2017年10月28日、東京・かつしかシンフォニーヒルズモーツァルトホールにて、“キタエリ”こと声優・喜多村英梨のワンマン・ライブ“Nightmare † Alive 2017”が開催。彼女の持つ世界観を全面に打ち出した作り込まれたライブとなった。ライブでは喜多村英梨公式ファンクラブサイトの始動が発表され、来年1月にニューシングルの発売も発表。さらに新曲もライブで初披露された。
開演するとまず怪しげな雰囲気のナレーションが会場内に響き渡る。後に語られたところによると、このナレーションの原稿は自ら作り上げたものだという。このことからもわかるように、今回のライブは自らの表現したいものを存分に詰め込み、楽曲だけでなく世界観から作り込んだライブとなっていた。
赤いドレスに身を包んだキタエリが登場すると、まず歌ったのが「arcadia † paroniria」。9月に発売された新曲で、この曲は自ら作詞を行っている。曲は激しいゴシック・メタルという、ご挨拶代わりとしては十分すぎるほどキタエリ色の濃い楽曲だ。観客も最初から熱く燃え上がっていた。
2曲目は「Revolution【re:i】」で、PENICILLINのHAKUEIがプロデュースした曲。観客からの激しいコールが入ったりするのだが、本人は小さくコールに応えるだけであくまで不動。表情を崩すことなく歌い上げる。
曲が終わりMCに入ると、サービス精神たっぷりの軽快なトークが展開され、観客の笑いを取っていた。「普段愛でていただいている楽曲をちょっと違った空気感、音と私の声で伝えていけるようなライブにしたい」と今回のライブへの思いを語る。
そしてここで、今後のアーティスト活動プロジェクトは所属するトムス・ミュージックに加え、ロッカンミュージックが参加することが発表された。ロッカンミュージックはテイチクエンタテイメントのレーベルで、Pyxisなどが所属している。「おかげでこんなに豪華なステージになりました」と言うと、観客も大喜びで祝福した。
「盛り上がっていきましょう!」との声から始まった3曲目「TiCK TACK」。これは本人が言うところによれば「オタクってシャッフルでノれんの?」という挑戦曲だという。もちろんオタクをdisっているわけではなく、新たな可能性を追求したという意味である。
ここでキタエリは椅子に座り、観客も着席した。「座ったからには見せます。肌じゃねーからな!」と冗談を言いながらも、ここからはアレンジバーションで“魅せる”コーナーに。まずは「バラユリxxxx」の洒落たアレンジバージョンを披露した。この曲は通常では鉄板の盛り上がり曲なので、ここでこの曲を使ってきたというのは観客もやや意外な様子。だが伸びやかな声が存分に活かされたアレンジで、納得の仕上がりとなっていた。「恋華火」、「+×+×+ 荊棘 +×+×+」の2曲も今回だけのアレンジバージョンでじっくりと聴かせた。
いったんクールダウンした会場だったが、「ここからは休ませませんよ!」と煽ってからは通常のモード。「Miracle Premonition」はジャンプもあり、手を左右に振る“ワイパー”もあって熱い盛り上がりを見せた。曲の後、バンドメンバーは「これってワイパーっていうんだ」と未知の文化に驚いた様子だった。
そんなメンバーの本格的なバンド演奏によって、次の曲「DiVE to GiG – K – AiM」も熱く燃え上がった。キタエリも序盤とは打って変わって激しく観客を煽りまくる。続く「K’T’E’R × M’O’D’E」でも「飛ばしていくぜ!」とさらに加熱していく。
ここでキタエリはいったんステージを去り、バンドのインストゾーンに入った。各メンバーがソロで抜群のテクニックを披露すると、観客もそれに呼応してヒートアップ。ステージと客席の激しいぶつかり合いが展開された。再びキタエリがステージに戻ると、「FORTiTUDE」、「メルト ~やみかわいい~」、「EDEN」とさらにハードにぶち上がっていく。
興奮も冷めやらぬ中、突如キタエリから「本日、“重大発表”があります」と切り出した。「おおっ!」と期待する観客の声に、「結婚じゃないよ」とかわすキタエリ(最近、同年代の声優の結婚というニュースもあった)。では本当の重大発表とは何なのか?「私、喜多村英梨がなんだかんだでやってこなかったことをやります。初の公式ファンクラブサイトを始めます!」と宣言!ライブ当日から公式ファンクラブサイト「KITAERI mix」が開設され、現在はプレオープン中。今後、喜多村英梨の情報発信を行う他、有料会員限定のコンテンツの発信やファンクラブ会員限定イベントも行う予定だという。なお、11月末までのプレオープンのうちは無料期間となっている。
そしてさらにもうひとつ大事なお知らせが。「来年早々1月に、私、ニューシングルを発売します!」と発表。しかもこの場で新曲のカップリング2曲を披露するということで、会場は大歓声に包まれた。まだレコーディングも終わっていないという出来立てほやほやの新曲をバンドサウンドでファンに届けることになった。
まず歌った「fairy ∞ world」はキタエリ本人の作詞。「アンティークでダークファンタジーな感じの楽曲に仕上がりました」とのことで、演奏は激しいが歌は無機質という、妖しく綺麗な世界観が表現されているという。そして2曲目の「ViViD DESIRE」も本人の作詞で、「哀愁・情熱・静かな熱さ」がテーマと語っていた。どちらの楽曲もダークなイメージで、これまでのキタエリの路線をさらに押し進めたものといえそうだ。
最後の曲は、序盤でアレンジバージョンで歌った「バラユリxxxx」を通常バージョンで。もうこの曲はないと思っていたところにまさかの2度目の登場で、イントロからものすごい歓声があがっていた。「ぶち上がっていくぞ!」「飛べ!」と煽りに煽りまくり、観客も最大ボリュームのコールとジャンプで応える。「キタエリストサイコー!」と叫び、ステージ・客席一体となったぶち上がりで終幕を迎えた。
終演後、また怪しげなナレーションが会場内に流れ、「ファンサイトにご入会いただける血の盟約を結んだ」「喜多村英梨嬢を崇め奉り、チヤホヤしてくださるように」などとファンに呪いをかけた。呪いをかけられた観客は一様に大喜びしていたので、きっと公式ファンクラブに秒速で登録し、ニューシングルを山のように購入し、キタエリをチヤホヤし続けることだろう(笑)。このように最後までキタエリの世界観を貫き通した今回のライブ。“キタエリ”コールが鳴りやまぬ中、一夜限りの“狂乱の宴”はお開きとなったのだった。
Text By 金子光晴
喜多村英梨ワンマン・ライブ“Nightmare † Alive 2017”
2017年10月28日(土)かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
<セットリスト>
M-1 arcadia † paroniria
M-2 Revolution【re:i】
M-3 TiCK TACK
M-4 バラユリxxxx(Another Arrange Ver.)
M-5 恋華火(Another Arrange Ver.)
M-6 +×+×+ 荊棘 +×+×+(Another Arrange Ver.)
M-7 Miracle Premonition
M-8 DiVE to GiG – K – AiM
M-9 K’T’E’R × M’O’D’E
M-10 FORTiTUDE
M-11 メルト ~やみかわいい~
M-12 EDEN
M-13 fairy ∞ world
M-14 ViViD DESiRE
M-15 バラユリxxxx
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