INTERVIEW
2017.10.19
ゲームセンターで遊べる音楽ゲーム「チュウニズム」(CHUNITHM)から生まれた音楽ユニット「イロドリミドリ」。そんな「イロドリミドリ」にまつわる人々の声をお届けしている本連載。今回は「イロドリミドリ」の第1期エンディング曲「無敵We are one!!」、そして先頃公開されたばかりの第3期オープニング曲「Session High⤴」の作詞・作曲・編曲を担当したy0c1e(ヨシエ)のインタビューをお送りする。作り手の側から見た、「イロドリミドリ」の魅力についてたっぷりと語ってもらった。
――y0c1eさんが「イロドリミドリ」に参加されたいきさつは?
y0c1e 「イロドリミドリ」の脚本周りを手がけている、D.watt(七条レタス)さんからお誘いをいただいたのが始まりです。僕は札幌出身なのですが、D.wattさんが所属する「IOSYS(イオシス)」も本社が札幌にあって、昔から親しくさせていただいていて。ある日電話がかかってきて「今度CHUNITHMっていう音楽ゲームを立ち上げるから、曲を作ってくれないか」と言われて、それを皮切りにうちの会社(一二三)の作家陣が参加し始めたという感じです。
齊藤(セガ・ディレクター) 実はイロドリミドリの立ち上げ初期から、私とD.wattさんで「曲を誰に頼もうか」と打ち合わせをしていて、一二三のfu_mouさんとy0c1eさんの名前が真っ先に挙がっていたんです。おふたりの曲は以前から存じていたので、ぜひお願いしたくてD.wattさんに間を繋いでいただいた形になりました。
――そうして参加されてみて、y0c1eさんは「イロドリミドリ」からどのような作品イメージを感じられましたか?
y0c1e 最初に作品のコンセプトを見せていただいたときに、バンドというテーマはあれど、どこまでやれるんだろう、やっていいんだろう?ということを考えました。ゴリゴリのロックな曲を作るのかなと思ってたんですが、作り始めてみたらもっと自由というか、かなり遊びのある企画だという印象を持ちました。
――ゲームの音楽に参加されるのは「イロドリミドリ」が初だったんでしょうか?
y0c1e 同じぐらいの時期ですが、たぶん少し早く「Tokyo 7th シスターズ」に曲を書かせていただいていたので、全く初めてというわけではなかったですね。
――なるほど、こういったリズムゲームの楽曲を作るにあたって、セガの開発チームからはBPMやリズムの指定などはありましたか?
y0c1e 大まかなリファレンスはあったと思うんですが、BPMとか曲の長さの指定とかはあまりなくて、結構自由に作らせてもらいました。
齊藤 この曲では、メンバーの楽器編成だったり、キャラクターの性格みたいなものはぜひ再現してほしいというお願いをしていました。あとはゲーム的に面白くするために「彼女たちは音楽学校の生徒で、超すごいテクニックを持ってるんで思い切ってください!」みたいなことを話して(笑)。
y0c1e だからドラムのフィルとかも、現実にはありえない速度でありえないフレーズを叩いてたりします。腕何本あるんだよこの女子高生!みたいな感じで(笑)。
――新曲となる「Session High⤴」も「無敵We are one!!」も作詞作曲編曲をおひとりでやられていますが、こういったトータルな作業はy0c1eさん的には日常的なのですか?
y0c1e 僕の場合は作詞まで任せてもらうことが多いですね。作詞まで関わると、自分の感覚として楽曲をハンドリングしやすいと思っています。歌詞も含めた曲のすべてを自分でパッケージできるというのは大きいですね。新曲の「Session High⤴」だと“一人よりも五人よりも七が大事”っていう箇所があるんですが、ここは一人、五人、七人と歌詞に合わせて歌声が増えつつ、音の左右へのパニングが広がっていくんですよ。こういう音のギミックは作詞込みでやらせていただいているからこそ出来ることだとは思います。
齊藤 私はy0c1eさんの心には乙女が住んでいると思っていまして、作詞面でもイロドリミドリとの相性は抜群だと思います!
