INTERVIEW
2017.05.24
───話は変わりますが、おふたりは普段アニメをご覧になりますか?
ぽん 私は80年代、90年代のアニメが好きなんです。子供の頃、両親が共働きで、お姉ちゃんも部活をやっていたので、家にひとりでいることが多かったんですよ。そんなときはよくCSのアニメチャンネルを観ながら過ごしていて。そこで『うる星やつら』や『Dr.スランプ アラレちゃん』『タッチ』なんかを熱心に観てましたね。アニメソングも自然に口ずさんでたり。今使ってるスマホケースも『うる星やつら』のデザインなんです(笑)。
───そう言われてみたら、ORESAMAの音楽には昔のアニソンっぽさがあるようにも感じられますね。
小島 昔のアニソンはメロディーがすごくポップで遊び心に溢れている印象なので、そう言っていただけるのはうれしいですね。僕は自分の曲をなるべく多くの人に歌ってもらいたいので、メロディーを作るときには一回聴いたら覚えてしまえるようなキャッチーさを意識しているんです。でも、個人的にはアニメで起用された音楽というより、ディスコやファンク、ソウルといったブラック・ミュージックの要素の入った音楽が好きなんですよ。ORESAMAの音的には、そういうレトロな雰囲気をいまのモダンな音にどう混ぜるかということをテーマにしています。
───ちなみに小島さんはアニメをご覧に?
小島 小学生の頃に再放送でやってたのを観てましたけど……。あまりアニメ自体をフルでは見てこなかったんですよね。
ぽん (小声で)『ミスター味っ子』……。
小島 たしかに『ミスター味っ子』は観てたけど(笑)。あれは小学生の頃かな?オープニングの「ルネッサンス情熱」という曲がものすごく好きで、ずーっと聴いてましたね。
───いいですね(笑)。小島さんはブラック・ミュージックがお好きとのことですが、どういったアーティストを聴いてこられたのですか?
小島 僕はナイル・ロジャース※というギタリストが本当に大好きで、その影響もあってディスコ・ミュージックが好きになったんです。そこから、シック、アース・ウィンド&ファイア、スライ&ザ・ファミリー・ストーンとかをいろいろ聴いて、こういう雰囲気の音楽を作りたいと思うようになって。
※ナイル・ロジャース アメリカのギタリスト/プロデューサー。70年代にシックの中心メンバーとしてデビューし、「Good Times」ほか数々のディスコ・ヒットを発表。並行して80年代にはマドンナやデヴィッド・ボウイの作品をプロデュースし、2017年にはシック名義の新作リリースを予定するなど、現在も第一線で活躍している。
───ナイル・ロジャースは間違いなくディスコの世界ではイノベイターのひとりですものね。たしかに小島さんのギター・カッティングは特徴的で、ナイルからの影響が見受けられます。
小島 ありがとうございます!そこは本当にいい意味でナイル・ロジャースのマネなんですよ。僕はギターがうまくなりたいというより、どれだけナイル・ロジャースに近づけるかを目標に弾いてますから(笑)。それくらい好きな人なんです。
───彼のどういった部分に魅力を感じますか?
小島 あの人はギターの音をほぼ歪ませないんですよね。僕はその部分もすごく尊敬していて、今回のシングルも全曲クリーントーンで弾いてます。僕の曲でギターを歪ませることは本当に稀なんですが、そこはナイル・ロジャースの影響です。クリーン一本で世界を制した人ですからね。彼のギターのリズム感を自分で習得して、いまのJ-POPに入れたらどうなるのかを試してみたいし、彼のやってきたような音楽をどうJ-POPに昇華するかが僕の命題ですね。
───なるほど。そのナイル・ロジャースに代表される70~80年代のディスコ/ソウル・ミュージックからの影響がある一方で、ORESAMAの音楽にはより現代的なダンス・ミュージックの要素も感じられます。
小島 海外ではエレクトロ・ディスコやエレクトロ・ファンクといったジャンルが盛り上がっていて、シンセをガンガンに使って昔風の音楽を構築してる人がたくさんいるんです。そういったアナログ・シンセの音を再現するのが得意な人たちの音使いを参考にすることもありますね。特にフランスにはそういう人が多い印象です。
───たしかにORESAMAの1stアルバム『oresama』(2015年)に収録されていた「Morning Call」では、フレンチ・エレクトロっぽい雰囲気が前面に出てましたね。
