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INTERVIEW

2018.08.14

渕上 舞 1stシングル TVアニメ『プラネットウィズ』ED主題歌「Rainbow Planet」インタビュー

渕上 舞 1stシングル TVアニメ『プラネットウィズ』ED主題歌「Rainbow Planet」インタビュー

今年1月にアルバム『Fly High Myway!』で待望のソロアーティストデビューを果たした声優の渕上 舞が、ファースト・シングル「Rainbow Planet」を完成させた。作詞に坂井竜二、作曲に本多友紀(Arte Refact)、編曲に酒井拓也(Arte Refact)を迎えた本楽曲は、現在放送中のオリジナルTVアニメ『プラネット・ウィズ』のED主題歌に起用されている疾走感全開のロック・チューン。さまざまな立場の登場人物たちがそれぞれの〈正義〉のもと争う作品世界に寄り添った歌詞と、それをかつてない力強さで表現する渕上の歌声は、彼女のアーティストとしての新たな一面を映し出している。ソロ名義では初のアニメタイアップとなった本作について、本人にたっぷりと語ってもらった。

――渕上さんは今年1月にソロデビューされましたが、まずはそのデビュー・アルバム『Fly High Myway!』の反響についてお伺いさせてください。

渕上 舞 アルバムを出すことに関して、自分の中では不安が大きかったんです。私は今年で声優を始めてから10周年なので、その記念という気持ちもあったんですけど、今は若い子もたくさん出てきてますし、「私が今さらソロデビューしたところで受け入れてもらえるのかなあ?」と思う部分もあって。でも、いざリリースしてみたらファンの皆さんから「待ってました」というお手紙をいただいたり、ワンマンライブでも歓声という形で気持ちを届けていただいたので、個人的にはすごく満足してます。

――意外とネガティブなところがあるんですね。

渕上 今までキャラクターソングを歌わせていただく機会が多くて、自分がキャラクターとして歌うことにはたくさん意味があると思うんですけど、「私が自分自身として歌をうたうことが何になるんだろう?」というふうに考えてしまったんですね。でも、結果として楽しかったので今は良かったなあと思ってます。ライブでは皆さんの喜んでくれる顔を直接見られたし、私自身もその空間がすごく楽しかったし、win-winということで(笑)。

――そのライブは4月に東京と大阪で開催されて、5月には舞浜アンフィシアターで追加公演も行われました。初のワンマンライブはいかがでしたか?

渕上 どの公演もあっという間に終わったというのがいちばんの印象で、始まったと思ったらすぐに衣装チェンジになる感覚だったんですよ。そこで毎回「……ということはもうすぐ終わりじゃん!」と言ってて、衣装の方やヘアメイクさんに笑われてました(笑)。でも、ライブをするまでは、ひとりで2時間もずっと歌うなんて不安だし、単純にキツイだろうなと思ってたんです。今までキャラソンのライブもたくさんやってきましたし、それこそ『アイドルマスター シンデレラガールズ』でSSA(さいたまスーパーアリーナ)のステージに立って10曲ぐらい担当することもありましたけど、私ひとりでずっと歌うわけではないじゃないですか。なので、アーティスト活動されてる声優の先輩方にお会いするたびに「ライブってキツくないんですか?」って聞いてました(笑)。

――先輩方からはどんな反応が返ってきたんでしょうか?

渕上 皆さん口をそろえて「全然そんなことない」とおっしゃるんですよ。それこそ同じランティス所属の茅原実里さんにお話を聞いてもらったんですけど、「ライブは本当にあっという間だし、体力的に楽なことはないけど、楽しい気持ちがそれを上回るから、キツイとは感じないと思う」とアドバイスをいただいて。でも、私はワンマンライブが初めてだし、半信半疑なところはあったんですけど、いざやってみたら本番で大変だった記憶が全然ないし、なんだったらその後の打ち上げで深夜まで楽しく飲んでたぐらいで(笑)。最初は不安でしたけど、今はまたやりたいぐらいですね。

――不安を抱いてても、飛び込んでみたら楽しめる性格なんですね。

渕上 最初は疑いから入るタイプなんですよ。でも、結果やってみて「やらなきゃよかった」と思うことはあまりないんです。飲み会とかもよく「行きたくないなあ」と思うんですけど、行ってみると楽しくなることが多くて。

――追加公演の行われた舞浜アンフィシアターは、渕上さんがTrident(アニメ『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』に出演する声優3名によるユニット)で初めてステージに立った場所でもありますが、そういう意味でも感慨深いものがあったのでは?