――たしかに両曲とも歌詞はとてもガーリーでかわいらしいですよね。詞まで含めて曲を作られる時は、まず音というか作曲から進められるんですか?
y0c1e そうですね、僕は基本的には曲が先です。両方同時とか、歌詞が先というケースはあんまりないですね。今回はガールズバンドで、物語内では歌詞もメンバー(なずな)が書いているということで、心の乙女に活躍してもらった感じです(笑)。
――新曲「Session High⤴」のy0c1eさん的な注目ポイントは?
y0c1e 聴いてほしいのは楽器のガチャガチャ感ですね。7人になったことでストリングスも増えてますし、ギターもうちの会社に三代さん(伊藤”三代”タカシ)というギタリストとしても活躍している作曲家がいて、その人が弾いてくれたフレーズによりかっこよくてかわいくてポップな仕上がりになっています。それから、個人的にやって良かったなと思ったのは、最後のサビの“lalalala…”の部分ですね。ここはメロディがサビと同じなんですが、リードギターの裏で「ハイ!ハイ!」っていう掛け声が鳴ってるんです。それがすごくポップネスに溢れていて、かなりパーティー感が出せたんじゃないかと思っています。「無敵We are one!!」のときもそうだったんですが、彼女たちの「みんなで派手にバンド演奏して超楽しい!」っていう気持ちを意識して音や歌詞を作っていったので、その楽しい感情が伝わっていればうれしいです。
齊藤 物語的にも3期『試練の三送会編』のオープニングという位置づけで、「”今”このメンバーが最高」という絆の歌をお願いさせてもらいました。あまり重いイメージではなくて、「異なってるから惹かれあう」「繋がってると信じる」といった、日常の延長線上の感覚を詞や演奏でうまく昇華してもらったので、ぜひそこを聴いてもらいたいですね。
――MVはご覧になっていかがでしたか?
y0c1e 最後の「決まった…!」入ってるんですね(笑)。めっちゃ良いじゃないですか!超かわいい。
齊藤 y0c1eさんから「自分の曲にもアニメーションMVが欲しい!」とよく言われていたので……。
y0c1e 板倉(孝徳)の「Still」のアニメーションMVにめちゃくちゃ衝撃を受けて、ああいうの自分の曲でも作ってもらえたらいいなぁ、あんなに絵が動いてるの凄いなぁと。
齊藤 監督が「Still」と同じ佐藤健史さんという方なんですが、また違ったテイストでかわいくまとめていただいたので、こちらも必見です。
――レコーディングのディレクションについてはいかがでしたか?
y0c1e やっぱりいちばん大変だったのは人数が多い点でしたね。僕がこれまでやらせてもらった中でも、7人って比較的多い方で。大変ではあったんですが、ずっと楽しかったです。みんなそれぞれ声質も違うし、キャラも違うし。高音の伸びが凄いとか、キャラ声で歌うとめちゃくちゃかわいいとか、音的においしいところが全員違うんですよ。そういう個々の持ってる味を曲の形に落とし込んでいく作業がすごく楽しかったですね。皆さんディレクションをしたらちゃんと返してくれるというか、すごく真摯に取り組んでくれて、こちらが提案したことが思い描いた以上の形になって戻ってくるのがとても気持ちよかったです。
――別のコンポーザーの方にお話を聞いたときに、声優の方々へのディレクションはシンガーの方々へのそれとはまた違った面白みがあると仰っていました。
y0c1e 本当にその通りだと思います。歌唱的なテクニックを見せるのではなく、あくまで曲を通してどうキャラを魅力的に聞かせるかというのがディレクションの肝でもあるので、そこを大事にする点ではシンガーへのディレクションとはまた少し違いますね。一種の演技の範疇という感覚です。
――歌い分けもy0c1eさんが設定されたんですか?
y0c1e そうです。サビはみんなで歌うという方向で、メロは歌詞の1行とか譜面の2小節とかで区切って、ある子が歌い終わったら掃けて、別の子が横から出てきて歌うみたいな映像を想像しながら決めていきました。入れ替わり立ち替わり、ふたりで肩を並べて歌ってたり、パートごとに歌う人数のパターンをある程度作って、自由に割り振っています。
――「Session High⤴」の次に作るなら、どんな曲を作ってみたいですか?
