アニソンシンガーを夢見た少女が、その夢を掴んでから早7年。黒崎真音が、満を持してベストアルバム『MAON KUROSAKI BEST ALBUM –M.A.O.N.-』を9月27日にリリースする。黒崎真音として初めてオンエアされた「君と太陽が死んだ日」から『DRIFTERS』EDテーマ「VERMILLION」まで、彼女がデビューから歌ってきたアニソンが満載で、アニソンやファンをはじめとしたあらゆるものへの感謝を込めた優しく暖かな新曲「僕はこの世界に恋をしたから」で締めくくられる1枚に。今回はそのリリースにあたって、この7年間を振り返るのはもちろん、今年のアニサマでの「VERMILLION」の演出にたどり着いた経緯、さらに今後のアニソンシンガーとしての活動への目標も語ってくれた。
――まず、デビューから今までを振り返って、どんな7年間だったと率直にお思いですか?
黒崎真音 すごく濃密な7年間でした。ソロの活動はもちろんユニット活動もやらせていただきましたし、たくさんタイアップをいただいてアニメソングと常に近い状態で活動できたことが本当に幸せだなぁって思いますね。ずっと目の前のことに一生懸命になれて「今やるべきことをやらなきゃ!」っていう気持ちで走っていたら、いつの間にか7年経ってた感じなんです。ファンの皆さんの温かい声援や作品から勇気づけてもらえたおかげで、ここまでやってこれたのかな、と思いますね。
――その濃さは、夢がかない続けているからこそのものなのかな、と思いました。
黒崎 そうですね。私はすごくアニソンシンガーになりたかったので、常にライブがあったり曲や歌詞を書く機会があったりと、これ以上ないくらいの7年間を過ごせたように思います。でも同時に今も、「アニメソングで、みんながびっくりするような新しいことをやりたい」とも思い続けています。
――今回は新曲を含めて17曲が収録されていますが、曲順はどんな意図のもと決められたんでしょうか?
黒崎 私自身すごくライブが好きだし、この7年間ずーっとライブをやらせていただいていたので、今回は自分が思う「私だったらこういう順番で聴きたい」っていう、ライブのセットリストを意識したものにしたんです。なので、それぞれの曲が持っている「ライブだったら、この曲がここで流れてきたらおいしいな」みたいな得意ジャンルを活かせるように、決めていきました。
――アニメの主題歌になっているシングル表題曲が全曲収録されていることもあって、このアルバムを聴くと活動のなかでの印象深かったことが思い出される部分もあるのでは?
黒崎 やっぱりそれはすごくあります。「Magic∞world」は、デビューしてすぐ歌詞を書かせていただいた曲なので、「これで合ってるのかな?」とかすごくビクビクしながら作っていたのを覚えています(笑)。でも「総てはこの手の中に在る!」とか、今の自分にも語ってもらえてるようなところもあって。何年か越しに聴いてみると、それぞれの曲に「ちゃんと残せてたんだな」って思えるところがありますね。あと、声色が7年前と全然違うので、1曲1曲「声が若い!」とか「クセが強い!」っていうのも面白くて(笑)。「人って、こう変わっていくんだなぁ」っていうのも、多少感じました。
――1枚通して聴くと、本当に楽曲バリエーションが豊かだなと感じさせられるのですが、デビュー・アルバムの『H.O.T.D.』がその礎になった部分もあるように思います。
黒崎 そうですね。最初のうちはどの曲でも「どう歌おうか?」というのをアドバイスをいただきながら歌わせていただいていたので、知らない自分と出会う旅だったんですよ。それからリリースしたシングルも、いろんな曲調でいろんな世界を渡り歩いてきて……「どれが黒崎真音なんだろう?」って思った時期もあったんですけど、並べてバーッと聴いたときに、やっぱり一つひとつ全然違う個性を持っているのを感じて、「全然違う個性の曲が集まって“黒崎真音”が出来上がってたんだな」と実感しました。出会うべくして出会っていると思うし、結果的に私のところに来てくれた楽曲たちがずっとそばで支えてくれていたというか。私、結構擬人化しちゃうクセがあるんですけど……(笑)。
――たしかに、よく「この子」っておっしゃいますよね。
黒崎 そうなんですよ。でも不思議と、それだけかわいい存在になっていくんですよね。楽曲や作品の良さを探しながら歌っていくとどんな楽曲でもどんどん好きになっていくし、私のところに来てくれた段階ですごくかわいく思えてくるんですよ。そのほうがステージングも楽しいし「もっと曲を好きになってもらいたい」という気持ちも大きくなると思うので、そういう自分になれてよかったなって思います。
――その『H.O.T.D.』や『五色詠 -Immortal Lovers』『REINCARNATION』のように黒崎さんのアルバムにはひとつの作品にフォーカスを当てたものが数多くあると思うのですが、その作品をいろんな角度から歌う楽しさってどんなところにあると感じられていますか?
