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2018.06.25

ファイナルにして、史上最高のファンとのぶつかり合いが生んだ熱気と興奮。“遠藤ゆりか「YURIKA ENDO FINAL LIVE-Emotional Daybreak-」”レポート

ファイナルにして、史上最高のファンとのぶつかり合いが生んだ熱気と興奮。“遠藤ゆりか「YURIKA ENDO FINAL LIVE-Emotional Daybreak-」”レポート

6月1日、マイナビBLITZ赤坂にて“遠藤ゆりか「YURIKA ENDO FINAL LIVE-Emotional Daybreak-」”が開催。この日をもって声優・アーティストとしての活動から引退する彼女の最後の晴れの舞台は、終始猛烈な熱気に包まれたものに。それは、“遠藤ゆりか”という存在のあらたな夜明けを飾るのに、これ以上なくふさわしい一夜だった。

筆者は会場に到着した開演約20分前の時点で、フロアはパンパン。しかもゆりか組(=遠藤のファンの総称)の入場は開演直前まで続き、開演前から比類ないほどの熱気に包まれていく。
開演時間を迎えると、まずはスクリーンに夜明けをイメージする映像が映し出され、そこに「2018.06.01」の文字が乗る。それが徐々にデビュー日「2014.02.04」まで巻き戻り、ライブタイトルが表示。続けてピアノとバイオリンがデビュー曲「モノクロームオーバードライブ」のサビ部分を奏でるなか、その曲の衣装を身にまとった遠藤ゆりかがステージに登場。頭サビを歌い、「赤坂ブチ上げて行くぞー!」のシャウトでライブの幕を開ける。のっけからフロアにとてつもない熱気が渦巻くなか、遠藤は1曲目から凛々しく、それでいてこの空間を楽しむかのよう。1サビ明けには「行けるかー!?」と煽った刹那、ゆりか組を巻き込んでヘドバン。さらに一体感を高めていく。2コーラス目以降はステージ両サイドへも歩を進めてそのフロアと視線で繋がると、そのまま「REBORN」へと突入。イントロで一瞬イヤモニを外して歓声を聴き、満足気な表情を浮かべると、Aメロのコール部でも細かくマイクを向けて声を拾っていく遠藤。そこには、少しでも多くゆりか組の声を耳に焼き付けたいという想いがあったのだろうか。そんな振る舞いも交えつつ爽快感あるナンバーを気持ちよく歌い、歌詞通り最後のステージという空へと羽ばたき始めていく

曲明けのMCでは、まず超満員のフロアを前に「いや、すごーい!!」と感激をあらわにしたかと思えば、その満員具合を引き合いに「今日は私が死ぬかみんなが死ぬか」と激しいライブを予告。「黄昏ジュブナイル」を続ける。再び凛々しさを強めに出して歌う彼女の歌声を、真っ赤に染まったフロアが受け止める。かと思えば、続く「Grimm Truth」では少々小悪魔チックなボーカルを披露。それはBメロでの指でハートを描く振り付けなどのパフォーマンスの部分にも表れており、そのどれもが魅力的すぎてズルい。その表現を、誰より何より楽しんでいるのは、ステージ上の遠藤なのだけれども。そして「このまま“かわいい遠藤ゆりか”をお聴きください」との言葉から、2ndシングル「ふたりのクロノスタシス」へ。キュートかつオシャレなナンバーは、サビの手の振りも交えたパフォーマンスが実にかわいらしく、 Aメロで横を向いて靴を鳴らす姿も愛らしいもの。また、2サビ明けには遠藤の先導でワイパーが起こり、フロアには無数の手と青の光が左右に揺れた。