渕上 感慨深さと同じくらい恐怖みたいなものがありました。私、舞浜アンフィシアターにはあまりいい思い出がなくて。ライブでトラウマ級の失敗をしてきた場所でもあったので苦い思い出が多くて。特にTridentのときは、私が真ん中に立たせてもらっていたにも関わらず、歌もダンスも三人の中でいちばん不慣れだったし、フォーメーション的にも真ん中はいちばん前に立つことになるので、ふたりの動きがまったく見えないんですよね。その、前に行ったときの恐怖が忘れられなくて、センターで前に立つことに恐怖を感じるようになってたんです。

――まさにトラウマになってたんですね。

渕上 で、私のワンマンライブのちょうど1か月ぐらい前に、『アイドルマスター シンデレラガールズ』のイベントで久しぶりに舞浜アンフィシアターのステージに立つことになって、何の巡り合せか私が3人組のセンターになる瞬間があったんです。でも、そのときはTridentのときほどの恐怖を感じなくて、むしろ楽しむことができたし、自分自身がこの3年ぐらいで培ってきた成長みたいなものを実感することができて。その経験があったうえでのソロライブだったので、まだ恐怖は残りながらも「今日はどうかな?」っていうワクワク感のほうが勝って、終始楽しくライブをすることができたんですね。最後のMCでもみんなに「ここに立つのが怖かったんです」と伝えることができたので、すごくスッキリしましたし、もちろん反省すべき部分もあったんですけど、自分もいっぱい練習してきたから自信があったし、ファンのみなさんも暖かく迎えてくれて。自分の中でヘコむような失敗のないライブは数えるほどしかないんですけど、そのひとつになったことにすごく満足してます。

――そんな舞浜公演で、今回のニュー・シングル「Rainbow Planet」のリリースを発表されたわけですが、こちらは渕上さんのファースト・シングルにして、初のアニメタイアップ作品になります。これまでもキャラソンでアニメのED主題歌を担当されたことはありますが、アーティストとしてアニメ主題歌を歌ってみたいお気持ちはお持ちだったんですか?

渕上 そうですね。以前に『アウトブレイクカンパニー』という作品のED主題歌(ペトラルカ・アン・エルダント三世「私の宝石箱」)をキャラクターとしてソロで担当させていただいたことがあって、それがすごくうれしかったんです。自分がひとりで歌ったものにアニメの絵がついて放送されることには、CDが出るのとはまた違った喜びがあるので、それが私個人の歌となると感動もひとしおだろうなとは思っていました。その希望が今回のファースト・シングルで早速かなってありがたいですね。

――「Rainbow Planet」は『プラネット・ウィズ』のED主題歌になりますが、作品自体にはどんな印象を抱きましたか?

渕上 なんか不思議な作品ですよね。キャラクターのビジュアルは少し懐かしさを感じさせる、子供の頃の夕方に放送されてたアニメのような雰囲気があるんですけど、テーマはかなり重たいし、キャラクターの誰が敵で誰が味方なのかわからないところから始まるので、そういう切り口が斬新で面白いなあと思って。見どころがたくさん詰まってる作品だと思います。

