INTERVIEW
2017.08.31
ゲームセンターで遊べる音楽ゲームCHUNITHM。本ゲームから生まれた音楽ユニットが「イロドリミドリ」である。そんな「イロドリミドリ」の学園MVP編のエンディング曲「Still」の作詞・作曲・編曲を担当した板倉孝徳は、アニメ・ゲーム音楽を作るために業界に入り、かつてはゲームセンターでアルバイトをしていたという経歴の持ち主だ。そんな彼が「Still」に託した思いを聞いた。
――板倉さんが「イロドリミドリ」に参加されたいきさつは?
板倉孝徳 僕の所属する一二三では、ほかの作家がすでに「イロドリミドリ」に参加させていただいてまして、今回の曲が弦楽ロックということで、僕のスタイルに合うのではないかという流れでお話をいただきました。基本的にうちの会社はデジタルやダンスミュージック系の音楽が強いのですが、僕は弦ものや生楽器を得意としてまして、これまで提供してきた楽曲は感動系のシーンや作品で使われる曲が多かったんですね。そういった経緯もあるのかなと思っています。
――「Still」はストリングスの使い方がギターっぽい印象で、非常にアンセム感がありますね。
板倉 いまのアニメソングってストリングスがかなり動くんですが、これって、まるでギターが動いているような迫力が出るんですね。さらにストリングスは使い方によって表現の幅を大きく広げることができるので、さまざまな情景を音楽で表現する、アニメソングに非常に合うのでは、と思っています。これはギタリストならではの発想かもしれません。
――曲は一発で完成したのでしょうか?
板倉 うちの場合、最初に曲を作ってから社内のディレクターのチェックが入ります。今回はさらに、(作曲家・編曲家の)齋藤真也さんに監修をお願いしていまして、齋藤さんの監修を経て提出しました。その後、(開発元の)セガさんとストーリーに合う歌詞やゲームに合うアレンジなどの調整を経て完成しました。
――多くの行程を挟んでいるのですね。板倉さんの中で「イロドリミドリ」はどのような作品イメージでしょうか?
板倉 女子高生が楽器演奏するというベースがあって、バンドとして切磋琢磨していき、やがてメンバーも増え、個人としてもバンドとしても成長していく様子を描く。それにゲームという要素が入ってきて、アニメとは違った特別感みたいなものがありました。その中でどう自分の持ち味を出せるかを考えながら作っていましたね。
――ちなみにゲームの音楽を作られたことはありますか?
板倉 今回が初めてですね。
――アニメの曲とはまた違った制約があると思うのですが、作り方は変わられたりしましたか?
板倉 まず尺が違いますね。1.5倍くらいあるので、歌だけでなく演奏面をどう聴かせるかを意識しました。弦楽ロックでしたので、ヴァイオリンのソロを入れ、それを追いかけるようにギターのソロが入るというドラマチックな構成にしました。およそ2分半の中で、楽器の見せ場をしっかり作りたかったんです。やっぱりバンドものですから。
――リズムゲームの楽曲なわけですが、開発元のセガからはBPMやリズムの指定はありましたか?
板倉 「イロドリミドリ」にヴァイオリン2人が加わり7人体制になって初めての曲ということで、弦が鳴ってて、ロックバンドというものをゲームに落とし込みたいというオーダーで、特にリズムの指定等はありませんでした。なので、今回はきれいにおさめたかったのでオーソドックスな流れになっています。
――作詞作曲編曲をおひとりでやられていますが、いかがでしたか?
板倉 最初はどうなるかは特に決まっていなかったと思うんですが、お話をいただいたときに、作詞を含む形で提案していただきました。
――すべてをおひとりでやられる方がやりやすいものですか?
板倉 ほかの作詞家さんが入ることで化学反応が起きる楽しさもあるのですが、今回は、最初にオーダーいただいたときの自分の中で作ったイメージに忠実に歌詞を書いていくとうまくハマって、それが気持ちよかったですね。言いたいことを言いつつ、作品のテーマにもマッチさせることができました。
――「Still」の板倉さん的な注目ポイントは?
板倉 MVではゲーム尺なので聴くことができないんですが、実は2番のAメロの歌詞が、自分的にはグッとくるポイントだと思っています。
――つまりCDを買わねばならないと。ちなみにMVをご覧になった感想はいかがですか?
板倉 かなりセガさんに力を入れていただいたようで、「すごい動くなぁ!!」と驚きました。完全にアニメのMVのようで、嬉しかったですね。自分の曲がこんな風に作品に関わっているんだと思って。あと楽器演奏のシーンがすごくちゃんと作られていて、運指が自分が弾いたのと一緒だと感動しました。
――「Still」の次に曲を作るならどんな曲を作ってみたいですか?