歌唱後には、超満員のフロアをさらにコール・アンド・レスポンスで盛り上げていく遠藤。定番の男女別に加え、「メガネ!」「ライブT!」と続き、ついには「バンドメンバー!」との不意打ちも飛び出した。そして、「今日はワンマンなんですけど、今までお世話になったキャラクターたちが駆けつけてくれるんです」と口にし、“声優・遠藤ゆりかの総決算”でもあるキャラソンブロックへ。
まずは『オルタナティブガールズ』の水島愛梨の「リフレイン・ウォーズ」。楽曲に合わせて縦ノリでアガる、彼女の髪色・黄色に染まるフロアを前に、振り付けも交えてキュートなボーカルで引っ張る遠藤。自身もサビ明けには、そのリズムに合わせて跳ねまくる。そして続くのは、『怪獣娘 〜ウルトラ怪獣擬人化計画〜』のED「KAIJUハート」。こちらも、怪獣をイメージしたガオっとした手も織り交ぜたフリ付きで、ポップなナンバーを楽しく歌唱。間奏では、自身が演じたウインダムとしてフロアのコールを呼び起こしてみせた。さらにもう1曲、『プロジェクト東京ドールズ』の「永遠メモリー」を歌唱。彼女が担当したヤマダに合わせてブルーに染まるフロアに向けて、爽快なナンバーに乗せてスカッとした歌声を響かせていく。その一方で曲のラストに見せたのは優しい表情。コーラス部もオフボーカルでなぞるその姿、1曲1曲を細部まで最後まで噛み締めようとしているかのようだった。
ここで雰囲気は一転。『悠久のユーフォリア』からバラードが2曲続く。まず1曲目の「流星のおとぎばなし」は、歌い出しこそ静かさと優しさが前面に立っていたものの、曲が進むにつれて、時には演じるようなパフォーマンスに合わせて左右も見上げたり、徐々にボーカルに力強さが宿ったりと、ひとつの物語を描くように表現。すると今度はスタンドマイクを前に「明星」を歌唱。サビ前のブレスでさえ聴きどころに変えるほどのボーカルの力をもって会場を包み込んでいった。そして最後は力いっぱいに歌い切り、後奏中に一礼して一旦降壇。その長い後奏からのバンドタイムを挟むと、「パラレルスパイラルライン」のイントロとともに『Emotional Daybreak』のジャケットでの衣装に着替えた遠藤が、「後半戦も盛り上がって行くぞー!」と勝鬨を上げながら登場。ボーカルはキュート寄りに、間奏では軽やかなステップも交えながら明るく楽しく歌っていく。

曲明けには、平日にもかかわらず来てくれたゆりか組への感謝を述べると、「今日赤坂に来れなかったオタクの声がするぞ……?」と口に。すると場内に「俺のいちばんの推しのファイナルライブなのに、なんで俺は今、赤坂にいないんだー!(CV:杉田智和)」とのボイスが流れ、そのまま「行きたいイベント重なりすぎてコンプできないオタク葬送曲」とタイトルコール。さらに本来のこの曲の歌唱者・ZAQが、歌い出しと同時にサプライズで登場!しかも2-Aメロの歌詞を「6月1日 だいすきな歌手のライブがある」からこの日バージョンのものに差し替えるという、遠藤へのサプライズも織り交ぜてきた。それを聴いた遠藤は一瞬驚き、そして頬に両手を当てながら、嬉しさからニヤニヤが止まらない。その遠藤、“葬送曲”パートであるAメロ終盤では失意を存分に表現したり、早口なBメロをZAQとともに乗りこなしたりと、楽曲自体の持つ魅力を最大限に表現。落ちサビでは“大好きな名前”としてフロアから「ゆりかー!」と大きな声が浴びせられ、最後はふたりで肩を組んで歌い、ジャンプエンド。歌唱後には、改めてハグを交わしていた。

ZAQがステージから去ったあと、「ここから鬼のように盛り上がっていただきたい」との言葉に続けて歌い始めたのは「黄泉のYou&Me」。イントロの琴の音色に合わせてポーズを取ってから歌い始められたこの曲では、艶やかなBメロ終盤の手の動きや2サビ明けのダンスなど視覚的な見せ場が盛りだくさん。そのうえでサビではジャンプするフロアを先導する強さも見せる、1曲の中で多彩な表情を見せるナンバーに。跳ねながら演奏したバンドメンバーも含めて、さながら会場全体でセッションを行っているかのようだった。
そして「全員死ぬ気でかかってこーい!」のシャウトから、『天使の3P!』のBaby’s breathとして歌唱した「楔」を披露。ここから、彼女の目の色が変わる。Bメロでのヘドバンなど明確なポイントはもちろん、その振る舞いすべてがロックシンガーのライブそのもの。フロアの沸き方を確認して納得の頷きも見せると、そのまま2曲続けて“Baby’s breath.”の楽曲へ。まずは「Brand new Stage」の冒頭から大きく響くコールにニンマリすると、ちょっぴりいたずらっぽく再度ヘドバンを誘発。さらにノッてきたのか、尻上がりに遠藤のボーカルは力強さを増していく。しかしさらにボルテージを高めようと、畳み掛けたのは「Hail to reason」かがみながら前方を挑発してみたり、Bメロでは膝立ちで感情を込めたり、それをさらにサビで開放してみせたり――“エモい”というのは、いたずらに使われるものではなく、きっとこういう曲の模様を伝えるためにある言葉なのだろう。そう思わされるほどのパフォーマンスに加え、2-Bメロからサビにかけての荒々しい歌声は胸にずんずん響くもの。それは受け止めようとしないと受けきれない、洪水のような想いの波動となって、フロアいっぱいに届く。
そんなリミッターが吹っ飛んだかのようななかでの「All my bravery」では、シャウトに続いてのっけから左右に頭を振ったり、Bメロでは砂守岳央(Mani.)とデスボイスバトルを繰り広げたり、スピーカーに脚をかけたりと凄まじいヒートアップ。しかもラスサビ前には煽り漏れのないようにステージを歩いてフロアに視線を送ったりとぬかりもなく、最後の最後までゆりか組と全力でぶつかり合って、このブロックを終えた。
そしてぶつかりあったゆりか組を「元気だなぁ、お前ら!」と讃えると、凛としながらも速くてメロディアスな「Melody and Flower」から終盤戦スタート。最高のボルテージのままかっ飛ばす遠藤とフロアは、いいバトル感を持ったまま互いに高みへと上りゆく。最後まで左右に頭を振りながら歌う彼女の姿は、自らの精一杯を絞り出しているかのようだった。