小島 フレンチ・ハウスやフレンチ・エレクトロは好きでずっと聴いてます。その辺りのジャンルは、ブレイクボット※がきっかけでちゃんと追うようになりましたね。彼の音楽はレトロなんですけど、僕からするととてもモダンに聴こえたんですよ。そこからジャスティスとか界隈のアーティストも聴くようになって。
※ブレイクボット フランスのDJ/プロデューサー。フレンチ・エレクトロの名門レーベル、エド・バンガーの看板アーティストのひとりで、70~80年代のディスコ音楽からの影響を受けた作風で知られる。
───それらフレンチ・ディスコ勢もそうですし、例えば日本でも人気の高いブルーノ・マーズやタキシードなど、近年は80年代のシンセ・ブギー~ディスコを現代風にアップデートしたサウンドを打ち出すアーティストが世界的にも話題となっています。ORESAMAの音楽には、そういった人たちとの共振性も感じさせますね。
小島 タキシード※の最近出したアルバムもそうですし、「好きなものはコレ」というのがわかってきたんですよね。ああいった「レトロなものをどれだけモダンに再現するか」ということを僕も日本でやりたくて。そのために日本の音楽の流行りや、アンダーグラウンドなシンセ界隈についていろいろ勉強したりもしました。そこで、モダンなファンク要素にエレクトロを入れることが、自然とテーマになってきたんです。ナイル・ロジャースも最近では若い世代のDJと積極的にコラボしてるので、イメージはそういうものに近いかもしれないですね。
※タキシード シンガー・ソングライターのメイヤー・ホーソーンとDJのジェイク・ワンから成るアメリカのファンク・ユニット。今年3月にニュー・アルバム『Tuxedo II』をリリース。
───たしかにナイル・ロジャースは近年、フレンチ・ハウスの代表格でもあるダフト・パンクとの「Get Lucky」を皮切りに、アヴィーチーやディスクロージャー、ニッキー・ロメロといったクラブ・ミュージック畑の人との仕事が増えています。
小島 ナイル・ロジャースにダンス・ミュージックの質感。もしくは、フォーク・ミュージックとナイル・ロジャースを合わせたらどうなるか、とか勝手に妄想してるんですけど(笑)。そういったことを自分でもやっていきたいです。
───ぽんさんは、歌手になるきっかけのアーティストはいますか?
ぽん 私は誰かに憧れてというより、子供の頃に「歌がうまい」と言われるのがうれしくて好きになったタイプなんです。合唱団に入ったときにソロに選んでもらったり、ダンスの発表会のときにひとりで歌わせてもらったりして。
───音楽アプリ「nana」※にてさまざまな楽曲のカバー音源を投稿してますが、あちらはご自身の好きな曲を歌ってるのですか?
※「nana」 スマートフォンで歌声や楽器演奏を録音/投稿できるSNSアプリ。
ぽん 自分の好きな曲だけだとどうしても偏っちゃうので、まだ名前を公表していなかった頃はリクエストも募ってました。それまで歌ったことのなかったボーカロイドの曲にも挑戦したりして。ボーカロイドの曲は息継ぎをするところがなかったりするので、その場合は歌を重ねて録るんです。他にもすごく昔の曲をリクエストいただいたり、いろいろ勉強になりましたし、自分の可能性も広がったと思います。
───そんななかで「ラムのラブソング」は何回も歌われていますよね。
ぽん たぶんいちばんたくさん歌ってますね。ジャズ風とかエレクトロ調とか、いろんなオケの音源をお借りしたり、同じオケで何回か歌ったりもしてます。定期的に歌いたくなる曲なんですよ(笑)。いちばん好きなアニメソングです。
───ラインナップのなかにはアニソンのカバーもけっこう多くて。それこそ、昔の曲だと「ロマンティックあげるよ」や「デリケートに好きして」も採り上げてますね。
ぽん もう、ただ単に好きなだけなんですよ(笑)。最近のアニソンはリクエストをもらったりするんですけど、その年代の曲はただ歌いたいだけですね。
───やはりそこはご自身のルーツとしてある部分なんでしょうね。普段は他にどんな音楽を聴かれているのですか?
ぽん 私は聴いてハッピーになれる曲が好きなので、最近だとONIGAWARAさんとか岡崎体育さんとか、心の底からハッピーになれる曲が好きですね。でも、昔はずっとフジファブリックさんばかり聴いてました。家で繰り返し『TEENAGER』(2008年のアルバム)を聴き続けて、お母さんが本気で心配することもあったんですけど(笑)。
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