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INTERVIEW

2017.10.18

劇場作品『弱虫ペダル Re:GENERATION』主題歌「ツヨサヨワサ」リリース記念、佐伯ユウスケインタビュー

劇場作品『弱虫ペダル Re:GENERATION』主題歌「ツヨサヨワサ」リリース記念、佐伯ユウスケインタビュー

2017年1月~6月に放送されたTVアニメ第3期シリーズ『弱虫ペダル NEW GENERATION(ニュージェネレーション)』にオリジナル・シーンを織り交ぜて構成された劇場作品『弱虫ペダル Re:GENERATION(リ ジェネレーション)』。第3期でED主題歌を担当していた佐伯ユウスケが、本作でも主題歌「ツヨサヨワサ」を担当。楽曲について話を聞いた。

――アニメ『弱虫ペダル』は第3期で「ナウオアネバー」、「タカイトコロ」と続けてEDテーマを担っていらっしゃった佐伯さんですが、今回の劇場版の主題歌のお話が来たときにはどのような想いがありましたか?

佐伯ユウスケ アニメを2作やらせてもらった流れで、総集編の映画で3期のまとめのように自分が楽曲を担当させていただくのがすごくうれしかったのと、映画館で自分の曲が聴けるなんてそんなうれしいことはないな、とテンションがアガりましたね。お話をいただいたときには。しれっと聞いたんですよ。出演していたイベントの会場で移動中のエレベーターの中でマネージャーから「(劇場版の主題歌)決まったから」って。「えー!?そうなんですか!?」って二度見しちゃったような感じで驚きました。

――やはり楽曲で寄り添ってきただけに、第3期で描かれたいわゆる“手嶋世代”の総北高校への思い入れは大きいんじゃないでしょうか。

佐伯 そうですね。アニメを拝見していても、こちらの思い入れも大きくなっていきますよね。今回の「ツヨサヨワサ」も手嶋のイメージが強いですね。もちろんいろんな人物を意識もしていたんですが、やっぱりどうしても手嶋に繋がってしまいます。強さも弱さもある。それがポイントだな、とも思っていましたし、そこを意識して作った曲なので。

――手嶋は物語の中でもいちばんの凡人。世代交代の後の『弱虫ペダル』という作品で視聴者がいちばん感情移入できる、共感できるのも手嶋なのかもしれないですよね。

佐伯 普通ですからね。普通だからこそ努力できる。むしろ努力しかしていない。「努力の人」ゆえの強さがありますよね。

――その「弱虫ペダル」との最初の出会いとなった「ナウオアネバー」ですが、今、この曲についてはどのようなことを思い出されますか?

佐伯 実は『弱虫ペダル』と共に在る3作品のようなアッパーなサウンドでガンガン歌う、というような曲をこれまでにやってこなかったので、「大丈夫かな」という不安があったんです。最初は。でもお話をいただいたからには原作のファンの方もアニメのファンの方も共感してくださるような曲を歌いたいと思ったと同時に、誰が歌ってもいい曲ではない、今まで培ってきた佐伯ユウスケのイメージと原作とのちょうどいいバランスを取ろうということを意識しながら作曲や作詞をしてきました。

――ご自身の中にあった感情を『弱虫ペダル』によって引き出されたのか、それとも『弱虫ペダル』によって知らなかったご自身が出て来たのか、どちらだと感じていますか?

佐伯 そういう意味で言うと、今回、インスピレーションを新しい角度で受けて、刺激されて出て来たものがドーンと出せたような気がしているので、半々くらいだったと思います。でも結構、元から「湧き出て来た」と書くタイプでもなくて、刺激を受けながら作っていくので、そういう意味では書きやすかったかもしれないです。感情移入もしやすいですし。

――3期後期EDテーマの「タカイトコロ」はいかがでしたか?

