2017年よりきみコ(ヴォーカル&ギター)とササキジュン(ギター)の2人体制で精力的な活動を展開しているnano.RIPEが、前作「虚虚実実」から僅か3か月で早くも次のシングル「アザレア」をリリースする。女子高生同士の恋愛を描いたTVアニメ『citrus』のOPテーマとして制作された表題曲は、どこか毒を孕みながらも純粋な恋の気持ちを表現した、彼らとしては珍しいラブソング。生ストリングスの導入といった新味もありつつ、nano.RIPEらしさをしっかりと刻んだ一曲だ。今回はカップリングも含めて〈恋の歌〉づくしとなったバンドの新作について、メンバーふたりにインタビュー。さらに彼らが手がけた、ちょうど同日リリースとなるジュリア(『アイドルマスター ミリオンライブ!』)の新曲「スタートリップ」についても話を聞いた。
――「アザレア」はTVアニメ『citrus』のOPテーマですが、この曲はタイアップありきで作られたのでしょうか?
きみコ 楽曲自体はササキジュンが2年ぐらい前に書いてたものなんですよ。今回『citrus』のお話をいただいたときに、この曲とさらに1曲ずつ書き下ろして全部で3曲を候補として出したんですけど、自分たちも含めてこの「アザレア」という曲がいいということで決まったんです。そこから歌詞は新たに書き下ろしました。
――『citrus』という作品にはどんな印象を抱きましたか?
きみコ お話をいいただいてから原作を読ませていただいたんですけど、最初はこの作品をnano.RIPEで担当させてもらっていいのかなと思いました。ぼくらはいままで〈恋愛〉をテーマにした作品とのタイアップがなかったし、それに加えて『citrus』は女の子同士の特殊な恋愛を描いてるじゃないですか。なので他にもっと合う人がいるんじゃないかと思ったんですけど、でもせっかく体制を立て直した中で新しいタイプの作品に挑戦するのはnano.RIPEにとっても良いことだと思って。歌詞も最初はどう書けばいいのか悩んだんですけど、よく考えると世の中に障害のある恋なんて山ほどあるので、『citrus』で描かれてる女の子同士の恋愛もそういうふうに考えればいいんだと思って、そういう視点に切り替えたらスラスラと書けました。
――ササキさんは『citrus』に触れていかがでしたか?
ササキジュン 自分は百合の世界はまったく不勉強で、女の子が好きなものなのかと思ってたんですけど、意外と男の子のファンのほうが多いということを知って驚いたぐらいだったんです。でも、アニメを見始めたら意外とすんなり入ることができて、自分の中でも受け入れられてすごく面白いなと思って。実際の恋愛はやっぱりすごく汚い部分があると思うんですけど、女の子の恋愛ってすごくキレイに見えるからいいなと思って……勉強してます(笑)。
――これをきっかけに百合作品にハマるかもしれないですね(笑)。たしかに『citrus』は女の子同士の恋愛が描かれてますが、単純に柚子と芽衣子という思春期の女の子たちの心の動きをていねいに描写した作品でもあります。
きみコ そうなんですよね。だから恋の形として同性同士というだけであって、恋する気持ちとしては全然普通のものなんですよね。そういうふうに捉えたら何の違和感もないし、年齢が高校生なので感情の揺れ動きが若い部分はあるんですけど、自分にもこういう時代があったし、いまだにそういう思いをすることもあるので、共感できないということは全然なかったんです。歌詞は恋をし始めたときの苦しさとか切なさを重点的に書こうと思ったので、たぶんあたしの恋愛観がしっかりと入ってると思いますし、そのうえで作品に寄り添ったものが書けたと思います。
――タイトルの「アザレア」にはどんな意味を込めたのでしょうか?