――『プラネット・ウィズ』には渕上さんも熊代晴海役で出演されてます。

渕上 晴海は見た目と性格にギャップがある子なので、最初は演じるのに戸惑いがあったんですよ。一見すると気弱そうな感じだし、キャラクター紹介でも猫背で自信なさげな様子なので、最初はおしとやかでおっとりしたお姉さんなのかなと思ってたんですけど、フタを開けてみるとめちゃくちゃ強くてキレると手に負えないところもあったので「えっ!?こんな子だったんだ」と思って(笑)。ただ、普段はおっとりしてて、あまり前にも出ていかないので、そのギャップを好きになってもらうためにどうすればいいのかを考えましたね。可愛くもあり、強くもあるけど、怖くはなりすぎないようにバランスを取って。

――第4話では自分の力を制御できなくなって暴走してましたからね。

渕上 あの暴走シーンは表情もすごくて、あそこまで怖くなるとは思ってなかったので、私も見て「エエッ!」と思いました(笑)。でも、アフレコのときも思いっきり叫ばせていただいたりして、そういう演技をする機会は少ないので、個人的には演じていて楽しかったです。私は冷静なキャラクターを演じることが多いので、我を見失うような演技は久しぶりでしたし、そういう珍しさでも皆さんに楽しんでいただけたかなと思います。

――大和田仁美さんが演じられてる相棒の因幡美羽との関係性も素敵ですよね。

渕上 お互いの持ってないものを求め合ってる感じですよね。晴海は大柄だし強いので、美羽みたいに小さくてかわいい子が憧れだったんでしょうね。ふたりの王子様とお姫さまみたいなやり取りは個人的にも好きで、フワッと優しい気持ちになれるんだけど、どこか切なくなるような台詞回しもあって。『プラネット・ウィズ』は絵柄にどこか懐かしさを感じさせるけど、お話は重くて考えさせられる大人のアニメだと思います。

――「Rainbow Planet」は、そんな作品のEDを飾るに相応しい力強い楽曲に仕上がっています。

渕上 今回は原作の水上(悟志)先生のこだわりが強くて、ED主題歌もこの曲に決まるまでにかなり難航したんです。聞いた話によると、水上先生はオープニングやエンデイングという区別はせずに、どちらの楽曲も作品を背負った強い曲になることを求められてたみたいで、いろんな曲が候補に挙がるなかで、決まりかけたものもあったんですけど、作品全体のことを考えて調整する意気込みが本当に素晴らしくて。なのでこの曲は数々の難関を乗り越えて出来上がった強い曲なんです。私は今までテーマ曲を決まるまでの経緯に触れる機会がなかったので、作品をつくることの大変さを垣間見ることもできました。

――たしかにこの曲はOP主題歌として流れても違和感のない熱さがありますよね。

渕上 そうなんです。メロディの疾走感や力強さももちろんなんですけど、歌詞の内容もダイレクトに作品を表してるんですね。しかも特定のキャラクターというより、登場人物みんなの気持ちを表現してるところがあるので、『プラネット・ウィズ』のための曲として成り立ってるんです。なおかつ、渕上 舞としてもファースト・アルバムにはなかった曲調なので、すごくやり甲斐を感じました。サビでキーが急に上がる箇所があるのでうまく歌えるか心配だったんですけど、キーの設定でもいろんなパターンを試して歌声がいちばんキレイに聴こえるものを選んだりして、良い楽曲を作っていく作業に最初の段階から関われる楽しさも味わえました。

――“誰もがそれぞれ 正義の中で 正義を見失う”“白と黒に揺れる 気持ち”といった歌詞は、ネビュラ側とパラディン側でどちらもそれぞれの正義を主張する『プラネット・ウィズ』の物語をそのまま表現したような内容です。

渕上 作品の中にも「俺は味方したい人の味方をする」という意味合いの印象的な言葉が出てくるんですけど、どちらが正義でどちらが悪でもなくて、悪と言われる人たちは自分たちのことを悪だと思ってないし、悪から見たら正義のほうが悪だったりもするし、複雑で答えがないんですよね。歌詞に“善悪に分けて 争うことでしか 答え出せないの?”と深く苦悩してるところがあるんですけど、結局その答えをくだす人がいるわけではないし、この曲のなかでは最終的に「みんな違っていろとりどりでいいんですよ」という答えは提示してますけど、それも軽いものではまったくなくて。なので私は「これが答えですよ!」って明言はしないように歌いました。それが表現できてるかどうかは判断し難いですけど、押し付けにならないように、「答えは自分で探してね」っていうことを意識して。

