藍井エイルの復帰後初のライブ、“藍井エイル Special Live 2018 ~RE BLUE~ at 日本武道館”が2018年8月16日に開催された。2016年の武道館ライブで活動休止期間に入って以来、1年9ヶ月ぶりとなるライブだが、湿っぽい雰囲気ではなく完全復活を印象付ける激しいステージを展開。初めてギター演奏を披露するなど、充実したパフォーマンスで全20曲を歌い切った。
武道館は2階席の一番上まで観客が埋め尽くす超満員。開演前、ステージ上のスクリーンには青い光の点が明滅していて、鼓動のような音が鳴り響く。その光は次第に大きくなり、青い蝶のマークへと形を変えた。それが藍井エイル復活を告げる合図だった。
藍井エイルは2018年2月8日に活動再開を発表。6月13日に復帰初のシングル「流星/約束」をリリースした。そして8月16日、同じ武道館で復活の瞬間を迎えようとしていた。
スクリーンには過去の映像がフラッシュし、爆音と共に炎が上がった。約1万人のファンの「エイルー!」という叫び声が響き、純白のドレスを着た藍井エイルが登場。最初の曲は、彼女が復帰を発表すると共にMVが公開された「約束」だった。活動休止中に彼女が感じていた思い、復帰への決意をうたったメッセージソング。「あの日交わした 約束を守りにいく」――その歌詞の通りに、彼女はこの場所に戻ってきて、新しいストーリーを描き始めた。
青い衣装に早替わりして歌った2曲目は7thシングル「IGNITE」。早くも全開のテンションで武道館が揺れ始める。これもまたすごい歓声で始まった「AURORA」ではステージの左右の端へ行き、観客と近い距離で歌った。全くブランクを感じさせない歌声に、観客も最高の声援で応えていた。曲が終わると、「みなさんこんばんはー! そして、ただいまー!」と挨拶。客席からはすごい声量の「おかえりー!」という声と拍手が返ってきた。感極まって涙を見せるファンも多い中、藍井エイルは以前と変わらない姿で、そこに立っていた。「今日は最後まで思いっきり盛り上がって、ひとつになっていきましょう!」と、最初のMCはシンプルに切り上げ、次の曲へ。
「さあ、声を聴かせて武道館!」とさらに観客を煽りつつ伸びやかな歌声で歌った「アヴァロン・ブルー」、原点である1stシングル「MEMORIA」と激しい曲が続く。「アカツキ」では途中でしゃがみ込んで首を下げたまま歌い、最後の大サビで立ち上がるという感情の表現を見せた。
止まらない拍手と歓声に、「この感覚が久しぶり過ぎて、ドキドキですよ」とほほ笑む彼女。MCは活動休止していた期間についての話題になった。ずっとやりたいといっていた一人旅をして、自然あふれるところでゆっくりと過ごしていたとのことだが、その一方で音楽面で成長できる期間にしたいとも考えていたという。「次の曲はお休み中にしていたチャレンジの一つをお届けしたいと思います」というと、黒いエレキギターが運び込まれてきた。青や藍色ではなく、あえて青が映える黒にしたというギターをかき鳴らすと、客席からは大きな驚きの声があがる。自らギターを弾きながら歌った曲は「KASUMI」。堂々たる演奏で、休養期間がアーティストとしての成長につながっていることを目に見える形で示してくれた。
「アクセンティア」ではフラッグを持ったダンサーたちが登場してステージを盛り上げた。観客のコールもバッチリそろっていて、久しぶりとは思えない結束力を見せた。次の曲「レイニーディイ」では巨大なバルーンが登場し、アリーナの観客の頭上でトスされて跳ね上がるという演出も見られた。そして「GENESIS」ではダンサーたちが藍井エイルの背後で黒い布を揺らすなど、視覚的にも観客を楽しませるゾーンになった。
そして今度は黒いショートパンツの衣装にチェンジして再登場。炎が上がる演出の中で「シューゲイザー」を熱く歌った。次の曲は復帰第一弾のシングル曲「流星」。日々、生きている中で壁にぶつかった時に感じる自分の弱さと向き合って、自分にできることは何なのかということを歌った曲だと説明。初めてライブで歌った曲ではあったが、歌詞に込められたように力強さを感じさせる歌声でものすごい盛り上がりを見せていた。