佐伯 この曲は逆に「ナウオアネバー」の流れがあったので、あまりバランスも考え過ぎずにいったん振り切ってみようって思ったんです。それで自分が考え得る、ボルテージの高いもので自分の中にはないものを出してみよう、というコンセプトで作りました。

――そして今回の「ツヨサヨワサ」では手嶋がイメージとして浮かんでいた、ということでしたが、それまでの2曲に関してはいかがですか?

佐伯 その前はキャラに寄せては書いていなくて。「ナウオアネバー」なら世代交代なのであらたなスタートを切る姿が浮かぶように、という意識でしたし、始まり感が出るようにしました。そして「タカイトコロ」はIHに入ることもあってガ-ッ!と飛び出していけるようなものにしたいなと思っていました。「ツヨサヨワサ」に関しては手嶋がイメージできていましたが、どちらかというと真波との山での戦いですね。手嶋自身がすごく自分のことを「弱い」って言うので、そこまで言うなら……という想いもありましたね。

――劇場版は3期の総括でもありますが、実際に3期をご覧になってどのようなことを感じられましたか?

佐伯 総括すると結構、強さだけが強さではない、ということを感じました。自分でも日々、それを思うことがあって。弱さとか哀しみや苦しみがなければ強くはなれないんだ、ということを3期の全体を通して非常に思いました。多分、アニメもそういうふうに作られているんだろうと感じましたし。

――その「ツヨサヨワサ」はどのようにして完成に至ったんでしょうか。

佐伯 前2作がわりといいバランスになってくれていました。最初は佐伯ユウスケとしての色を出そうと思って「ナウオアネバー」を作って、そこから振り切って「タカイトコロ」を書いて、総括ではその間をいきたいなと思っていたんです。実は「ツヨサヨワサ」はワンコーラスだけ出来ていたんですね。「タカイトコロ」を作るときに最初に作ったのがこの曲だったんです。だから歌詞もあまりいじっていないんですが、出来ていたものを、自分としてはもうちょっと振り切りたい、という想いもあってギリギリになって出来たのが「タカイトコロ」だったんです。でもこの曲もすごくいいなと思っていたこともあって、今回、劇場版用に改めて作らせてもらいました。サビを転調したりして、いかに熱さが出るか、という作業を経て完成に至りました。

――ワンコーラス以降を、どのような意識で作られたのでしょう。

佐伯 このワンコーラスをどうやって劇場らしい音にするか、というのを考えましたね。焦点を当てて狭い印象の中で書いていくことが普段は多いんですけど、3期のまとめだし、劇場版ということもあったのでわりと広く当てはまるような歌詞作りをしました。あと音に関してもアレンジでは音数を減らしました。あまり圧の強い音だと劇場で聴いてうるさくなってしまうので、アレンジをしてくださった方には「音数を減らして下さい」とお願いして、生バンドっぽい音に仕上げてもらったりとか。わりといろいろと、劇場版だからこそのことをやりました。

――劇場でかかったときに、次に繋がる感じがする、そんな一曲ですよね。

佐伯 そう言っていただけるとうれしいです。自分が書かせてもらう曲は「この曲で大団円」みたいな、終わりっぽい曲として書かないんですね。次があるからこそ、という気持ちを前提にして曲を書くことを意識しているので、そう感じていただけるとうれしいですね。

――特にメロディに言葉に「ここはドンピシャ!」と感じた部分があるとすればどちらでしょうか。

佐伯 最後の方の落ちサビの「なんで笑ってるの 生きているからに決まってるでしょ」っていうところですね。そこは真波の言葉からもらったんですが、すごく僕がグッと来たシーンだったので。「生きてる!」っていうシーンが。やっぱりひとつの曲の中で必ず意識しているのが1番から最後までに起承転結のあるストーリー展開を作ることなんです。だから最後のサビが1番と違うっていうことを良く言われます。だってそこはいちばん、エモーショナルにならないところじゃないか、と思っているので、だから最後の落ちサビで感極まった感じを出せて、自分でも歌っていてグッと来ます。

