REPORT
2018.01.08
「アイドルマスター」元祖765プロの単独ライブ「THE IDOLM@STER ニューイヤーライブ!! 初星宴舞」2日目が1月7日、千葉・幕張メッセで開催された。
ライブには中村繪里子(天海春香役)、今井麻美(如月千早役)、仁後真耶子(高槻やよい役)、若林直美(秋月律子役)、たかはし智秋(三浦あずさ役)、釘宮理恵(水瀬伊織役)、平田宏美(菊地真役)、下田麻美(双海亜美・真美役)、長谷川明子(星井美希役)、原由実(四条貴音役)、沼倉愛美(我那覇響役)が出演した。
今回はステージセットの話からすると、ひと目目立つのは三対の巨大な半円状のアーチがステージ上にかかっていることだ。PS4「アイドルマスター」の国立ライブフォーラムステージの再現だといえば、プレイ済の人にはピンと来るだろうか。アーチには「ふちのラインのカラー電飾」「アーチの内部に散りばめられた夜空の星のような細かい点の電飾」「アーチに吊るされた七色に変化するスポットライト」そして「アーチフレームをスクリーンに見立てたレーザー光線の描画(「フラワーガール」の花の光など)」と、目についただけでも4種類の光の演出が仕込まれている。光をまとったフレームが楽曲に合わせて虹になったり、星空に変化するのは魔法のようだ。これに加えて会場天井を横切る流れ星の演出や、ステージを焦がす炎もあったりと、今回の演出は光と炎で作り出すステラ(星の)ステージがコンセプトのようだ。
和イメージの衣装について付け加えると、アシンメトリーなデザインで、左手は優雅に布をたらした長い袖、右腕は動きやすさ重視で腕を出しているのだが、よく見ると釘宮は右側がノンスリーブで、上腕にもこもこっとした飾りを袖代わりにつけていたりと本当に細かいし、センスがいい。1曲目の新年スペシャル「THE IDOLM@STER -初星mix-」はキメポーズも和っぽく雅な感じ。原は冒頭の挨拶で貴音として「故郷の民を導くために、いざ、参りましょう」と、懐かしのPSP「アイドルマスターSP」時代を彷彿とさせる言葉を入れていたが、和の装いの貴音(原)にはピッタリだった。「THE IDOLM@STER -初星mix-」の間奏にはずびし! という擬音がつきそうな地獄突きのような振付が復活していたのだが、これは釘宮の提案によるものだそうだ。
さて、セットリストは初日の構成をベースに、ソロ曲は前日とは違う楽曲がチョイスされた。ソロ曲は本人発、という予想に関しては平田の「演出のJUNGOさんから好きな曲を二曲って言われた」との証言によって裏付けられたが、今井からはみんなは聞かれたんだ?との言葉も。どうやら今井の「Just be myself!!」と「細氷」は指定だったようだが、本人が歌いたい曲も同じであった、という補足があった。
さて、2日目に関しては各曲ごとに簡単にコメントをしていきたい。トップバッターの「ステキハピネス」は、中村にとってこの曲しか考えられないチョイスだったようで、ライブの始まり、会場のテンションを一気に高めるためにあるような楽曲だ。歌っている中村の楽しさや喜びが伝わってくるよう。首にくっと角度を入れるキメというか、中村特有の立ち姿がすごく絵になっていた。
原の2日目ソロは「フラワーガール」。かっこよくて情感に溢れた貴音の代名詞が「風花」だとすれば、キュート代表は最初のソロのこの曲だろう。私感だが、おそらく「かっこいい」よりも「かわいい」で成長を見せることのほうが難しいのではないか。原のように最初から高いレベルのパフォーマンスを見せていた人ならなおさらだ。そんな彼女の久しぶりの「フラワーガール」で感じたのは、感情表現における客席とのキャッチボールの進化だ。最初の客席の「あなたが好き!」の大合唱でかみしめるような表情を見せると「貴方様と出会えてわたしはとても幸せです。これからも側にいてください」。終盤では「どー叫んでも?」の歌唱に節をつけて、さらなる大合唱をうながしていく。ライブの関係性の中で楽曲を作り上げていくコミュニケーションは、10年前にはなかったプラスアルファだと思う。
下田の「放課後ジャンプ」。下田にとってはこのライブ2曲目の「OFA」追加シナリオ専用曲だが、前日に亜美の曲を歌った下田が真美の曲を放っておくはずがない。後半になるほどテンションを増していき、目が覚めるような「チキショー!」「なんでもない!」の叫びには他の誰でもない真美を見るんだ! という気迫を感じた気がした。