板倉 いろいろありますけど、物語であれば必ず終盤に差し掛かって加速していくと思うんですよね。そういったときに、感動を呼ぶような曲をやらせていただきたいですね。もちろんオープニングもやりたいのですが、いちばんやりたいのは、実はエンディングですね。
――レコーディングのディレクションについてはいかがでしたか?
板倉 感情をしっかりと乗せることで強い説得力が生まれる曲だったので、声の感じと楽曲の感じのすり合わせをご相談させていただきながらレコーディングしていたのですが、皆さんのってくると、どんどんいい感じになっていくので、ディレクションはすごくやりやすかったですね。実は「イロドリミドリ」楽曲のディレクションは2回目なんです。先輩のy0c1eが担当した「無敵We are one!!」のREC時に、y0c1eをはじめ、弊社のスタッフが次々とインフルエンザで倒れ……。でも、そのときに作品の雰囲気とか、声優さんの雰囲気とかもわかっていたので、わりとすんなり入ることができました。
――歌い分けは板倉さんの方で決められたのでしょうか?
板倉 はい。そうです。
――どのような意図で割り振られましたか?
板倉 弦のふたりが初参加なので、彼女たちに美味しいところを割り振りつつ、ほかのメンバーにもキャラクターにあった歌詞の部分を上手くパートに入れ込んで歌い分けを作っています。
――収録時に印象的なエピソードなどありましたか?
板倉 (白奈役の)高野さんの歌声をどう活かすかで、かなり密にやり取りをしたのが印象的でしたね。キャラクターという個性がある中で、どういう方向性で歌ってもらうと歌声が活かせるだろう、ということでかなりご相談させていただきました。白奈はビジュアル的には控えめにみえるんですが、その実歌は芯の通った想いの強い子なんです。「Still」の場合どちらに寄せた方が白奈っぽくなるんだろうと。最終的には力強い方を取りました。それ以外だと新田さんがすごく歌が上手だとうかがってましたので、しっかりとしたディレクションができるか不安だったのですが、良い作品をつくるためにいろいろと意見を交換して結果的に最高の歌をいただけたのでよかったなと。最後収録が終わって「ありがとうございました」って言っていただけたときに、「声優さんって神様だな」と思いました(笑)。
――キャストがどなたかご存知だった訳ですが、声質に合わせて曲を作られたんでしょうか。
板倉 そうですね。今回に限らず、基本的には歌われる方のイメージに合わせて曲を作っています。かなり聴き込んで準備していますので(笑)。
――「Still」というタイトルの意味はどういうものでしょう?
板倉 いろいろな感情を読み取れる詞になっているんですが、例えば成長していく中で感じる悩みだったり、劣等感だったり。そういったものを含みながら、ちょっとぼかしたタイトルにしてみようと思いました。それで敢えて副詞の単語を使っています。Stillにはいろいろな意味があるんですが、「~でもなお」という意味があって、発展を前向きにとらえてほしいという想いもあり、このタイトルになりました。
「イロドリミドリ」のライブイベントが11月5日に赤坂BLITZあるんですが、そのタイトルが「Still Going On!!!!!!!」に決まったと聞いたときは、うれしかったですね。ほかのドラマと同じで物語の一部を切り取って追体験するというもので、二部の主軸である白奈の企画したライブ名だそうなんですけど、そのタイトルから、メンバーが「Still」という曲名をとろうと提案するという形になると聞いて、曲がとても大事にされていると思いました。
――ほかの方の曲でお好きな曲は?
板倉 うちの会社の作曲家の曲が好きなので(笑)、補正が掛かってしまうんですが。「Change Our MIRAI!」を最初聴いたときにすごくパンチが効いていると思いましたし、(彦田)元気さんの「ドキドキDREAM!!!」も本当にこれを女子高生が演奏するのかよ!といった曲で、かなり熱いなと思いました。
――ちなみにお気に入りのキャラクターは?
板倉 あーりん(御形アリシアナ)です。僕がギターを弾くということもあるんですが、使ってるギターがIbanezの白いRG450DXBなんです。じつは僕、昔使っていて、「Still」のMVでギターを弾いているところはすごく感動してしまいました。
――最後にファンと読者にメッセージをお願いします。
板倉 ゲームプレイ中はなかなか歌詞まで入ってこないとは思いますが、ぜひ歌詞も含めて楽曲を楽しんでいただけると幸いです。
Interview&Text By 田中尚道(クリエンタ)
●ライブ情報
イロドリミドリ LIVE’17 ~第1話「Still Going On!!!!!!!」~
11月5日(日)赤坂BLITZ
出演者:新田恵海、福原綾香、山本彩乃、M・A・O、佐倉薫、今村彩夏、高野麻里佳
【チケット】1F立見:7,500円(税込)
※ドリンク代が別途必要となります。
※整理番号付
詳細はこちら
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