――そして両A面シングルのこのシングルにはドラマ『弱虫ペダル Season2』のOPテーマ「行かないと」も収録されています。

佐伯 最初に「アニメよりも好きに作っていいよ」ってことを言われたことや、ここまでにロックな曲が多かったこともあって、もうちょっとソフトな中で熱さを出したいと思ったんです。それで言葉でももうちょっと生身の人間が浮かぶような、語尾などでも普通にしゃべっている感じを意識して作りましたね。

――タイトルをカタカナにはしなかったんですね。

佐伯 そこは「ナウオアネバー」と「タカイトコロ」ってたまたま続いちゃっただけで(笑)。たまたま続いたからには総集編っていうことで「ツヨサヨワサ」は敢えてカタカナにしたので、こちらは普通に(笑)。ひらがなの方が人間っぽさがあるな、という意識もここでもあって。

――楽曲を作られたときはどんな刺激があったんでしょうか。

佐伯 これは結構、早かったです。普段は降りて来るまでに時間がかかるんですが、この曲は「もう無理だ」と思って、ベッドに横になったときにAメロからサビまでバーッと浮かんで、iPhoneのレコーダーに全部作って入れて、「出来た!」って寝た、という曲です。

――アニメと実写とでは制作に対して違う意識が働いたりはするんですか?

佐伯 ドラマ版の方ではまだ金城をはじめとした初期の3年生がいるので、テーマから変わってきましたね。なので作るときには3期の頭を一度フラットにして、初めて『弱虫ペダル』を読んだときの想いを、今のマインドで書いてみよう、という意識でした。いちばん主軸になったのは、小野田くんが落車をするシーンで。「行かないと」ってバッと前を向く。その場面で受けた印象から広げていきました。

――アニメの世界とドラマを繋ぐのが佐伯さんの歌、という印象がありますね。

佐伯 うれしいです。違う年代に向けましたが、通っている芯は違いがないので、そこは自分としても作りやすかったです。

――そんな佐伯さんの、3期で好きなシーンを教えてください。

佐伯 待ってるところかなぁ。「ティーブレイク」かなぁ。なんで待ってるんだよ!と。胸が熱くなりましたよね。あそこで真波くんがひるむのがグッと来るんですよね。彼も人間なんだって思って。弱みが出る。彼の弱さが出たときに、真波くんも天才だけどそれはメカトラブルも起こるんだな、と。各々の人間味がちゃんと出ているので。

――その真波は手嶋のことを最初はどうとも思っていなかったわけですしね。

佐伯 そうなんですよ。それがいつしか尊敬の念を抱くまでになる。そのやりとりはすごく強く印象に残っています。

――そんな佐伯さんから、最後にリスアニ!webの読者へメッセージをお願いします。

佐伯 今回両A面ということで、もちろん『弱虫ペダル』という作品との親和性を感じ取って欲しいところはあるんですが、何よりもいつも意識しているのがテーマや作品があっても必ず聴いた方の一人ひとりに受け取ってもらえることを意識して書いているんです。作品はあれど、それぞれの心境や境遇や想いに当てはめて聴いていただけるとありがたいなと思っています。どちらの曲にも僕自身の現状の気持ちや想いが入ってもいるので、それが伝わるとうれしいなと思います。

Interview&Text By えびさわなち


●作品情報
劇場作品『弱虫ペダル Re:GENERATION(リ ジェネレーション)』

大ヒット上映中

配給:東宝映像事業部

●リリース情報
『弱虫ペダル Re:GENERATION』主題歌
「ツヨサヨワサ」/佐伯ユウスケ

10月4日発売

品番:THCS-60165
価格:¥1,300+税

<CD>
1.「ツヨサヨワサ」
2.「行かないと」
3.「ツヨサヨワサ」(Instrumental)
4.「行かないと」(Instrumental)

レーベル:TOHO animation RECORDS
発売・販売元:東宝

(C)渡辺航(週刊少年チャンピオン)/弱虫ペダル03 製作委員会

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