黒崎 自分が作詞に携わった『五色詠 -Immortal Lovers』と『REINCARNATION』に関しては、『薄桜鬼』や『東京レイヴンズ』のキャラをイメージした曲を並べて制作していったので、まずはそのキャラの生きてきた証や生き様、性格や言葉尻を全部詰め込んだ、ファンの方に「あの人をすごく思い出す!」って思ってもらえるようなものにしたいなと思って作っていきました。なので、アプローチはちょっと違うんですけど、私は声優さんがキャラクターを演じるということに、すごく近いことをしていたような気がして。その人の影を映し出す作業が、私はすごく好きなんですよね。
――そのなかで、今までにない歌唱表現や歌詞でのアプローチにたどり着いたりもしたんでしょうか?
黒崎 そうですね。黒崎真音がひとりで何のタイアップもなく好きな曲だけを作っていたら、絶対に出会えていない曲はいっぱいあると思います。でもいろんなきっかけでいろんな曲と出会って、曲ごとのいいところがどんどん見つかって、それがこの7年間で自分の中に入ってきたと思うんです。だから、「NOがなくなった」って言うんですかね? 自分の中で良さを見つけて、そこから自分の色や言葉で曲を作っていけるんだなぁというのをすごく感じたので、今はそういった曲たちが、自分に足りないものを運んできてくれたように感じています。
――さて、今回のベスト・アルバムを締めくくるのは、新曲「僕はこの世界に恋をしたから」です。この曲は、何をテーマに制作されたのでしょう?
黒崎 この曲は、このアルバムをひと通り聴いて最後に感じた気持ちをそのまま歌詞にしていきました。アニソンがなかったら今の私も黒崎真音もいないので、そういったアニソンへの感謝と、自分のところへ来てくれた楽曲たちへの感謝。あとファンの皆さんにとか、すべてに対して「ありがとう」っていう気持ちになれたので、そういう気持ちを詰め込んで、「この7年間、幸せだったなぁ」という形を残したくて、曲にしたんです。
――タイトルも、そのテーマに由来しているんでしょうか?
黒崎 はい。タイトルは、「この7年間ずっと好きだったものってなんだろう?」って考えたらやっぱりアニソンだったし、「やっぱりこの世界が好きだなぁ」っていちばんに思ったので、このタイトルにしました。初めてアニサマのステージを観たときから「絶対あそこに立ちたい」っていう具体的な夢を持って、それからずっと恋をしているので。
――そんな1曲を「ありがとう 歌うよ」と結ばれたのは、「これからも歌い続ける」という意志の表れに感じられました。
黒崎 そうですね。いろいろなご縁があってここにいると思うので、ここにいる以上は何かいろんなものを吸収して、皆さんにお見せできるようになりたいなと今も思っているんです。なのでそういう気持ちをファンの皆さんに、手紙のように書いていきました。
――実際歌ってみて、どんなことを感じましたか?
黒崎 なんだか自分の気持ちを喋ってるみたいでした。でも素直な気持ちで書いた言葉なので、それに全然違和感はありませんでしたね。私はJ-POPとかバンドも好きなんですけど、夢を見てそこに向かって突き進んでいこうと思ったのはアニソンの業界だけで……だからそう考えると本当にアニソンのおかげだし、アニソンを作ってこられた歴代の先輩方とか、感謝し始めると止まらなくなるんですよ。そういういろんなものに、ありがたいなぁという気持ちになりました。
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