『Fate』シリーズのアーティストが一堂に会した音楽の祭典、“Fate Night FES.2018”が2018年7月28日(土)、千葉・幕張メッセ国際展示場9ホールにて行われた。出演は坂本真綾、LiSA、Aimerなど『Fate/Grand Order』(略して『FGO』)や『Fate』シリーズ各作品の主題歌を歌うアーティスト13組。全編にわたって『Fate』シリーズの映像と音楽がリンクした演出がなされていて、作品の世界を存分に味わえるライブとなった。
28・29日は絶大な人気を誇るスマートフォン用RPG『FGO』の3周年を祝うリアルイベント“Fate/Grand Order FES.2018 ~3rd Anniversary~”(幕張メッセ国際展示場9-11ホール)が開催されており、その初日の夜を飾るイベントとしてこの“Night FES.”も開催された。この日は台風12号の上陸で悪天候の中だったが、昼も『FGO』を愛する数多くのファンが詰めかけ、数々の『FGO』関連の展示やステージイベントを楽しんだ。その熱が冷めやらぬうちに、一夜限りの音楽の祭典はスタートした。
まず開演前のアナウンスとして、『FGO』のマシュ・キリエライト(CV・高橋李依)と坂田金時(CV・遊佐浩二)の映像が流された。マシュと共にベテランアナウンスとして抜擢されたエリザベート・バートリー(CV・大久保瑠美)の姿が見えず、代わりに坂田金時が登場。マシュが注意事項をアナウンスすると、坂田金時は席のあるエリアの観客もスタンディングOKである旨を告げ、マナーを守って盛り上がるように呼び掛けた。おなじみのキャラクターの登場に、台風で冷え切っていたマスター(『FGO』のプレイヤー)たちのテンションも急上昇したようだった。
ファーストアクトはLiSA。赤セイバー(ネロ・クラウディウス)を思わせる赤いスカートの衣装で現れた彼女は、まずTVアニメ『Fate/Apocrypha』2ndクールのOPテーマ「ASH」を歌った。観客の心をつかむことにかけては天才的なLiSAが最初から飛ばしまくり、炎が上がる演出も手伝って早くも会場の雰囲気は最高潮だ。そして、TVアニメ『Fate/Zero』1stシーズンOPテーマの「oath sign」。バックに『Fate/Zero』の映像が流れ、さまざまな名シーンが思い起こされる演出だった。LiSAのファーストシングルの曲であり、もちろん自身のライブやフェスでも何度となく歌っているが、この『Fate』の祭典という場で歌った「oath sign」は作品の世界観と重なって特別なもののように思えた。
その後に登場したのが春奈るな。こちらもネロを意識したという赤い衣装での登場だ。最初の曲はTVアニメ『Fate/Zero』2ndシーズンEDテーマ「空は高く風は歌う」で、OP~EDのリレーとなった。この曲は春奈自身のデビュー曲でもある。やはりアニメの映像を使った演出がなされ、情感たっぷりに歌い上げた。続くゲーム『Fate/EXTELLA LINK』のOPテーマ「JUSTICE」は一転して疾走感のある曲。戦闘を中心としたゲームの映像ともマッチしていて、観客の盛り上がりも熱かった。
次はTVアニメ『Fate/Apocrypha』のEDテーマを歌う2組のアーティストが登場。まずは1stクールのED、GARNiDELiAの「Desir」(※eはアキュートアクセント付き)で、バックの映像はジャンヌ・ダルクを中心にしたもの。歌詞に込められたジャンヌの想いと映像のジャンヌの姿が重なって胸に迫るものがあった。そして2ndクールのED、ASCAの「KOE」ではサーヴァントが消えていくシーンが次々と映し出されていて、涙なしには聴けない人も多かったことだろう。
前半の最後を飾ったのがAimer。ピアノアレンジで3曲を歌唱した。まず「LAST STARDUST」の文字がモニターに映し出されると、会場からは歓声があがった。TVアニメ『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』第20話挿入歌であるこの曲は、アニメの映像と共に「体は剣で出来ている」で始まる詠唱の文字を挟むという演出がなされていた。その後のMCでは、入場前の観客をずぶ濡れにした台風について触れ、雨女を自称するAimerの人柄が垣間見える和やかなトークもあった。同作品の2ndシーズンOPテーマ「Brave Shine」でもやはりアニメの映像が流れ、ピアノの演奏と生の歌声の力もあって曲がさらにドラマチックに聴こえた。圧巻だったのは『劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」Ⅰ.presage flower』主題歌「花の唄」。間桐桜のシーンを切り取った映像と歌詞が完全にリンクしていて、1シーンごとに感情が揺さぶられるような見事な演出だった。会場も桜をイメージさせる紫色のサイリウムの光で染まっていたのはさすがといえよう。
