INTERVIEW
2018.09.08
――「Star overhead」の歌詞は少年をテーマとしていて、そのあたりは女子高生がメインキャラクターとなっている今回の2作品とズレがあります。作り手、歌い手としてそのあたりはどのように感じましたか?
山中 そうなんですよね。だから、ナオ太のことを考えた歌詞だってことも監督に説明したんですよ。そうしたら、「説明は求めていません」と言われて、そのままでいくことになったんです。そこでも「やっぱり合うな」と思いましたね。歌詞を説明的にするとどんどん歌謡曲に近づくんですよ。いくらポップミュージックといっても、ロックバンドが作った感じにならない。そうなると『フリクリ』には合わないと僕は思うので。
――ただ、『フリクリ』がなければ出てこなかった歌詞だとお聞きしました。
山中 そうですね。若いときは、自分の恋愛経験がそのまま直結したラブソングとか、自分の悔しかったことがそのまま曲になったロックとか、そういう曲を作るんですけど、やっぱり100、200、300と曲を書いてくとそれもできなくなってくるんですよ。だから、ちょっとでも自分の心を動かすものにすがりたいっていう気持ちは、僕ぐらいのキャリアを持つソングライターはみんな思っているんじゃないかな。僕にとっては『フリクリ』があったからこの2曲を書けたんですよ。でも、ほかの曲もそうやって事件というか、何か自分の心が動かされるものがあって。そのちっちゃい種からどう育てるか、みたいな感じになってると思うので。やっぱり物を作る上での経験値があるから、自分が1回目に作ったときと100曲目、1000曲目では違うんですよ。興奮とか感動が当然減ってくる。でも、自分を飽きさせないでうまく前に進められた者だけが長くクリエイターとして続けられるんですよね。そこはギリギリ、僕らはうまくやってるかなって思いますね。
――来年30週年を迎えるピロウズは現在、4期であり末期であるとご自身で仰っていますね。
山中 1期のときは「若者」でしたね。良くも悪くも潔癖で、影響を受けるとマズいからビートルズも聴かない、みたいな感じで。でも、ごく一部の天才は別だけど、僕なんかはそれでオリジナリティを出せるかというとそんなことはなくて。単に何だかわからないものになっていくんですよ。で、これは違うと思って、音楽ジャンルが変わって、一人のソングライターがジャズ、ソウル、レゲエ、ボサノバ、と何でも作った。でも、このときもまだ「若者」だったんですよ。自分のクレバーさをアピールしたいだけなので。結局、好きなのはロックンロールだけで、他のはブームだから作れる曲がすぐなくなるんですね。実際売れないし。そうやって第2期が終わって、そこでもう1回素に戻ろうと、自分の根底にあるロックンロールで「ストレンジ カメレオン」を作ったのが第3期。自分が好きだった、イギリスのマンチェスターで生まれたあの音楽ですよ。そこから急にオルタナティブに入って、もう一生第3期でもいいと思っていたんだけど、年齢が上がっていくとメンバーがいつもフルスロットルってわけではいられなくなるんですよね。人気も出てきたからサボっていてもお金も入ってくるし。でも、僕は潔癖なのでそれは許せない。それで活動休止したんですね。反省したらもう1回使ってやる、くらいの気持ちで。
――ほぼすべてのソングライティングを山中さんが手がけていたからできたことですね(笑)。
山中 そう。そこからが第4期です。あとは死ぬまで。だから、「末期」なんて冗談で呼んでますけど。年齢的にフィジカルな問題も起きてきますしね。ただ、ピロウズは幸せな音楽人生を歩ませてもらったと思っています。初期の初期は売れなくていろんな人をひがんでましたけど、『フリクリ』やった頃から楽しくて。誰も僕に命令もしないし、無理強いもしなくなった。経済的にも困ってないから、ピュアにやりたいことがやれてきたし。あと、なぜか僕らのこと好きと言ってくれる、素敵な売れてる後輩もどんどん出てきました。
一同 (笑)。
山中 すごくみんなが優しいんですよね。音楽業界に悪口を言う人もいなくなったし。極論で言えば、今の僕は、「現役」を振りかざす気は全くないんですよ。引退した王や長嶋みたいな選手が集まってやる野球があるじゃないですか。でも、昔みたいに投げれなくて打てなくても、見たいファンっているんですよね。あそこに行ってもいいと思ってる。むしろ、それくらい自分たちがやってきたことには価値があるという自信があるんですね。ピロウズの3人にとって抗ったり苦しんだりする時期は過ぎていて、できれば仲良く、楽しくやっていきたいです。ほとんどの時期、仲良くなかったですからね(笑)。
――(笑)。そんな今、「Star overhead」のようなピロウズとしては新しい曲が生まれたり、ピロウズらしい「Spiky Seeds」のような曲が出てきたり、充実してる証明でもありますね。
山中 そうですね。幸せな気持ちで30周年を迎えられるのは見えているんですよ。
――では、今回の『フリクリ』復活は、ピロウズにとってもいいタイミングでしたね。ちょうど30周年が間近に迫ったところで。
山中 いや、ホントですよ。よくぞ! このタイミングでやってくれました。東宝さん、(Production )I.Gさん、カートゥンネットワークさん、ありがとうございます!
