REPORT
2017.12.22
12月2日、日本武道館にて“Pile Live at Budokan -Pile feat. ラブライブ!-”が開催。歌手デビューから10周年を迎えた彼女による記念すべきライブは、これまで歩んできた道のりを振り返りつつ、最後にはこれから先を見据える、集大成と未来とを同時に観られるものとなった。
Pileがビジュアルプロデュースを手がけるユニット「A diamond」がオープニングアクトとして場内の空気をライブモードに変えると、楽屋からステージに向かうPileとバンドメンバーのVTRがOP映像として流され、カウントダウンを経て「チェックメイト」から記念すべき武道館公演はスタートする。ステージ奥の段上にリフトアップで登場したPileは、「日本武道館行くよー!」と雄叫びを上げると会場中を見回して笑みを浮かべ、歌唱を始めて武道館をいきなり巻き込んでいく。2サビ明けには、一旦イヤモニを外して今日の“追い風さん(=Pileファンの総称)”の声を聞いて、またニコリ。ラスサビのロングトーンでは、マイクを離し目にしてもブレない歌声で、その実力を見せつけていた。
続く「ドリームトリガー」では、イントロが流れた瞬間に会場はブルー一色に。いきなりキラーチューンを投入し、さすがの力強さを持った歌声でどんどん会場を盛り上げていく。ボーカルのみならずステージングもアグレッシブで、横に広いステージの両サイドにそれぞれ赴き、手を振る一幕も。さらに「VENGEANCE」でその歌声はより強く猛きものに。彼女らしい、音源では聴けないライブならではの牙のむき方を感じられる。またサビラストのハイトーンの出方も抜群で、この日に向けて仕上げた彼女の絶好調具合を感じさせるものだった。
武道館に立って初のMCでは、「今日は体力が大事なので!」と不敵な前フリ。「だいぶハードな1日になりそうなので、話は短めに」とできるだけ曲を聴かせるステージにすべく、早速「伝説のFLARE」へ。広がるピンクの光の海を前に、Pileもそれをさらに包み込むかのような広がりのある歌声を聴かせる。特にBメロではそこに深さも加わり、今の彼女の持つただ強く激しいだけではないという力を、このメジャーデビュー曲で改めて示す。そしてここからがすさまじかった。なんとPile、この曲を含め計8曲を立て続けに披露していったのだ。
「Dream of Princess」では歌声の広がりはそのままに切なさをプラスして歌い上げれば、続く「花と翼」では空を舞うかのような雄大さをボーカルで表現。その一方でサビの音数の多い部分では、はっきりタンギングしメリハリのついた1曲へと仕上げる。そこからシームレスに続いた「Heroic Philia」では難曲にも関わらず再びステージの両サイドへと赴いたりとボーカルとパフォーマンスを両立させると、ステージ中央に戻りスタンドマイクを前にジャジーな「EGOIST」へ。ここまでの勢い強めのサウンドとは一線を画したムードの曲で、彼女の抜き気味の歌声とスタンドマイクを前にしたパフォーマンスが観客を魅了していく。そしてそのまま、ダークめなミドルナンバー「angel song」「FLY」を続けて披露。前者は力強く大きく歌い上げたサビが弱めのAサビとの効果的なコントラストを生み、その伸びのある歌声の魅力をさらに活かす。後者ではさらにスローダウンした楽曲テンポを活かしてさらに楽曲に深く深く入っていくが、Dメロではその曲の展開に合わせる形で、突き抜けるような歌声でその雰囲気を打破していく。そして再び力強く羽ばたき始めた彼女は、「Black Butterfly」の頭サビを、再度ライブ独特の荒々しさをもって歌唱。加えてところどころセクシーに目線を外すなどして楽曲のムードをパフォーマンスでも表現。観客を魅了し翻弄していった。