きみコ 「アザレア」というのは「つつじ」のことなんですけど、花言葉としては「初恋」とか「愛される喜び」という意味があるので、そこから付けました。「シトラス」と「アザレア」だと並びも美しいなと思って。
――「つつじ」には毒がありますしね。
きみコ 初恋というか無垢なものにはけっこう毒性があるというか、無垢であればあるほど人のことを知らない間に傷つけてたりするじゃないですか。そういう意味でもピッタリだと思ったんです。
――歌詞にはご自身の恋愛観も反映されてるとのことですが。
きみコ 『citrus』の世界観や初恋の美しい部分だけを切り取りたくはなかったので、2番のサビに“きみが望むなら落ちよう どこまでも闇へ”とか“残酷にも思える”といったキツめの言葉を入れるのがあたしらしさなのかなと思います。あくまでもキレイなことだけ書きたくないというか。
――nano.RIPEにはあまりラブソングのイメージがないですが、そういう意味でもご自身の恋愛観がストレートに出た曲というのは新しい試みだったのでは?
きみコ たしかにかなり珍しいので、だからこそあまりキレイにならないように心がけたんです。たまに歌うラブソングがあんまりキレイだとnano.RIPEらしくないし、きみコらしくもないし。そこであたしの価値観や哲学みたいなものを散らばせたので、あたしなりのラブソングになってると思います。
――歌詞で印象に残ったのがサビの締め括りの箇所です。1番のサビは“足跡は消して”で終わって、ラスサビは“ふたりだけ消して”になってるところがドラマを感じさせて素敵でした。
きみコ ありがとうございます!そこは言っていただけるとすごくうれしいですね。なんとなくのイメージなんですけど、世の中のラブソングには「ふたりだけの世界にしてしまおう」という表現があると思うんですけど、逆に自分たちが世界から消えてしまうほうが儚いというか切実だと思ったんですよ。ふたりだけの世界にするためにみんなを消すんじゃなくて、自分たちが消えるという発想がこの作品にも合ってると思うし、あたしもそのほうが美しいと思ったので、それを“足跡は消して”から“ふたりだけ消して”になるところに込めたんです。
――歌の最後が“ふたりだけ消して”で終わってしまうと、ドキリとしてしまいますけど。
きみコ 心中のようなドキッとする感じはありますよね(笑)。
――ササキさんは歌詞をご覧になっていかがでしたか?
ササキ きみコは普段「ぼく」という言葉を使う曲が多くて、男の子目線はもちろん女の子だけど「ぼく」と言ってる曲もあったり、聴き手が自分に合った感じで捉えられるように書いてる歌詞が多いんですね。「アザレア」もきみコらしい部分は多いんですけど、今回は女の子の曲だという印象があって。シングルのカップリングも全部女の子目線の曲だよね?
きみコ 「スターハンター」は途中で「ぼく」に変えたんだけど、最初は「あたし」で書き始めたものだったからね。
ササキ なので意識はしてなかったんですけど、女の子に共感してもらえる曲になったと思います。
――今回のシングルは前作「虚虚実実」に続いて小田和奏さんがサウンド・プロデュースされてますが、「アザレア」だと大々的に採り入れられたストリングスが特徴的です。
きみコ 弦はもともとササキジュンのデモの段階から打ち込みで入ってたんですよ。
ササキ この曲は最初から弦の入ってる曲を作ろうというのがあったんです。いままでのnano.RIPEは比較的暗めの楽曲が多いので、2017年に2人体制になってからは明るい曲を作りたいと思うようになって、それで出来たのがこの「アザレア」だったんですよ。それできみコに聴かせたら「これは自分ではないんじゃないか」という感じで受け入れてもらえなくて、なかなか歌詞を乗せてもらえず(笑)。でも逆に歌詞がなかったことによって、今回『citrus』のタイアップ曲として歌詞を乗せてもらえたと思うと運命的だし、nano.RIPEのなかでも大事な曲になったと思います。
――きみコさんは最初、この曲は自分らしくないと思ったんですね。
きみコ 最初はこれをnano.RIPEでやる意味があるのかなと思ったんですよ。当時はバンド・サウンドを突き詰めたくて、そこに安易にストリングスを入れるのはどうかと思っていたんですけど、実際このタイミングでみんなで作ってみるとちゃんと意味があるし、完成したものを聴くとすごくnano.RIPEなんだけど、その先に行けたような気がして、今は何をそんなにこだわってたのかなと思いますね。ふたりになっていろんなことに挑戦し始めた2017年を経て出来たことなので、ジュンが言ったようにいまだからこういう仕上がりになったんだと思います。
――「虚虚実実」のカップリング曲「深く」で初めて生ストリングスを入れられてたので、それも前段階として今作に作用したのでは?
