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INTERVIEW

2017.12.12

ベストアルバム『LIFE of DASH』リリース記念インタビューPart 1 鈴木このみ×畑 亜貴スペシャル対談

2012年に弱冠15歳でデビューして以来、アニソンシンガーとして躍進を続ける鈴木このみが、初のベストアルバム『LIFE of DASH』を12月20日にリリースする。これまでの全アニメタイアップ曲に加えて本人が初めて作詞・作曲した新曲「夢へ繋ぐ今」も収録した、まさにこれまでの活動の集大成となる本作のリリースを記念して、リスアニ!WEBでは全3回の特集記事を掲載。その第1弾として、鈴木と彼女をデビュー時からバックアップしてきた作詞家・畑 亜貴との対談をお届けする。


――畑さんは鈴木さんが2012年に発表したデビュー曲「CHOIR JAIL」から歌詞を提供してるので、おふたりがお仕事でご一緒してからもう5年になるんですね。

畑 亜貴 ということは、私、このみちゃんの人生の4分の1ぐらいに関わってるっていうことかしら?(笑)。

鈴木このみ そうだーっ!(笑)。そう考えるとすごく大きいですね。

――初めて対面したときのことは覚えてますか?

鈴木 はい。自分は畑さんのことをすごい作詞家さんだと知っていたので、めちゃくちゃ緊張したのを覚えています。さすがに今ほどお喋りはできなかったんですけど、レコーディングのときにはいろいろと教えていただいて。緊張で身体が硬直して動かなかったときも「もっとリラックスして」って言っていただいて、やっと初レコーディングできたことを覚えてます。

 最初は「子どもがきた!」みたいな感じだったから(笑)。

鈴木 それ、最初の記者会見のときもおっしゃってましたよね(笑)。「なんかピヨピヨしてる感じのがきた」って言われたのを覚えてます(笑)。

 「この厳しい世界を駆け抜けていけるのかな?」って心配になっちゃったんです。

――畑さんは鈴木さんの初レコーディングの様子を見て、どんな印象を抱きましたか?

 歌に関しては最初からずいぶんしっかりしてたんですけど、プロとしてやっていくのは今までとは違うことだからどうしようかすごく考えて。周りは大人のスタッフばかりだから甘やかすのはすごく簡単なんだけど、あんまり大事にしすぎちゃうと、この先本当に辛いことがあったときにくぐり抜けていけないんじゃないかと思ったんです。もちろんプロデューサー的な目線で見るところもあるんですけど、年齢的にどうしても保護者的な目線で見てしまうことが多くて。

――なるほど。

 自分の気持ちとしては無責任に関われないと思ったし、これからも長く仕事をしてほしかったから、ちょっとキツく聞こえるかもしれないけど、言わなきゃいけないことは言っていかなきゃというふうに心を決めて。でも、実際にレコーディングでジワッとしてるところを見ると「あぁ~ごめんね……!」ってなっちゃって。

鈴木 「DAYS of DASH」のときですよね(笑)。自分がレコーディング・ブースで泣いてしまって、畑さんに慰めてもらったのを覚えてます。

畑 そう!もうあのときはこのみちゃんをおんぶして10周ぐらいしたかったんだから(笑)。

――赤ん坊じゃないんですから(笑)。

 でも、今こうやって喋ってると、すごくいろいろくぐり抜けてきたんだなっていうのは感じます。頑張ったよねえ。

鈴木 ありがとうございます!5年間でやっぱり変われたんですかね?

 ずいぶん変わったと思うよ。

――鈴木さんは自分でこの部分が変わったという実感はありますか?

鈴木 何か境目というのはないんですけど、振り返ってみるとたしかにちょっとずつ変わってきたというのは感じていて。当時は大阪に住んでいたこともあって、誰かに決めてもらったことしかやってなくて、すごく甘えてたと思うんです。でも、上京してからは自分で考えることも増えてきて、使命感じゃないですけど「これがやりたい!」ということを責任を持ってできるようになったのかなって思います。

 ライブもいっぱいやってるもんね。

鈴木 そうですね。今年はツアーをふたつやって、年末にはカウントダウン・ライブも残ってるので、特にライブの経験が多かった1年でした。

――畑さんは鈴木さんの最近のライブをご覧になってますか?

