INTERVIEW
2018.01.17
──4曲目の「ワンダーテイル」もアルバム用に自作された新曲になります。
ChouCho 今回のアルバム用に私が作った曲はシリアスなものが多かったので、この曲は遊び心を入れられるものにしようと思って作りました。歌詞も言葉遊びみたいにしてるんですけど、実は〈偽者にだまされないで〉といったメッセージも込めたりしてます。
──どこか『不思議の国のアリス』を彷彿とさせる内容ですよね。
ChouCho まさにそうですね。『不思議の国のアリス』って紫とピンクの模様の猫が出てきたりして、とってもカラフルな世界観じゃないですか。時計を持って逃げるウサギとかも含めて『color of time』と合うと思って、モチーフにしたんです。
──アリスはいろんな状況に翻弄されるわけですが、それが〈偽者にだまされないで〉というテーマともマッチするというか。
ChouCho たしかに〈真実を見極めろ〉的な歌詞になってますね。サウンド面では、イントロで私がトイピアノを弾いてるんですけど、あれは村山さんから「自分で弾いたほうが面白いんじゃない?」と言っていただいて。そこは別に正確さが求められるようなフレーズでもないし、遊び心がほしい曲だったので。あとはメロトロンとかウィリッツァーの音も入れて、自分の好きな世界観も入れつつ遊んでますね。メロトロンと言えばビートルズの「Strawberry Fields Forever」というイメージですし(笑)。
──続く「セフィロトの木」は以前にシングルのカップリングで発表された曲で、作詞はChouChoさん、作曲・編曲はrionosさんになります。
ChouCho この曲は最初に聴いたときから世界が見えて、すぐに歌詞を書けたんです。なんか神様の視点というか、空の上から地球を見てるような俯瞰視点の歌詞を初めて書いて、とても気に入ってたのでアルバムにもぜひ入れたいと思ったんです。今回のアルバムは〈時間の色〉がテーマなんですけど、何となく〈生きる〉ということも大きなテーマになっていて。今を大切にするって〈生きる〉ことじゃないですか。入院したときにやっぱり元気に生きるのは本当に尊いことだと思って。この曲の歌詞も生きることについて書いているので、アルバムのテーマにもピッタリだなと思って。こんなに静かな曲はいままで歌ったことなかったので、そういう意味でも新しい扉が開けた曲ですね。
──次の「one and only」はPS4のゲーム「ガールズ&パンツァー ドリームタンクマッチ」の主題歌ということですが、歌詞の1行目”優しい 日差しが落ちる 窓際一番後ろの席”が象徴するように、学生時代の部活に打ち込む青春を感じさせる曲ですよね。
ChouCho この曲は、具体的な女の子のイメージを思い浮かべたり、自分の学生時代を思い出しながら、リアリティーのあるものを書きたいなと思って。私自身も高校生のときに部活で弓道をやっていて、部活の友だちとも仲良かったので、「早く放課後がこないかな」ってワクワクしてたんです。楽しいことがあるときって、そのことしか考えられないじゃないですか。きっと『ガルパン』の子たちも戦車道の時間が待ち遠しいんじゃないかなと思って、そういう気持ちを歌詞で表現しようと思ったんです。歌うときもキャラクターのことを考えながら、ワクワク感が出るといいなと思って。
──弓道と戦車道は〈道〉同士ですしね(笑)。そして自作の新曲となる9曲目の「アンダンテ」は、音響系エレクトロニカの要素を感じさせるクールな楽曲です。
ChouCho この曲はアレンジが素晴らしいんですよね。元々私が作ったデモはもっと暗くてドヨーンとした感じだったんですよ(笑)。かなり鬱々としていたんですけど、そこにインテリジェンスな連弾風のピアノとかが加わって、とてもスタイリッシュに仕上がったと思います。
──歌詞はどのような着想で書かれたのですか?
ChouCho この曲はまさに入院中のイメージですね。だからデモは暗かったんですけど、ただ暗いだけじゃなくて希望もあって。自分の生きる意味とか、入院時に考えたことを改めて形として残したいなと思ったんです。でも、ここまで心の中を吐き出す曲もいままでなかったので、これも新しいチャレンジになったと思います。
──そして「薄紅の月」「明日の君さえいればいい。」というアニメタイアップ曲を挿み、12曲目の「アリア」もご自身が作詞・作曲した新曲になります。この曲は個人的に1曲目の「color of time」の世界観とも繋がってる印象を受けました。
ChouCho たしかに「color of time」と「アリア」は今作のキーになる、アルバムの世界観を出したかった曲ですね。
──自分のイメージとしては「color of time」で幕を開けて、そこからアニメ作品のタイアップ曲を含むさまざまな世界観の楽曲を旅して、終盤の「アリア」で締め括るというか。
ChouCho そうですね。「アリア」で終着するというか、最後に包み込むというか。それで次の「searchlight」は私の中でアンコールのイメージなんです。この最後の2曲は絶対にこの位置でと思って作りましたね。
──そういうアルバム全体を貫くようなストーリー性は意識されたものなのでしょうか?
ChouCho 〈時間の色〉というテーマがしっかりしていたので自然と意識してたんだと思います。最初と最後の曲のイメージがしっかりとできてたので、あとはどんな濃いカラーのタイアップ曲がきても、自分の曲で挟んでるのでまとまると思って。
──その「アリア」ですが、生きることの意味を形にしたような詞世界を含め、非常にスケール感の大きい楽曲になってる印象です。
ChouCho この曲は以前に作曲をしたときにとても気に入って、次にアルバムを出すときに入れようと思ってた曲なんですよ。そのときはサビの部分を英語の歌詞にしようと思ってたぐらいで、アルバムに合わせて新しく歌詞を書いたんですけど、この曲ですごくいい歌詞を書きたいという想いが強すぎてなかなか書き進められなくて。歌詞はわりとたくさん書いてるので、書くスピードも早くなってる気はしてたんですけど、こんなに何日も全然書けないことはひさしぶりだったので自分でもビックリしました(笑)。イメージはしっかりしてるので絶対に書けると思ってたんですけど、フィットする言葉がなかなか見つからなくて。
──サウンド的にはストリングスを大々的にフィーチャーした幻想的なアレンジですけど、歌詞の内容もあってどこか空の上をフワフワ浮いてるようなイメージを受けました。
ChouCho そうですね。「セフィロトの木」ともちょっと近いというか、空の上から見てるという視点ですね。「セフィロトの木」は神様の視点なんですけど、この曲は女神というか、もうちょっと優しい気持ちで温かく包み込んでいる感じで。それを歌詞で表現するのが本当に難しかったんです。私の中では雲間から光がキラキラ降りる映像が浮かんでて、そういうものを想像しながら曲を作りましたし、歌詞もそれがイメージできるものになればと思って。
──なるほど。
ChouCho しかもこの曲はレコーディングも時間がかかったんですよ。最初に歌ったものを聴いてみたらなんか女神っぽくないなと思って、それを全部ボツにして一から録り直したんです。人間が歌ってるように聴こえるようじゃダメだと思って。さらにコーラスもハモリもいっぱい録ったので、レコーディングでは全部を注ぎ込んだ感じでしたね。
──それで女神っぽさを表現してしまえるところもすごいですけどね。
ChouCho できる限り頑張りました(笑)。
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