y0c1e 書かせていただけるなら、次もこういう路線でもうれしいのですが、電波ソングを一回作ってみたいですね。「イロドリミドリ」は懐が深いので、わりとなんでも受け止めてもらえる感じがしますし(笑)。自主制作では電波ソング的な曲も作っていたんですけど、商業のお仕事ではあまりやったことがなくて、もしやれるならこの作品はやりやすいのではないかと密かに思っています。あとキャラソンとかもやってみたいですね。
――ちなみに曲を書いてみたいキャラクターは?
y0c1e どの子も好きなんですが、電波ソングを書くとしたら……(箱部)なるですかね。もう音ゲーにできないぐらいメチャクチャな曲を作ってみたいです。
齊藤 以前もそんな話をしましたね。サビがなくてJメロぐらいまである曲を作りたいって(笑)。
y0c1e 1番だけでJメロまであって盛り上げ散らかして急に終わるような、乱暴なプログレみたいな曲を(笑)。
――ほかの方の曲でお好きな曲は?
y0c1e 皆さんの曲を聴いてるんですが、fu_mouさんの「Change Our MIRAI!」は最初に聴いて本当にかっこいいなと思いました。ちょうどその頃「無敵We are one!!」を作ってたんですが、こんなゴリゴリな曲と僕の曲みたいな、能天気な曲を両方包み込んでくれる、なんと懐の深いユニットなんだろうと思いましたね。あとは板倉の「Still」もかっこいいしエモい曲だし、それから個人的に「これは!」と思ったのは芹菜の「ハート・ビート」。僕が作編曲の広川恵一さんが好きなのもあるんですが、芹菜がドラム担当というパーソナリティをちゃんと踏まえていて、しかもすごくかっこよくてメロディもポップという。
齊藤 ドラムもちゃんと生演奏ですしね。キャラソンは録れる楽器は極力生で録って、キャラの個性を立たせようと思っているんです。
y0c1e 逆に集合曲だとあまり録らないですよね。
齊藤 そうですね。全員集合曲はメンバーの編成のバンド・サウンドでやるということは決めているのですが、その曲が生まれたタイミングの人物の関係性とか、起きた出来事を歌に反映できるようにお願いすることが多いので、それを表現するためにはどの楽器が主役なのかのバランスを意識しています。演奏する姿やキャラクター性が前面に出てくる感じになればいいなと。
y0c1e 集合曲はストーリーがひと繋がりになってますよね。
齊藤 作曲をお願いするときに1章分のプロットを先に作っておいて、物語とセットになるようにお願いする作り方をしているからですかね。ストーリーが現在進行形で作られていくので、この先がどうなるのかは作っている我々も楽しみにしている状態です。3期ではしっかり7人の関係性を描こうと思うので、楽しみにしてください。
――最後に読者にメッセージをお願いします。
y0c1e 今回初めて知ってくださった方は「無敵We are one!!」も遡って聴いてくれたりすると思うのですが、僕は「聴いて楽しくなれる曲」という一貫したテーマで曲を作っています。「イロドリミドリ」はかっこいい曲も、楽しい曲も、エモい曲も一度に楽しめる、どこを切ってもおいしいコンテンツなので、これから進んでいく物語も含めていろんな魅力を味わってください。もちろんゲームをやってみてもいいし、話を追ってもいいし、曲を聴いてもいいし、あらゆる方法で楽しんでいただければうれしいです。
Interview&Text By 市川太一(クリエンタ)
Session Highロング※期間限定11/5まで
●ライブ情報
イロドリミドリ LIVE’17 ~第1話「Still Going On!!!!!!!」~
11月5日(日)赤坂BLITZ
出演者:新田恵海、福原綾香、山本彩乃、M・A・O、佐倉薫、今村彩夏、高野麻里佳
【チケット】SOLD OUT
イベント特設サイトはこちら
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