 今年のアニサマでギターを弾いてるこのみちゃんを観て、素晴らしいなと思って。

鈴木 はあぁー!ありがとうございます!

 楽器を人前で披露するまでには練習や努力が必要ですけど、大きな舞台ですごく堂々と弾いてて。しかも単に「鈴木このみがギターを弾いた」っていうだけじゃなくて、アーティストとしてちゃんと魅せるパフォーマンスができてたので、ここまで表現できるほど頑張ったんだと思ったら涙が出てきて。

鈴木 私、そのあとの中打ち上げのときに、いろんな人にギターを褒めていただいたんですけど、畑さんに「すごく良かった」って言ってもらったときにいちばんジワッときたんです。畑さんは自分にとっても「東京のお母さん」のような存在なんですけど、そういう人に認めてもらえたことがうれしくて、次の活力につながりました。

 今までは「守ってあげなきゃ」という立場にいたけど、あのステージを観て、このみちゃんに対して尊敬できるアーティストという気持ちが生まれて、対等な存在になったと思ったから、本当に頑張ったなと思って。で、その次の日は、このみちゃんが作詞してるところに私も立ち会ってたんですよ。

――それはおふたりで歌詞を共作されてる「歌えばそこに君がいるから」(2018年放送のアニメ『LOST SONG』のOPテーマ)のことですか?

鈴木 はい!

 このみちゃんが机にパソコンを置いて「う~ん……」って悩んでるのを見て、「あっ、やっぱりまだ私のかわいいこのみちゃんなんだな」って思って(笑)。

鈴木 でも、そのあとの『LOST SONG』のイベントのときに、畑さんが「人って作詞するときに悩むんだ」っておっしゃった言葉が忘れられなくて(笑)。私は丸一日悩みましたから。

――自分もそのイベントにいましたけど、その畑さんの発言に対して客席から「さすが!」っていう拍手が巻き起こりましたからね。

 私、すごく高飛車なこと言っちゃったのかなと思って、後ですごく焦っちゃったんですけど……。でも、このみちゃんが悩んでるところはとってもかわいらしかったです。

――鈴木さんと畑さんとの共作は初になりますが、いかがでしたか?

鈴木 歌詞を書いてるときに隣に畑さんがいるのがすごく不思議な感じで、それこそ母親にポエムを見られてるような照れ臭さがありましたね(笑)。

 お母さん見ないでよ!って(笑)。

――いちばんイヤなパターンですね(笑)。

鈴木 作詞って感情のいちばん隠してる部分を書く作業じゃないですか。なので、(森田と純平)監督にチェックを見せるときよりも畑さんに見てもらうときのほうが恥ずかしくて。メールを送るときに何回も読み返して、「大丈夫かな?でも正解なんてないし……送っちゃえ!」って感じで送りました(笑)。

 正解がないってわかってるのは偉いと思う。このみちゃんが書いた歌詞もそれはそれでありだったからね。でも、こんなことを一緒に話せるほどこのみちゃんが成長してて……。

鈴木 本当に感慨深いですよね。

――さて、畑さんは今回のベスト盤の収録曲で言うと「CHOIR JAIL」「DAYS of DASH」「AVENGE WORLD」「世界は疵を抱きしめる」「Love is MY RAIL」の歌詞を手がけてます。特にデビューから1stアルバムにかけての初期のシングル曲が多いですが、その時期の鈴木さんに歌詞を書き送るにあたって心がけていたことはありますか?