8曲連続で歌いきったPile、「ハードすぎる!」と口にしながらも、その言葉とは裏腹にその表情には満足げな笑みが。と、続く「絆Hero」の披露を前に、スペシャルゲスト・ハローキティが登場。スマホゲーム『ザ・マジックナイトメア』の主題歌になっているこの曲にちなんで彼女が登場すると、Pileは「みんなのところに行っちゃいますよ!」と宣言。それぞれがトロッコに乗り、Pileのロゴ入りのフラッグに先導され、その「絆Hero」を歌唱しながら場内を行進。笑顔で会場中の追い風さんと視線を交わし、ときには客席を指差していくPileに加え、キティもトロッコ上で跳ねながら、会場を盛り上げていく。そしてトロッコに乗車したまま、タオル曲「HANABI!!」へ。少し甘めに変わった歌声とともに場内を煽るPileに、曲中あらゆるところで追い風さんからのコールが返り、場内にはタオルが回りまくる。ラストにはメインステージに戻るとキティの肩を抱き、ふたり揃ってステージから降壇した。
リハーサルのドキュメントVTRや「~Jewely Door~」をバックにしたinterludeのVTRに続き、ステージに登場した彼女は「Furuwasete」から後半のステージをスタート。ダンサーふたりを従えて、再びピンクに染まった客席を前に、連携も交えてビシっと揃えて決めていく。そして「ヴァンパイア革命」で、その客席の色はレッドに変化。引き続きダンスパフォーマンスの映えるこの曲では、ボーカルワークに加えて間奏でのしなやかなダンスも魅力的に映った。続く「Sweet My Song」では観客にクラップを呼びかけると、雰囲気もガラリと明るく変化。会場全体が、Pileに合わせてひとつになって、この曲を作っていく。そしてこちらもシーズン的にはバッチリな「雪降る夜」へ。白の光に染まる客席を前に、CD音源以上に丸みを帯びた温かな歌声を響かせていく。そうして柔らかな笑みとともにこの曲を歌うPileの頭上には、いつしか雪が舞っていた。
後半戦に入ってもPileはまだまだアグレッシブ。「明日立てないぞ!」と観客を挑発したところで、再びノンストップで疾走感のあるナンバーを6曲続けて披露していく。まずメロディラインを取るだけでも難しい「ヒカリフライト」を、その旋律をなぞるだけでなく次々移り変わるサウンド感も踏まえて巧みに歌い上げると、さらなる爽やかさを持った「Vivid Vision」へ。イントロから突き抜けていくような印象を与えるこの曲では、大きな山場となるサビの高音を極力地声で貫き通す。そこから休まず続けた「素晴らしきSekai」では、今度はスイッチを切り替え荒さの出るボーカルへとシフト。そのうえ、直前に高音を使いに使ったのにもかかわらず、この曲でのハイトーンにも隙がなかった点には恐れ入った。そしてダークなイントロから始まる「816 not found」ではレーザーの光が乱れ飛ぶサイバー感のある演出のなか力強くステージに立ち歌い続け、その佇まいからかっこよさを感じさせると、ガラリと雰囲気の変わる和ロック「金糸雀」へ。この日はドラムの鳴りも手伝ってかCD音源よりもかなり激しめのサウンドとなっていたが、Pileのボーカルはそれに力負けしないだけでなく、楽曲の雰囲気に沿う艶やかさも感じられるものだった。そしてこのブロックのラストを飾ったのは、爽やかロックチューン「いつかキミに届ける世界」。序盤こそ適度に肩の力の抜けた歌声を響かせていったものの、サビではその歌声はまたもまっすぐ突き抜けていくものへ。この曲の歌詞もあいまって、その歌声は彼女の未来に向けてまっしぐらに飛んでいったようにも感じさせられるものだった。
さて、続くナンバーは「P.S.ありがとう…」。温かみのある歌声に乗せて、彼女からはこの日この場に至るまでの様々な感謝の想いが発せられていく。それは歌声だけでなく、ほかの曲以上に会場全体に視線を向けるという形でも表れていたのではないだろうか。そしてラスサビでは、恒例となった“あの”9色の光が、すべての階層を埋め尽くす。さらに階段ステージの側面にもその9色がすべて灯され、まさに武道館全体でこの日だけの輝きを作っていた。
