照明演出は、さながら光のワンダーランドといった様子。続けて音源以上に低音が強調された「Waiting for…」へとなだれ込み、小島もナイル・ロジャースばりのファンキーかつ情熱的なギター・カッティングで魅せる。リズムと同期して明滅するライトがさらに見るものの興奮を煽ると、次のエレクトロ・スウィング「cute cute」では、ぽん、小島、三浦が動きを合わせてステップを踏み、歌や演奏のみならず見た目でも楽しませる。
そして「次はORESAMAディスコゾーンということで一緒に楽しく踊りましょう」(ぽん)とアナウンスし、軽快な「ようこそパーティータウン」、逆に重低音の効いた「Listen to my heart」、スピーディーに駆け抜ける「Dreamin’ Pops」と、ORESAMA流のディスコ・ナンバーを畳みかけ、会場は完全にダンスフロアに変貌する。そこから続けてMONICOのDJプレイに突入。エレクトロ・ハウスとORESAMAの楽曲を織り交ぜてフロアをロックする。
ステージにはネオン風の照明が煌めくなか、今度はぽんがふたりのダンサーを引き連れて再登場。最新シングル「ホトハシル」をスタンドマイクを用いて歌い、手の動きをフィーチャーした振り付けをダンサーとシンクロしたパフォーマンスで披露する。同時に同楽曲のMVがステージ全体に投影され、視覚的にもますます賑やかになると、続けてシングル曲「Trip Trip Trip」へ。メルヘンチックなイントロから大歓声が巻き起こり、Bメロではサビに向けて盛大なクラップが発生。TVアニメ『魔法陣グルグル』のために書かれたこの楽曲は、今やライブのキラー・チューンとしても機能しているようだ。
MCで感謝の言葉をファンに直接伝えた彼女は、日々活動を行っているなかで、小島が常々言っている「ライブは新しい音楽ができる場所」という言葉をより実感できるようになったと説明。「私たちは自分が抱えているものや背負っているものをすべて共有することはできないですけど、でも、音楽というフィルターを通して、いまこの瞬間はひとつになれると本気で思っています」と語る。そして「特別な音楽にひたる幸福を歌った曲」と前置きして、親密な空気を持ったメロウなR&B調の「耳もとでつかまえて」を歌唱。まさしく耳もとでささやくようにソフトな歌声と、エモーショナルなハイトーンの巧みな使い分けは、七色の歌声を持つ彼女の真骨頂と言えるだろう。
同楽曲に続けて、ぽんが〈歌うこと〉への想いを形にした転機の曲「「ねぇ、神様?」」が披露されたのも、個人的にはグッときたポイント。彼女にとっての音楽、そしてライブを行うことの意味が、この2曲には凝縮されていたのではないだろうか。今目の前の人たちに自分の歌が届いている喜びを噛み締めるような、うれしそうな笑みを浮かべて同曲を歌い終えた彼女は、ここでORESAMAの自主イベント「TOKYO FLAT NIGHT CARNIVAL THE FINAL」を11月9日に開催することを告知。fhána、PENGUIN RESEARCHというライブの評判の高い2組との対バンとのことで、熱いカーニヴァルの夜になることは間違いなさそうだ。
そしてライブは終盤戦へ。「ここからは踊れる曲しか持ってきていません!」(ぽん)との言葉に続けて演奏されたのは、ORESAMAの初シングル曲でもある「オオカミハート」。ダンサブルにリコンストラクトされたイントロから会場の熱気は急上昇する。さらにライブ終盤の定番曲「銀河」でギャラクシーなディスコ空間を生み出して会場の気持ちをひとつにすると、再びダンサーをステージに迎えて最新アルバム『Hi-Fi POPS』のリード曲「Hi-Fi TRAIN」へと移行。同曲の歌詞を引用するなら、銀河を超えて〈Joy to the new world〉に至るような高揚感がフロアに広がる。そしてライブ本編の最後は、シングル曲にして最高のディスコ・チューン「流星ダンスフロア」で締め括り。演奏陣3名もMONICOのスクラッチを含めソロパートで見せ場をバッチリと作り、彼らは星空に届かんばかりの歓声を受けながらステージを降りた。
やがてアンコールに応えて再びステージに上がった彼らは、ここでMC/ラッパーの Foggy-Dをゲストに迎えて、ONE III NOTESのナンバー「Shadow and Truth」をORESAMAとしてパフォーマンス。フォーマルベストでスタイリッシュに決めたFoggy-Dがステージ狭しと動き回って観客をラップで煽り、ぽんもORESAMAの楽曲ではあまり聴かれることのないクールかつ妖艶さの加わった歌声で盛り上げる。
そしてこの日ラストのナンバーに選ばれたのは、ライブでも度々歌われているインディー時代の人気曲「乙女シック」。手を振りながら笑顔で歌うぽんに、お客さんも満面の笑みで手を振って応じる。サビの“愛はとまらないの”という言葉からは、彼女のなかからとめどなく溢れる幸せな気持ち、そして多幸感に満ちた会場の空気がそのまま表されているようだ。最後は「一緒に歌いましょう!」(ぽん)と呼びかけ、会場が一丸となって大合唱。歌い終えたぽんが小島と握手したところは、ここまで決して平坦とは言えない道を歩んできたであろうふたりの気持ちが伝わってくるようだったし、この日のライブにはそれだけの充足感や達成感があったのだと思う。この日この場所で生まれた新しい音楽を糧に、ORESAMAはきっとこの先も大きく飛躍していくことだろう。
Text By 北野 創(リスアニ!)
「ワンダーランドへようこそ ~in AKASAKA BLITZ~」
9月13日(金)東京・マイナビBLITZ赤坂
<セットリスト>
01. ワンダードライブ
02. Waiting for…
03. cute cute
04. ようこそパーティータウン
05. Listen to my heart
06. Dreamin’ Pops
07. ホトハシル
08. Trip Trip Trip
09. 耳もとでつかまえて
10. 「ねぇ、神様?」
11. オオカミハート
12. 銀河
13. Hi-Fi TRAIN
14. 流星ダンスフロア
En1. Shadow and Truth
En2. 乙女シック
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