『きんいろモザイク』ED主題歌「Your Voice」収録。西明日香、田中真奈美、種田梨沙、内山夕実、東山奈央によるユニット・Rhodanthe*の1stアルバム。

2013年7月より放送されたTVアニメ『きんいろモザイク』のメインキャラクターである忍、アリス、綾、陽子、カレンを演じる西明日香、田中真奈美、種田梨沙、内山夕実、東山奈央の5人で結成された声優ユニットが“Rhodanthe*（ローダンセ）”。ユニット名となっているローダンセとは、「広葉の花かんざし」「姫貝細工」などの別名を持つキク科の植物のこと。ジャケットのロゴのようにピンク色の花を咲かせるローダンセの花言葉は、「変わらぬ思い」「終わりなき友情」「飛翔」など。まさに『きんいろモザイク』にぴったりなユニット名だ。

彼女たちが歌唱した第1期『きんいろモザイク』のOPテーマ「Jumping!!」、EDテーマ「Your Voice」に、第2期『ハロー！！きんいろモザイク』のOPテーマ「夢色パレード」、エンディングテーマ「My Best Friends」やキャラクターソングなどを収めた1stアルバムが『FIRST*MODE』。ポップで洒落たサウンドと声の魅力がたっぷりと詰まった作品となっている。

「Your Voice」

ビッグバンドがスウィングするサウンドが清々しい第1期のEDテーマ。流麗なメロディ、ゴージャスなホーンとストリングス、躍動するリズム。洒脱なポップスへとミシェル・ルグランのような小粋なタッチで仕立てた作曲家、中塚武の職人センスが遺憾なく発揮されたナンバーだ。

中塚武は、H.C.F.D.Mのようなラウンジ系ポップユニット「QYPTHONE（キップソーン）」を結成し、ル・ハモンド・インフェルノが運営するドイツのレーベル「bungalow」のコンピレーション『sushi 4004』にてデビューを飾った。『sushi 4004』には“渋谷系”の中でもダンス寄りのラウンジ・ナンバーが収録されており、ピチカート・ファイブ、コーネリアス、ファンタスティック・プラスティック・マシーン、砂原良徳、TOWA TEIのSweet Robot Against The Machine、嶺川貴子、Hi-Posiなどが参加している。海外とリンクしていた当時のシーンがよく理解できるコンピレーションだ。

2004年にはソロ活動を開始し、現在まで5枚のアルバムをリリース。また多くのアーティストに楽曲提供を行なっており、声優作品では花澤香菜のシングル『初恋ノオト』の全曲、2ndアルバム『25』収録の「無邪気なキミと真夏のメロディ」、3rdアルバム『Blue Avenue』の「マジカル・ファンタジー・ツアー」作詞・作曲・編曲、坂本真綾の「ハイタッチ」「パプリカ」「夕凪LOOP」の作・編曲、堀江由衣「バニラソルト」の編曲などを手がけている。ジャズやラテンなど様々なジャンルをミックスしたポップス、また出自からもわかるように打ち込みによるハイブリッドなポップチューンを得意としている。

「Your Voice」は、中塚武の3rdアルバム『GIRLS & BOYS』に収録されている「Your Voice (sings with 土岐麻子)」がオリジナル。土岐麻子ヴォーカルによるオリジナル曲は当時から評価が高かったが、アニメのエンディングテーマとしてカヴァーされるとは中塚自身もさすがに予想外のことだったようで、アニソンならではの組み合わせの妙を感じる（FlyingDogからのリリースなので「アキシブ系」の系譜につながっているともいえよう）。

編曲は、J-POPからアニソンまで幅広く手がけている上杉洋史。TVアニメ『パパのいうことを聞きなさい！』の音楽や悠木碧「迷宮舞踏会」の編曲、またRhodanthe*のアレンジの多くは彼の手によるもの。アレンジはオリジナルに比較的忠実で、それを生かしながらさらにポップに仕上げている。
「Your Voice (sings with 土岐麻子)」は、中塚武のソロ活動10周年を記念したベスト『Swinger Song Writer -10th Anniversary Best-』にも収録されているので、Rhodanthe*ヴァージョンと併せて聴いてみると面白さがさらに深まるだろう。

