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REVIEW&COLUMN

2017.12.06

YURiKA「鏡面の波」レビュー

YURiKA「鏡面の波」レビュー

TVアニメ『宝石の国』のOPテーマは、ハイスイノナサの照井順政が作詞・作曲・編曲を担当。ポストロックのサウンドに透明感のあるボーカルが輝きを放つ。シングル形態のアニメ盤、ミニアルバム形態のアーティスト盤の2種類でリリース。

今秋に放送が開始した市川春子原作のTVアニメ『宝石の国』。人間がいなくなった遥か未来の世界を舞台に、人型の身体をもつ宝石たちと月より襲来する「月人」との戦いを描くアクション・ファンタジー作品だ。多くの謎を秘めた物語の驚きを禁じえない展開や、宝石たちを描くCG映像の美しさなどで、大きな注目を集めている。

この話題作のOPテーマ「鏡面の波」を担当しているのがアニソンシンガーのYURiKA。子供の頃、アニソンを歌うことに目覚め、学生時代はライブ活動をしながら、アニソンシンガーになる夢を追い続けていた彼女。2016年に第一回TOHO animation RECORDS 次世代アーティストオーディションに合格し、2017年、TVアニメ『リトルウィッチアカデミア』のOPテーマ「Shiny Ray」でメジャーデビューを飾った。同年5月には同じく『リトルウィッチアカデミア』第2クールのOPテーマとなる「MIND CONDUCTOR」をリリース。そして、この「鏡面の波」はYURiKAにとって3枚目のシングルとなる。

表題曲「鏡面の波」は、ハイスイノナサの照井順政が作詞・作曲・編曲を担当。ハイスイノナサを形作るポストロックのアプローチによるサウンドと、PIECEやsora tob sakanaなど、アイドル・グループへの楽曲提供で培われた照井順政のプロデュース・センスが融合したスリリングな楽曲となった。なおシングルは表題曲とカップリング曲「Dive into the colors」を収録した〈アニメ盤〉と、それらに3曲の新曲を加えたミニアルバム形態の〈アーティスト盤〉の2種類がリリースされている。

※「鏡面の波」について詳しく話を聞いた、YURiKAのインタビューはこちら

「鏡面の波」

点描のように響くピアノの音色と、打電をしているかのような音が交差するイントロでは、ギターとともに語頭に強くアクセントを置くボーカルの表情が印象的だ。複雑な変拍子が絡み合う音の間をぬいながら、淡々と単語を並べ意味を積み重ねる、その無色透明な声が次第に色づいていく。呼応しながらもそれぞれに発していたボーカルや音が求める方向を同じくした瞬間、点と点が繋がり連続するひとつの線となるような、一体感を示しながら曲は歩みを早める。

滑るようなチェロの旋律に誘われ、ボーカルの抑揚はなめらかになり、硬質なグルーヴを放つ演奏はより躍動的に、サウンドの有機的な変化もここでは感じられるだろう。埋もれていた感情が勢いよく発露するサビでは視界が一気に開けるような開放感があり、またエモーショナルな昂揚感をうながすドラマチックな展開だ。突風に乗って静から動へと跳躍する映像のイメージも織り込んだ、そして作品の神秘的でミステリアスな雰囲気も香る、見事な楽曲の仕上がりとなっている。

ハイレゾでは一つひとつの磨き上げられた音の表面や輪郭をくっきりと照らし出す解像感で、精緻に積み重ねられた音の細部の、その奥までも捉えている。微細な強弱をつけながら乾いたビートをうがつように叩きつける樋口幸佑の直線的なドラムと、うっとりとさせる芳醇な音色で空気を彫るかのように奏でる徳澤青弦の曲線的なチェロとの、演奏者による音の描きかたの対比も垣間見れて興味深く、インスト・ヴァージョンではさらに卓越した演奏のスゴさを体感できる。ボーカルはたゆたうように空間を深く漂いながら、その繊細な歌声で宝石のもつ脆さや儚さを表す。ややトーンを抑えながらも変わりゆく表情を鮮明に写し取った、そのニュアンスもまた絶妙である。

