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INTERVIEW

2018.03.28

fhána×ランティス音楽プロデューサー・佐藤純之介『World Atlas』スペシャル座談会

fhánaの3rdアルバム『World Atlas』がついに完成した。約2年ぶりのオリジナル・アルバムとなる本作には、バンドにとっての転機となったヒット曲「青空のラプソディ」をはじめ、近年のアニソン・シーンを賑わした5曲ものアニメタイアップ曲と、彼らの今の好調ぶりを伝えるアルバム用の新録曲を含む全14曲を収録。世界地図を広げてさらに開けた場所へと向かう意志を感じさせる、珠玉のポップ・ミュージック集となっている。

今回は通常のインタビューとは趣向を変えて、彼らの旅路をデビュー時からサポートしてきたランティスの音楽プロデューサー、佐藤純之介氏とメンバー4人による座談の場をセッティング。『World Atlas』というアルバムが生まれたその背景からハイレゾ論まで、たっぷりと語り合ってもらった。

なお、リスアニ!WEBではアルバム『World Atlas』ついてのインタビュー記事を掲載。本インタビューと併せてご一読いただきたい。

●リスアニ!WEB掲載 3rdアルバム『World Atlas』リリース記念 fhánaインタビューはこちら

Interview & Text by 北野 創
at Lantis

fhána『World Atlas』のレビューはこちら

メンバーの個性はバラバラなんだけど、リーダーがまとめてくれるならアリだなと思って

──fhánaのメジャー・デビュー時からプロデューサーとして関わってる佐藤純之介さんですが、元々リーダーの佐藤純一さんとは繋がりがあったんですよね。

佐藤純之介 彼は弟ですから!(笑)。

一同 ハハハ(笑)。

佐藤純之介 というのは冗談ですけど、リーダーがFLEETというユニットで自主制作盤を制作してた頃に彼の名前をmixiで見つけたんです。自分と名前が似ていたので気になって(笑)。それで音を聴いたらめちゃくちゃカッコ良かったので、僕が当時レコーディング・エンジニアとして働いてたスタジオに呼んだんですよ。そこからFLEETのインディーズ盤のマスタリングをやらせてもらったりして。その後、僕が転職してランティスでディレクターになりまして、FLEETに『イノセント・ヴィーナス』(2006年放送のTVアニメ)のED主題歌「Brand new reason」を提供してもらったんです。

FLEET「Brand new reason」(2006.08.23)

佐藤純一 純之介さんからいきなり電話がかかってきて「今ランティスって会社にいるんだけど、「Brand new reason」をアニメのエンディングにしようよ」って言われて「マジっすか!?」って感じでした(笑)。

──その後、純一さんはyuxuki wagaさん、kevin mitsunagaさんとfhánaを結成して、再び純之介さんと一緒にお仕事することになります。

佐藤純之介 まだtowanaが加入してないときに「純之介さん好きそうだから聴いてみてください」ってアプローチがリーダーからあって。それからライブも観に行かせてもらったりして、実際にfhánaと仕事したのはChouChoさんの楽曲を提供してもらったのが最初ですね。

──ChouChoさんの1stアルバム『flyleaf』(2012年)に収録されてる「looping star」とシングル「DreamRiser」(TVアニメ『ガールズ&パンツァー』OP主題歌)のカップリング曲「life is blue back」ですね。

ChouCho『flyleaf』(2012.08.08)

ChouCho「DreamRiser」(2012.10.24)

佐藤純一 そうですね。2曲デモを作ったら、2曲とも採用していただいたという。

──そこからfhánaは2013年に、TVアニメ『有頂天家族』のED主題歌「ケセラセラ」でランティスからデビューするわけですが、純之介さんはアーティストとしてのfhánaにどんな魅力や可能性を感じてデビューさせたのでしょうか?

1stシングル「ケセラセラ」(2013.08.21)

佐藤純之介 まず、サウンド・プロデューサーが3人いるというのが今の時代っぽくて新しいと思いましたね。kevinくんにしてもyuxukiくんにしても個性はバラバラなんだけど、リーダーがまとめてくれるならアリだなと思って。僕がアーティストのプロデュースに入る場合、基本的には作詞にしても作曲にしてもイメージを固めて作ることが多いんですけど、fhánaはそうじゃなくて、例えば歌を録るにしてもリーダーに任せていて、コアな部分はメンバーにやってもらってるんです。僕は一歩引きながら大きく視野を持てる仕組みみたいなものを立ち上げてる感じですね。

これまでのfhánaや自分個人で作ったことのないタイプの音楽を作るきっかけを与えてくれたりするので、すごく開けた感じがしますよね

──メンバーの皆さんは、純之介さんからどんな影響を受けましたか?

yuxuki waga とりあえず頭が柔らかくなりましたね。「こういう音楽をやりたい」とか「こういう音がカッコイイ」みたいな自分の考えている像をさらに広げてくれたというか。こういうのもアリなんだっていうのをどんどん引き出してくれたので、だいぶん解きほぐされてきました(笑)。ほかにもいろいろなことを教えてもらってますし。

