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INTERVIEW

2017.08.30

10年後も色褪せない音を鳴らす 1stアルバム『Culture Vulture』la la larks インタビュー

元School Food Punishmentのボーカル・内村友美、いきものがかりやLiSAの楽曲制作を手掛ける江口 亮、LOST IN TIMEやTHE YOUTHで活動するギタリストの三井律郎、元Sadsのベーシスト・クボタケイスケ、そしてGO!GO!7188のドラムを担当したターキーからなるバンド・la la larks。

アニメ作品への楽曲提供を務めながらもライブを中心に活動してきた彼らが、ついに1stアルバム『Culture Vulture』をリリース。今回は内村友美と江口 亮のふたりに、結成5年目にして完成したアルバムに懸ける想いと、収録される各楽曲の制作過程について語ってもらった。また、話はメンバーそれぞれが担う役割や、バンドとしてのla la larksの在り方にも波及している。

なお、『リスアニ!WEB』ではアルバム制作の経緯と、過去のシングルを中心としたタイアップ楽曲についてのインタビューを掲載。本インタビューとの連動記事となっているので、ぜひ併せてご一読いただきたい。

●リスアニ!WEBのインタビューはこちら

Interview & Text by 青木佑磨(クリエンタ/学園祭学園)
at VICTOR STUDIO

la la larks『Culture Vulture』のレビューはこちら

腕利きクリエイター集団”la la larks”、その実態とは

───まずはla la larksの制作がどのように行なわれているかをお聞きしたいと思います。例としてアルバムの1曲目「Massive Passive」は、どういった手順で作られたものなのでしょうか?

江口 亮 もともとこの曲は2ndシングル「ハレルヤ」の時期に、TVアニメ『空戦魔導士候補生の教官』のEDテーマ候補曲として作っていたものなんですよ。候補として雰囲気の違うものを大抵3パターンくらい提出するんですが、その前にシングルとして出した「ego-izm」と方向性が似ていたのでボツになったんです。それがアルバムのリリースにあたり、ディレクターから「あの曲覚えてる?」と言われまして。「僕のファイルによると”アッパー”っていう仮タイトルがついてるんだけど」と(笑)。

───それはまた仮タイトル然としていますね(笑)。

内村友美 ”アッパー”と”ミドル”と”4つ打ち”がある中で、”アッパー”が選ばれましたね(笑)。

───候補用の楽曲の土台は、江口さんがおひとりで作られるんですか?

江口 そうですね。リズム、ベース、ピアノ、必要であればギターと、そこに内村の仮歌詞が乗ったボーカルが入ったデモを作ります。ドラムパターンからある程度の指針は僕が作りまして、それを現場で皆に演奏してもらうんです。そうすると大体、なにかが足りなく感じるんですよ。なのでそこから足していくという作業ですね。

───打ち込みのデモを人力に置き換えることで、足りない部分が見えてくるんですね。

江口 例えば「タカタカ」というギターのフレーズがあったときに、自分のデモではかなり勢いよく細かく「タカタカッ」と弾いているとしますよね。でも他人が弾くと思ったよりゆるやかに「タラララ」と聴こえたりして、なにか違うなと思うんです。でもそれをレコーディングスタジオで「そうじゃない」といちいち直していくのは、ただ僕のクリエイティブを模写してくれと言っているようなものなので。だからメンバーが出してくれたものに合わせて、改めて違う補正をかけていく方向で考えるんです。

───メンバーの皆さんがもともと別のジャンルのバンドをやられていた分、江口さんがイメージしたプレイとは異なるものが返ってくることも多いのでしょうか。

江口 そうですね。単純に苦手な曲もあるんだと思います。ターキー(ex.GO!GO!7188)とか、ズズダダ、ズズダンのドラムの人ですから(笑)。でも実は彼は元から上手い人なんで。前のバンドではあまり細かいことはやっていなかったんですけど、そもそもは上手いんですよ。ちゃんとセッション・ミュージシャンとしての実力があるんです。

───GO!GO!7188を知っているから意外性があるだけで、本来はla la larksでやっているようなプレイもできる方なんですね。

江口 ギターの(三井)律郎も、もともとYAMAHAの特待生ですしね。やっているバンド(LOST IN TIME、THE YOUTH)のイメージ的にギターロックのギタリストだと思われがちですけど、実はそうじゃないプレイも上手いんです。メンバーそれぞれが幅広いジャンルのバンドを経験しているからこそ、本来の得意ジャンルでないものも自分のものになっているんですよ。

───ベースのクボタ(ケイスケ)さんも、かなりハードなイメージのベーシストですよね。

内村 それこそSadsに参加されていたりしたので、クボタさんがいちばんla la larksのイメージとは違うかもしれませんね。

江口 僕は昔、クボタさんとは下北沢のライブハウスでバンドで共演したことがあったんですよ。

内村 はやぶさジョーンズというバンドのメンバーだったころですね。

江口 もともとは下北界隈で活動するバンドマンで、しだいにビジュアル系のサポートをするようになって、そこからSadsの話をもらったっていう。だから実はクボタさんがいちばん、皆が思っているイメージとは真逆のプレイヤーなのかもしれません。

───結成の経緯などはほかのインタビューでも語られていますが、おふたりにほかのメンバーについて語ってもらうというのは面白いですね。せっかくなので、お互いについてもコメントしていただいてよろしいですか?