「Dive into the colors」

「鏡面の波」と同じく照井順政が作詞・作曲・編曲を手がけたカップリング曲。こちらは疾走感のあるストレートなロックナンバーとなっており、変拍子だらけの「鏡面の波」とはまた対照的だ。歌詞には『宝石の国』の世界を思わせる言葉も盛り込まれており、個人的にはここ数話のストーリーとついイメージを重ねたくなってしまう。ドラムとベースが密に絡むアグレシッブなグルーヴの上に、情熱をひめた歌声が清々しく映える。

「薄明パラレル」

「DAYS of DASH」(TVアニメ『さくら荘のペットな彼女』EDテーマ)など、鈴木このみの楽曲を多く手がけている、白戸佑輔が作曲・編曲を担当。デビュー前、YURiKAは「DAYS of DASH」をオーディションを受ける際の勝負曲にしていたこともあり、白戸の名前は歌とともになじみ深いもの。アニソンをこのうえなく愛するYURiKAたっての希望で今作に参加している。春風のような軽やかなギタリストのサウンドに歌声が明るく弾む、この曲では、YURiKA自身が作詞を手がけており、もどかしく、またちょっと切ない片想いの風景を男子からの目線で爽やかに描いている。

「Song That Never Ends ~夢の続き~」

「宇宙に咲く」(TVアニメ『レンタルマギカ』OPテーマ)や「Resuscitated Hope」「unity」(ともにTVアニメ『GOSICK-ゴシック-』のEDテーマ)、「Will」(TVアニメ『忘却の旋律』OPテーマ。このときは“lisa”名義)などで知られるコミネリサが楽曲を提供している。インタビューでも語られているとおり、コミネリサはYURiKAが通っていたボイストレーニング教室の先生であり、アニソンシンガーを目指していたYURiKAにとっては憧れの存在。「デビューしたら歌を書いてください」という当時のYURiKAの願いが叶った、今回の楽曲だ。コミネリサが演奏するピアノの音色と、YURiKAの透き通った歌声がハイレゾではさらに際立ち、煌びやかな高域は目を見張るよう。ライブを思わせる親密な空気感と、吉田 穣による“夢のつづき”を演出するアレンジも素晴らしい。コラボレーションといった雰囲気の美しいバラード・ナンバーに仕上がった。

「Snowy Daydream」

YURiKAのデビュー曲「Shiny Ray」(TVアニメ『リトルウィッチアカデミア』OPテーマ) を手がけた、uzと吉田 穣のコンビによる楽曲。しっとりとした落ち着いた「Song That Never Ends ~夢の続き~」から一転、ラストではちゃめちゃに元気なサウンドを展開しているのがYURiKAらしいといえばたしかにらしい。猛スピードで駆け抜けるパンキッシュなロックに乗せて、賑やかにボーカルがはじける。本人によれば「ボカロっぽいイメージ」という物語性の強い楽曲となっており、言葉をたっぷりと詰め込んだハートウォーミングなショートストーリーの結末をぜひ確認してほしい。

YURiKA
鏡面の波【アニメ盤】

TOHO animation RECORDS
2017.12.06

FLAC・WAV 96kHz/24bit

ハイレゾの購入はこちら

e-onkyo music
groovers
mora

© 2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会

 収録曲

 1.鏡面の波(TVアニメ「宝石の国」オープニングテーマ)
   作詞・作曲・編曲:照井順政

 2.Dive into the colors
   作詞・作曲・編曲:照井順政

 3.鏡面の波(Instrumental)

 4.Dive into the colors(Instrumental)

YURiKA
鏡面の波【アーティスト盤】

TOHO animation RECORDS
2017.12.06

FLAC・WAV 96kHz/24bit

ハイレゾの購入はこちら

e-onkyo music
groovers
mora

 収録曲

 1.鏡面の波(TVアニメ「宝石の国」オープニングテーマ)
   作詞・作曲・編曲:照井順政

 2.Dive into the colors
   作詞・作曲・編曲:照井順政

 3.薄明パラレル
   作詞:YURiKA 作曲・編曲:白戸佑輔

 4.Song That Never Ends ~夢の続き~
   作詞・作曲:コミネリサ 編曲:コミネリサ・吉田 穣

 5.Snowy Daydream
   作詞・作曲:uz 編曲:吉田 穣

 6.鏡面の波(Instrumental)

 7.Dive into the colors(Instrumental)

 8.薄明パラレル(Instrumental)

 9.Song That Never Ends ~夢の続き~(Instrumental)

10.Snowy Daydream(Instrumental)

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