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INTERVIEW

2017.09.13

『ジョジョ』シリーズ主題歌の制作秘話に迫る!ベスト・アルバム『TVアニメ ジョジョの奇妙な冒険 THEME SONG BEST「Generation」』リリース記念、大森啓幸プロデューサーインタビュー

「ジョジョ~その血の運命(さだめ)~」の衝撃から5年。TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』第1~3部のOP/EDテーマを収録したベスト・アルバム『TVアニメ ジョジョの奇妙な冒険 THEME SONG BEST「Generation」』リリースを記念し、シリーズのプロデューサーである大森啓幸氏に、歴代のOPテーマ制作秘話を改めて聞いた。コアなファンからも称賛された『ジョジョ』アニメ、そしてその音楽はどのような激闘の末に生まれたのか?

――『TVアニメ ジョジョの奇妙な冒険 THEME SONG BEST「Generation」』がリリースされましたが、TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』が放送されて……。

大森啓幸 もう5年ですね。企画はそこから1年ぐらい前なので6年ぐらい前かなと。でもあっという間でしたね。

――『ジョジョ』というビッグ・タイトルのTVアニメ化ということで、当時から映像面はもちろん、音楽面でもどんなものになるのか注目が集まっていましたが、プロデューサーの大森さんにとっても非常に難しい采配だったかと思います。

大森 そうですね。難しい采配というか、自分で難しくしてしまったというか(笑)。映像も音楽もたまには当時を振り返るんですけど、がむしゃらだったなというか、一つひとつを後先考えず損得勘定抜きで作って、いかに喜んでもらえる強い音楽、強い映像を世に出せるのかだけを考えていたような気がします。(スタッフを向いて)あのとき俺の目つきっておかしかった?

ワーナーブラザース 中西秀樹 大森さんってわかりやすくて、顔に出やすいんですよ。あのときは、極限状態ってこういうことだったんだなって。

大森 感じ悪かった?普段は社交的なんですよ(笑)。自分で制作について熟成を始めるときは人の話をあまり聞かずに、音も周りにほとんど聴かせずにやっていました。そうじゃないと、迫力が弱まるかなと思っていて。やっぱりどれだけ迫力が出せるかなんですよね。僕自身、そんなに音楽的に詳しくもないんですよ。一般的なことぐらいは知っているんですけど、音楽フリークみたいなものではない。「この音楽ジャンルはなんていうの?」って周りには聞いたりするけど、基本的にはウチにこもっている感じでしたね。

――これだけのビッグ・タイトルの主題歌となると、その作り方における選択肢も多岐に渡ると思うんですよ。例えばビッグ・ネームを起用したり、あるいはアニソン的なものでないものであったり。しかし『ジョジョ』の場合はそうしたどの選択肢からも違うものだったのかなと。

大森 後にも先にもこういうスタイルのものはないでしょうね。いちばん最初は、EDテーマの「Roundabout」(イエス)が先に決まったんですよ。原作者の荒木先生に「エンディングはどんなのがいいですか?」と聞いて出てきたひとつが「Roundabout」だったんですね。先生もその曲そのままにエンディングで起用したいというわけではなかったんですよね。ただこれがイメージだったらほかの曲を作れないなと思って、「Roundabout」をお借りしようと思って、たまたま協力者がいてお借りすることができたんです。

――イエスのレーベルから曲を借りるところからスタートしたわけですね。結果それがEDテーマになったと。

大森 普通だったらオープニングにするんですけど、僕としては何か違うなって思っていて、エンディングにしたんですね。で、エンディングがイエスの「Roundabout」だったらオープニングはどうしようとなって、色のついていない人がいい、しかも歌心がある人がいいということになったんです。そこでベテランというか、熟成されている芯の強いシンガーで、ネームバリューがある人じゃない人を探そうというところから始まりました。歌としては70年代の「宇宙戦艦ヤマト」(ささきいさお)とか、「マクロス」(藤原 誠)とかおおらかに歌い上げるアニメ歌謡をやろうとなって、じゃあ作曲は田中公平さんだよねってなって、一発勝負でお願いしようとなって始まったのが、「ジョジョ~その血の運命(さだめ)~」なんですよね。