Interview & Text By 清水耕司(セブンデイズウォー)
●作品情報
劇場版『フリクリ オルタナ』
9月7日(金)公開
劇場版『フリクリ プログレ』
9月28日(金)公開
●リリース情報
劇場版「フリクリ オルタナ/プログレ」Song Collection
「FooL on CooL generation」/the pillows
9月5日発売
品番:THCA-60224
価格:¥2,400+税
※アニメ描き下ろしジャケット/ジュエルケースCD1枚組
<CD>
1.Spiky Seeds
2.I think I can
3.サードアイ
4.MY FOOT
5.天使みたいにキミは立ってた
6.白い夏と緑の自転車 赤い髪と黒いギター
7.Freebee Honey
8.ノンフィクション(Instrumental)
9.Fool on the planet
10.LAST DINOSAUR
11.昇らない太陽
12.LITTLE BUSTERS
13.Thank you, my twilight
14.Star overhead
※2~13曲目はセルフカバー曲になります。
劇場版「フリクリ オルタナ/プログレ」COMPLETE CD-BOX
9月5日発売
品番:THCA-60225
価格:4,200+税
※アニメ描き下ろし三方背ケース/CD3枚組ジュエルケース
特典:「オルタナ」EDイラストステッカー
<DISC1>
1.Spiky Seeds
2.I think I can
3.サードアイ
4.MY FOOT
5.天使みたいにキミは立ってた
6.白い夏と緑の自転車 赤い髪と黒いギター
7.Freebee Honey
8.ノンフィクション(Instrumental)
9.Fool on the planet
10.LAST DINOSAUR
11.昇らない太陽
12.LITTLE BUSTERS
13.Thank you, my twilight
14.Star overhead
※2~13曲目はセルフカバー曲になります。
<DISC2>
1.ordinary days
2.daydream
3.the pugilist at rest 1
4.never knows best
5.Mechanical Mouse
6.Mustang ’67
7.FIRE
8.it girl
9.the pugilist at rest 2
10.klesha
11.awesome thing
12.Farewell
13.rain
14.Forever seventeen
15.fatigue
16.construction
17.mind
18.no way
19.butterfingers
20.runway
21.c’mon music!
22.fake
23.Immigration officer
24.dabble
25.dabble level 2
26.adult bath
27.LOVE COME
28.rival
29.twilight
30.play ball
31.boot
32.the extraordinary in the ordinary
33.can you see
34.mundane
35.refrain
36.am I..
37.No answer
38.girls don’t cry
39.Isolation
40.say nothing
41.the pugilist at rest 3
42.take me higher
<DISC3>
1.Lesson Start(mysterious teacher)
2.sigh
3.cafe HIBARI
4.Jinyu
5.apathy night
6.attacked
7.necromancer
8.”Maid”cafe HIBARI
9.Pu-Pi-Pu
10.student life
11.working youth IDE
12.blood
13.attacked 2
14.boys and girls
15.Missing piece
16.Overflow:what’s this?
17.bad feeling
18.headphone
19.Old Champ
20.Dust of stars
21.destruction girl
22.Overflow:inside out
23.foggy city
24.FARCE
25.aspiration
26.Lesson End
27.collapse
28.wish
29.human or ..?
30.scrap and build
31.Mechanical Hidomi
32.infection
33.STAY GOLD
<the pillows プロフィール>
山中さわお(Vo, G) 真鍋吉明(G) 佐藤シンイチロウ(Dr)
1989年9月結成。
結成29年を超えてなお、コンスタントに楽曲制作とツアーを行い、現在までに21枚のオリジナルアルバムを発表。
9月にはニューアルバムのリリース他、17年ぶりに続編が制作され、再びthe pillowsが主題歌を務めた“フリクリ”が劇場公開される。11月からはニューアルバムを携えた27本の全国ツアーもアナウンスされている。
また来年の結成30周年に向け、アニバーサリーの特別な企画も予定されている。
© 2018 Production I.G / 東宝
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