きみコ たしかにそれもかなり大きかったと思います。表題曲でいきなり弦を入れるのはちょっと怖かったし、カップリングで入れてみたらすごく良くて手ごたえを感じたので、「これなら表題でいけるじゃん」というのはありましたね。
――小田さんのプロデュースは今回どういった部分に反映されてるのでしょうか?
きみコ 「アザレア」はジュンのデモがしっかりしてたので、大まかなイメージはそこから変わってないんですけど、細かい部分のメロディーの音符ひとつでもいろいろ指摘してもらって。あとはフルの弦の編曲をジュンと進めてくれた感じです。前作の「虚虚実実」がすごく良いものになったので、今回はカップリングを含む3曲ともトータルのサウンド・プロデューサーという形で入っていただきました。
――今回はMVも裁判の寸劇仕立てになっててユニークですね。
きみコ 初めての演技だったので大変でした(笑)。いままでもイメージショットみたいなものを撮ったことはあるんですけど、あそこまで本格的な演技はいままでやったことなくて、特にジュンは元々そういうのがとても苦手なので。
――見てて苦手そうだなあと思いました(笑)。
きみコ 音声がなくても舌足らず感がバレるっていう(笑)。まあNGを出しながらも笑いの絶えない楽しい撮影になりました。
――なぜ裁判のシーンを演じることになったのですか?
きみコ 「アザレア」のテーマとして「正しいこととは何か?」というテーマもあるので、監督のほうから提案していただいて。あたしが裁判官と被告人を演じてるんですけど、自分の中のふたりが裁判をしてるような“心の中の裁判所”というイメージで企画を出してくださって、すごく面白いなと思ったんです。長くバンドをやってると、こういうこともできるようになるんだなと思って(笑)。
――ササキさんは弁護人と検事を演じられてましたが、いかがでしたか?
ササキ 検事が完全に事務のおじさんみたいになっちゃって、腕カバーをつけようかなと思ったぐらいでした(笑)。
きみコ 演奏シーンだけでもそれはそれでカッコイイんですけど、映像としても楽しめるMVというあらたな挑戦になったので、こういうのは今後もやっていきたいと思います。もちろんジュンはやらなくてもいいんだけど(笑)。
ササキ 人には向き不向きがあるので(笑)。
――ここからはカップリング曲のお話も聞かせてください。まず「最終前」は終電際の別れの様子を描いたバラードになります。
きみコ この曲を書いたのはかなり前になるんですけど、みんな気に入ってたのになかなか入る隙間がなくて、ストックの1番上にずっとある感じだったんです。今回は歌詞の世界観や儚い感じが『citrus』ともすごく合ってたので、入れるならここだと思ったし、ここまで取っておいて良かったと思える曲になりました。
――歌詞は駅前で見送る人の具体的な情景が浮かんでくるような内容になってますね。
きみコ まさに終電前の5分間を切り取るようなイメージで……というかこれは実体験なんですよ(笑)。なのであたしの頭の中で景色を思い浮かべて書いたので、情景が浮かんでもらわないと困るみたいな。
――そりゃあはっきりと情景が浮かびますよね(笑)。その実体験を曲として形にしたいと思ったのですか?