──例えば?

yuxuki えっと、おいしいお店とか。

一同 ハハハ(爆笑)。

佐藤純之介 そこなの?(笑)。

yuxuki まあ音楽から離れたこともそうなんですけど(笑)。最初はステージ上での立ち振る舞いなんかも教えてもらいましたね。自分はその頃、ライブでずっと横を向いてたんですけど、「(お客さんに)ギターを見せなさい」って言われて、たしかにそうだなと思って(笑)。いろんな意味で「先輩」みたいな感じですね。

──kevinさんはいかがですか?

kevin 僕自身なんでもできるタイプではないんですけれど、fhánaでの活動を通して、これまでになかった部分をいろいろと引き出されている感じがしますね。それは純之介さんしかり、リーダーの佐藤さんしかり、未知のチャレンジをくださるからで。試行錯誤して作る工程が千本ノックみたいというか(笑)、そういう機会をいっぱい与えてもらえていることにめちゃめちゃ感謝しています。それはメンバー全員に対しても思っていることなんですけど。

佐藤純一 純之介さんはアイデアマンですよね。僕らではなかなか思いつかないような解決策や道筋、方向性を示してくれたりして。今のkevinくんの話に近い部分でもありますけど、今までと全然違う「こういうの作ってみない?」という提案をしてくれたりとか。これまでのfhánaや自分個人で作ったことのないタイプの音楽を作るきっかけを与えてくれたりするので、すごく開けた感じがしますよね。

──towanaさんはいかがでしょう?

towana 私はほかのみんなみたいにそれまで別で活動してたこともあまりなく、fhánaに入ってメジャー・デビューしたのが私の音楽活動のほぼすべてなので、純之介さんの言うことが刷り込みのような感じで、なんか親鳥についていってるというか(笑)。まあボーカル・ディレクションは佐藤さんだったり、細かいことはメンバーでやりとりしますけど、ライブの立ち振る舞いを教えてくれたり、「次はこうしたらいい」って導いてくれたりもしますし。

9thシングル「calling」【アーティスト盤】(2016.08.03)
レビューはこちら

──fhánaがアーティストとしてどう活動していくべきかを、ちゃんとリードしてくれるわけですね。

佐藤純一 そこが絶妙なところで。さっき純之介さんもfhánaとほかの担当しているアーティストとは違うとおっしゃっていましたけど、普段はもっとリードしているところを、fhánaの場合は「こうしなさい」じゃなくて「こういうふうにいったほうがいいよ」ってなんとなく仕向けてくれるんです。うまいマネージメントですよね(笑)。

yuxuki すごくいいタイミングでめっちゃ褒めてくれるんですけど、絶妙に満足させてくれないんですよ(笑)。

一同 ハハハ(爆笑)。

towana でも、基本褒めてくれるのはすごくいいなって思います(笑)。

佐藤純之介 それは4人それぞれでバランスが違うの。

towana え!? そうなの?

佐藤純之介 towanaは褒めて育てるんです。

kevin なるほどね!(笑)。

towana 正解!(笑)。

佐藤純之介 yuxukiくんはケツを叩いて育てる。

yuxuki そうそう(笑)。

towana へえ~。

佐藤純之介 普段こんなこと言わないから照れますね。

一同 (笑)。

佐藤純之介 でもリーダーとの関係値は、ほかの3人よりも圧倒的に深くあるんですよね。だから僕はいろんなアイデアを出したり提案もするけど、もし嫌なことがあったらそこは断っていいと言っているんです。

──なるほど。

佐藤純之介 僕が10のアイデアを出したら、リーダーはそこから好きなやつを選んで、自分なりに伸ばしてくれればいいんです。大体アイデアの8割ぐらいはNGになるんですけど、残りの2割でピンときたものを膨らましてくれるので、そういう意味では「一緒に作っている感」があるし、気持ち的にはメンバーのひとりという感じでやってますね。

──そうなんですね。

佐藤純之介 それと僕はfhánaに想いを託してるところがあるんですよ。もちろんほかの担当アーティストのことも愛してるんですけど、そこがfhánaとのいちばんの違いですね。僕は二十歳ぐらいのときに、メジャー・レーベルの育成枠みたいなところにいて、デビューをめざして活動してたんです。でも、それは結局実現しなくて、それでも音楽をやりたいからエンジニアになって、そこからディレクター、プロデューサーと上がってきて。その若い頃に自分がなりたかったアーティスト像とかやりたかったこと、そういうイメージなどを託しているのがfhánaなんですよ。

towana え~!今初めて知った。

yuxuki いやいやいや……。

佐藤純一 なんかね(笑)。

──すごく素敵なお話ですね。

towana そうですよねー、うれしいです。

1stアルバム『Outside of Melancholy』(2015.02.04)
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