歌い切った遠藤は「『どんなエモいライブになるんだろう?』って思ってたんだけど、それどころじゃなくて、めちゃくちゃ楽しい!」とその瞬間の想いを言葉にしてから、「夜明けの前にふさわしいこの曲を」との曲振りから「はじまりのうた」を歌い始める。気がつけばもう19曲目。刻一刻と迫り来るあらたな夜明けを前に、この明るくポップな曲で少しずつその世界を開いていく。その表情も実に明るく、満足感が充足したようなものだった。
そうして飛び立つ準備のできた彼女から、次がラストナンバーであることが告げられると、その歌唱を前に「最高にエモいこの曲を」と切り出し、歌い出しについて「シンガロングで、みんなの歌を聴かせてください。最高にエモい時間をください」と口にして、「Emotional Daybreak」を歌い始める。シンガロングはフロアのみならずバンドメンバーからも起き、遠藤ゆりかのためのエモーショナルな4分半が、幕を開けた。
今の自身の気持ちを込めたこの曲らしく、Aメロをぽつりと歌い出してから、彼女の表情にも歌声にもどんどん感情が色濃く表れていく。2コーラス目には少し熱いものがこみ上げているようにさえ感じられるほど、その感情はすりきりいっぱいまで高ぶる。そんな“Emotional”の体現のようなステージを展開し、2サビ明けには「みんなの声を聴かせてください」と口にしてイヤモニを外して笑顔で目を閉じて両手を広げ、シンガロングを受け止める遠藤。ラスサビでの笑顔には偽りのない“今”の感情が発露し、最後もそのシンガロングを受けながら、精一杯気持ちいっぱいに歌い切った遠藤。笑顔のまま曲を締めくくり、一礼ののちステージを降りた。

そのまま止まない拍手の音はやがてクラップとなって揃い、アンコールの声を呼び起こす。その声は前方から次第に「ゆりしー!」の声へと徐々に塗り替えられ、ついには会場一体に。それはまるで、夜明けの光が徐々に地上を照らすかのような光景のようでもあった。
そんななか再びステージに立った遠藤はベースを提げ、それを奏でながらBaby’s breathの「HOWLING」でアンコールをスタート。爽快でポジティブなナンバーは、その呼ぶ声への彼女からの返答のようだし、実際にベースを奏でる姿からは、改めて“総決算感”を感じられた。加えて2サビ明けにはギターとのセッションも交え、残り少ない時間を精一杯エンジョイしきっていく。
歌い終わったところで、今の気持ちを「エモいことのひとつやふたつ言おうかなと思ってたんですけど、思ってた以上に楽しくて、あんまりそういう感じじゃないね」と笑顔で口にすると、「ライブを決めたときは体も気持ちも本当にいっぱいいっぱいだったけど、この半年がすごく速くて楽しくて!それはみんなが全力でついてきてくれたからなんだろうなと思ってます。『半年間、楽しかったな』という気持ちしかありません!」と引退発表から今までの気持ちを語り、ゆりか組をバックに記念撮影。と、遠藤のすぐ後ろ、最前のファンが何やら幕のようなものを取り出し……?
それに気づいた遠藤、「見えないからちょうだい」とひょいっと手に。それは、ファンの寄せ書きがびっしり書かれた幕。それを目にして「そういうことをする子たちだよ!」と喜びの表情をみせつつ、その幕を自らの前に据えて、フロアをバックにメモリアルな光景を写真に収めたのだった。