そしてここから、彼女の視線は“これから”へ。まずは発売されたばかりのニュー・シングル「Lost Paradise」を披露する。このゴリッゴリのロックを、MVを背負って思いっきり武道館にぶちかますPileは、ただでさえヒートアップしている観客に対し「もっと! もっと!」と煽り、場内のテンションをさらに爆裂させ、そのまま「一歩先へ」に突入。バンドメンバーと息を合わせて曲を形作る彼女の歌声は、32曲目にして一向に衰えを知らない、力強く伸びやかなもの。そのパワフルさを持ったまま、本編ラストナンバー「⇒ NEXT WORLD ⇒」が銀テープの発射とともに始まる。Bメロ・サビ直前では思いっきりコールが入るラストの盛り上げにはもってこいのこの曲で、イヤモニを外して受け止めたサビラストの「⇒ NEXT WORLD ⇒」のコールとともに、ここからまた次なる世界へとPileは走り出す。彼女も最後の最後まで歌い、煽り、ジャンプエンドで曲を締めくくるまで全力のステージングを私たちに見せてくれたのだった。
降壇後、すかさず上がったアンコールの声に応えて再登場したPileは、「君がくれたKISEKI」からアンコールのステージをスタート。もうひと盛り上がりする観客を前に、間奏では再び笑顔を見せつつ歌唱する彼女の歌声には、一旦の降壇を経て1曲目の頃に戻ったようなみずみずしさが。そのスタミナと回復力、そしてそれを活かしたラスサビの実に28拍ものロングトーンに、驚嘆させられっぱなしの1曲だった。
ここで、再び新田を呼び込むPile。客席で「P.S.ありがとう…」を観ていたという新田は、「観ていて胸が熱くなりました。素敵な景色を皆さん、そしてぱいちゃんありがとう!」と率直な感想を述べる。そのまま新田とともに「Melody」を披露。頭サビでのロングトーンを伸びやかに披露したPileは、気持ちよさとうれしさの同居したような表情でステージを展開。笑顔で歌いゆく新田との表情の違いも、印象に残るポイントだった。そんななかでPileは、落ちサビではドラムに合わせて空中にガンとパンチを繰り出したりと、最後まで熱いパフォーマンスを展開。歌いきったところで、肩を組みながらふたりでステージをあとにしていった。
しかし観客からは「もう1回!」のコールが止まず、WアンコールとしてPileが再々登場。彼女のシンガーとしてのキャリアの始まりの曲「Your is All…」を歌い始める。甘めの歌声で歌われていくこのミドルナンバーの歌詞は、不思議と今の彼女とも繋がるもの。それが結びついた点がこの武道館というのも、素敵なことのように感じる。その地で後奏を聴きながら、彼女は穏やかな表情で顔を上下させながら、噛みしめるようにゆーっくりと客席全体を、すべての観客と目を合わせていった。
歌い終わったところで、「こんなにも私の『Your is All…』をこうやって集中して見てくれるなんて、夢にまで見た景色です! ありがとうございます!」と感激をあらわにすると、「武道館で楽しく公演をできたのは、この会場にいるすべての皆さんのおかげです!」と感謝の言葉を述べる。そしてそれぞれ一人ひとりの時間をもらっていることにも感謝し、「返せてるかな?」と問いかける。そこにその充足感を物語る大歓声が返ると、「これからも、皆さんの人生の中の時間をもらっていることを忘れず、しっかり帆を張って進んでいきます!」と宣言。爽快感のあるロックチューン「DASH」で未来へ向けて駆け出すと、続く「ROAD」では武道館をバックにメッセージボードを持った追い風さんが、続いてPileの写真がスライドショーとして映し出され、その想いを未来への推進力に。最後には「song for you」の言葉を互いに掛け合い、互いに互いのために歌う光景が広がると、本当のラストナンバーであるこの日二度目の「Lost Paradise」へ。もう照明の演出はなく、客席を照らすライトは点きっぱなし。何の装飾もない状況でステージに立つ彼女は、音楽だけで真っ向勝負。そのなかでPileも、バンドメンバーと顔を合わせたりとラストのラストまで楽しむ姿勢を見せ、ジャンプエンドを決めたときの表情は達成感に満ちあふれていた。
