「High Free Spirits」「センパイ。」「オリジナル。」「adrenaline!!!」などシングル曲を含む全12曲を収録。1年3カ月ぶりの2ndアルバム。

麻倉もも・雨宮天・夏川椎菜からなる声優ユニット“TrySail”。1年3カ月ぶりの2ndアルバム『TAILWIND』がリリース。「High Free Spirits」「オリジナル。」「adrenaline!!!」、HoneyWorks meets TrySail「センパイ。」などのシングル曲、シングルのカップリング曲、アルバムのために書き下ろした新曲を含む、全12曲を収録。前作にも増してバリエーションに富んだサウンドで、TrySail3人の魅力を引き出している。

「TAILWIND」

作曲・編曲は「コバルト」をはじめ、TrySailに多くの楽曲を提供している谷口尚久。“遥か彼方へ”の言葉が彼女たちのあらたな航海へと誘なう、アルバムのオープニングナンバー。ヴォーカルを押し出すサウンドの疾走感は、大きな帆に風を受けて船がどんどんと前へと進んでいるかのよう。澄み切った歌声の中に、嵐にも負けずに夢へと向かう彼女たちの強い決意が示されている。

「adrenaline!!!」

TVアニメ『エロマンガ先生』エンディングテーマ。作詞・作曲・編曲は、綾野ましろの「NEWLOOK」を手がけた中野領太。ClariSによるオープニングテーマ「ヒトリゴト」と同じくこちらもスカの要素を取り入れた曲で、ヒロインたちのもやもやした気持ちを吹き飛ばすように、勢いを増したサウンドに歌声が弾ける。前のめりになって跳ねるリズムに乗って、“ハイ！ハイ！ハイ！”や、“イェー！”など、合いの手や掛け声も元気いっぱい。

「Chip log」

5thシングル「オリジナル。」のカップリング曲。作詞・作曲を担当した渡辺翔は、TrySailでは「whiz」（『暦物語』エンディングテーマ）や、今作に収録されている「かかわり」を手がけている。賑やかなサウンドと航海中の姿を描く歌声が、ミュージカルのような楽しい雰囲気で、とてもワクワクさせてくれる。“出航だ！！アイアイサー！！遠くへ！！”も勇ましく、またかわいらしい。ライヴでは、体全体を大きく使ったキュートなパフォーマンスで観客を魅了している。

「BraveSail」

シングル「センパイ。」のカップリング曲で、「センパイ。」と同じくHoneyWorksが楽曲を制作。フィドルやバンジョーを交えたカントリースタイルのサウンドに、3人の歌声が陽気に弾む。三匹の子ブタが海を見るため旅に出かけ、船に乗ってさらに旅を続ける……というストーリー仕立てになっており、絵本のようなその雰囲気は、“HoneyWorks meets TrySail”版「みんなのうた」といったところだろうか。“○○○○は言いました”で始まる掛け合いも実にチャーミング。

「バン!バン!!バンザイ!!!」

作詞・作曲・編曲のKOUTAPAIは、雨宮天の「羽根輪舞」「After the Tears」（どちらも雨宮天のアルバム『Various BLUE』に収録）を手がけている。ネガティブなりそうな気持ちをポジティブな方向へとひっくり返してしまう、明るい歌声がポップなサウンドの上に弾ける。一緒にいればますます楽しくなれるような、一体感を伴う歌詞も相まって、ライヴではみんなで合唱しながら盛り上がること間違いなし！

「High Free Spirits」

TrySailの3人も出演しているTVアニメ『ハイスクール・フリート』のオープニングテーマ。『アイカツ！』に楽曲を提供しているonetrapの山﨑佳祐が作詞・作曲を、綾野ましろ「vanilla sky」を手がけた溝口雅大が編曲を務めている。海の安全を守る「ブルーマーメイド」を目指し、海洋実習に出発した少女たちが思わぬ出来事に巻き込まれ、教育艦による戦闘を余儀なくされる……孤立無援となった「春風」のクルーたちの活躍を描く『ハイスクール・フリート』の世界観をも写し取ったサウンドがダイナミックに繰り広げられている。ヴォーカルもこれまでになくエネルギッシュで、シリアスな雰囲気を湛えながらも、運命を自分たちの手で切り拓く、言葉の一つひとつが力強い。

