2012年1月に初めてアニメ化されてから重ねること4度目。アニメ『ハイスクールD×D』シリーズの4期目として『ハイスクールDxD HERO』が放映開始された。主題歌を担当するのはMinami。「ドタバタとしたアニメ」の雰囲気をいかに楽曲に転化させたのか。アニソンを作るときはアニメのことしか考えていないと話す彼女が久々に放つ、最高に高揚感溢れるOPテーマの鍵がここにある。
――『ハイスクールD×D』はこれまでに3度アニメ化されています。そのOPテーマということで、最初に聞いたときはどう思いましたか?
Minami 調べたらシリーズ4期目ということを知って、「絶対に今までとは違う曲にしよう!」と思いました(笑)。
――制作するにあたって、作品のどのような要素から広げていきましたか?
Minami まず、熱血系の男の子が女の子に囲まれていて、昔ながらのドタバタとしたアニメだと感じたんですね。なので、その空気感を表そうと思いました。主人公が持つ、あの何とも言えない感じですね。Aメロがそれですね。多分、今までに私がやったことのないコード進行をしているはずです。アニソンに限らず、曲の出だしって結局和音の響きで決まるじゃないですか?和音がどれぐらいの拍なのか、2拍で1種類なのか、4拍なのか。なので、コードもメロディも動かすことで楽しい感じを最初に提示して、そこからだんだん真面目になっていくという構成にしました。サビはよくある感じではありますけど。
――歌詞についてはどういった考えから?
Minami 『ハイスクールD×D』って「楽しく見られるアニメ」ですよね。頭を使いながら見て、気持ちが暗くなるアニメではないと思いました。だから、文章に裏の意味を持たせるのではなく、直球の歌詞にしています。1番ではわりと世界観をさらっと言っています。あくまで見たままに。あとは、キャラクターが普段話していたセリフから汲み取った部分も多かったです。女の子同士の会話でポロッと本音を言うことがあるとか、2番はそういうところから拾っています。
――「頭を使って」考える、いつもとは逆ですね。歌詞に作品が持つ意味や要素を入れ込んだり絡めたりすることが多いのMinamiさんなので。
Minami そうですね。だから、いつもよりも考えるべきことが少なかったです(笑)。むしろ、やりすぎない感覚を大事にしていました。今まで、曲や歌詞をいろいろと書いてきたことで、「これぐらいのさじ加減で提出してみよう」という感覚がなんとなくつかめるようになってきたんです。作品を読んだときに感じとれるというか。掘り下げすぎて何回もやり直すことがあって、やりすぎないほうがいいことのほうが多いですね。やっぱり、作品が歌になるというだけでも「距離」があるじゃないですか。
――そうですね。小説や映像とは別の表現方法ですから。
Minami だから、歌詞でさらに複雑なことをやるとわかりにくくなるというのをここ何年かで学びまして。今はいろいろと試している時期でもあります。
――ただ、Minamiさんは以前から楽曲制作の際に自分を入れ込まないですよね。「やりすぎない」感覚もあくまでアニメ主体で。
Minami はい、アニメのことしか考えていないです。
――ですよね。影山ヒロノブさんも同じようなことを仰っていますが。
Minami ランティス魂ですよ、きっと(笑)。
――抑え気味で作っていく中で、少し作り込んだり工夫してみたりしたところはありますか?
Minami Bメロにコーラスを入れたんですけど、そこは「ちょっときれいにできたかな」という感覚が自分の中にあります。デモの段階から自分でコーラスも入れて提出したんですけど、メロディに間があいたところで後ろに声が入ってくると、なんとなくフワッとした気持ちになると思ったんですよ、瞬間的に。「思い」が入るといいなぁ、という感じで。工夫ではないですけど、思いついたのでそのまま入れています。
――カップリングはどのようなイメージで作られたのでしょうか?
Minami 「SWITCH」が派手でテンポも速いのでミディアム系かバラードと思っていたんですけど、ディレクターさんに聞いたら、マイナー系アップテンポで、という話になりました。なのでそれを頭に置きながら。ただ、ここ何年か、「記憶」の話を書きたいと思っていたんです。記憶って不思議じゃないですか。何年も経って完全に忘れていると思っていたら、急に景色を見て思い出すとか。その不思議な感覚を音楽として残しておきたかったんですけど、今回、速い曲でもできそうだと思ったので、歌詞をまず書いて、それに合わせて曲を作っていきました。
――「記憶」の話を書きたいと思わせる具体的な出来事があったのでしょうか?
Minami 友達が超悩んでいたんですよ。忘れていたことを急に思い出してつらい、って。
――「これは私が何とかしなきゃ」って?
Minami そう思って。私もこの1年くらいの間にいろいろあって、ものが急に失くなるとか人と離れなきゃいけなくなるとか、そういうこともありますよね、突然。で、「melt」には「溶ける」という意味も「消えてなくなる」という意味もあるので、バランス感がいいと思ったんですよね。何かを失った感覚、でも実は溶けきっていない何かが残っている、みたいな。それって「人が生きている中でつかみきれない感覚」ですよね。それを文章で伝える力なんて自分には全くないと思うんですけど、音楽ならばできると感じたんです。それに、自分が日々感じているものって自分にしか表現できないことなので、私たちみたいな職業の人が伝えていくものだと思ってもいるんです。それが「オリジナリティ」にもなる、と。だから、機会があればできるだけマニアックなことをやっていきたい、とも思ってはいます。
――アニソンを作るときとは違う感覚での楽曲制作ですね。
Minami そう。違った面白さがありますね。アニソンはいっぱいもらった情報をみんなにわかりやすく分け与える役割だと思うんですけど。
――文章で伝える力はないと仰いましたが歌詞で伝えるという感覚はないんですか?
Minami 音楽と比べたら「歌詞を書くのが得意じゃない」って気持ちはずーっとあります。歌詞なしでやれと言われたら多分できると思いますけど。やっぱり言葉は難しいですね、目に見えるので。究極的には、音楽という目に見えないものだけで景色を見せられる人にならないと、とは思っています。
――ちなみにお友達の件は解決しましたか?
Minami 多分しばらくは解決できないと思うので、記憶がよみがえるたびに話を聞こうとは思っています(笑)。そうだ!曲を作るきっかけのひとつとして、1年くらい前から続けているヨガの先生が言った言葉もありました。「痛みを感じることによって人は癒やされる」。向き合わないから癒されないのであって、気が済むまで向き合ったほうがいいという。だから、聴いた人の癒やしになれたら、という願いもあります。
Interview & Text By 清水耕司(セブンデイズウォー)
●リリース情報
TVアニメ『ハイスクールD×D HERO』OPテーマ
「SWITCH」
4月25日発売
【初回限定盤(CD+DVD)】
品番:LACM-34745
価格:¥1,800+税
【通常盤(CD)】
品番:LACM-14745
価格:¥1,200+税
<CD>
1:SWITCH
作詞・作曲:Minami 編曲:AstroNoteS
2:melt
作詞・作曲:Minami 編曲:齋藤真也
3:SWITCH (off vocal)
4:melt (off vocal)
<DVD>
SWITCH (Music Clip)
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