 このみちゃんが歌う曲は作品的に難しいものが多くて、解釈や言葉自体も難しいものが多かったと思うんですけど、私はそれをいいことだと思ってて。今の自分より少し上のことに挑戦していくのが成長していくことだし、全部がわからないままやっていくことも大事だと思うんです。感情的に理解できなくても気持ちをぶつけていくことに対して、お客さんは感じるものがあると思うし、それがこのみちゃんにできることなんだろうなと思って。だから難しくてごめんね(笑)。

鈴木 いえいえ(笑)。たしかに毎回歌詞をいただくたび、今の自分よりもほんの気持ち上のところにいる自分が歌う歌詞が多い印象は個人的にもずっとあって。だから今になって、ライブで歌うなかで「これってこういうことだったんだな」ってわかることが多いです。特に「DAYS of DASH」は自分が青春真っ只中の頃の曲で、「青春ってどういうもの?」って言われてもわからなかったんですけど……。

 自分がいるとわからないよね。

鈴木 でも、今になって振り返ってみると「ああ、あの時期の自分は青春してたんだな」っていうのがわかるんですよ。歌うごとにちょっとずつ歌詞の意味がわかっていくのがすごく楽しいです。

 まだ青春だから(笑)。でも、このみちゃんはいろんな作品の曲を歌ってて、実年齢とか実際の気持ちに近い曲を歌う機会も多いだろうから、私の場合はちょっと先のこのみちゃんを想定して歌詞を書くというのを一貫させようと思ってたんですね。

――なるほど。その計らいはちゃんと本人にも伝わってたわけですね。

 そこはうれしいですね。最初はこういうことやってたら嫌われるだろうなって、ちょっと切ない気持ちもあったんですけど。でも、長期的な目で見るとやったほうがいいことだなと思ったんです。

――鈴木さん的に畑さんから提供いただいた中で思い出深い曲は?

鈴木 全部思い入れがあるので選び難いんですけど、特に選ぶとしたらやっぱり「Love is MY RAIL」ですね。この曲はこれからも大事な曲なんだろうなってすごく思いますし、これから自分の曲のなかで1曲しか歌えなくなるとしたらこの曲だなって。

 それはどういう意味でなの?(笑)。

鈴木 究極の選択でそう言われたらですね(笑)。この曲の歌詞をいただいたときがこの5年間でいちばん悩んでた時期で、自分らしさも見えないし、歌ってていいのかすごく考えてしまってて。でもお客さんや周りの人からはすごく期待してもらっていたし、それを返せないのがすごく悔しくて。進むこともできないけど下がりたくもないというか、ずっと立ち止まった状態な気がしていたんです。そんなときに畑さんから「Love is MY RAIL」の歌詞をいただいて、まず家で読んだときにすっごいボロ泣きしたんですよ。

 大丈夫、私も書きながら泣いてた(笑)。この曲はもちろんTVアニメ『アンジュ・ヴィエルジュ』のOPテーマでもあったから、それも考えてたんだけど、このみちゃんの人生を歌にしたいなと思って書いたんです。たぶんいろんな転機がある時期なんだろうなと思って、何か励みになるような、これからも頑張っていけるような、このみちゃんらしい曲にしたいなってすごく思ってたので、これは自分の中でもかなり特別な曲だと思います。「DAYS of DASH」を聴くとあのときのこのみちゃんがすごく甦ってくるんだけど、この曲もまだただひたすらに、がむしゃらに頑張ってるこのみちゃんみたいな感じがして。

――個人的にも「DAYS of DASH」と「Love is MY RAIL」は繋がっている印象があります。

 うん、すごく延長線上にあると思います。

鈴木 もうひとつうれしかったのは、この曲のリリース後に畑さんと連絡してるなかで、「Love is MY RAIL」は私がいろんな人に愛情を与えてもらってるから、愛に近いところにいるキラキラしたものを届けたいと思って書いたと言っていただいたことで。それでまたグッときてしまいました。

 だってこのみちゃん愛されてるもん。ご両親にすごく大事にされて育ってきたんだろうなと思うし、スタッフにもお客さんにも当然愛されてて。デビューのときに関わった私や作曲の田代(智一)さんも、このみちゃんのことをちょっと特別に考えてて。別に普段頻繁に接するわけではないんだけど、やっぱり何かがあると思い出すし、いつでも幸せに仕事をしていてほしいっていう気持ちがあるんです。だからこのみちゃんは常に愛のなかにいるなって思う。

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