INTERVIEW
2017.07.26
───そしてカップリング曲の「耳もとでつかまえて」ですが、これはイヤホン・ヘッドホン専門店の「e☆イヤホン」とのタイアップ曲なんですね。これはどのようなコラボなんでしょうか?
小島 e☆イヤホン10周年タイアップ・ソングとなりまして、Astell&KernのKANNというポータブル・オーディオ・プレーヤーの試聴機にこの楽曲を入れていただけるということです。そのお話をいいただいて書いた曲なので、イヤホンやヘッドホンで聴いたときに最高のパフォーマンスが出るような音を意識して作りました。制作時からKANNをDACとしてPCにつないで使って、そこからヘッドホンに出して音作りをしたりイヤホンで聴いたりということをしていて。ハイレゾで聴くということを前提として音作りをしていったので、シンセ感というよりも生の質感がある、ビートがちゃんと立った優しい曲調になっています。
───KANNならではの音質として意識した部分はありますか?
小島 2番のサビの後とかはベースをステレオに広げたりして、KANNの低音感を両耳で味わえるような工夫をしたりしてます。
───サウンド的にはメロウな雰囲気でありながらビートはヒップホップっぽいアプローチで、これまでのORESAMAにはない要素も感じられますね。冒頭にレコードノイズの音が入っていたり。
小島 あれは実はレコーディングのときに出てきたアイデアで、レコードノイズをステレオで思いっきり広げることで、また不思議な感覚になれるという工夫ですね。
───ビートの質感も昔のサンプラー的な汚し方というか、太くてまろやか味のある絶妙な鳴りをしてますよね。
ぽん ミックスしてくださったエンジニアさんにもすごく気に入っていただいて。すごくカッコよくなったよね。
小島 特にスネアの音はめちゃくちゃこだわっていて。すごくリアルなドラムのソフトを生っぽい雰囲気で打ち込んで、そこから歪みを再現したり、すごい量のエフェクターを使って音作りをしていて。この曲ではスネアの音作りにいちばん時間をかけました。本当にボリュームをいくら上げても耳が痛くならないと思うので、ぜひ大音量で聴いてほしいですね。
───歌詞でも音楽に夢中になるような気持ちが表現されていますね。
ぽん イヤホンで自分の大好きな音楽を聴くときって、時間軸がごちゃごちゃになる気がするんですよ。その曲自体に思い出があったらなおさらですけど、過去の記憶が甦ったり、未来のことに想いを馳せたり、あるいは時間という概念がなくなってただ楽しい気持ちになったりとか。それに自分が今なんの音楽に包まれてるのかは、自分にしかわからないわけじゃないですか。それをすべてひっくるめて自分の世界というか。そういうことをこの曲では「楽園」と呼んでいて、自分も聴く人を「楽園」に連れて行ってあげられるような曲を作らなきゃいけないと思いながら詞を書きました。
───なるほど。途中でウィスパーっぽい歌い方もされていますが、そこはイヤホンで聴かれることを意識して?
ぽん そうです。最初は普通に歌ってたんですけど、もうちょっとウィスパーにしてみよう、もうちょっといこうっていうのを繰り返して、最終的には本当にささやき声みたいなのを重ねていきました。耳からすべてが染みこんでいくという感じになっているので、ぜひイヤホンで聴いてみてください。
───もう1曲の「空想フライト」もディスコやフィリー・ソウルっぽさが軸にありつつ、和楽器の要素が入った新しいタッチの曲ですね。
小島 この曲はBSフジの『ESPRIT JAPON』というTV番組とのタイアップで新しく作った曲です。
ぽん 日本の文化を海外に向けて紹介するという番組なんです。
───どのように制作したのでしょうか?
小島 海外でも放送されるということだったので、まず日本の音楽の要素を入れたいというのがあって。ただ、僕は雅楽のプロフェッショナルではないので、その要素を少しだけ取り入れさせてもらったくらいのニュアンスで。なので、まずはいつも通りORESAMAの曲を作って、そこに三味線や琴の音を重ねて日本っぽい曲というラインを構築していきました。
───そんな曲に、ぽんさんはどんな歌詞を乗せようと思ったんですか?