――この曲のメッセージさえも「正しさ」ではなくて、曲を聴いたそれぞれが考えることに意義があると。

渕上 少なくとも私はそういう考えで歌ってるというだけで、聴く人によって違う解釈があってもいいと思いますし、もしかしたら作詞された坂井(竜二)さんの中には答えがあるのかもしれないし……難しい題材だなって改めて思いました。ただ、私は自分で歌詞を書き始めるまで、歌の歌詞自体にあまり興味のなかったタイプなんですね。世の中には私みたいにメロディの好みで音楽を聴いてる人もいると思うので、そういう人にはメロディや歌い方のカッコよさで曲を好きになってほしいし、そのバランスを保つのも難しかったです。あまり重くなりすぎても、聴く人が「重い」って感じるだろうし。いちばんは楽曲自体がカッコよく聴こえるように歌いたかったので、特にサビの疾走感は意識しました。

――サビはいわゆるアニソン的な熱さを感じさせるところで、その前のBメロ部分の転調も効いてますね。

渕上 力強さと疾走感が合わさった曲はいままでなかったので、また新しい私の歌声を感じとってもらえたらうれしいですね。ストリングスも優雅で、特にイントロの部分は星空の見えるような音がとても素敵なんです。そのあたりの余韻を感じさせるところはエンディング感があるかもしれないですね。

――MVは渕上さんが七色に光る星を見守っていたり、月や夜空の映像をバックに歌う、どこか神秘的な映像になっています。

渕上 『プラネット・ウィズ』にはいろんな星の人たちが出てくるんですけど、このMVでも男の子とかが出てきて、いろんな世界があることが描かれるんです。前の「Fly High Myway!」のMVでは、草原に鳥かごがあるシチュエーションが確立されてたので、その世界を楽しむことで画面の向こうの人に楽しさを届けることを意識してたんですけど、今回は自分の中で抱える苦悩とか悲しみを表現させていただきました。撮影は基本的に合成で、私は高台に立ってるんですが、あとは全部ブルーバックに覆われてたので、シチュエーションから得られる高まりが何もなかったんですよ。そこは全部想像しながら頑張りました(笑)。

――衣装が白なのは、曲名にあるレインボーとの対比でしょうか?

渕上 最初はいろんなアイデアがあって、たとえば月をバックに真っ赤な衣装とかも考えたんですけど、歌詞で善悪で分けることの危うさを歌ってるのに、ひとつの色に染まるのは少し違うかなと私の中で思ったんです。であれば、何色にも染まれる白か、何色にも染まらない黒がいいのかなと思って、結果的に衣装が黒だと背景の色と溶け込んでしまうので、色の方向性は白で決めました。

――カップリングの「部屋の窓から見る花火」は菊地 創(eufonius)さんの手がけたエレクトロニクスと生音の絡み合う涼やかなミディアムで、作詞は渕上さんご自身がされてますね。

渕上 今回のシングルが8月のリリースだったので「夏の曲を作りましょう」ということになりまして。「夏の曲」というとパッション弾ける感じの曲調か、夏の終わりを感じさせるしっとりと切ない曲調に分かれると思うんですけど、今回は「Rainbow Planet」の対になる曲なので、パッション系の曲は少し合わないかなと思って、まずはしっとりの方向性に決めたんです。

――そこから花火を題材にされたのは?