江口 僕は世の中の内村さんに対する評価と、内村さんの中身がイコールになってほしいとすごく思っています。彼女は世の中の評価は高いんですけど、自己評価が低いんですよ。だから自己評価を皆が思う内村さんのところまで持っていければ、すごく素敵な人生だろうなと思うんです。

───内村さんはご自身に対して厳しいということでしょうか?

江口 そうです。客観的に見えているとは思うんですが、もう少し皆の夢を崩さないようにしてくれるといいなと。例えば内村さんが車に乗ってきたとして、ポンコツの軽自動車だったら嫌じゃないですか(笑)。ちっちゃくて可愛い外車に乗ってきてほしいじゃないですか。

内村 それは自己評価が低いということなんですかね……?

江口 うーん、自意識が低い?(笑)。

内村 それはそうかもしれません(笑)。

───内村さんから見た江口さんはいかがですか?

内村 音楽的な部分でいうと、江口さんが得意なのは「足りないものが何かを見極める」ということだと思っています。音楽やそれ以外のものに対しても、そこに何があったらもっと良くなるのか見える能力が、ほかの人とは全然違うところなんです。そこをすごく信頼しています。楽器の能力としては、私は江口さんがいちばん江口さんじゃなきゃいけない部分は鍵盤とアコギだと思っているんですね。どの楽器を弾いても江口さんは上手いんですけど、人が真似できないのはそのふたつです。例えば鍵盤を弾くのにも、どこをどう押さえるかでセンスが出ると思いますし、歌いやすさも変わってくるんですよ。意外とちゃんと鍵盤を弾いてきた人の演奏に限って、ちょっと歌い辛かったりもするんですよね。

───ボーカルと合わせるための鍵盤になっていないということでしょうか。

内村 そうなんです。江口さんはもともとボーカルもやる人なので、どう弾くと歌いやすいかがわかるんだと思います。さっき言った「足りないものを見極める能力」で、ここはこうなった方がいいという部分を補強してくれているんじゃないかと。なので最初la la larksを始めるときに江口さんが「ベースを弾こうかな」と言っていたんですけど、「いや、江口さんはキーボードを弾いてください」と伝えた記憶があります(笑)。アコギはリズム感というか、パーカッシブな感じが魅力ですね。音源のアコギは江口さんが弾いていることが多いんですけど、人には真似できない盛り上がり方をしていると思います。

───人格的な部分では、江口さんはどんな方ですか?

内村 すごく愛情が深いですね。ただ愛情が深いがゆえに、人が自分のことを思う愛情よりも、江口さんがその人を思う愛情の方が強かったりするんですよ。だから人にすごく厳しくなるんです。普通は自分のことは自分がいちばん考えていそうですけど、それよりも強く「お前はこうであったらいいのに」という考えがあるんですよ。

───内村さんから江口さんへの評価が、そのまま先ほど、江口さんが内村さんについて語ってくれたことの答え合わせになっている感じがありますね。他人に対して「自己評価を高くしてほしい」と、普通はあまり言わないんじゃないでしょうか。

内村 音楽に対しても人に対しても、「これがこうだったらいいのに」という感覚が凄まじく強いんだと思います。自分に対してもそうだし、環境とか機材とかも勝手にどんどん更新していくんですよ。

江口 ……なんのことを言ってるんだろうと思ったけど、ちょっとずつわかってきた(笑)。たしかに「こっちの方がいいのに、なんでこうしないんだろう」と思うことが多いですね。例えば武器もないのに猪を倒そうとして、一生懸命体を鍛えている人を見たときに、「ナイフを買えばいいのに」と思ってしまうんですよ。「素手を鍛える時間があったら、君はほかにすべきことがあるだろう」と。考え方が合理的なんだと思います。

内村 ただ闇雲に機材を買えばいいかというとそうではないし、機材にはセンスがあるという美学も持っているし。ナイフに頼って素手を鍛えない人を見ると、「お前は素手を鍛えてからだろ」ということも言う人です。

江口 言いますね。あと「そのナイフは高い」とか、「2ヵ月待て。2ヵ月待ったらセールがある」とかも言います(笑)。

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