2017年9月22日、23日、日本武道館で行われたGRANRODEOのワンマンライブ“GRANRODEO LIVE 2017 G12 ROCK☆SHOW 道化達ノ宴”。2日間で約17,000人を動員したこのライブは、GRANRODEO結成からの年数を冠に掲げ、5周年の“G5”から続く、年に一度の大きな祭りだ。日本武道館での“Gナンバリング”の開催は、記念すべき1回目の“G5”、翌年の“G6”に続いて通算3度目。その後、横浜アリーナ、さいたまスーパーアリーナ、大阪城ホール、幕張メッセ国際展示場、国立代々木第一体育館など、首都圏の主要アリーナを制してきた彼ら。本人にとってもファンにとっても、武道館での“G ROCK☆SHOW”の開催は、少年少女時代を過ごした懐かしい我が家に帰ってきた感覚もある。
とくに9月23日の公演は、年に一度の楽しい宴、武道館2daysの最終日。しかもこの日は、テレビ(フジテレビNEXT smart)の生中継が入っていたため、会場のそこかしこにテレビカメラが設置、否が応でもテンションが上がってしまう。ステージセットも、今までの“G ROCK☆SHOW”とはひと味違った。彼らのトレードマークであるマーシャルアンプの壁がそそり立つステージは半円状で、バンドの斜め後ろにまで客席が作られ、びっしりとファンで埋め尽くされている。そのステージの真上には、蝶の羽を4枚広げたような形の照明用鉄骨が組まれている。GRANRODEOの大会場でのワンマンはいつも、“派手”に“ド”の文字を5つくらい付けたいほど演出もゴージャスだが、今回もその期待は裏切られることはなかった。
GRANRODEOは紛うことなく、日本有数のエンタテインメント性の高いライブバンドだ。“G ROCK☆SHOW”のような大会場であればあるほど、その真価を発揮する。例え彼らになじみのない人が観たとしても、終わった頃には「また観たい!参加したい!」という多幸感が身体を包み込む。パワフルさと繊細さを自由自在に操り、表現力にあふれるKISHOWのボーカルとパフォーマンス。そんなKISHOWのボーカルを誰よりも熟知し、ギターキッズが見惚れる多彩なテクニックを、ダイナミックなアクションと共に演奏に散りばめていくe-ZUKAのギター。ただのサポートミュージシャンという立場を超えて、バンドとしてのGRANRODEOの屋台骨を華やかに支える瀧田イサムのベースとSHiNのドラム。どんなに激しいステージングも、涼しい顔をしながらサラリとこなしてしまう4人の高いスキルとミュージシャンシップを心ゆくまで堪能できるのが、“G ROCK☆SHOW”最大の醍醐味だ。
そんな“G12”のコンセプトは“道化達ノ宴(ピエロ・カーニバル)”。今年5月から約3ヵ月にわたって全国を回ったライブハウスツアー“GRANRODEO LIVE TOUR 2017 Pierrot Dancin’”の集大成となるカーニバルは、ツアーにも帯同した3人組ホーンユニット・FIRE HORNSと、男女総勢20人におよぶダンサーズによって豪奢にデザインされ、今の日本のロックシーンには希有な“スタジアムバンド”としてのGRANRODEOのグラマラスを加速していた。
ダブルアンコールを含めた全22曲は、“G ROCK☆SHOW”ではおなじみとなった、イエローのライトが交錯する勇壮なファンファーレから幕を開けた。仮面とマントを着けたダンサーたちによるシアトリカルなパフォーマンスに続いて、ステージ床下からKISHOWとe-ZUKAが颯爽と登場。真っ白なスポットライトが中央に集まり、シルエットとなったKISHOWがアカペラで「Pierrot Dancin’」を歌い出す。シンと聴き入っていたオーディエンスが、e-ZUKAが分厚いリフを繰り出した瞬間、怒号のような雄叫びを上げる。Pierrot Dancin’ツアーを彷彿とさせる鮮烈なオープニングから、前振りなくいきなり“G12”で初披露となるセクシャルなダンスナンバー「恋は mirage」に続いただけで、今日の宴は最初からアッパーに、オーディエンスのエンジンを焼き切るつもりなのがよく分かる。その予感は、早くも3曲目にクライマックス感たっぷりにFIRE HORNSフィーチャーのパーティーチューン「Punky Funky Love」をぶっ放してきたことでも計り知れる。KISHOWのシャウトはキレキレで、ハイジャンプはいつもより高い。e-ZUKAのステップも軽快だ。前日も3時間たっぷり武道館で暴れまくっていた疲れなど、微塵も感じさせない。
そして最初のMC。KISHOWがまず放ったのは「日本一デカいライブハウス、武道館にようこそー!」の、あの名フレーズ。通算では4度目、“G ROCK☆SHOW”だけでも3度目となる日本武道館ワンマンでは、もうおなじみの光景だ。メンバーがひとりずつ挨拶をしながら、e-ZUKAがボケてKISHOWがツッコむコミカルなやりとりが続く。ユルくてオチャメなトークと、カッコ良すぎる演奏とのギャップもGRANRODEOの魅力だ。
「泣いても笑ってもPierrot Dancin’ツアーの集大成。思う存分、オレ達とラストダンスを踊りましょう!」
KISHOWの言葉に、満員のオーディエンスが大声で応える。