きみコ 実体験も曲にする出来事としない出来事が自分のなかにあって、する出来事というのはその瞬間が美しいなと思ったことだったり、この瞬間を忘れたくないなと思ったことを曲にして封じ込めることが多いんです。この曲で描いた瞬間も、当時曲にしておこうと思った出来事なんだと思います。そういうこともあって、自分のなかで生々しすぎてすぐにリリースすることができなかったんですよね。いまは時が経ってひとつの物語としてみることができるので。
――実体験と聞くとちょっとお話を聞きにくくなりますが(笑)、この曲では「離れたくない」という切ない別れの心情が表現されてますね。
きみコ 改札に入っていく後ろ姿を見送る側みたいな感じですね。でも、こういう気持ちは恋愛のシチュエーションだけじゃなくて、手を振る瞬間というのは切なく感じるんですよね。小学生のときも、友達とバイバイして手を振った後に、あたしは相手の子が角を曲がるまで見送ってしまうんですよ。なんかそこをパッとは離れられなくて。そういう気持ちは恋に限らずいまもけっこうあるので、たぶんそれを曲に閉じ込めたいと思って書いたんだと思います。実際、終電間際って恋人同士じゃなくても、楽しかった飲み会が終わってお別れしたり、そういう感情が溢れてるんじゃないかと思って。
――1行目の歌詞“とっておきの秘密基地みたいな小さな小さなかくれんぼ”というのは少年っぽさを感じさせて、きみコさんらしさが表れてるように感じました。
きみコ こういう表現や書き方が昔から好きなんですよね。さっきジュンが言った「ぼく」って書くのもそうだし、あとは「大人になっても秘密基地を作ってたときのような気持ちを忘れたくない」ということを常日頃考えているのが、歌詞に表れてるんだと思います。
――サウンド的にはゆったりしたギター・ロックで、シングルの中ではいちばんバンドらしい音になってます。
きみコ 今回のシングルの中では唯一バンド・サウンドだけで成り立ってる曲ですね。もともとプリプロの段階で録音してたものはもう少しキレイにまとまってたんですけど、これも和奏さんと一緒に手を加えていくなかでいろいろアイデアを出していただいて。だから最初よりもUKロックに寄った感じはあります。「アザレア」でストリングスを入れたり、次の「スターハンター」でシーケンスを入れたりしながらも、根底は今後もロック・バンドとしてやっていくつもりなので、その揺るがない部分はこの3曲にも残したいというのはありますね。
――その「スターハンター」はまた趣きが変わって、浮遊感のある打ち込みが印象的なナンバーです。
きみコ この曲は『citrus』の主題歌候補として作った曲のひとつだったんですけど、歌詞の世界観は恋の始まる感じとか初恋の不安定な気持ちを書いてるので、このシングルに入れたほうが美しいんじゃないかと思って。それでせっかくカップリングなんだからアレンジは自分たちの好き勝手できるので振り切っちゃえということで、ワンコーラス丸々シーケンスで作った歌になりました。
――この曲も歌詞は恋の歌でありつつ、空がモチーフに使われていて、そこにもきみコさんらしさを感じました。
きみコ 『citrus』用にワンコーラスだけ作った段階ではそうでもなかったんですけど、作品が関係なくなってしまったら空を入れたくなって(笑)。この曲は恋は恋でも空に恋する歌だったり、空ぐらい手の届かないものに恋する歯がゆさを表現したラブソングにしようと思ったんです。
――それでタイトルが「スターハンター」なんですね。
きみコ このタイトルは実は歌詞の2行目の“欲しくて欲しくて仕方がないんだ”というところから「欲しがり=星狩り」で「星を狩る人」という言葉遊びなんですよ。この曲は「空」とは言ってるんですけど、「青」という言葉も入れていて昼間のお話なんですね。「星」は歌詞の中に出てこなくて、「何でスターなんだろう?」と思ったらそこという仕組みなんです。
――それは気づきませんでした(笑)。言葉遊びがすごいですね。
きみコ こういうのが好きなので、なんかしたくなりますね(笑)。
――「届かないものへの恋」というのがモチーフとしてあったんですか?