そしてアンコールのラストを飾るのは、自ら歌詞を紡いだ「knight-night.」。冒頭のフレーズから、今ファンへ届けるメッセージとしてこれ以上なくピッタリな1曲だ。歌声も振り付けもキュートにパフォーマンスし、Bメロでは彼女の指に合わせてフロアのペンライトも揺れる。落ちサビのウィスパーも愛らしく、歌詞通り遠藤もフロアも笑顔。最後まで、いや最後だからこそのこれ以上ない笑顔で大歓声と拍手を受け止め、会場中に手を振り遠藤はステージを降りた。

実はここで、セットリスト的にはライブは終わっているはずだった。しかし、彼女を呼ぶ声は、まったく収まることがない。
それに応えて、遠藤はもう一度ステージに。ライブを振り返りつつ、不意にこみ上げるものがあったのか「やべー、泣いちゃう!」と冗談めかして後ろを向くひと幕も。この日唯一の、ここまでとはまた違ったエモーショナルな姿を見せた彼女は、「笑って、いい感じに盛り上がって終わりたい!」と口にし、「遠藤ゆりかの曲を、ずっと聴き続ける覚悟はあるかー!?」とシャウト。そこに返るこの日いちばんの歓声を受けて、最後のデビュー曲「モノクロームオーバードライブ」を、もう一度歌う。ライブ冒頭とはまた違った、嬉しそうな表情で歌いだされたこの曲では、1-Bメロにかけて戦友であるバンドメンバーと順に直接顔を合わせて感謝の挨拶。1サビでは笑顔でフロア最前と目を合わせてニンマリすると、サビ明けにはニッコニコの表情でとにかくはしゃぎまくる。その彼女の姿を前にしたフロアは、最後の最後に最高潮を更新。不思議なことにラストフレーズも、これからのゆりか組へと送る言葉のように“今”に最高にハマると、「みんなー!最高の時間をありがとう!」とシャウト。歌い終わった彼女は最後に出ハケ口で、オフマイクで「みんな大好きだよー!」と叫び、長い一礼とともに遠藤ゆりかのステージが幕を下ろした。

その後、「Emotional Daybreak」流れるなかライブのED映像が上映。オフショットVTRに続いて、映像の後半にはこの日の写真が早くもUP。そこに映る遠藤ゆりかの姿は、どこをとっても楽しそうなものしかなかった。そして最後に「共に迎えた夜明けの先に どうかみんなの幸せがありますように たからものみたいな人生をありがとう……♡ 遠藤ゆりか」との手書きのメッセージが映し出され、ライブは大団円。会場はゆりか組を送り出す「knight-night.」に合わせて、フロアにはいつまでもクラップが響き続けていた。

1曲目からラストまで続いた遠藤ゆりかとファンとの本気の想いのぶつかり合い。そしてそれが生んだ、デビュー曲のWアンコールでの活動の幕引き。この3時間こそが、唯一無二の“エモい”と呼べる時間だったのではないだろうか。
この日をもって、遠藤ゆりかの活動は終わりを迎えた。しかしライブ中のMCで叫ばれたように、彼女が残した楽曲はいくらでも聴くことができるし、そのたびにゆりか組は彼女を思い出して隣にいられる。それはまるで、一度沈んだ太陽が昇るようではないだろうか。そのDaybreakのたびに湧き上がるであろうEmotionalな感情を、一生幾度となく感じ続けていたい。そう思わせる、見事なラストステージだった。

Text By 須永兼次

“遠藤ゆりか「YURIKA ENDO FINAL LIVE-Emotional Daybreak-」”
2018.06.01@マイナビBLITZ赤坂
【SET LIST】
M1.モノクロームオーバードライブ
M2.REBORN
M3.黄昏ジュブナイル
M4.Grimm Truth
M5.ふたりのクロノスタシス
M6.リフレイン・ウォーズ
M7.KAIJUハート
M8.永遠メモリー
M9.流星のおとぎばなし
M10.明星
M11.パラレルスパイラルライン
M12.行きたいイベント重なりすぎてコンプできないオタク葬送曲(Guest:ZAQ)
M13.黄泉のYou&Me
M14.楔
M15.Brand new Stage
M16.Hail to reason
M17.All my bravery
M18.Melody and Flower
M19.はじまりのうた
M20.Emotional Daybreak

EN1.HOWLING
EN2.knight-night.

W-EN.モノクロームオーバードライブ

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