INTERVIEW
2017.10.25
2016年12月に音楽活動の再開を発表し、今年2月に約3年ぶりの復帰作となるシングル『ワタシノセカイ』でシーンへと返り咲いた中島 愛。その次の一手となる今回のニュー・シングル「サタデー・ナイト・クエスチョン」では、なんとロック・バンドのフジファブリックが楽曲を提供。作詞は加藤慎一、作曲は山内総一郎、編曲はフジファブリックという、彼らバンドの完全バックアップにより、これまでの彼女にはないスタイルのカラフルなロック・チューンとなった。
ネットゲームに充足を求める30歳・独身・ニートの女性を描くTVアニメ『ネト充のススメ』のOPテーマでもあるこの楽曲。作品の世界観に寄り添いながらも、彼女自身のパーソナルを投影した部分もあり、大人の女性となった今だからこそ表現できる歌に挑戦している。さらにカップリング曲「はぐれた小鳥と夜明けの空」では最新鋭のクラブ・ミュージックの要素を導入。あらゆる意味で野心的なシングルとなった本作について、中島本人に大いに語ってもらった。
Interview & Text by 北野 創
at FlyingDog
中島 愛「サタデー・ナイト・クエスチョン」のレビューはこちら
───表題曲の「サタデー・ナイト・クエスチョン」は、フジファブリックとの初タッグ曲になりますね。
中島 愛 はい。私はそれまでフジファブリックさんの曲はシングルを聴いてはいたのですが、改めてスタッフにアルバムを薦められて聴いたら、「なんで今まで聴いてこなかったんだろう」と本当に後悔するぐらい好きになりました。そこから自分でCDを1枚1枚集めて聴くようになりました。後日『ネト充のススメ』というタイアップを担当させていただけることになったとき、スタッフから「フジファブリックさんであれば原作の世界観ともすごく合うと思う」と提案をもらったんです。その後実際に曲を書いていただけることになって、レコーディングで対面もさせていただいて、本当にうれしかったですね。
───フジファブリックさんの音楽のどんな部分に惹かれましたか?
中島 素敵なところはいっぱいありますけど、一番は聴いた瞬間にフジファブリックさんとわかるサウンドの色でしょうか。例えばロック・バンドは世界中にたくさんいらっしゃいますけど、イントロの数秒を聴いただけで誰だかわかるバンドはなかなかいないと思うんです。フジファブリックさんは、フレーズも印象的で、明るいんだけど影がある雰囲気もあって。そういった部分は私の今までの音楽にあまりなかった部分でもあるので、今回はぜひフジファブリックさんのお力を借りて、自分の中にそういったテイストを盛り込めたらと思ったんです。
───今回の楽曲を初めて聴いたときの印象はいかがでしたか?
中島 デモテープはほぼ完成形に近いメロディーとアレンジ像で、しかも山内さんが仮歌を入れてくださっていたので、もうこのままリリースしたほうがいいんじゃないかと思うぐらいで(笑)。まさにフジファブリック節だったので、リスナーとしては本当に感動しましたね。でもボーカリストとしては、このデモテープを超えなきゃいけないというハードルを課せられた気持ちもあって、不安でもあり、〈やるぞ!〉という心地よさもありました。
───歌はどのようなイメージで歌われたのでしょうか。
中島 この曲は性別がどちらとも取れないような歌い方をしようと直感的に思ったんです。それで本番のレコーディングまでに自分でいろいろ試行錯誤しながら練習したんですけど、初めての歌い方ということもあってすぐに答えは出せなくて。でも、レコーディングのときに山内さんもスタジオに来てくださって、ボーカル・ディレクションに参加していただけたんです。例えばAメロは気だるそうに、ボソボソしゃべるぐらいまで力を抜いてOKだとか、Bメロの歌詞の2行目から徐々に明るくなっていきましょう、といった感じに細かいところまでアドバイスしていただいて。苦戦した部分も多かったんですけど、どうにか形にすることができました。
───『ネト充のススメ』とのタイアップ曲ということで意識した部分はありますか?
中島 もちろん私が自分の名義で歌っているので、自分自身で思ってることも入れ込んではいるんですけど、基本的には主人公の森子のイメージをずっと頭の中に描いて歌いました。脳内にはパソコンの前にいる森子がずっと浮かんでいましたね(笑)。私の中では、この曲は作品のオープニングなので、森子がネットゲームにログインする前のイメージを持ったんですね。歌詞は〈次の扉開けたのなら〉というフレーズで終わるんですけど、この曲が終わった瞬間にゲームの中に入るようなイメージなんです。
───『ネト充のススメ』をご覧になった感想はいかがでしたか?
中島 先に原作から読ませていただいたんですけど、リアルとファンタジーがすごく絶妙なバランスで混ざっているところが面白くて。アニメも観た人一人ひとりが自分の人生とか現実を重ね合わせられる作品だと思います。
───ミュージックビデオも『ネト充のススメ』の世界観に寄り添った内容になっていますね。こちらはどのようなコンセプトで作られましたか?
中島 『ネト充のススメ』ということで、女の子が部屋でひとりパソコンの前にいたり、ベッドでうだうだしていたりするようなシーンがあればいいなって、レコーディングのときから考えていたんです。私の中ではその女の子を森子に重ねていて、彼女がもし自分の持っている一番派手な服で着飾って街に出たらどうなるか、行ったことのない場所に一歩踏み出す女性像のようなものを形にしたら、楽曲に合うんじゃないかなと思いました。テーマは「アラサー女性、街に出る」みたいな感じですかね(笑)。
───そこはキャリアを重ねた今だからこそ表現できる部分なのかもしれませんね。
中島 そうですね、私はこれまでの活動のなかで、その年齢でしかできないこと、その年齢だから歌えることを大事にしてきたんですけど、今回活動を再開する前は、今の自分の20代後半という年齢を良くない要素として捉えていたところもあったんです。もうフレッシュな若手とは言えないですし、自分が復帰したところで何かプラスがあるのかなと思ったりして。でも、結果的に復帰を決めて、自分の心がつっかえないように活動していくにはどうすればいいのか考えたなかで出た答えが、今の自分の年齢をストレートに出してみよう、ということでした。今回のミュージックビデオにはその自分の意思とか想いをそのまま反映してもらっていますね。
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