きみコ そうですね。あたしにとってはまんま空のことなんですけど。「虚虚実実」のカップリングの「ヒーロー」という曲で空を飛ぶ歌を久しぶりに書いたんですけど、やっぱり人間は身体が飛べるようにできてないので、どんなに願っても飛べないということを最近考えていて。それがそのまま空に恋する形に収まりました
――また、シーケンスを大々的に使ったサウンドには、これまでにない雰囲気を感じました。この曲はどんなイメージで音を作られたのでしょうか?
きみコ ここ1年ぐらいこういうシーケンス主体の曲を書きたいと思っていたんですけど、あたしは知識がないのでどうしたらいいのかわからなくて。それでもうジュンと和奏さんにイメージだけ伝えて丸投げして、ふたりがそのイメージに合わせていろんな音を出し合って、そこから引き算していく感じで組み立てていったので、アレンジのやり方としてはかなり珍しかったですね。
――アレンジのイメージはどのように伝えたのでしょうか?
きみコ おととしに出した『スペースエコー』というアルバムに「ルミナリー」とか「在処」といった、そういう打ち込みテイストの曲が入ってるんですけど、それがライブでやっても気持ちよかったしnano.RIPEらしくまとまったので、それをもう少し振り切った感じにしたいというのがいちばんのイメージでしたね。
――実際に音を作られたササキさんはいかがでしたか?
ササキ めちゃくちゃ苦労しました(笑)。
きみコ 正解の見えない作業だったもんね。
ササキ 自分のなかで全部完結するならまだ正解はわかるんですけど、他の人と作業することで足し算よりも引き算のほうが多かったので。引く場合は勇気が必要で、自分が正解だと思ってるものを削らなくてはいけないこともあったりして、そういう意味では本当に難しかったし勉強になりましたね。
――こだわったポイントはありますか?
ササキ 全部こだわりと言えばこだわりなんですけど、この曲はお客さんと一緒に歌いたかったので「オーオー」というコーラスが入ってて。打ち込みで作ってるのでダンス・ミュージック的なところもあって、こういうテイストでお客さんと一緒に歌える曲はいままでなかったので、新しいものができたと思いました。
――後半にかけて段々と盛り上がっていく構成ですよね。
きみコ 壮大になっていく感じがありますよね。この曲は今年からライブでやってるんですけど、すでに大合唱な感じになってるので、きっとこの先も定番曲になるんじゃないかと思います。
――狙い通りじゃないですか。
きみコ nano.RIPEのお客さんは素直なので(笑)。ここだなと思ったら歌ってくれるんですよね。
――ギターの音を逆回転したサウンドも入ってたり、いろんな遊び心のある曲になってますね。
きみコ その辺は実験的に入れてみたりして、遊んだ曲になってますね。この曲がいちばん今後につながるというか、この曲があったから出来たという曲が生まれそうな予感がします。
――今回のシングルは表題曲もカップリングもすべてラブソングになっていて、nano.RIPEにとって新しい挑戦の作品になったと思います。
きみコ これは本当に『citrus』の力を借りたもので、この作品に出合ったからこそ「3曲ともラブソングにしちゃえ!」という勢いになれたんだと思います(笑)。今回は挑戦でもありつつ、懐かしいというか、あまりににもハマったので「なんでいままでやってこなかったんだろう?」という感じで(笑)。挑戦なのに自分たちらしさが溢れてるということは正解だったんだと思って、そういう意味でも自信の一枚になりました。
ササキ 「最終前」はかなり前からある曲なんですけど、当時はきみコの恋愛事情がわかってるので生々しすぎて(笑)、自分たちが演奏すること自体に照れ臭い気持ちがあって「さすがにこれはダメなんじゃない?」と思ってたんです。でも今回のきっかけでリリースすることによって、いまだからこそ歌える曲みたいなものは本当にあるんだなと思って。どの曲も『citrus』のアニメ・タイアップをやらせていただいたからこそできた曲だという思いが強くて、そういう意味ではすごく成長できた一枚だと思います。
――自信作の「アザレア」でリリースの幕を開ける2018年は、nano.RIPEにとってどんな年になりそうな予感ですか?