渕上 私は四季の中で夏がいちばん好きなんですけど、だからといって海に行ったりバーベキューをしたりとか、夏らしいことはあまりしないんですよ。夏はみんながいちばん弾ける季節だから、私はそれを見てるのが好きなだけで、そこに混ざりたいとは思わないんですね。そんなことをスタッフの皆さんと雑談してたら、「花火大会とかも行かないの?」と聞かれたので、私は「人が多いし、疲れるし、浴衣も意外と暑いですよ?」と返事しまして(笑)。もちろん花火大会に行ったら行ったで楽しいとは思うんですけど、でも部屋の窓から見る花火も素敵だし、なんだか幸せな気持ちになるじゃないですか。それはそれで感動があると思うので、私はそういう歌をうたいたいですと言ったら、「じゃあそういうイメージの曲をお願いします」ということになりまして。そこからまずイメージ先行で楽曲を作っていただいて、それに合わせて私が歌詞を書いたんです。

――実際に楽曲を聴いたときはどんな印象を受けましたか?

渕上 イメージにピッタリだったので即決させていただいたんですけど、Dメロの部分だけ転調して違った雰囲気になるので、その部分の歌詞を表現するのは難しそうだなと思ったんです。でも、その不思議な感じも夏らしいかなあと思って。夏って弾けた印象が強いですけど、夏休みの間に思い出になるような出来事が起こったりするじゃないですか。その普段の学校生活とは違う異世界感も夏っぽさだと思ったんです。

――作詞は前作のアルバムでも12曲中6曲で担当されてましたが、今回はいかがでしたか?

渕上 テーマはガッチリ固まってたのでサビの部分とかはすぐに書けたんですけど、ストーリー仕立てにしてしまったので、「2番の展開をどうしよう?」ってなってしまって。1番と同じ日にするか、また次の年の花火にするか、それとも全然違う話にするか、すごく悩んだんですよ。それといちばん時間がかかったのは、先ほどお話したDメロの部分で、たった3行なんですけど「この異世界感をどう表現しよう?」と思って、カフェで2~3時間ぐらい頭を悩ませてしまいました(笑)。

――悩んだ甲斐もあってか、聴いてると恋人たちのロマンチックな情景が目に浮かぶ、素敵なものに仕上がっています。

渕上 花火って見てる状況はみんな違っていて、彼氏彼女と一緒に見てる人もいれば、ひとり暮らしの部屋で見てる人もいるだろうし、もしかしたら会社の窓から見てる人もいるかもしれないじゃないですか。そうやってみんなが違った場所から同じものを見てることが、「Rainbow Planet」や『プラネット・ウィズ』の世界観に繋がるかなと思ったんです。カップリングは「Rainbow Planet」と直接は関係ないですけど、1枚の作品としてまとまりのあるものにしたかったので、個人的にはうまいこといったのではないかと思ってます。

――バッチリだと思います。2番の展開も“愛しくてそっとキスした 横顔が好きだから”なんてフレーズがあって、かなりドキドキする感じになりましたね。

渕上 ちょっと大人な感じですよね。これ良くないですか?

――すごく良いです(笑)。

渕上 きっとこの曲の主人公たちは、お家でふたりで花火を見てるから付き合って長いんでしょうね。淡い恋心みたいなものもとても素敵なんですけど、私は個人的にちょっと大人な感じの恋の歌が好きなんですよ。アルバムのときも大人な恋愛の曲というリクエストをしたんですけど、今回はそれを自分で書いてみようと思って挑戦したんです。妄想が捗る感じで、すごく楽しかったです(笑)。

――そして先ほどお話にあったDメロの部分は、少しオルゴール風のサウンドになっていて、歌詞も“ビー玉透かしたら まるで宝石みたい 吸い込まれそうなトキメキ”という、少しノスタルジーを感じさせる内容で。歌い方もこの部分だけ少し幼い感じにされてますよね。

渕上 そうなんです。最初は普通に歌ってたんですけど、指示をいただきまして。この曲の主人公はおそらく大人なんですけど、この部分はかわいく歌ってみせることで、心に残るお姫さまへの憧れや少女感みたいなものを垣間見せることができるし、より曲のことを好きになってもらえるのではないかということでした。でも、この部分だけ急に歌い方が変わるので難しいんですよ。

――話は変わりますが、以前に渕上さんのサウンドプロデュースを手がけてらっしゃる佐藤純之介さんにお話を聞く機会がありまして、そのときに「渕上さんの書く歌詞はすごく良くて、普通に作詞家としてお願いしたいレベル」とおっしゃってたんですよ。

渕上 そんな別の場所でも言っていただけるなんて(笑)。うれしいー!