エキゾチックな魅力のあるミディアムテンポの曲「ラピスラズリ」に続き、「翼」はスクリーンに映し出された表情を見るだけでも力の入り具合がわかる渾身の熱唱だった。そして、代表曲のひとつといえる「INNOCENCE」ではコールを煽りまくり、最後のサビの一節を観客が合唱するという熱いシーンも見られた。続いて「思いと思い、もっとつなげていきましょう!」と呼びかけて歌ったのが「ツナガルオモイ」。客席の照明がつき、彼女と観客が掛け合いのように歌をつなげて最高の一体感を味わった。
そんな最高潮の盛り上がりの後、藍井エイルが「次が最後の曲」というと客席からお約束の「えーっ!?」というリアクションが。だが、久しぶりのライブではそんなお約束も懐かしく感じられたようだ。「今日の藍井エイルの復活ライブでは、私の歌や思いを届けるための場所をたくさんの人が作ってくれました。それは、何よりもみんながこうやってずっと待っていてくれてたからです。本当にありがとう」と、ひと言ずつ噛みしめるように感謝の言葉を伝えると、会場からは大きな大きな拍手が起きた。そんな彼女が最後に感謝の気持ちをめいっぱい込めて歌った曲は、活動休止前の武道館で最後に歌った曲、「虹の音」だった。
だがもちろんここで終わりではない。彼女を呼ぶアンコールの“えい、えい、るー!”の声が武道館に鳴り響く。するとスクリーンには「緊急告知」の文字が……。“ニューシングル「アイリス」(TVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション』 EDテーマ)10月24日発売決定”“12月に東京・名古屋・大阪でファンクラブツアー開催”という告知がなされて、サプライズ的な発表に観客は大喜び!そんな中、ライブTシャツに着替えた藍井エイルが登場。年内にのファンクラブツアー発表に触れて、「また次、会う機会があるということですごく楽しみにしています」と喜びを分かち合うと、アンコールの1曲目「シリウス」を歌った。これも彼女のライブにはなくてはならない曲。ダンサーたちもステージを自由に動き回り、バンドメンバーも含めて会場が一体となった。
曲が終わると、最後の挨拶でバンドメンバーの話題になった。バンドメンバーと再会したのも久しぶりだったそうだが、誰も休養していた彼女の体調について心配しなかったといって笑った。それはきっとメンバーの気遣いだったのだろう。気心の知れたメンバーだけに久しぶりの音合わせもすぐにできてしまったそうだ。アンコール最後の曲となったのは、「ヒトカケラの勇気」。この日ベースを務めた黒須“ローリン”克彦が作詞・作曲を担当した曲だ。なお、黒須は藍井エイルやファンに親しまれてきた“ローリン”という名前を、この日まで他のライブでは封印していたことが藍井エイルの口から明かされた。すると客席からは“ローリン! ローリン!”の大コール。彼女のことを待っていたのはファンだけでなく、バンドメンバーもいっしょだということが伝わるエピソードだった。そんなローリンの曲で、藍井エイルは確かな未来へと一歩足を踏み出したのだった。
最後は恒例となっている“えい、えい、るー!”のコールをみんなで5回唱和してライブを締めくくったのち、マイクを使わず、「大切なこの日を絶対に忘れません!これからも藍井エイルをよろしくお願いします!」と生の声でファンに伝え、ステージを後にした。そして、スクリーンには「待っててくれてありがとう!! 新しい景色をまた見つけよう! 2018.8.16」という文字が映し出された。完全復活を遂げた藍井エイルは、これからどんな景色を見せてくれるのだろうか。
Text By 金子光晴
“藍井エイル Special Live 2018 ~RE BLUE~ at 日本武道館”
2018年8月16日(木)【東京】日本武道館
<セットリスト>
1 約束
2 IGNITE
3 AURORA
4 アヴァロン・ブルー
5 MEMORIA
6 アカツキ
7 KASUMI
8 アクセンティア
9 レイニーデイ
10 GENESIS
11 シューゲイザー
12 流星
13 ラピスラズリ
14 翼
15 シンシアの光
16 INNOCENCE
17 ツナガルオモイ
18 虹の音
ENCORE
19 シリウス
20 ヒトカケラの勇気
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