INTERVIEW
2018.01.24
『ガールズ&パンツァー』や『暗殺教室』など数々の人気アニメに出演し、様々なキャラクターソングを歌唱してきた声優・渕上 舞が、アルバム『Fly High Myway!』にてファン待望のソロデビューを果たした。
自分らしさを大事に、大好きな鳥をテーマのひとつとして盛り込んだこのアルバムは、全12曲中6曲で作詞も手がけた入魂の一枚だ。リスレゾではアルバムリリースにあたって、渕上へロング・インタビューを敢行。新発見と驚きにあふれた制作へのエピソードを語る彼女からは、自分の道を確かに歩み始めたアーティストとしての姿を感じ取ることができた。
Interview & Text by 須永兼次
at Lantis
渕上 舞『Fly High Myway!』のレビューはこちら
──アルバムのお話に入る前に、今年10周年を迎えられる声優としての活動を振り返ってのお話からお伺いできますか?
渕上 舞 そうですね……波瀾万丈な10年間で(笑)。
──個人的には、息の長い作品に出演されているイメージが強いです。
渕上 そうかもしれないです。それって本当にありがたいことだと思うんですけど、実はそのことで悩んだときもあったんですよ。作品数として自分の中では「まだまだ多いほうではないな」と思っていた時期もありまして。でも、そういった作品に携われていることのありがたみや大事さは、特にここ最近いろいろなことを振り返ることで、より強く感じます。
──そういった作品って、出会いたくてもなかなか出会えるものでもなかったりしますし。
渕上 そうなんですよ。悩んでいた時期に相談した先輩方もそうおっしゃってくださいましたし……もちろんどの作品も大事ではあるんですけど、年齢やキャリアを重ねることでその大切さや重みをしっかり感じられるようになってきたのかな、って最近はすごく思います。
──ちなみに渕上さんは、どんなキャラクターを演じている際に楽しさを感じますか?
渕上 自分自身とかけ離れていればいるほど、楽しさを感じます。声優って、自分の年齢や容姿にとらわれずにお芝居ができるお仕事じゃないですか? だから例えば、性格とかが自分自身からかけ離れていればいるほど、異世界に行った感覚をもてるというか……「自分じゃない自分でいられる」っていう、垣根を超えた感覚を感じられるときがすごく楽しいですね。
──そうやって様々なキャラクターを演じるなかで、キャラソンも数多く歌われてきましたが、そのなかで「ソロで歌をうたいたい」と思われたこともあったのでは?
渕上 いやぁ、それは最初の頃だけで……「だけ」って言うとソロデビューしたくなかったみたいに聞こえちゃいますよね(笑)。それとはちょっと違うんですけど……。
──このデビューのお話がある前、ソロ活動に強い憧れをもたれていた時期があったんですね。
渕上 はい。私、声優になりたいと思い始めたきっかけが水樹奈々さんの活躍やキラキラした立ち居振る舞いに憧れてだったんですよ。だから「こんなステージで、私もこんなふうに素敵な衣装を着て歌えたら楽しいだろうな」っていうミーハーな気持ちをもっていた時期もありまして(笑)。「奈々ちゃんみたいになりたい」っていう理由で水樹さんが所属されているシグマ・セブンさんの公開オーディションを受けて、そこに入って、という経緯もあったので、当時のマネージャーさんにはずっと「歌をやりたいけど、どうすればいいんですかね?」って相談してました。
──その考えが変わったのは、なぜですか?
渕上 だんだんとソロをやることに対して懐疑的になってしまって。ステージとか歌うことが好きなのは変わらないんですけど、出会ったいろんなキャラクターたちの歌を表現する場所をすごくたくさん与えていただいていて、しかもそれが楽しかったので、本当にこのお話をいただくまでは「わざわざ自分でやる必要はないかな?」っていうところに落ち着いてきていたんですよ。
──そのキャラクターとしての音楽活動での経験は、今回のアルバムに繋がる部分もあったのでは?
渕上 そうですね。やっぱりゼロからのスタートでないというのは、すごくよかったなと思います。そのときできなかったことに挑戦したり、そのときとは違うアプローチを取ったり……過去の経験から、自分の中でやり方を模索しながら臨めたので、いろいろなことをやらせていただいてからのデビューですごくよかったな、と感じています。なので、レコーディングも特別苦戦することはなくて、どの曲もスムーズに進みました。それに、キャラクターとして歌うときにはNGだったことも、「自分だから、今回はやっていいんだ!」っていうこともあったんですよ。
──それはどんな部分でしたか?
渕上 例えば曲に合わせてどんな歌い方にするのかを相談しながら決めていく、ということでしょうか。歌のイメージが定まっているキャラソンではなかなかできなかった方法ですね。
──「そのキャラクターが歌っている感じで」というキャラソンとは異なり、自身のオリジナル曲では歌い方について、無数の選択肢がありますもんね。
渕上 そうなんですよね。だからこそ「自由すぎると何をしていいか逆にわからない」っていう大変さもあったんですけど、のびのびとやらせていただきました。
──制約なしにみんなでアイデアを出し合って、今回の12曲を作り上げられたんですね。
渕上 そうですね。もちろん「歌詞にある言葉を歌っていく」ことが基本なんですけど、「入れたい言葉とかメロディの変更とかの相談を現場でできるって、新しいなぁ」と思って。そういう意味での“作っていく楽しさ”を、初めて感じました。そういうことってキャラソンではなかなかないので「変えていいんだ!」っていう驚きもあったんですけど、それに対応していく楽しさもすごくありましたね。
──ちなみにですが、渕上さんは元々どういう音楽がお好きだったんでしょう?
渕上 うーん、ざっくりなんですけど……ちょっと切ないというか。元気に弾けたポジティブな曲より、しっとり胸に刺さるようなメロディの曲がどちらかというと好みですかね。あとは、1〜2回聴いただけで口ずさめるようなメロディの曲が、比較的好きなのかなって思います。
──スッと入ってきやすいメロディアスな曲というか。
渕上 そうですね。これは私の好みなんですけど、好きになる曲っていうのはちょっと懐かしかったりとか。昔の曲って、そういう曲多いじゃないですか? キャッチーですぐ一緒に歌える、自然に楽しめる曲みたいな。オシャレすぎると、「難しいからめんどくさいな」ってなっちゃうんです(笑)。
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