「センパイ。」

麻倉ももがヒロインの瀬戸口雛を演じる、映画『好きになるその瞬間を。～告白実行委員会～』のオープニング主題歌で、“HoneyWorks meets TrySail”となるコラボレーション・ナンバー（シリーズ第一弾の映画『ずっと前から好きでした。～告白実行委員会～』では、TrySailの先輩にあたるスフィアが“HoneyWorks meets スフィア”としてエンディング主題歌「一分一秒君と僕の」を歌唱している）。青春をイメージさせる爽やかなギターポップ・サウンドと、“センパイ”に対する女の子の健気な恋心を綴った歌詞。これまでの想いがこみ上げてくる、“君じゃなければ良かったな”のフレーズが胸を切なくさせる。HoneyWorksならではの甘酸っぱさが全開の青春ソング。

「僕らのシンフォニー」

4thシングル『High Free Spirits』のカップリング曲で、naoやTWO-FORMULAの楽曲を手がける野村勇輔が作曲・編曲を担当。懐かしさも漂うオールディーズ調のサウンドに、3人の伸び伸びとした歌声が重なる。時おりエレキギターが刺激的にロックンロール感を注入しつつも、全体的には和やかな雰囲気を感じさせるもので、TrySailらしいほのぼのとした楽曲に仕上がっている。

「オリジナル。」

作詞を脚本家の岡田麿里、作曲・編曲をクラムボンのミトが担当した、TVアニメ『亜人ちゃんは語りたい』のオープニングテーマ。なおミトはのちに夏川椎菜のデビュー曲「グレープフルーツムーン」も手がけている。颯爽と奏でられるストリングスと突き進むビートの躍動感が、青春の鼓動を伝えるこのナンバー。EDMアレンジを絡めたBメロから、開放感が一気に広がるサビへの展開が心地よい。ヴォーカルもみずみずしく響き渡り、未来へと続くかけがえのない友情を鮮やかに描いている。

「disco」

アルバムのために書き下ろされたこの曲は、タイトルとおりのディスコ・ナンバー。ディスコと言っても、今風のエレクトロなサウンドではなく、「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」といった昭和の雰囲気すら漂う、歌謡ディスコであるのも面白いところ。晴れやかなサウンドに、“自転車発進坂道越えて”と清々しく歌うヴォーカル。楽曲の要素どれもが、3人の歌声に妙にはまっている。

「かかわり」

スマホアプリ『マギアレコード魔法少女まどか☆マギカ外伝』テーマ曲で、6thシングル「adrenaline!!!」のカップリングに収録されている。「コネクト」「ルミナス」など、『まどか☆マギカ』シリーズの主題歌を手がけている渡辺翔が作詞・作曲を担当。物語の展開やキャラクターの心情を暗示するような歌詞や、キメを多用したサウンドを入れ込み、楽曲の世界観を統一している。願う気持ちを前へと押し出すように、サビではヴォーカルのアクセントが強く、ドラマチックなアレンジと一体となり昂揚感を促す。3人のしなやかな歌声が耳に残る一曲。

「Journey」

藍井エイルや春奈るな、瀧川ありさらの楽曲で知られるSakuが、作詞・作曲・編曲を手がける美しいバラード・ナンバー。気持ちに深く寄り添った言葉を丁寧に紡ぐヴォーカルが、温かく見守るように響いている。明日への道のりを照らすラストのコーラスは、3人からの優しいエールのよう。TrySailがファンと一緒に「航海」を続けていることを強く意識させる曲だ。

ハイレゾでは、賑やかに音が弾ける「adrenaline!!!」「バン!バン!!バンザイ!!!」や、音の張りや弾力感を味わえる「Chip log」「disco」のように、サウンドの要を担う音要素が活き活きと伝わり、楽曲に華やかな雰囲気を加える。「High Free Spirits」「かかわり」は、音の勢いがさらに迫ってくるようで、ダイナミックなサウンドにぐっと引き込まれる。ヴォーカルは「TAILWIND」の冒頭からもわかるとおり、透き通るような声の質感が耳に心地よい。また恋心を表現する3人それぞれのニュアンスの違いが感じられる「センパイ。」のように、抑揚の繊細さもしっかりと捉えている。

順風満帆に成長を続ける3人の歌声からは余裕の表情さえも感じられる。各自のソロ活動も反映しているのか、それぞれの個性がより前に出てきた、またユニットとしての一体感がさらに強まったように思える。「追い風」を意味するタイトルのとおり、今の彼女たちの勢いを充分に伝えてくれるアルバムだ。