きみコ 今年はnano.RIPE結成20周年になるんですよ。去年1年でしっかり土台を立て直したところでの20周年なので、新しいことに挑戦しつつ、いままでやってきたことの結果を見せられる年にしたいと思います。
ササキ いつもは年末に向けてツアーを回って、年明けはまずリリースが先にあって、そのあとにツアーという流れが多かったんですけど、今年はその逆で1月からツアーで始められたので、その勢いで年内にはアルバムも出せたらと思ってます。まずはいい流れでスタートが切れたと思うので、このまま突っ走りたいですね。
――それと最後によろしければ、おふたりが楽曲提供された『アイドルマスター ミリオンライブ!』のジュリア(CV:愛美)の新曲「スタートリップ」(『THE IDOLM@STER MILLION LIVE! M@STER SPARKLE 06』収録)について聞かせてください。これまでも「流星群」「プラリネ」と、ジュリアのソロ曲を提供してこられましたが、今回はどんな楽曲なのでしょうか?
きみコ 今回は作曲がハヤシケイさんという方で、作詞を自分、編曲をジュンといういままでにないチームで提供したんです。ハヤシさんのメロディーは美しくてジュンが書くメロディーに通じるところがあったので、nano.RIPEの曲に書いてるイメージで作詞できたんですよ。それをジュンがアレンジすることによってnano.RIPEのカラーも出すことができたので、これを聴いてnano.RIPEに興味を持ってくれることが何よりうれしいんですけど、ジュリアのために書いた曲としてもすごく自信のある1曲になりました。ジュンもアレンジだけのお仕事というのは今回が初めてだったんですよね。
ササキ とても緊張しました(笑)。他の人が作った曲に手を加えることにすごくプレッシャーがあったんですよ。楽曲としては、ハヤシさんのメロディはデモだと明るいイメージだったんですけど、自分のフィルターを通してそのメロディが少し切ない感じになるように仕上げて。しかも今回はワンコーラス全部アコギで歌うという、バンドマンでも勇気のいることをやったんですよ。でもそれが実際にストリートで歌ってるような感じになって、ジュリアというキャラクターがすごく出るんですよね。ただ、愛美ちゃんのプレッシャーはすごいと思います。アコギと歌だけのところは本当に緊張するだろうなと思って……すごいですよね、愛美ちゃん。
一同 ハハハ(笑)。
きみコ 歌詞においては、これまで「流星群」「プラリネ」と書かせていただいたからこそ書けたものだと自分では思っていて。他にもアイマスの子には何人か歌詞を書かせていただいてるんですけど、ジュリアとはここまでべったりやらせていただいてるからこそ、また頼んでいただけたこともうれしいですし、あたし自身もジュリアみたいな気持ちでずっと書いてきてるので。今回の曲はテーマが「流星群」の前に戻っているので、nano.RIPEに置き換えるとデビュー前の気持ちを思い出しながら歌詞を書くことができて、いろんな意味で新鮮でした。
――もはやジュリアの曲と言えばnano.RIPEのおふたりというイメージがありますからね。
きみコ 本当にありがたいことですね。今回も評判は良さそうだし、フルバージョンもすごく良いんですよ。リリース日も「アザレア」と一緒という運命的な部分もあるので、ぜひ併せて買っていただけるとうれしいです(笑)。
Interview&Text By 北野 創
●リリース情報
TVアニメ『citrus』オープニング主題歌
「アザレア」
2月7日発売
品番:LACM-14704
価格:¥1,300+税
<CD>
01. アザレア
02. 最終前
03. スターハンター
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