そして彼女はステージ上を往復し、追い風さんの近くで直接挨拶。最後に階段ステージに登り、ステージ上を往復し、追い風さんに近くまで行って直接挨拶を済ませた彼女は、最後に階段ステージに登り「無事に3時間半の思いの丈を伝えられました。それも皆さんが笑顔で楽しく、一緒に歌ってくれたからです! これからもしっかり前を向いて、初心を忘れずに前進していこうと思います!」と述べ、長い一礼とともに記念すべき一夜を締めくくったのだった。
正直な話、「ドリームトリガー」あたりのあまりの絶好調ぶりに「この曲数、さすがのPileにしても最後まで持つのだろうか?」と一瞬心配になったのだが、それは完全に杞憂。彼女は40曲を、しっかりと歌いきった。Wアンコールの「DASH」と「ROAD」は、彼女が追い風を受けて新しい航路を進むための2曲。あの日武道館で追い風さんのメッセージを背にしながらまっすぐな歌声を放っていた彼女は、これからも先頭に立って道を切り開いていくことだろう。
Text by 須永兼次
Pile Live at Budokan -Pile feat. ラブライブ!-
2017.12.02@日本武道館
【SET LIST】
M1.チェックメイト
M2.ドリームトリガー
M3.VENGEANCE
M4.伝説のFLARE
M5.Dream of Princess
M6.花と翼
M7.Heroic Philia
M8.EGOIST
M9.angel song
M10.FLY
M11.Black Butterfly
M12.絆HERO
M13.HANABI!!
【ラブライブ!コーナー(6曲)】
M20.~Jewely Door~ → Furuwasete
M21.ヴァンパイア革命
M22.Sweet My Song
M23.雪降る夜
M24.ヒカリフライト
M25.Vivid Vision
M26.素晴らしきSekai
M27.816 not found
M28.金糸雀
M29.いつかキミに届ける世界
M30.P.S.ありがとう…
M31.Lost paradise
M32.一歩先へ
M33.⇒ NEXT WORLD ⇒
<アンコール>
M34.君がくれたKISEKI
M35.ラブライブ!曲
M36.Melody(with 新田恵海)
<Wアンコール>
M37.Your is All…
M38.DASH
M39.ROAD
M40.Lost Paradise
●リリース情報
4thアルバム
『タイトル未定』
3月7日発売
【初回限定盤A(CD+Blu-ray)】
品番:VIZL-1313
価格:¥4,816+税
【初回限定盤B(CD+DVD)】
品番:VIZL-1314 価格:¥3,816+税
【通常盤(CD)】
品番:VICL-64928
価格:¥2,816+税
Pile武道館 LIVE Blu-ray
「タイトル未定」
3月7日発売
【初回限定盤(2 Blu-ray)+写真集】※スリーブケース仕様
品番:VIZL-1316
価格:¥8,816+税
【通常盤(Blu-ray)】
品番:VIXL-209
価格:¥5,816+税
●イベント情報
Pile Birthday Party !!! 2018
2018年5月1日(火)@EX THEATER ROPPONGI
昼の部 14:00 / 15:00
夜の部 18:00 / 19:00
2018年5月2日(水)@EX THEATER ROPPONGI
昼の部 14:00 / 15:00
夜の部 18:00 / 19:00
2018年5月4日(金)@名古屋DIAMOND HALL
昼の部 13:00 / 14:00
夜の部 17:00 / 18:00
2018年5月5日(土)@大阪BIGCAT
昼の部 13:00 / 14:00
夜の部 17:00 / 18:00
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