ハイレゾでは音の立ち上がりも良く、躍動感のあるジャズるサウンドが楽しめる。小気味好いドラムやホーンのキレもご機嫌に、ウッドベースの弾力のある弦の響きや、ヴァイオリンの軽やかで伸びのあるマヌーシュ・スウィングの旋律が見事に調和し、華麗なアンサンブルを作り出している。全体的に温かみのある質感で、曲にしっくりと合った雰囲気だ。

この曲ではアリス＋カレン→忍＋アリス→忍＋綾→綾＋陽子→忍＋陽子＋カレンという具合に、フレーズごとにヴォーカルの組み合わせがどんどんと変わっていく。情報量の増したハイレゾからは、ブレンドされた声のヴァリエーションがより豊かに伝わってくる。アリス役田中真奈美の「プリ～ズ」の声もひときわ鮮やかに響く。春風のようにうららかな歌声の表情を穏やかに捉え、5人の微笑みが目に浮かぶようだ。

「Jumping!!」

Rhodanthe*のデビュー曲となった第1期のOPテーマ。西沢幸奏「Brilliant Star」、野水いおり「SAVE MY HEART」、真崎エリカ「ラズワルド」の作曲者、Meis Clausonによる楽曲で、彼が手がけた第2期『ハロー！！きんいろモザイク』のオープニングテーマ「夢色パレード」も今作に収録されている。タイトル通りポップにはじける打ち込みサウンドの華やかさが印象的なナンバー。

ちょっと前に出てきたベースラインが曲を引っ張る、ノリの良さを感じられるハイレゾ。アクセントとなるクラップやギターの音色も鮮明に、リズムのキレも相まってこの曲の持ち味である勢いが高まっている。その勢いに乗って飛び出してくる歌声は活き活きとした表情を見せて、キュートに弾む。程よいコンプレッションもサウンドとヴォーカルの一体感を強めており、抜けのある爽やかなトラックに溌剌とした声の明るさが良く映える。

「にじいろアンダンテ」

堀江由衣「恋する天気図」を手がけた古池孝浩による、アルバム書き下ろし曲。『きんいろモザイク』では「こがねいろハーベストムーン」「あきいろスターマイン」の編曲者である荒幡亮平がこの曲をアレンジしている。共に過ごしてきた日々を振り返り、そしてまた明日へと歩んで行く。そんなキャラクターたちの心情を綴った、アルバムのラストを締めくくるにふさわしいバラッド・ポップ。各パートでキャラがソロを取っており、それぞれの歌声をじっくりと楽しめる内容だ。

おっとりとして優しい歌声の忍、小さな口が一生懸命に動いている様子がよくわかるアリス、実直な性格が歌い方に表われている綾、歌の節回しに妙に力が入っている陽子、独特なイントネーションのカレン。5人のキャラクターがそのままヴォーカルとして表現されており、各キャラの声質、歌唱のニュアンスがしっかりと伝わってくる。

中塚武がアルバムのために「ほしいろサザンクロス」とともに書き下ろした60’sフレイヴァーたっぷりな「シロツメクサの約束」、音楽の時間で歌われる合唱曲のような「さくらいろチェリッシュ」（第1期の7話「はらぺこカレン」の挿入歌）、カントリー調の朗らかなナンバー「きらめきいろサマーレインボー」、キラキラとしたサウンドに歌声が静かに舞うような「ぎんいろスノウドロップ」など、『きんいろモザイク』のイメージがさらに膨らむ楽しい曲ばかり。Rhodanthe*の歌声の美しさにいっそう魅了されるアルバムだ。