ぽん 曲を聴いたときに日本の雰囲気はすごく伝わってきたので、これにそのまま日本のことを書いたら面白くないと思ったんですよ。なので、私は逆に世界旅行の歌詞を乗せようと思って、いろんなパンフレットを見ながら自分が行ってみたい場所をバーッと書き出していって歌詞にしました。家で「どこに行こうかな?」って考えながら書いたので、すっごく楽しかったです(笑)。
───まさに「空想フライト」をしたわけですね(笑)。たしかに〝寝不足はつづく〟といったフレーズに寝る間も惜しんで考えたり、楽しすぎて寝つけなくなってる感じが表われていて、楽しい気持ちがすごく伝わってきます。
ぽん 旅行はみんなでどこに行こうか考えてるときがいちばん楽しいと思うので。
小島 僕、この曲の歌詞がすごく好きなんですよね。ぽんちゃんの空想感というか妄想感がすごいと思って。普通の人は〝ラスベガス浮遊〟なんて単語を思いつかないだろうと思いますし、言葉選びに遊び心や面白味があって。
ぽん ラスベガスには行ってみたいんだけど、カジノで遊ぶとかではなくて、街をフラフラと歩いてみたいというか。そういう気持ちなので「浮遊」がいちばん合うかなって。
───〝ローマで休日 ドイツでビール〟もいいですね。
ぽん ドイツでビールを飲んでみたいっていう、ただの欲望なんですけど(笑)。
───例えば〝お伽の国で愛を学び 音の都で酔いしれる〟という部分は、今回のシングルに入ってる「Trip Trip Trip」や「耳もとでつかまえて」のテーマと近しいものを感じますが。
ぽん たしかに。私は別の世界に行きたいという願望が強いのかもしれないですね。
───それと前作では「ねぇ、神様?」のように少し内省的な歌詞もありましたが、今回は3曲ともすごくポジティブな内容になっている印象があって。これはいまの心境とリンクしている部分だったりするのでしょうか?
ぽん うーん……でもリリースさせていただいたりとか、ライブで反響があったりという意味では、すごく前向きだとは思います。もっと遠くに行きたいみたいな気持ちが強いのかもしれないです。
───今回のシングルは3曲ともORESAMAの新しい部分がしっかりと表現されていて、さらに引き出しが多彩になった印象を受けました。
小島 僕も「空想フライト」の音は今までにないもので。ただ、今はそのときどきで新しい音楽を聴いたり要素を勉強したりしながら、引き出しを増やしていってる状況でもあって。ORESAMAでいろいろ研究したり試したりしながら音楽を作っているんです。
───そこはアニメ作品やタイアップでテーマを与えられるからこそ、そこに触発される形で新しい扉を開けられる部分もあるんでしょうね。
小島 それは多いと思いますね。僕はひねくれてるタイプなので、なにかお題を出されると、それを広げたり大きくしていって曲を作りたいタイプなので。
───そこは、ぽんさんが「空想フライト」で和風の曲にあえて世界旅行の歌詞をつけるという、直球ではないおもしろさを狙うところに通じる部分もありますね。
小島 たしかにそうですね。
ぽん 共通してるかもしれないです(笑)。
───そんなバランス感のふたりによる楽曲がすごくストレートに響くポップスになっているというが、ORESAMAの魅力なんだと思います。
ぽん そう言っていただけるとうれしいです。「Trip Trip Trip」で私たちのことを知ってくださる方がもっと増えると思うので、いまはこの曲を持っていろんなところでライブをするのがすごく楽しみです。
小島 この3曲は、以前から聴いてくれてた人たちにとっては新しいORESAMAに聴こえるだろうし、新しく聴いてくれる人たちには「これがORESAMAだよ」って胸を張って言える作品になったので。本当にいろんな人にORESAMAを知ってもらえたらと思います。(終)
●ORESAMA「Trip Trip Trip」のレビューはこちら
ORESAMA
渋谷から発信する2人組ユニット。ラブコメやディスコといった”バブル”カルチャーを「憧れ」として取り込み、80s’Discoをエレクトロやファンクミュージックでリメイクしたミュージックを体現!その新感覚はイラストレーター「うとまる」氏のアートワークやミュージックビデオと相乗効果を生んで新世代ユーザーの心を捉えている。
「GIRLS DON’T CRY vol.4 ~Trip Trip Trip~」
2017年7月26日(水)18時30分OPEN/19時START
会場:渋谷WWW
出演:ORESAMA/SHE IS SUMMER (NEW)/ボンジュール鈴木
チケット料金 (別途ドリンク代必要)
前売 3,000円/当日 3,500円
©衛藤ヒロユキ/SQUARE ENIX・「魔法陣グルグル」製作委員会
TVアニメ『アリスと蔵六』OPテーマ「ワンダードライブ」ORESAMA インタビューはこちら
ORESAMA
Trip Trip Trip
Lantis
2017.07.26FLAC・WAV 96kHz/24bit、WAV 96kHz/32bit
ハイレゾの購入はこちら
1.Trip Trip Trip
作詞:ぽん 作曲・編曲:小島英也
2.耳もとでつかまえて
作詞:ぽん 作曲・編曲:小島英也
3.空想フライト
作詞:ぽん 作曲・編曲:小島英也
4.Trip Trip Trip -Instrumental-
5.耳もとでつかまえて -Instrumental-
6.空想フライト -Instrumental-
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