――以前に『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』で演じたイオナのソロ曲「タカラモノ」をご自身で作詞されていたので、歌詞を書く経験は『Fly High Myway!』が2回目というお話でしたが、作詞することに対して楽しみや魅力を感じますか?

渕上 だんだん楽しくなってきてますね。最初のころは宿題みたいな感じで、追われているような気持ちもあったんですけど、最近は投げ出したくなるようなこともなくなって。もちろん考えるのは大変なんですけど、良いフレーズが出てきたときは気持ちいいですし、全部完成したときの達成感もすごく楽しくて、機会があればまた書きたいぐらいです。

――やっぱり本人が歌詞を書くことでしか表現できないものもあるでしょうからね。

渕上 私の普段の口ぐせが曲と出会うことで思いのほか良いフレーズになったり、普段生活してるすべてが素材になるので。私は雑音のある場所で歌詞を書くのが好きなんですよ。たとえばカフェで書くにしても、静かなところよりもちょっと混み合ってるところだったり、ファミレスみたいなところが良くて。前に歌詞を書いてるときに、隣に座ってる女子たちがパンケーキを食べながらすごくくだらない話をしてて、私は内心で「この子たち面白いなあ」とか思いながら歌詞を考えてたのがすごく印象深くて(笑)。今回は世界観が違うので使えなかったですけど、そのときに感じた「今の若い子たちはこういう感じなんだなあ」という気持ちも、いずれ歌詞の素材になるかもしれないし、歌詞を書き始めてからはそういうアンテナを張るようになりました。

――昔は歌詞には興味がなかったとおっしゃってましたけど、アーティスト活動を始めたことで思わぬ楽しみを見つけられたんですね。

渕上 いろんな曲の歌詞を見るようになりましたし、特に私と同じように声優の方でアーティスト活動をしてて、自分で作詞もされてる人の曲はよく見るようになりましたね。「この人はどういうことを書かれるんだろう?」とか気になるようになって。やっぱり生きてきた環境が違うので、私からは出てこないような言葉を使われてたりしますし、面白いなあと思います。

――さて、あらためて今回のファースト・シングルは、ご自身にとってどんな作品になりましたか?

渕上 初めてのシングルということもありますけど、声優とアーティストの両立をより実感できた1枚になったと思います。アルバムのときは本当に自分の好きな世界観だけを描いていたので、初めてアーティストとして表に立つ気持ちが強かったんですけど、今回は『プラネット・ウィズ』という作品を背負ったものなので、私だけの世界ではない責任や大切さを感じたんです。そういう意味では、ようやく二足のわらじを履いている実感ができたというか。でも、それだけに思い入れの強いものになったので、アルバムのときは「この作品が終わりでも別にいいです」という感じだったんですけど(笑)、今回のシングルはまた新しい出会いを求めて頑張っていきたいという想いに導いてくれた1枚になりました。

――アーティストとしての自覚がより強くなってきたと。

渕上 フワッとしたものがしっかりと固まってきた感はあるかもしれないですね。いまのところ新しいライブの予定はないんですけど、そちらもいずれまたできればと思ってますし、曲を蓄えて、歌詞のネタも蓄えて、がんばりたいと思います。

Interview & Text By 北野 創


●リリース情報
TVアニメ『プラネット・ウィズ』ED主題歌
「Rainbow Planet」
8月8日発売

品番:LACM-14787
価格:¥1,200+税

<CD>
1.Rainbow Planet
作詞:坂井竜二 作曲:本多友紀(Arte Refact) 編曲:酒井拓也(Arte Refact) ストリングスアレンジ:川本 新
2.部屋の窓から見る花火
作詞:渕上舞 作曲・編曲:菊地 創
3.Rainbow Planet(Off Vocal)
4.部屋の窓から見る花火(Off Vocal)

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