前日もそうだったが、“G12”が今までの“G ROCK☆SHOW”と大きく違ったのは、4曲目の「Glorious days」からダンサーのパフォーマンスタイムを一度挟んだのみで、18曲目の「modern strange cowboy」までノンストップで進行していったことだ。90年代J-ROCKの息吹が今によみがえる「Fake lover’s true heart」、超高速バッキングにKISHOWのメロディックな歌心が乗る「ナミダバナ」、バンドとオーディエンスの全員が拳を高々と上げて吠える「FAT SHAPER」、ハードな展開から一転してラブリーな優しさがあふれる「君に one way love」、黄色のペンライトの波が跳ねる「Can Do」――まるでジェットコースターのように、緩急をつけながら進んでいくパフォーマンスの数々、すべてがハイライトだ。
中盤には、ロデオボーイ&ガールにとっても新鮮な驚きを与えるインストゥルメンタルタイムも。いつものワンマンでは、ドラム~ベース~ギターの単独ソロが続くコーナーがあるのだが、“G12”では10名のダンサーのパフォーマンスに続いて、FIRE HORNSがステージに登場。神々しいファンファーレを合図に、真っ白なライトの束を全身に浴びたe-ZUKAのメロディックなソロタイムに繋がり、e-ZUKA・瀧田・SHiNがステージに顔を揃えて、3ピースによる超絶技巧のプログレッシブ・メタルなコラボレーションを繰り広げた。
そしてステージにKISHOWが合流。最新シングル「move on! イバラミチ」からのセッションでは、“G12”中、最もポップでビビッドな空間が広がった。「Y・W・F」ではステージ上空の照明の間に現れたミラーボールがイエローの光を振りまき、KISHOWとオーディエンスが軽やかに扇子を振って歌い踊る。続く新曲=本格的ラテンナンバーの「エンドレスサマー」では、オレンジの照明と赤いフレアスカート姿の情熱的なダンサーたちが、武道館を鮮やかな夏の風景へと染め上げる。野太いエレキギターとスパニッシュテイストのガットギターを華麗に弾き分けるe-ZUKA。KISHOWのアパッショナートな歌声が、この愉楽をいつまでも終わらせたくないと訴える。“日本一デカいライブハウス”は一瞬にして、“日本一デカいダンスフロア”へと姿を変えた。
その熱狂を、壮大なバラード「少年の果て」の熱唱が一気に鎮め、もう一度、バンドのギアはガツンとトップに上げられる。「CRACK STAR FLASH」から「modern strange cowboy」まで、圧倒的な音の塊を浴びたオーディエンスは頭を振り、身体を前に折りたたみ、両手を激しく動かしながら、演奏に食らいついていく。ステージ前方に3ヵ所設けられたスタンディングエリアは、ぐしゃぐしゃのカオス状態だった。
「歌以外で口を開くのは、90分ぶりくらいになります。正直な感想を言っていいですか? むちゃくちゃ楽しいです! 今年はこれで終わってもいいくらいだけど、まだそういう訳にもいかない(笑)。最高! 武道館!」
KISHOWが感謝を述べている間に、ステージ上手にするするとピアノが登場。e-ZUKAが静かに弾き始め、シンと静まり返った武道館にKISHOWのフェイクが流れ出す。彼らの初めての武道館公演、2010年の“G5”から年に一度、“G ROCK☆SHOW”だけで歌われる「We wanna R&R SHOW」のスタートだ。ステージに吹き上がる火柱とスモーク。一斉に突き上げられる拳が力強い。KISHOWが歌詞を歌い替えて放った「G13で会いましょうー!!」のシャウトに、客席全体が「うぉー!!」と怒号のような雄叫びで応えた。
アンコールは、懐かしの名曲「Infinite Love」に続いて、「テレビの生放送中だから、絶対に言い訳してやろうと思って! 俺、(We wanna R&R SHOWの)ピアノは、昨日のほうが上手かった! KISHOWが急にフェイクを入れたから、何を弾くか分かんなくなるところだった!(笑)」と、e-ZUKAお得意のユーモラスなぶっちゃけMCも炸裂。懐かし続きで久々に歌われたデビュー曲「Go For It!」では、待ってましたといわんばかりの「IGPX」のコール&レスポンスが20回以上も続き、大きなうねりが巻き起こった。
そしてWアンコール。降り注ぐ鮮やかな光の中で、ドラマティックに歌い上げられた「UNDER THE SKY」。GRANRODEOの歩みとファンとの確かな絆を、“G”ナンバリングの名の下に再確認できた“G12 ROCK☆SHOW”。名残惜しい“宴”の終わりは、「GRANRODEOでした!また会いましょうー!!」のKISHOWのシャウトと、ふたりががっしりと交わしたハグ、それを讃える大きな拍手と歓声で締めくくられた――。
Text By 阿部美香
GRANRODEO LIVE 2017 G12 ROCK☆SHOW 道化達ノ宴
9月23日(土) 日本武道館
<SET LIST>
01.Pierrot Dancin’
02.恋は mirage
03.Punky Funky Love
04.Glorious days
05.Fake lover’s true heart
06.ナミダバナ
07.FAT SHAPER
08.チキン・ヒーロー
09.君に one way love
10.Can Do
11.move on! イバラミチ
12.Y・W・F
13.エンドレスサマー
14.少年の果て
15.CRACK STAR FLASH
16.silence
17.カナリヤ
18.modern strange cowboy
19.We wanna R&R SHOW
E1.Infinite Love
E2.Go For It!
W1.UNDER THE SKY
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