前半の『Fate』シリーズ関連楽曲のパートが終わると、ここでちょっとブレイクタイム。今度はマシュとエリザベートの掛け合いの映像が流された。ライブに感激したエリザベートは自分も一曲歌うと言い出すが、マシュによって無事に阻止された(※エリザベートの歌声は破壊力があるという設定)。
ここからは『FGO』関連楽曲のパートに。まずは記憶に新しいイベント「ぐだぐだ帝都聖杯奇譚」主題歌、六花の「二者穿一」でスタート。そして今年復刻もされた夏の水着イベント「デッドヒート・サマーレース!」イメージソング、「BURN OUT!」を乃藍が元気いっぱいに歌った。ROUND TABLE feat.Danは北川勝利がオレンジ色のサイリウムを持って登場。「亜種特異点I」主題歌「Lose Your Way」で、マスターたちと一体となったコール&レスポンスでライブならではの盛り上がりを見せた。Yuriko Kaidaは「亜種特異点II」主題歌「Indelible illusion」、再び登場した六花は「亜種特異点III」主題歌「一刀繚乱」、そしてDracoVirgo feat. 毛蟹は「亜種特異点IV」主題歌「清廉なるHeretics」と、第1.5部をたどるようなセットリストとなった。
そしてバイオリン奏者のAyasaが登場。まずは、マスターなら毎日1度は絶対に聴くであろうタイトル画面の曲を演奏してみせた。その後もマイルームや戦闘などの聞き覚えのあるBGMのメドレーを、ステージ上を軽やかに動きながら弾き続けていた。その端正な顔立ちとサーヴァントのような衣装もあって、なんだかゲームの世界から抜け出してきたかような印象だ。最後にちょっと微笑んで、第1部のEDテーマ「Eternity Blue」のイントロを演奏。すると愛弓が登場して、その後を引き継いで歌うというリレーが行われた。ここでも映像と歌のリンクが強く意識されていて、マスターとマシュがたどってきた物語を歌で追体験するような演出がなされていた。
最後に登場したのは、坂本真綾×la la larks×伊澤一葉。『FGO』の全ての始まりともいえる第1部OPテーマ「色彩」で、配信開始時のCMにも使われた懐かしい映像と共に歌唱。黒いドレス姿で登場した坂本真綾は全身からオーラがあふれ出るような熱唱で、そのパワーに負けじと会場のマスターたちもヒートアップした。そして第2部OPテーマ「逆光」ではメンバーと楽しそうに歌うシーンも見られ、最高の雰囲気で大団円を迎えたのだった。
終演後にはマシュ、エリザベート、坂田金時が映像で登場。エリザベートはライブに感動して号泣、マシュも坂田金時もアーティストたちの輝きに感極まった様子だった。「私たちの旅路は、まだまだ先まで続いていきます。その道を、みなさまといっしょに歩んでいければと思いますので、これからもどうぞよろしくお願いします」とマシュが挨拶して、一夜限りのゴールデンな祭典は幕を閉じた。
もともと『Fate』シリーズの楽曲は歌詞がストーリーやキャラクターと何らかの形でつながっている曲が多い。普段はそれを想像で補いながら聴いているわけだが、こうしてライブという場で映像と歌がリンクして目の前に現れた時の破壊力はすごいものがあった。今回の“FGO Fes. 2018”では『FGO』のTVアニメーション化&劇場アニメーション化も発表。今後、『FGO』の音楽の世界もさらに広がっていくだろう。またこのような機会があれば、より多くのマスターたちと感動を共有したいと思わせるライブだった。
Text By 金子光晴
“Fate Night FES.2018”
2018年7月28日(土)、千葉・幕張メッセ国際展示場9ホール
<セットリスト>
M-1 LiSA「ASH」
M-2 LiSA「oath sign」
M-3 春奈るな「空は高く風は歌う」
M-4 春奈るな「JUSTICE」
M-5 GARNiDELiA「Desir」(※eはアキュートアクセント付き)
M-6 ASCA「KOE」
M-7 Aimer「LAST STARDUST」
M-8 Aimer「Brave Shine」
M-9 Aimer「花の唄」
M-10 六花「二者穿一」
M-11 乃愛 「BURN OUT!」
M-12 ROUND TABLE feat.Dan「Lose Your Way」
M-13 Yuriko Kaida「Indelible illusion」
M-14 六花「一刀繚乱」
M-15 DracoVirgo feat.毛蟹「清廉なるHeretics」
M-16 Ayasa 『FGO』メドレー
M-17 愛弓「Eternity Blue」
M-18 坂本真綾×la la larks×伊澤一葉「色彩」
M-19 坂本真綾×la la larks×伊澤一葉「逆光」
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