釘宮の「全力アイドル」も一曲の中での起伏を感じた楽曲で、コールが入るポイントではコールが来る直前から会場のコールを待ち受ける動きと表情で待っているところに信頼を感じる。そして2番の同じポイントでは、最初から満開の笑顔で待ち受けるのだ。抑えたウィスパーの歌声が「 I(I) D(D) O( O) L(L) 」のフレーズで花がほころぶような華やかさに変化したりと、アイドルの化身の押し引きに翻弄されるようなステージだった。
「BRAVE STAR」は中村、今井、若林、原のオリジナルチームが前日に続き披露。優しい歌い出し、青春感のある歌唱からのサビの津波のような盛り上がりの波状攻撃!ステージに呼応するように会場に響き続けるwowwowの叫びは、ライブで完成する楽曲であることを改めて感じた。
「虹のデスティネーション」は釘宮、長谷川、たかはしの3人バージョン。美希とあずさは歌唱の幅がキュートからクールまで幅が広いが、この曲ではキュート極振りの姿が楽しめた。そしてキュート系の楽曲での釘宮の盤石さというか、かわいさを具現化した感じは本当にすごい。「始めのDon’t worry」では長谷川も負けじと美希のキュートさをさらに全開にして、もはや究極のかわいい対決だ。「2人」になることで美希と伊織の関係性にフォーカスが絞り込まれる感じで、2人の立ち位置やお互いの身体の向き、振付などがすべて意味を持っているように見えるのが興味深かった。
平田と沼倉の「ブルウ・スタア」は印象的なアカペラ風のハモリからスタート。響と真の歌声の意外な相性の良さが心地よいが、目を見張ったのはダンサブルな振付。この2日間で沼倉愛美のダンスがさらなる高みに達していることを実感しているからこそ、その隣で堂々たるダンスを見せる平田が同等以上の存在感を放っていることに驚かされる。平田の衣装アレンジにどこか武芸者のような凛とした雰囲気があることもあいまって、ズバッと直線的な動きの鋭さが印象に残った。
グッと来たのが仁後の「ゲンキトリッパー」。仁後自身が「他の曲がインパクト強いから地味だと思ってた(けど大好き)」と語ってた曲。「キラメキラリ」というあまりにも強い定番曲があるがゆえの悩みだと思うが、昨年10月の「THE IDOLM@STER 765 MILLIONSTARS HOTCHPOTCH FESTIV@L!!」ではミリオンの仲間たちとの「スマイル体操」を、そして今回の「ゲンキトリッパー」という形で彼女の望みをすくいあげてくれて演出チームには感謝の気持ちだ。オレンジの光の海に照らされた仁後がゆっくりと握りこんだ握りこぶしには、たしかに何かをつかんだ手応えを感じた。
若林の「いっぱいいっぱい」は「ずっと歌いたかったけど、歌いたい、聞きたい気持ちが枯渇するぐらいの状態で歌いたかった」という言葉が全てだと思う。歌いたい、聴きたい、叫びたいという飢えにも似た渇望が爆発するようなステージ。若林もサビの畳み掛けでは「みんなが大好きー!」「私も待ってたー!」「小さい小さい!」と叫びっぱなし煽りっぱなしで、歌っているのは主に客席だ。だが数千人の感情の爆発に全身全霊の想いを叩きつける若林の姿は、普通に歌うほうがすっと楽だろうと思うぐらいのエネルギーを放っていた。
若林の律子として、アイドルとしてのステージのあと、釘宮、たかはし、下田の3人があらわれた時はあっと叫びそうになってしまった。竜宮小町の3人と、そのプロデューサーが4人、等間隔に並んで歌う「七彩ボタン」。冒頭のフレーズを歌い終えた若林はステージから下がり、プロデューサーとしての愛情にあふれた眼差しを残していった。ユニットとしての魅力、バランスの素晴らしさを改めて見せてくれた竜宮小町だったが、下田が会場の光の海をゆっくりと見回したあと、万感の想いを込めてソロを歌う姿が印象に残った。落ちサビのボーカルの三重奏に合わせて、ステージに七彩の虹がかかった。
続く「ら♪ら♪ら♪わんだぁらんど」も、「ぷちます!」から全体曲が来るとは思わなかった人が多いのではないだろうか。ライトな楽しさに特化した楽曲は、ゲーム系の全体曲とはまた違った良さ、ハッピーさがある。かつて「ぷちます!」関連のイベントに若林が精力的に参加していたイメージもあってか、「いっぱいいっぱい」からの並びは若林の存在を強く感じた駆け抜けるような3曲だった。
SHARE