INTERVIEW
2017.04.28
『ひだまりスケッチ×ハニカム』のBlu-ray Disc BOX発売に合わせて、2013年にリリースされた『ひだまりスケッチ』のベスト・アルバム『ひだまり荘で、待ってます。』がハイレゾ版でリリースされた。
今回は『ひだまりスケッチ』シリーズを通して楽曲制作を支え、ハイレゾ版の監修も務めたランティスの音楽プロデューサー・佐藤純之介氏へのインタビューを実施。ハイレゾ版の聴きどころや、レコーディング当時のエピソードなどを語ってもらった。
また本インタビューでは業界屈指の“ひだまらー”(『ひだまりスケッチ』のファン)であるクラムボン・ミト氏を招き、TVとラジオの主題歌を網羅したベスト・アルバムの魅力をふたりの対談形式でお届けする。
Interview & Text by 青木佑磨(クリエンタ/学園祭学園)
at Lantis Magic Garden Studio 3st
『TVアニメ『ひだまりスケッチ』シリーズ 主題歌集 ひだまり荘で、待ってます。』のレビューはこちら
───今回『ひだまり荘で、待ってます。』のハイレゾ版がリリースされるに至った経緯は、どのようなものだったのでしょうか?
佐藤純之介 僕はずっと、『ひだまりスケッチ』楽曲のハイレゾ版を作りたかったんですよ。ずっと好機を探していて、今日来ていただいたミトさんには数年前から「一緒に作りましょう」と話していたんです。それで先日『×ハニカム』のBlu-ray BOXの発売に合わせて僕と斎藤(滋)がインタビューを受けたときに、そういう話になったので「このタイミングだ!」と思い実現させました。今回はスケジュール的にミトさんは都合がつかなくて、マスタリング作業には参加できなかったのですが、こうしてお話する機会が設けられてよかったです。
ミト 私は元々『ひだまり荘で、待ってます。』は盤で持っていたんですけど、これの何が良いって、まず曲間です。
佐藤 あっはっはっは(笑)。ありがとうございます!
ミト 曲間のタイムが素晴らしいなと。Disc 1のじっくり噛み締めていく感じと、それに対するDisc 2のたたみ掛け、そしてあのラストですよ。
佐藤 さすがよくわかってらっしゃる。
ミト あの曲間の詰め方とあのセットリスト、特にDisc 2後半の展開で涙できるかどうかで、ひだまらーの濃さがわかるじゃないですか。
佐藤 そうですね。後半はファンを号泣させるセットリストになっています。
ミト 後半で泣かない人たちには「そうか、君たちは武道館にいなかったのか」と思ってしまいますね。
佐藤 いた人間はもう絶対に泣きますからね。
ミト そういった曲間まわりもパッケージした状態でハイレゾになっていることが、個人的にはとても良かった点です。
───ミトさんがかなり強烈なひだまらーであることはわかりましたが、そもそもおふたりはどのようなご関係なのでしょうか?
佐藤 ミトさんとの出会いは、かれこれ7年程前に遡ります。その頃にTwitterでえらくmarbleや『ひだまりスケッチ』の楽曲を褒めていただいていたんですよ。
ミト 『×☆☆☆』くらいの頃に、marbleの「さくらさくら咲く 〜あの日君を待つ 空と同じで〜」を相当推してたんですよ。加えて私は2 ANIMEny DJsというユニットでDJをやっているんですが、そこでも『ひだまりスケッチ』は初代OPから3期OPまでほぼグリッド※を変えないで掛けられるプログラムを持ってたんですね。そのプログラムを常備するくらいは『ひだまり』が好きだったんです。
※グリッド トラック内の正確なビート位置を示すマーカー。音源データでDJを行なう際、波形上で視覚的に楽曲のビートを把握することができる。
佐藤 Twitterで「制作を担当しました佐藤です!」とリプライしました。それがきっかけでお会いすることになり、ミトさんが相当なひだまらーであるということと『ひだまりラジオ』が大好きであるということが発覚しまして、「えらいコアな人やな」と(笑)。ベスト・アルバムには収録されていないんですが、「はーい!チャンスちゃん」という、ゆの(CV.阿澄佳奈)のキャラソンがあるんですよ。その間奏で、ボーカル・チョップを駆使してボイス・パーカッションをやっていたんですね。ゆのに「ドーン、パーン、ドッドッパーン、ドッチードッチー」と阿澄さんに言わせた音源をリズムセットとして組んで、打ち込みをやり直すというアプローチをしていたんです。ミトさんはそこに反応していただいていたんですよね。
TVアニメ『ひだまりスケッチ』
キャラクターミニアルバム「ひだキャラ」
「はーい!チャンスちゃん」収録
歌:ゆの(阿澄佳奈) 作詞・作曲:ゆうまお 編曲:A-bee
ミト あれがあることによって、キャラソン・アルバムを買うに至ったレベルでした。レコーディング時の経過について、阿澄さんが当時の『ひだまりラジオ』で喋っていたんですよ。そのときに純さまの名前が出てきたりとか、チョップのときにすごく面白かったみたいな話があったんです。その独創性が、アニソン定義の中で特化して面白いものだと思って、自分が関わった花澤香菜さんのプロジェクトで使わせていただいたりしました(笑)。『〈物語〉シリーズ』で作った、斧乃木余接(CV.早見沙織)の「オレンジミント」(『憑物語』OP主題歌)でボイパ(ボイス・パーカッション)させたのも、基本は「はーい!チャンスちゃん」があったからなんですよ。
佐藤 実はそれを受けて逆輸入もしていまして、『できるかなって☆☆☆』ではボイパを6人でやっているんですよ。あれはミトさんが盛り上がってくれて、「そんなに喜んでくれるんだったら、前回はひとりだったけど今度は6人でやろう」と思った結果なんです(笑)。そんな感想を伝えてくれたことも含めて「ミトさんは本当にひだまらーなんだ」と思うところがあって、その後にキャラソン(「SiS CalM DowN」沙英(CV.新谷良子)×智花(CV.釘宮理恵))や「組曲「ひだまりスケッチ」~超ひだまつりin日本武道館~」のリミックスを作っていただくことになりました。※
※2013年11月27日にリリースされたTVアニメ『ひだまりスケッチ×ハニカム』キャラソンミニアルバム『ひだまループ×エブリデイ♪』には、ミトと牛尾憲輔によるユニット、“2 ANIMEny DJs”が作詞・作曲・編曲を手がけた、沙英(CV.新谷良子)×智花(CV.釘宮理恵)の「SiS CalM DowN」と、ミトがリミックスを担当した「組曲『ひだまりスケッチ』~超ひだまつり in 日本武道館~」が収録されている。
そうして身内として一緒にお仕事をするところまで繋がっていったんですよ。今こうしてランティスでTO-MASやクラムボンの作品を作らせてもらったりしているのも、『ひだまり』があるからこそなんです。
ミト 『ひだまり』が作った縁が、いろんなところに派生していたのは事実ですね。
佐藤 『ひだまり』で繋がった縁でしたが、会った初日にはほとんどTM NETWORKの話しかしませんでしたけどね(笑)。
ミト それでいうと、私からすれば「ひだまりランド・ゴーランド」はTKファミリーのオマージュなんですよ。それがわかるかわからないかで、感動と音楽的なテクスチャが変わってくるんです。……これはあとでDisc 2の話になったときに語らせてください(笑)。
佐藤 それではひとまず、Disc 1を聴きながら話してみましょうか。
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