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INTERVIEW

2016.11.09

TVアニメ『フリップフラッパーズ』ED主題歌「FLIP FLAP FLIP FLAP」TO-MASインタビュー Vol.2

監督の話を1~2時間も聞いて、「やっぱりわからない」というのは後にも先にもないんじゃないかな(笑)

──ちなみに押山監督とは、事前に「こういった作品なので、こういった曲を」というような打ち合わせはあったのでしょうか?

ミト それがすごかったんですよぉーー!!(笑)。すごかった。シナリオが6、7話くらいまであったんですけど、それでもわかんなくて。

伊藤 人間関係がまずわかんなかったよね。

ミト 最終稿のプロットもいただいたんですけど、読んでもわからない(笑)。もはやすべてを放棄しようかと思ったときに、監督が「じゃあ改めて1から」って説明を始めてくれたんですよ。でもその「1から」がプロットさえも飛び越えて、全然違う縮尺になってるんです。A4の用紙に2mmくらいの文字をびっちりメモして、それでも足りないくらい書き込みましたよ(笑)。

松井 キャラの相関図を書いたりしながらね。「これがこいつで、これがこう繋がってて……」「えっ、なんでこれとこれがこうなってるの?」みたいな感じで(笑)。

ミト 挙げ句、話を聞いてた音響監督が「えっ、それってそうだったの?」って言い出したりね(笑)。

──それは今までの劇伴経験の中でも珍しい出来事なんですよね?

ミト レアケースだと思う。監督の話を1~2時間も聞いて、「やっぱりわからない」というのはあとにも先にもないんじゃないかな(笑)。

──1、2話を見て抱いた自分の感想が、間違っていなかったようでよかったです(笑)。

伊藤 たぶんしばらくわからないと思いますよ(笑)。

「そっか、ピュアイリュージョンってこういうことか」と思いました(笑)

松井 きっと監督の中でも、僕らの中でも、作っている内に成長していったコンテンツなんだと思います。最初は僕らも手探りでしたからね。まず真澄さんがテーマになる曲を作ってくださって、それが取っ掛かりになって「真澄さんがこう来るなら僕はこうしよう」「ミトさんはこういうのを作るのか」という詰将棋のような状態になったんですよ。

──音像的にも重厚な管弦楽にデジタルサウンドが重なったり、不思議な印象を受ける楽曲が多かったです。こういった楽曲も、それぞれにアイデアを肉付けしていく形で作られたのでしょうか?

松井 普通の将棋は81マスで、その中で駒を打つものじゃないですか。なのにミトさんが桂馬を盤の外に打つんですよ(笑)。

──別の競技が始まってしまいましたね(笑)。

ミト 知らない内に盤が121マスとかに広がってたりするんですよね。

松井 「そっか、ピュアイリュージョンってこういうことか」と思いました(笑)。じゃあ僕もこっちに飛び出そうと思ったら、今度は真澄さんが真上に行ってたり……。

ワクワク感というか「ここから始まったらどこへでも行ける」という感じがしたんです

──作品の説明を受けた結果、楽曲制作においても枠に収まる必要がなくなったんですね。

松井 そうですね。想像の枠が広がったというか……。

ミト 広がったというか、「もう何でも良いんだな」ということがわかった感じですね(笑)。

──わからない部分が多いながらも、劇伴の軸として「こういうサウンドにしていこう」というのは何をきっかけに定まったのでしょうか?

松井 それは実は、真澄さんが予告用に作っていたものが軸になっているんですよ。

伊藤 予告PV用の音楽を私が最初に作っていて、それが柱にはなっていたかもしれないですね。

松井 それがすごく世界観を表現していて、ワクワク感というか「ここから始まったらどこへでも行ける」という感じがしたんですよ。

伊藤 そんなに褒めていただいて、ありがとうございます(笑)。

松井 いやいや、本当に素晴らしかったんですよ。主人公のひとりであるパピカがトンネルから抜けて外へ飛び出していく感じと、真澄さんの曲が合わさって、本当に「どこへでも行ける」という感覚があったんです。それがあるから、振り切っても帰るところがあると思えるんですよね。

ある日、朝起きたら曲ができてました(笑)

──軸となる音楽は、制作の起点の段階からあったんですね。

松井 もちろんそこからいろいろといじりましたけどね(笑)。

ミト まずスタート地点であれだけ風呂敷を広げているので、いくらだって受け入れてもらえるだろうなと思いますしね。パノラマチックなオーケストレーションと、生演奏と、打ち込みもあって……じゃあ全部アリじゃないかという話になるわけです。

──「TO-MASならできるだろう」という期待もあって、多ジャンルに渡るオーダーもあったのではないでしょうか。

松井 TO-MASを何だと思ってるんでしょうね(笑)。

ミト なんでもできると思うなよ!(笑)。

伊藤 できることしかできないよねえ(笑)。

──劇伴に使われている1曲の主旋律とED主題歌のメロディが同じだったり、「FLIP FLAP FLIP FLAP」のカップリングに収録されるパピカとココナによるキャラソン「OVER THE RAINBOW」のメロディも、1話より劇伴として登場していますね。これらは劇伴と歌の、どちらを先に作られたものなのでしょうか?

伊藤 ED主題歌に関しては、歌のメロディを意図的に劇伴に使いましたね。「OVER THE RAINBOW」は劇伴が先にあって、そのメロディを松井さんがヒュッとくっつけてくれました。

松井 ミトさんが作った曲を何曲かピックアップして、「これ繋がるな」と思ったやつをつなげて、それで歌詞を書いちゃって、ミトさんに渡しましたね。ミトさんのリクエストにいくつか応えて、最後に真澄さんに上モノを入れてもらって……。

伊藤 「じゃあ弦とか木管楽器とか入れまーす」って。

──想像を絶するアクロバティックな制作過程ですね(笑)。ミトさんとしては、まったくそんなつもりで作った曲ではなかったわけですよね。

ミト ある日、朝起きたら曲ができてました(笑)。ただ今回の作品は特に、劇伴のメロがしっかりしていないと絵に負けちゃうと思ったんですよ。劇伴にもいろいろあって、ふわっと柔らかくオブラートに包むような音楽がハマることもあるんですが、今回はあまりにも漠然とし過ぎているんです。「ボヤけたもの」に「ボヤけたもの」を重ねるのはちょっと違うなと思うので、メロもリズムもしっかりしたものを作って、こちらでストイックに的に当てていくようにしていましたね。

松井 それはお互いに、3人の中でありましたね。

ミト だからいろんな意味で、今回はメロディが太い曲がいっぱいあると思います。そういう曲が書けているなとは思っていたのですが、よもや朝起きたらそれが歌モノになっているとは(笑)。なんとなく「これとこれを合わせたら面白いかもね」くらいのことは言ってはいましたけど……。

松井 「じゃあ合わせてみよう」と。本人に伝えずに(笑)。

伊藤 知らない間に繋がってましたね。

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