――そこで歌唱を担当したのが、富永TOMMY弘明さんでした。アニメ・シーンではあまり知られていない方で、これも新鮮でした。

大森 もちろん消極的な理由でそうしたわけではないんですよ。結果としてそうだったのかなって。“名前が知られていないささきいさおさん”みたいな人はいないかなと(笑)。そこでいろいろ探しだしたんですけど……いるわけないんですよね、そんな人(笑)。そこでたまたま公平さんの事務所でエンジニアをやっていただいた人に「そしたらトミーがいいよ」っておっしゃっていただいたんです。最初は「トミーって誰?」ってなったのですが、歌を聴いたら「この音圧いいな」ってなって、「その血の運命」を作ったんですよ。

――なるほど。

大森 最初はいっぱい売れるCD出そうという気持ちではなかったんですよね。当然CDは出すんですけど。社内も社外も「ここまでやったのでCDを売れるようにしましょう!」っていってもらったのですが、気持ちのうえではCDが10万枚売れるより、カラオケで100万回歌ってほしいんですと。DVDもいっぱい買ってもらうより、視聴率を上げて100万人に観てもらいたいと思っていたんですよね。

――『ジョジョ』の作品や楽曲をいかに多くの人に聴いてもらえるかですよね。改めてこの名曲が生まれるなかで、作曲を担当された田中公平さんとはどんなやりとりをされたんですか?

大森 公平さんとは30分ぐらい発注の打ち合わせをしたぐらいです。まず作品の説明をしたときに、当然『ジョジョ』は知ってらっしゃるのですが、「いいねえ、俺のところに持って来て大森くん、正解だよ」というところから始まるわけですよ(笑)。

――田中さんらしい!カッコイイですね(笑)。

大森 あの人流なんですよね、「俺はとことんやるよ」っていう決意の表れがその発言にトランスレートされているんですよ。そしてデモが上がってきたときにも「名曲が出来たよ」って言うんですよ。自分で名曲って言う人いないじゃないですか(笑)。これもあの人流で「ここまでやったよ、最後までギュって絞り出したものだよ」っていうことなんですよ。ただ、その直後「数日しか時間もらえなかったけどね」ってお叱りはいただいたいちゃいました(笑)。上がったものは皆さんおわかりのとおりあそこまで押しの強いものでびっくりしました。

――大森さんの熱を受けて、田中さんも熱いものを打ち返して出来たものが「ジョジョ~その血の運命~」なんですね。

大森 公平さんと話した内容としては「シリーズの顔となる曲です」と。なので、そのいちばん最初でシリーズの最初のOPテーマということで、作品の顔となるものにしたいと。あとEDテーマはイエスの「Roundabout」ですと話をしたんですね、そしたらあとで「あんなこと言って」っとお小言いわれました(笑)。名曲をバックに作曲することになるのでプレッシャーもありますが、でもこの人だとそれを全部背負ってくれるだろうと思ったんですよね。

――サウンドとしては大森さんがおっしゃったような往年のアニメ音楽的なもので、それが2010年代のアニソン・リスナーにはフレッシュでした。

大森 方向性としては70年代のアニメソングみたいなものにしたいと考えてました。なので、「その時代のイメージで考えてほいです。で、歌詞にも“ジョジョ”という言葉は入れたい、作詞家はまだなんですけど」って話をしたら、田中さんから「(藤林)聖子がいい」と来まして。原作サイドの集英社さんにも藤林さんでという話をしたら、「いや、僕もそう思っていました」と。これは合致したということで藤林さんに作詞のお話をしました。作詞に入ってもらうときのお話のひとつに「ジョナサン・ジョースターとディオのふたりは仲がいい悪いではなく、運命が螺旋階段のようにぐるぐる回るんです」と。まさにラウンドアバウト(環状交差点)みたいな、という話をしたのですが、藤林さんも「わかったわ!」って言われて、1週間もしないで今のかたちが上がってきて。藤林さんも瞬間的にズバってきたんでしょうね。でも今考えるとなんであのとき熱に浮かされるように発注をしたんだろうと(笑)。

――またその曲が流れる神風動画によるオープニング映像もすさまじかったですね。

大森 そのときも「オープニングで負てはいけない」と思ったんですよ。気合いというよりかは後ろがなく追いつめられた気持ちでした。全力投球で投げた感じですよね。

――しかしそれほどインパクトがある楽曲が、放送で流れた回数としては……。

大森 8回。それも公平さんに言われました。そのたびに「何を言ってるんですか、これから先どれだけ再放送があると思っているんですか。8回が80回、800回のつもりでやっているんですよ」と。実際そのつもりで、昔のアニメって夕方に何度も再放送していたじゃないですか。そうなってほしかったんですよね。

 

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